ありふれた黒幕のありふれない日常   作:96 reito

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トネリコを引くために石200個と呼符15枚を消費しました……水着鯖を引く余裕がねぇぜ……


ある少女の神隠し

 Side 東雲

 

「暑い……溶けるぅ……」

 

 茹だる様な熱気に耐えながら、悠花ちゃんとの待ち合わせ場所に向かう。現在の気温は30℃を超えていて、しかも湿度も高いから、ジメッとした空気が余計に不快感を煽ってくる。

 

「なんで、今日に限って猛暑日なんだよぉ……」

 

 額から汗が流れ落ちるのを感じながら、私は思わず愚痴った。ふと空を見上げると、太陽がギラギラと輝いていた。あぁ……眩しい……

 

『チリーン……チリーン……』

「ん?」

 

 何処か遠くの方から鈴の音が聞こえてきた気がした。でも、周りを見ても誰もいないし……

 

『チリーン……チリーン……』

 

 やっぱり聞こえる……何処から……? 私はその音に導かれるようにフラフラと歩き出した。しばらく歩くと寂れた神社に辿り着いた。

 

「おや、こんな寂れた神社に客人とは珍しい……」

 

 神社の階段を登ろうとした時、後ろから声をかけられた。振り返るとそこには青い着物を着た男の人が立っていた。

 

「あの……あなたは?」

 

 私がそう聞くとその人はニッコリ笑って答えてくれた。

 

「私かい?私は……この神社の宮司……になるのかな?」

 

 なんだか曖昧な言い方をする人だなと思ったけど、それよりも今は聞きたいことがあった。

 

「あの……さっきまでここで鈴の音を聞いたんですけど……貴方が鳴らしていたんですか?」

 

 私がそう言うとその人の表情が変わった。まるで面白いものを見つけた子供のような笑顔だった。そして、ゆっくりと口を開いた。

 

「そうか……君が私の花嫁なのか……」

「え?」

 

 突然言われた言葉の意味がわからなかった。私が困惑していると、男の人が私の方に歩み寄ってきた。

 

「ちょっ!来ないで下さい!」

 

 本能的に危険を感じた私はその場から離れようとした。だけど足が動かない!?よく見ると足元には白いモヤのようなものが広がっていた。

 

「なにこれ!?」

「大丈夫だよ。怖くはないからね……」

 

 男の人は優しい声で語りかけてくる。怖いはずなのに何故か安心感があるような不思議な感じがする……

 

「さて、行こうか……」

 

 男の人はそう言って手を差し出してきた。不思議と恐怖心は無くなっていた。むしろ差し出された手に自分の手を添えたいという気持ちになっていた。

 

「は……ぃ……」

 

 私は素直に手を取った。すると急に眠気が襲ってきてそのまま意識を失った。

 

「ようやく手に入れたぞ……我が花嫁よ……永遠に愛してるぞ……我だけのモノよ……」

 

 最後にそんな声が聞こえてきた気がした。

 

 

 ●○●

 

 

 side 悠花

 

「あぁ……暑いぃ〜」

 

 私は今待ち合わせ場所に着いているんだけど、まだ来てないみたいだから近くのコンビニでアイスを買って食べているところです。

 

「それにしても遅いな〜いっちゃん……どうしたんだろ?」

 

 もう30分くらい待っているけど一向に来る気配がない。電話にも出ないしLINEも返ってこないし……何かあったのかと思って心配になってくる。

 

「仕方ないか……ちょっと探してみようかな……」

 

 私はそう呟いて立ち上がった。その時、ふと視界の端に見覚えのある姿が見えた気がした。

 

「あれ?あそこにいるの……いっちゃんじゃ……?」

 

 遠目から見てもわかる。間違いない、あれはいっちゃんだ。私は慌てて駆け寄ることにした。

 

「いっちゃん!!」

 

 走って近づきながら声をかけると、向こうも気づいたようで振り向いた。でも、様子がおかしい。

 

「ねぇ、どうしたの?何があったの?」

 

 肩を掴み揺すりながら聞いてみるけど返事が無い。顔を見ると目は虚ろで焦点があっていないように見える。

 

「え?ちょっと?本当にどうしちゃったの?」

 

 少し不安になりながらも再度問いかけた瞬間、私は背筋に冷たいものが走った感覚に襲われた。

 

「ひっ!?」

 

 思わず悲鳴を上げてしまった。だって、目の前にいる女の子の顔はまるで人形のように無表情なのだから……

 

「悠花ちャん……一緒に行こウ?」

「え?なに?どういうこと?」

 

 いきなり言われても意味がわからない。

 

「悠花チゃん……一緒二行コウ?」

 

 そう言いながら私に向かって手を伸ばしてきた。その様子はまるで獲物を狙う狐のように思えた。

 

「ッ!!」

 

 私は反射的にいっちゃんの腹部に拳をめり込ませた。すると、ガクンっと糸が切れた操り人形の様に崩れ落ちた。

 

「ごめんね、いっちゃん……」

 

 私はそう謝ると、いっちゃんを背負ってその場を離れた。

 

(ここからだと……アヴァロンより零斗の家の方が近い……そっちに運んでから診断して、それから────)

 

 この後の事を考えながら、零斗の家に向かって走る。

 

 ────────────────────

 

 走ること約二十分、ようやく零斗の家に着いた。玄関の扉を力技でこじ開けて、中に入る。

 

「零斗!いる!?」

「……ハァ、悠花何度言えばわかるんだ?来るならせめて連絡を……」

 

 玄関先で声を張り上げて、零斗を呼ぶ……すると、気だるそうにしながら現れた零斗。だが、私の背中で気絶しているいっちゃんの姿を見て、険しい表情に変わった。

 

「……何があった?」

「詳しいことは後で話す。とりあえず、診て欲しいの。お願い!」

 

 真剣な眼差しで見つめると、零斗はため息をついて私達についてきた。リビングに入ると、ソファーの上に寝かせた。

 

「……これはまた厄介な奴に目をつけられたようだな……」

 

 いっちゃんの様子を見て、顔をしかめる零斗。厄介なやつってなんのことだろう? そう思い、聞こうとした時だった。

 

「「っ!?」」

 

 いっちゃんから凄まじいプレッシャーが放たれ、思わず後退ってしまった。

 

「……威嚇……か」

 

 零斗はいっちゃんを見ながら、ポツリと呟いた。

 

「い、威嚇って……そんな野生動物じゃないんだから……」

「似たようなものだ。コイツは自分のモノに近づく者を排除しようとしている」

 

 零斗がガシガシと頭を掻きながら言った。そして、再びいっちゃんの方を見た。

 

「あの子はこの土地の土地神に魅入られたみたいだな……」

 

 土地神……確か、神様のことだったよね。それなら、あの異様な雰囲気にも納得がいく。でも、そんな存在が何故いっちゃんに?

 

「説明は端折るが、このまま放置すれば一花さんは『()()()()』に連れて行かれる」

 

 零斗は淡々と事実だけを述べた。そして、こちらを見据えて口を開いた。

 

「それで、どうするんだ?」

「もちろん助けたい!」

 

 即答する。だって、大切な友達が攫われそうになっているのよ。ここで黙っていたら女が廃るもの!

 

「……そうか」

 

 私の答えを聞いて、零斗は小さく笑みを浮かべて言った。そして、そのまま立ち上がる。

 

「何処に行くの?」

「決まってだろ?土地神のところだ」

 

 零斗はそう言って歩き出した。私はその後を追っていった。

 

 

 ●○●

 

 

 Side 東雲

 

「んぅ……うぅん?」

 

 私は布団の中で目を覚ました。あれ?ここはどこ?私はさっきまで何してたんだっけ?

 

「……知らない部屋……」

 

 キョロキョロと見渡すけど全く記憶にない場所。なんだか頭がボーとする。何があったのかを思い出そうとしてみるが、記憶に靄が掛かった様に朧げになっている。

 

「目が覚めたかい?」

 

 不意に声をかけられて、声の主を見る。そこには青い着物を着た男の人が立っていた。

 

「貴方は……?」

「私かい?私は君の夫となる男だ」

 

 優しく微笑みながらそう言う男。その言葉の意味を理解するのに数秒かかった。

 

「え……?あ……えぇ!?」

 

 驚きのあまり変な声が出てしまう。男はそんな私の様子をニコニコと笑いながら見ている。

 

「今日は私と君の婚礼の日だ……忘れたのかい?」

 

 男が手招きをする。私は何故か逆らうことができず、フラフラと近づいてしまった。

 

「いい子だね。おいで……愛しい花嫁……」

 

 そう言って、私を抱きしめてくる。その抱擁はとても温かくて心地よくて……冷たくて心地が悪いものだった。

 

「ずっとこうしていよう。永遠に私達は離れることは無いんだよ?」

 

 耳元で囁かれる甘い誘惑の言葉。私はそれに抗うことなどできず、ただ受け入れてしまった。

 

「はい……わかりました……」

「そうだ。良い子だね」

 

 私は素直に返事をして、さらに強く抱きつく。すると、身体から力が抜けていくような感覚に襲われた。

 

「これで君も我がもの……もう誰にも渡さないぞ……」

 

 そう言いながら、男は私の首筋に顔を埋めてきた。チクッとした痛みが走ったけど、すぐに気にならなくなった。

 

「これからもよろしく頼むよ?我だけの花……永久に共に生きよう……」

 

 そう言いながら、私の頬を撫でる手つきは壊れ物を扱うように優しかった。

 

『失礼します、旦那様。お召し物の準備が出来ました……奥方様の方も完璧に整っています』

 

 部屋の外から使用人らしき人の声が聞こえてきた。すると、男は舌打ちをしながら立ち上がった。

 

「チッ……興醒めな……まぁ、仕方ないか」

 

 そう言いながら、手を差し出してくる。私はそれを無意識に掴んでしまった。

 

「フッ……可愛いねぇ」

 

 嬉しそうな表情で私を見つめる。その瞳には狂喜の色が浮かんでいた。

 

(ごめんね……■■君)

 

 心の中で誰ともわからない人に謝った。自分でも誰に向けての謝罪なのかも分からない……でも、自分にとってかけがえの無い人なのはわかる。そんな事を考えていると……

 

『失礼致します』

 

 襖が開き、狐の面を付けた女性が入ってきた。私は何も考えず、その女性に着いて行った。

 

『この部屋になります……旦那様は二つ隣の部屋でございます』

 

 そう言って、案内してくれた人は去っていった。私は中に入って、ゆっくりと襖を閉じる。

 

『奥方様、こちらへどうぞ……着付けは私共がやりますので楽にしていてください』

 

 言われるがままに座ると、数人の女性によって服を脱がされた。そして、化粧や髪結いなど、色々とやられた。最後に白無垢を着せられ、準備が完了した。

 

『とても綺麗ですよ』

『はい、本当に』

「……ありがとうございます」

 

 私は小さく会釈をした。そして、立ち上がると、今度は別の部屋に通される。そこは、この世のものとは思えないほど美しかった。床の間には桜の花が生けてあり、池には鯉が泳いでいる。

 

「……まるで、絵の中にいるみたい」

 

 思わず呟いてしまう。それほどまでに、この場所は現実離れしていた。

 

「……私、ホントに結婚しちゃうのかな……」

 

 そう呟くと同時に涙が溢れ出てきた。なんだろう……胸が苦しい……締め付けられる様な……辛い感情が胸に渦巻いてくる。

 

「……嫌だよ……こんなの……」

 

 ポロポロと流れる雫。止まらない……止めどなく流れ出てくる。

 

「……誰か……助けてよ……」

 

 そう願っても、誰も助けに来てくれないのはわかっている。でも、そう言わずにはいられなかった。

 

「助けてくれなくてもいいから……せめて……」

 

 その先を言う前に後ろの襖が開かれた。そこには、あの男が立っている。

 

「あぁ……美しい……やっと私のモノになったんだね……」

 

 男はうっとりとした様子でこちらを見ている。そして、そのまま近づいてきた。

 

「さぁ、いこうか……」

 

 男に手を差し出される。私はそれを掴みそうになった。だけど、ハッとして思い留まる。

 

「……触らないで!」

 

 パシンッ!と音を立てて、男の手を弾いた。男は驚いた顔をして、私を見ている。

 

「ふむ……君は面白いな……ますます気に入ったよ」

 

 そう言いながら、私の頬に触れようとしてくる。私はそれを払い除けた。すると、男はニタァっと笑みを浮かべた。

 

 背筋に悪寒が走る。本能的にヤバいと感じるが、身体が言うことを聞かない。そのまま近づいてくる男。

 

「もう一度眠って貰おうか……なぁに、起きる頃には全て終わっている、安心して眠ってくれ」

 

 その言葉を最後に意識がプツリと途切れた。

 

 

 




今回と次回は親戚のじっちゃんから聞いた地元の逸話?みたいなのがモデルになってます。
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