ありふれた黒幕のありふれない日常   作:96 reito

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零斗がヒロイン回ダヨ!


連れ去れた先は

 Side 零斗

 

 車に乗せられてから数時間後、ようやく目的地に着いたのか車が止まった。男共に担がれ外に出る。街外れの廃工場だった。中に入るとそこには数人の男がいた。その中の一人に顔を見たことがある奴がいる。確か……刀華に絡んでた痛いオッサンじゃねぇか。そいつはニヤリと笑うと話しかけてきた。ちなみに今の俺の状況だが、両手両足をそれぞれ縛られていて身動きが取れなくなっている。

 

「よぉ、起きたみたいだな」

「貴方は……刀華に絡んだ人ですか」

「へぇ、覚えていてくれたんだ。嬉しいね〜。さて本題に入らせてもらおうかね」

 

 そう言うと懐からナイフを取り出して見せつけてくる。男は笑いながら続ける。その目はまるで獲物を見つけた獣の様にギラついていた。男は口を開くととんでもない事を言い出した。

 

 こいつは刀華を自分の物にしたいから邪魔者を排除したい。そのためにまずは刀華の父親である宗治さんから潰すことにした。そのついでとして俺が狙われたと言うわけだ。

 

 つまり、今から行われることはただ一つ。刀華を手に入れるためだけに誘拐したということだ。男は舌舐めずりをしながら近づいてきた。そして、いきなり顔を殴りつけてきやがった。衝撃で床に転げ回ると今度は腹を思いっきり踏みつけられる。

 

「ぐっ!」

「ハハッ!いいザマだな!あの女もこのぐらい無様なら良かったのに!」

「……(こんな感じの反応でいいのかな?)」

「お?なんだその目つきは!気に食わねえな!」

「ぐっ!(お気に召した様で……)」

 

 その後も何度も殴られ蹴られる。まぁ、確かにこれはキツイ。普通なら泣いて許しを乞うレベルだろう。だけど、残念なことに俺は普通の人間じゃない。だから、この程度ではなんとも思わない。むしろ、これから起こることを考えるとワクワクしてくる。

 

 しばらくして男が息切れを起こし始めると他の連中に指示を出す。すると一人の女が現れた。

 

「はい、これ飲んで」

「んぐっ!?」

 

 女は錠剤の入った瓶を取り出すとそれを口に突っ込んできた。吐き出さないように口を塞がれる。そして、無理やり飲まされた。飲み込んだことを確認すると女は離れていった。

 

 それからすぐに変化は訪れた。全身の血流が激しくなり、心臓の動きも早くなる。体が熱くなり呼吸は荒くなる。頭の中で何かが弾ける様な感覚に襲われる。

 

(媚薬……いや、興奮剤の一種か)

 

 どうせそんなところだろうと予想していた通りだ。しかし、この程度では俺は屈しない。と言うか効果が薄すぎて最初の一瞬だけの衝撃で終わってしまった。

 

「なんだお前?」

「…………」

「チッ、無視かよ。おい、もう殺してもいいぞ」

(えー、マジかよ)

 

 思わず心の声が出そうになるがなんとか堪える。しかし、それを聞いた男達は俺の体を蹴り飛ばし始めた。

 

 面倒なのでされるがままにしておく。

 

「おい、何黙ってんだよ」

「どうした?ビビッてんのか?」

(うるさいな、少し静かにしてくれ)

「おい、何とか言えよ」

「あ、はい」

「「「……は?」」」

 

 腕を縛っていた縄を引きちぎり、男の一人の胸ぐらを掴むと思い切り引き寄せて顔面に拳を叩き込む。そのまま倒れこむ男の頭を掴んでもう一人に叩きつける。二人同時に倒れると今度は近くにいた女の髪を鷲づかみにして持ち上げる。そのまま壁に思いきり投げつけた。

 

 轟音と共に壁が崩れ落ちる。俺はゆっくりと立ち上がると残りの男達を見据えた。男達の表情には恐怖の色が見える。俺は笑っていた。楽しくなってきたからだ。

 

「ヒッ!」

「くそっ!」

 

 男達が襲いかかってくる。それを全て捌いて反撃する。一人、また一人と地面に転がっていく男共。残り一人になったところで一旦距離を取ると最後の男は懐から銃を取り出した。

 

「死ねやクソ野郎!!」

「それは無理だね」

「なにぃ!?」

 

 引き金を引く前に銃身を掴みそのまま握りつぶす。そして、もう片方の手で相手の首を掴んだ。ギリギリと締め上げていく。

 

「かっ……は……」

 

 男は苦しそうにもがくが全く抜け出せない。やがて、意識を失った。手を離すとその場に崩れ落ちた。ふぅ、と一息つくと周りを見る。全員気絶しているようだ。

 

「さてと、ここからどうやって逃げようかな」

 

 とりあえず辺りを散策することにした。まず最初に見つけたものは扉だった。鍵がかかっていたが力ずくでぶち壊す。

 

「ここは……倉庫みたいな場所だな……ファ!?」

 

 中に入るとそこには大量の武器が置いてあった。ハンドガンからロケットランチャーまで様々なものがある。その中で使えそうなものを探すことにした。しばらく探っていると、奥の方から物音が聞こえてきた。

 

「誰かいるのかい?それともネズミかな?まぁいいさ、どちらにしても始末すればいいだけだしねぇ!」

 

 声の主は女性だと思われる。しかもかなり若い。おそらく二十代前半といったところだろうか。俺は急いでその場を離れることにした。だが、遅かった様で女はこちらに向かってくる。手にはショットガンを持っていた。

 

「あれぇ〜、君誰だい?どうしてこんなところに居るんだい?」

「……」

「まぁいいやぁ!見られた以上は生かしちゃおけないし、ここで死んでもらうよぉ!」

 

 女は問答無用で発砲してきた。俺は横に飛んで避ける。女はそのまま連射してくる。俺は避けながら考える。

 

(武器はあるが使えるかは分からんな……なら、逃げるしかないか。だがどこへ?)

 

 考え事をしながらも回避し続ける。女はニヤリと笑うとさらに加速して距離を詰めてくる。

 

「ほら、ほらほらほら!?そんなもの!?」

「ちっ」

 

 舌打ちしながら攻撃を避け続ける。そして、隙を見て一気に後ろに下がる。すると、女は追いかけようとしてくる。その瞬間、近場にあったM1911を手に取る。そして、素早く構えるとトリガーを引いた。

 

 乾いた破裂音を響かせて弾丸が発射される。女は咄嵯に反応したが、間に合わず肩を撃ち抜かれた。よろめきながらも後退していく。

 

「ぐあっ……うっ……このガキィイ!!絶対に殺してやる!!」

(まだ元気があるのか)

 

 付き合っていられないので、マガジンを抜き女に投げる。すると、見事に命中して倒れた。

 

「あがっ!?」

(よし、今のうちに逃げないと)

 

 M1911を拾い上げると走り出す。後ろからは女の怒号が聞こえるが気にしない。とにかく今はここから離れることが先決だ。途中でバイクを見つけたので拝借することにする。エンジンをかけて走らせること数十分、ようやく家が見えてきた。

 

「ただいま戻りました」

 

 玄関を開けるとリビングからハジメ達が出てきた。心配していたのか泣き腫らしたような目をしている。俺の姿を見ると抱きついてきて涙を流した。

 

「ごめんなさい、私のせいで」

 

 優しく頭を撫でて落ち着かせる。それから事情を説明すると全員がホッとした表情を浮かべた。

 その後は警察に連絡したり色々大変だったがなんとかなった。ちなみにあの男達は指名手配されていたらしく、後日捕まったらしい。

 

 




ヒロインと言ったな………あれは嘘だ。
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