Side 零斗
パーティーの当日になって会場に向かう。もちろんドレスコードがあるので俺が全員分の服も用意した。ユエをはじめとした何名かは緊張している。
まぁ、こういう経験はほとんどないだろうしな。
目的地であるホテルに到着して中へと入る。受付で名前と人数を伝えるとすぐに部屋番号を教えてくれた。事前に連絡を入れていたからだろう。
「それではごゆっくりお過ごしくださいませ」
そう言ってスタッフさんは頭を下げた。
「広い!」
部屋に入って真っ先に声を上げたのは谷口鈴だ。確かに結構いい部屋だ。ちなみに今いるメンバーは俺、ハジメ、ユエ、柊人、恭弥、悠花、白崎、雫、園部、谷口、中村、清水、遠藤、そして東雲さんだ。刀華と鏡花は主催者側だから別の部屋にいる。
「……ん、すごい」
「ここまで広いとちょっと緊張するわね……」
ユエや雫といった女性陣は部屋の豪華さに驚いていた。俺としてはこんなことには慣れている。
「開始までは時間がありますから、少しゆっくりしましょうか」
「そうだね」
荷物を置いてソファに座る。さすがに高級そうなだけあって座り心地はかなりいい。
「にしても豪華な部屋だね」
「うん……私達なんかがここに泊まってもいいのかしら?」
「大丈夫だと思いますよ? 主催者の方達が用意してくれたみたいですからね」
「へぇーじゃあ遠慮なく使わせてもらおうかな〜」
中村は呑気にそんなことを言っている。しかしこういった場に慣れていないせいなのかそわそわしっぱなしだった。
それからしばらくすると時間になったようでスタッフが呼びに来た。いよいよ始まるようだ。まず最初に挨拶が行われる。これは今回のパーティーの主催であり今回集まった面々を招待した本人でもある西園寺 宗治さんからだ。
「皆様本日はよくいらっしゃいました。当方のオーナーを始め多くの方が出席しておりますのでどうぞ楽しんでいってください」
続いて乾杯が行われてから食事が始まった。立食形式なので自由に食べたいものを食べられるようになっている。
「美味しい!」
「ほんと、どれも凄く美味しいですね」
女子達は料理に夢中になっている。その様子はとても楽しそうに見える。一方で男子連中はあまり会話には参加せずに食事をしていた。おそらくこういう場所に来ること自体初めてなんだろう。まぁ、特に困っているわけでもなさそうだし放っておくか。あ、この肉料理上手いな。
「…………」
ふと視線を感じて顔を上げると東雲さんがこちらを見つめていた。目が合うと慌てて顔を逸らす。
「どうかしましたか?」
「いえ! なんでもありませんっ!」
声をかけると慌てたように返事をした。やっぱりどこか様子がおかしい気がするが……。とりあえず今は目の前にある料理を楽しむことにした。
「お嬢ちゃん、おじさんと一緒にどうだい? ……ヒック」
「……私の連れに何か御用ですか?」
「うるせえな。ガキは引っ込んでろ」
「ほぉ?」
……早速酔ったオッサン共が絡んできた。しかも相手は東雲さんだ。
「貴方達、彼女は未成年ですからお酒は飲めませんよ」
「あァ!? ︎テメェ誰に向かって口きいてんだコラ!!」
忠告してやったというのに逆ギレされた。本当に面倒臭い奴等だ。仕方ない……あまり騒ぎを起こす気はなかったがこうなってしまえばもう関係ない。俺は席を離れて東雲さんのところへ向かう。そのまま、東雲さんの腰に手を回して抱き寄せる。
「ッ!!///」
突然の行動に驚いたのか東雲さんの顔は真っ赤になっていた。周りからはざわめきが起こる。そりゃいきなりこんなことをすれば驚くだろう。
「彼女は私の大切な人なので手を出すような事があれば……分かりますよね?」
威圧しながら告げると男達は顔を真っ青にしながら会場を出ていった。俺達の様子を見ていた人達は拍手を送ってくれた。一部から黄色い歓声も聞こえてくる。
「ありがとう湊莉君……」
「いいんですよ。それより大丈夫でしたか?」
「うん、おかげで助かったよ」
まだ頬は赤いままだが笑顔を見せてくれた。よかった。とりあえずこれで一安心だ。その後は特に問題もなく時間は過ぎていった。途中で何度かナンパのようなことがあったが全て撃退している。
刀華を探しに会場を歩き回る……お、居た。宗治さんと一緒に来賓している人達と喋っている様だ。聞き耳を立てていると……
「いや〜それにしても刀華君は相変わらず美しいね」
「そんなことはありませんよ」
「またまた謙遜しないでください」
社交辞令の手本みたいな会話をしている。刀華はいつも通りだ。さて、そろそろ話しかけようと思ったところで一人の男が近づいていくる。名前は忘れたがあの人もかなりの資産家だったはずだ。男は馴れ馴れしく話しかけてきた。
何やら話をしているが内容はよく分からない。ただ、その表情から察するに相当下心があるようだ。
「ねぇ、刀華ちゃん。この後二人で抜け出して飲み直さないかい? もちろん奢るからさ」
「申し訳ございません。私はまだ仕事が残っておりまして……」
「いいじゃないか。たまには息抜きしないと疲れちゃうよ?」
しつこく食い下がる男に対して刀華は少し困り気味だった。助けに行くべきか迷ったがここで出て行けば余計ややこしくなるかもしれないと思い見守ることにする。すると次の瞬間、男の手が刀華の腕を掴んだ。そして強引に引き寄せようとする。
「きゃっ!」
流石に見過ごすわけにもいかないので急いで駆け寄るとその腕を掴んで捻り上げた。
「いでぇ! なんだお前!」
「それはこっちのセリフですよ。嫌がっている女性を無理やり誘うなんて最低ですね」
「ぐぅ!」
「まぁ、どうせ金目当てでしょうけどね。それなら他の女に声をかければいいものを」
そう言って手を離すと男は逃げ去っていった。ふう、なんとかなったか……。振り返ってみると刀華が目を丸くしていた。どうしたんだろうかと思っていると急に抱きしめられた。 急なことに驚いていると刀華はそのままの状態で話し始めた。
「どうして来たんですか?」
「え?」
「私は一人で対処できると思っていましたが、まさかあんなことをされるとは思っていませんでした。だから、正直嬉しかったです」
そう言いながらさらに強く抱きついてくる。どうしよう。すごく可愛い。普段とのギャップもあってかなりドキドキしてきた。しばらくすると満足してくれたのか体を放してくれる。それからしばらく談笑した後、部屋に戻った。
「ふー、今日は色々あったなぁ〜」
ベッドの上で横になり今日の出来事を思い出す。パーティー自体は楽しめたし、まあ、ちょっとハプニングはあったが……でも、悪くない一日ではあると思う。
ハジメ達は大丈夫かな……と考えていると部屋の扉が開く……この部屋はカードキーが必要な筈なのにだ。
(スペアキーはこのホテルの従業員達しか使用は出来ない筈なんだが……それに俺が入ったのが最後だったしカードキーも俺が持っているし……)
警戒しながらも起きているのを悟られないように寝たフリをかます。気配からして複数人でしかも男の様だ。ゆっくりと近づいてきて俺を見下ろす形で立ち止まる。そのまま何かを話し始めた。
「おい、本当にやるつもりなのか?」
「ああ、せっかくのチャンスを逃す手はない。あいつは金持ちだしな」
「しかし相手は高校生だぞ? 下手したら捕まるんじゃ……」
「大丈夫だ。いざとなったら脅せばいい。それに、もしバレても俺達がやったとは思われない」
……なるほど、大体理解した。要するに俺の事を誘拐するつもりらしい。ま、面白そうだし誘拐されてもいっか! 俺はそのまま眠りこけた振りをして男共の好きな様にさせる。道中扱いが雑だったので飽きたらぶっ殺す……ぜってぇ殺す。
……どうしてこうなった?()