ありふれた黒幕のありふれない日常   作:96 reito

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明けましておめでとうございます(激遅)

めちゃくちゃ久しぶりの投稿になります。看病なんてほとんどされた事無いんで描写がちょっと変かもしれませんが大目に見てください。


熱に浮かされて

 Side 零斗

 

 ピピピ……ピピピ……

 

「……39.7℃……ゲホッ……マジかよ」

 

 体温計に表示された数字を見て、ポツリと呟く。朝、目が覚めて起き上がろうとするも、体が重く感じたので熱をはかる。すると、案の定高熱だった。

 

「ゲホッ……倦怠感に咳、喉の痛み、関節も痛むな……ゴホッ……ヴ……インフルだな……」

 

 この高熱じゃあ学校には行けないな……やべ、めっちゃ関節痛ぇ……

 

「とりあえずは学校に連絡して、病院行くか……」

 

 痛む体に鞭打って、学校の電話番号に掛ける。

 

『プルルルル……プルルルル……ガチャ』

「はい、こちら○○高等学校の者ですが……」

「おはようございます、湊莉です」

「あぁ、君か……こんな時間にどうしたんだい?」

 

 電話に出たのは担任の先生だった。事情を話して、病院に行く旨を伝えて電話を切る。そのまま保険証と診察券を持って病院へ向かう。

 

 ──────────────ー

 

「……案の定、インフルだったな」

 

 病院に行って診察券を出し、待合室で数十分待った後呼ばれたので症状を話して検査する。その結果、やはりインフルだった。その後会計を済ませて処方箋を受け取り、薬局で薬と幾つかの栄養剤とスポドリを購入し、帰路に着く。

 

「ゲホッゲホッ……」

 

 やっぱキツイな……咳も止まらずに出てくるし、喉が痛え……熱のせいで頭をぼんやりするし……

 

「とりあえずは薬飲んで、さっさと寝るか」

 

 家につき、薬を水で流し込み、冷えピタを額に貼り付けてスポドリと栄養剤を手に自室に向かい枕元にそれらを何時でも口に出来る様な状態にしてからベッドに倒れ込む。

 

「あ゙ー……キツい……」

 

 呟いた直後、すぐさま眠気が襲ってきたのでそれに抗う事なく睡魔に身を任せた。

 

 ────────────────ー

 

『────は──────ね、────────』 サワサワ

 

「んっ……」

 

 近くで聞き覚えのある声と頭を撫でられる感覚がしたせいか、ゆっくりと意識が浮上してくる。薄く目を開けると、腰辺りまである艶の良い黒髪と桔梗を模した髪留めが視界に入る。

 

「あ、起きた」

「コホッ……なん゙でごほっ!君が……こほっこほっ……」

 

 声を出そうとしたら咳き込んだ。喉が痛い上に、乾燥してて声を出すのも辛いな。

 

「はい、これ飲んで」

 

 そう言って渡されたスポーツドリンクを受け取り軽く口に含み飲み込む。すると、ひりついていた喉の痛みが幾分かマシになり、咳も止まった。

 

「……刀華、何で此処に居るんだ?」

「自分の彼氏がインフルエンザで苦しんでそうだから看病をしに来ただけだけど?」

 

 さも当然の様に言う刀華。いや、確かに看病は有難いけど……

 

「移るぞ……」

「別に構わないわよ?その時は貴方に看病して貰うから」

 

 ……まぁ、刀華ならそう言うか。でも、移すのは気が引けるなぁ……あ゙ー頭回んね……

 

「ケホッ……刀華、俺は大丈夫なんで……コホッ」

「大丈夫じゃないでしょ。そんな咳までして……」

 

 軽くため息混じりに刀華が言う。そして不意に手を伸ばしてきて俺の額に手を当てた。ひんやりした感触が頭を支配していくのを黙って受け入れていると刀華は顔を顰めて立ち上がった。

 

「まだ熱があるじゃない」

「大した事はない……コホッ」

「こんな時にまで強がらないでよ……」

「ケホっ……生憎、これは性分だからな」

「全くもう……」

 

 ため息を吐きながら刀華はベッドの横に座って俺の頭を撫でてきた。それが心地よくて思わず目を細める。すると不意に唇に柔らかい感触が触れたので目を開けると目の前に目を閉じた綺麗な顔が視界いっぱいにあった。

 

「んっ……」

「んむ……ちゅ、くちゅっ」

 

 刀華は舌を俺の口内に侵入させ、歯列をなぞったり上顎を舐めたりと好き勝手に蹂躙してくる。いきなりの事で俺が動きを止めていると、今度は舌を絡め取られて弄ばれてしまう。暫くそうしていると満足したのかゆっくりと唇が離れていった。銀色の糸が伸びていきプツンと切れる。

 

「ぷはっ……いきなり何するんですか……」

「キスだけど?」

 

 首を傾げながらさも当然の様に言う刀華。いや、キスは分かるけど何で今したの?

 

「……移っても知らんぞ」

 

 あれ?何かさっきも似た様な事言った気がするな。まぁいっか……とりあえず今は刀華に移さない様にしないとな。そう考えているとまた刀華は顔を寄せてきたので慌てて止める。

 

「流石にこれ以上はゴホッ……本当に移しそうだからダメだ」

「あら、それは残念」

 

 そう言って刀華は笑みを浮かべたまま離れていく。そしてそのまま立ち上がった。

 

「食欲はある?あるならお粥作ってあるわよ。ないなら、一応ゼリー飲料があるわ」

「……少しなら食べれる」

 

 俺がそう返すと刀華は微笑んでキッチンの方に向かって行った。そしてすぐに戻ってくると、おぼんに小さな土鍋を載せられ、脇には漬物も用意されていた。刀華が土鍋の蓋を開けると、ふわりと出汁と卵の優しい香り部屋の中に広がった。中に入っていたのはシンプルな卵粥だった。刀華はお粥を少量だけ茶碗によそってくれた。

 

「はいどうぞ、召し上がれ」

「いただきます……」

 

 茶碗を受け取り、スプーンで掬って口に運ぼうとするが……

 

 ボトリ……「……力が入らない」

「あらあら……」

 

 上手く手に力が入らず、口元に運ぼうとしたスプーンを落としてしまった。刀華は笑いながら茶碗とスプーンを取り上げて、お粥を掬うと俺の口元に持ってきた。それを認識した瞬間顔が熱くなってしまうが、そのまま差し出されたので食べる事にした。一口入れると優しい味が口内に広がる。

 

「どう?お口に合うかしら?」

「……美味い」

「それなら良かったわ。ほら、もう一口あーん」

 

 再び差し出されたので今度は口を開いて食べると、刀華は嬉しそうに笑う。そしてそのまま残りの分も食べさせてもらい完食した。

 

「ご馳走様でした……」

「お粗末さまでした」

 

 そう言って空になった土鍋をベット脇の机の上に置いて俺の頭を優しく撫でる刀華に俺は思わず問いかける。

 

「……なぁ、何でここまで優しくしてくれるんだ?」

 

 自分でも分かるくらい弱々しい声で刀華に問いかける。何故、こんなに優しくしてくれているのか理解出来ず、恐ろしくて堪らなかった。

 

 

 ●○● Side 刀華

 

 

 零斗がポツリと私に問いかけてきた。その瞳は熱によるものなのか、それとも別の何かが原因なのかうっすらと膜が張っているようにも見えた。そんな彼を見て私は彼の傍に寄り、頬にお手を添えながら答える。

 

「それは貴方が私の大切な人だからよ」

「でも、俺は君に何もしてあげられてない」

(熱のせいかナイーブになっているみたいね)

 

 今にも泣き出してしまいそうな程に暗い顔で呟く零斗の唇を私は人差し指で押さえた。そして安心させる様に微笑んで見せる。

 

「そんな事ないわ。零斗は何時だって私を支えてくれるし、助けてくれる。それに、貴方と一緒に居るだけでも嬉しいのよ?」

 

 私の答えに彼は納得がいかないのか、まだ暗い顔をしているので私は言葉を続ける。

 

「それにね、好きな男の人を甘やかしたくなるのは当然だと思うのだけれど?」

「……物好きだな、こんな甘やかし甲斐の無い男と付き合うなんて……俺は君に何もしてやれてないし、返せてもいない……なら、いっその事……」

 

 そこまで言って黙り込んでしまった零斗。そんな彼を見て、私は思わずため息をこぼした。そして、彼の頭を抱き寄せて自分の胸に埋めさせる様に抱きしめた。

 

「全くもう……零斗はもう少し自分に自信を持っても良いと思うわ」

「むぐ……」

「それに、貴方は十分過ぎるくらい私を支えてくれているわ。だから、もっと甘えてくれていいのよ?」

「……ん゙っ……刀華……」

 

 私の胸の中でくぐもった声を上げる零斗の頭を優しく撫でると、彼はゆっくりと顔を上げて私を見上げてくる。その瞳からはポロポロと大粒の雫が零れている。

 

「刀華……コホッ、俺は……」

「大丈夫。ゆっくりでいいから話してちょうだい」

「……俺、は……君の隣に居てもいいのかな……?」

 

 不安げに瞳を揺らしながら問いかけてくる零斗を安心させる様に微笑みながら答える。

 

「えぇ勿論よ。むしろ、私から離れようものなら許さないわ」

 

 そう言って彼の額に軽く口付ける。




珍しく弱々な零斗君です。可愛いですね
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