ありふれた黒幕のありふれない日常   作:96 reito

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Merry Christmas!


聖夜の夜は友人と

 Side 零斗

 

『クリスマス』それは恋人たちが愛を確かめ合う日。そう、つまりはリア充の季節なのだ……そんな季節なんだが……

 

「グッ……」

「踏み込みが甘いですよ」

「もう一本お願いします!」

 

 何故か八重樫道場にて門下生と試合をする羽目になっていた。いやほんとになんで?俺なんか悪いことしたか?

 

「ありがとうございました!」

「ありがとうございました」

 

 やっと終わったぜ……かれこれ五戦くらいしてたな……もうヘトヘトだよ……

 

「湊莉さん!次は俺と勝負してください!」

 

 別の門下生がやってきた。正直言って面倒くさいんだよなぁ…… まぁ、年内に来れそうなのは今日で最後やし相手するか。

 

「いいですよ。その代わり手加減はなしですからね?」

「お願いします!」

 

 手加減なしとは言ったが本気で打ち込めば竹刀ごと彼を両断しかないしな……さてどうしようかな……

 

「行きます!」

 

 彼が思いっきり突っ込んでくる。だがまだ遅いな。彼の剣筋を見極めながら軽くあしらう。

 

「クソッ……」

「もっと腰を落としなさい」

 

 アドバイスも忘れない。こうやってちゃんと指導しているからか少しずつ上達している気がする。

 

「ガッ!」

「一本!」

「返し胴かよ……」

 

 隙を見て相手の袈裟を流し、そのまま胴を打ち込んだ。久しぶりに決まったな……この技。

 

「以前よりもいい動きになりましたね」

「ありがとうございます!」

 

 彼は嬉しそうだ。しかし他の門下生たちは悔しそうにしている。やはり負けず嫌いが多いようだ。

 

「では私はこれで失礼しますね」

「はい!お疲れ様でした!」

 

 軽く一礼してから道場を出ようとした時に……

 

「湊莉君、今度は儂と勝負せんか?」

「……鷹三師範、気配を消して背後に回らないでください……普通に怖いんですよ」

 

 いつの間にか後ろに鷹三師範がいた。マジで怖えぇ……心臓止まるかと思ったわ。

 

「すまんすまん。つい癖になってしまってのう」

「本当に勘弁してください……」

「それで、どうじゃ?一手死合うってみるか?」

 

 その言葉を聞いて思わずため息が出てしまう。

 

「門下生に本気の殺し合いを提案する師範が何処に居るんですか……」

「目の前のおるが?」

「そういうことじゃありませんよ……」

 

 はぁ……と溜息をつく。相変わらずだなこの人は。でも……少しだけワクワクしている自分もいるんだよね…… バトルジャンキーなんかねぇ……

 

「ここに居たのね……ほら、早く行くわよ」

 

 後ろを振り向くとそこには雫の姿があった。彼女の服装はとても綺麗だった。いつもよりメイクをしているのかとても大人びているように見える。そして何よりも服との相性が良いのだ。白を基調としており赤いマフラーを着けていてとても似合っている。

 

「ど、どうかしら……」

 

 彼女は頬を赤らめ、それを隠すかのようにマフラーを口元まで上げながら聞いてきた。

 

「えぇ、凄く綺麗だと思いますよ」

 

 素直に思ったことを口にする。するとさらに顔を赤く染める雫。

 

「そ、そう……なら良かったわ……」

 

 彼女は照れた様子のまま道場を出て行った。

 

「……じゃあ、そう言う事なので失礼します」

「うむ。またいつでも来るといい」

 

 俺は鷹三師範に挨拶をして道場を出る。周りの人達からの怨嗟の声を聞きながら道場を出る。

 

「お待たせしました」

「別に大丈夫よ。それより……はいこれ」

 

 そう言って手渡してきたものは手袋であった。しかも暖かい素材で出来ているため防寒対策はバッチリである。

 

「……八重樫さん、左手出して貰えますか?」

「ん?こうかしら」

 

 彼女が出した手を掴んで指を絡めながら自分の手と一緒にポケットに入れる。

 

「ふぇ!?ちょっ、ちょっと零斗!?」

 

「こうした方が暖かくないですか?」

 

 彼女の顔を見ると耳まで真っ赤になっている。

 

「そ、それはそうなんだけど……これは流石に恥ずかしいわ……」

 

 確かに周りからは恋人同士に見えるだろう。現に俺達を見ながらニヤついている連中がいるしな。しかし……今更こんな事で狼突くような俺ではない。伊達に修羅場を経験していないからな。

 

「まぁいいじゃないですか」

「もう……仕方ないわね……」

 

 結局は折れてくれたみたいだな。やっぱり優しいな。そんなことを考えているうちに家に着いた。

 

「お!おかえり〜!」

 

 リビングに行くと悠花がソファーの上で寝転んでいた。お前は何してんねん……

 

 とりあえず上着を脱いでコートハンガーにかける。

 

「他の人達は?」

「料理で使う材料の買い出し〜」

 

 悠花はテレビで流れているホー○アローンを見ながら答えた。

 

「それならこちらである程度の準備はしておきましょうか」

「私も手伝うわ」

 

 俺達はキッチンに行き、早速作業に取り掛かる。

 

「よし……始めましょうか」

「ええ」

 

 俺達がやるのはチキンなどの肉類の下処理や野菜を切ること。まぁ大体の準備はこの二つだからな。しばらく時間が経ち、ある程度の下ごしらえが終わった頃……

 

「ただいま〜!」

「どうやら帰ってきたようですね」

 

 ちょうどその時、玄関から声が聞こえてきた。おそらく食材を買いに行っていた面々が帰って来たようだ。

 

「湊莉君、手伝うよ」

「ありがとうごさいます、助かります」

 

 白崎さんが手伝いを申し出てくれてとてもありがたいな。俺と八重樫さんだけだと手が回らなかったからな。

 

「じゃあそっちの大きい器にある具材をこの鍋に入れていってください」

「うん、わかったよ」

 

 テキパキと動いてくれる白崎さん。こういう時に手伝ってくれたりするととても助かる。さて……そろそろメインの調理に入るとしますか。

 

「よっ……と」

 

 冷蔵庫から牛ヒレと牛ももの塊を取り出す。この二つが今日のクリスマスパーティーのメインディッシュ……ローストビーフだ。ちなみに昨日から仕込みをしていたので味に問題はないはず。

 

「あら、今日は豪華ね」

「まぁ、クリスマスですからね……これだけ豪勢にしてもバチは当たりませんよ」

 

 肉自体は火入れをするだけで終わるから、まず最初にするのはソースを作ることだ。ボウルに入れた醤油と酒とみりんと砂糖を混ぜていく。それをフライパンに少量入れながら熱していく。この時、あまり煮詰め過ぎないようにするのがポイントだ。ある程度火を通してアルコールを飛ばす。

 

 この段階で香りが出てきたらOK。次にそこにオリーブオイル、みじん切りにした玉ねぎを入れて炒める。これでソースの材料は全て完成した。そして先程作ったソースを加えて再び炒る。ここで塩コショウを忘れずにしておく。

 

 そしてここからが本番。牛肉の表面に焦げ目がついたら裏返して、また弱めの中火にしつつ、全体に焼き色をつけていく。この時に包丁を使って表面を削ぎ落とす。

 

 そこから15分くらいかけてじっくり焼いていき、最後はアルミホイルに包んで完成。我ながら会心の出来栄えだと自負できる。

 

「相変わらずの腕前ね……女の私なんかよりもずっと上手よね……」

「そんなことはないですよ。八重樫さんだって十分上手いと思います」

「そう……かしら……?」

 

 八重樫さんが少し照れくさそうな表情をしている。いつもクールな感じでいる彼女だが、こういう時はとても可愛いらしい。

 

「あっ!零斗、雫ちゃんに何デレデレしているのかな?」

 

 いつの間にかキッチン来ていた悠花から指摘された。いかん……無意識のうちに口元が緩んでいたのか……?

 

「……なんのことでしょうか……?」

 

 俺は悟られないように平然を装って答える。しかし……

 

「零斗って分かりやすいんだから嘘つく時は絶対右眉が上がるんだよ〜?」

 

 悠花にはあっさり見抜かれてしまった。そんな癖があるとは……気づかなかった……

 

「別にそういうつもりではないのですが……」

「……まぁそう言うことにしといてやろう」

 

 悠花に生意気な口を利かれたので軽くデコピンしておいた。痛いと喚いていたけど無視した。

 

「後は私一人で出来ますから、二人はリビングで他の方達と楽しんできても大丈夫ですよ」

「……じゃあお言葉に甘えて……行きましょ香織」

 

 八重樫さんは白崎さんの手を引いてリビングに向かっていた。さて、後は……

 

「さて、こちらも仕上げといきましょうか!」

 

 冷蔵庫から生クリームの入ったボウルと昨日のうちに焼いておいたスポンジケーキを取り出す。

 

「ふふふ、今年はどんな風にしましょうか?」

 

 やっぱりクリスマスといえばショートケーキだよな。というわけでスポンジ生地の上にクリームを乗せ、イチゴを乗せていく。これを何度か繰り返していると、だんだんホールの形になってくる。うん、いいんじゃないかな。最後に上から粉糖をかけて飾り付けが終わり。

 

「むふ〜……やはりこういった作業は楽しいですね〜」

 

 作り終えた料理を盛り付けながら呟く。誰かのために料理をするって楽しいし、食べて貰えるのは嬉しいよな!君達もたまには料理してみたらどうだ?案外ハマるかもしれんぞ?

 

「皆さん〜、料理が出来ましたよー」

 

 リビングに呼びかける。すると全員が集まってきた。さて、では始めようじゃないか!聖なる夜を祝う宴を!!

 

「ハグッ!う〜ん!美味しい!!」

「そんなに急に詰め込むと「んグ!?」ほら、言わんこっちゃない……」

 

 急に食べるもんで喉を埋まらせる悠花とそれを見て呆れながら水を差し出す柊人。相変わらずだねぇ……

 

「このお肉……ヒレよね……火入れもそうだけど何より香草の香りが凄い……」

「あはは……」

 

 幸せそうな顔をしながら完璧な食レポをする優花、それをみて乾いた笑いを零す一花さん。

 

「ハジメ君!この料理とっても美味しいよ!」ズイッ

「う、うん。ありがとう」

「「クッッッッソ……羨ましい……」」

 

 料理をハジメの口元に持っていく満面の笑みの白崎さんにそれに嫉妬する浩介と幸利。

 

「……フフ」

 

 そんな騒がしい光景に思わず小さく笑う。こんな時間が何時まで続けばいいのにと思ってしまう。

 

「おや?」

 

 ふと、窓の外を見ると雪が降り始めていた。今年はホワイトクリスマスか……なかなかいいものだな。

 

 

 




ジングルベール……ジングルベール……鈴が鳴る……今年も家で一人きり……
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