アサルトリリィ Thousand Flower 作:汐風波沙
「いや〜、いい湯じゃったの〜」
「あらグロっぴ、少し溶けた?」
百由は美夢の工房に向かっていると、温泉から出て、机に伏せて溶けているミリアムを見つけた。
「そうじゃの、このまま液体になってしまうのじゃ〜」
「溶けている暇があったら、早く制服をちゃんと着なさい」
「無理なのじゃ〜、ここの温泉は悪魔が住んでおる……」
ミリアムは更に溶ける。
百由は少し頭を抱えているようだ。
「こうなれば、奥の手ね。グロっぴ、ここにドーナツがあります」
百由は何処からか包みに入っているドーナツを取り出した。
「も、百由様、それを儂にくれるのか!?」
「グロっぴが今すぐシャキッとして、美夢さんの工房に付いてくると言うなら、あげるわよ」
「なんじゃ、その桃太郎方式は……」
「じゃあ、いらないの?」
「いらないとは言ってないのじゃ!わかったわい!シャキッとすればいいのじゃろ、シャキッと!」
ミリアムは、立ち上がり着崩していた制服をしっかりと着た。
「それじゃあ、ドーナツを貰おうかのう、百由様」
「何言ってるの?美夢さんの工房に付いてくるまでが約束でしょ」
「また儂を騙したな〜!」
「いやいや、今回ばかりはグロっぴの自業自得でしょ。はやく行くわよ」
「ちくしょ〜!」
ミリアムは百由に引き摺られる形で美夢の工房まで連れて行かれることになったのだった。
________美夢の工房
「お邪魔するわよ!」
百由はドアを開ける。
美夢は、チャームに術式を書き込んでいる最中だった。
「グロっぴ、ドーナツあげるから、ここからは少し黙っておいてね」
「言われなくてもわかっとるわい。儂も工廠科の生徒じゃ。今がどんなタイミングなのかも。」
百由とミリアムは近くの椅子に座る。
ミリアムは百由の隣でドーナツを頬張る。
とても幸せそうな顔をしていた。
「グロっぴ、あの術式どう見る?」
「なんじゃ、百由様には珍しく目をとても輝かせながら話しておるが……」
「私って、いつも目が死んでるの!?」
「いつも徹夜明けで目に狂気が走っとるわい!」
「嘘でしょ……、まぁ、それは今は置いておいて、どう見る、あの術式」
「そうじゃの、儂も何度も術式の書き込みをやっているわけじゃないから、詳しくはわからないが、儂らが使っているチャームの術式とは少し違うのじゃ。根本的な何かが……」
「そう、私達の使っているチャームよりも術式の行が多いの。多分、彼女にしか作れない術式ね」
「なるほど……、儂にはさっぱりなのじゃ」
「グロっぴもそのうちわかるようになるわよ」
そんなひそひそ話をしている間に、どうやら美夢の術式の書き込みが終わったようだ。
「ふ〜、おわったぁ〜!」
美夢は両腕を伸ばし、腰をひねる動作をした。
両動作共に、背骨のボキボキっとなる音がした。
そして、エプロンを脱ぎ机に置こうと振り返ると、百由とミリアムがいることに気付いた。
「あ、百由様とミリアムさん。来ていたんですね!」
「あ、うん。お邪魔、してるわ……」
「やはり、お主も鶴紗タイプの着痩せするやつだったか……、同類だと思っていたのに〜!」
何故ふたりがこんなことになっているのか。
そんなの、美夢の現在の格好にあったのである。
上はスポーツブラ、下は足が丸見えのショートパンツであった。
「でも、本当に綺麗な体してるわね、美夢さん」
「も、百由様!?」
百由は美夢の右腕を掴む。
「ちょっ!?どこ触って、ひゃうっ!」
「二の腕も引き締まってるけど、しっかりと筋肉がついてる。背中も柔らかさを残しつつも筋肉で支えられている。腰も安産型でいい腰。お腹周りも細いのに腹筋はついているし、お尻から足にかけてもいい筋肉がついてる。そして、極めつけは、この胸!」
「はうっんっ!」
百由が美夢の胸を掴んだ瞬間、美夢は身体をビクンっとさせ、顔を真っ赤にしていた。
「百由様、そろそろ辞めておけ、アイツが来たら厄介になり……、遅かったか」
美夢の声を聞いて鶴紗が部屋に入ってきた。
と同時に、百由は何者かによって美夢から引き剥がされた。
「痛い、待って、このままじゃ私の腕折れちゃうから、話してくれないかしら!と言うよりも、鶴紗さん、貴方先生ならこの子を止めてくれないかしら!」
「百由様、諦めてください。」
現在、百由は部屋に鶴紗の後ろから入ってきた何者かによって
「仕方ないわねっ!」
百由は、背中に乗っている何者かを振り落とすために、立ち上がり、背負い投げをした。
「さっきの分のお返しよ!」
と言いながら、
「ギブギブ!このままだと、私の腕折れちゃいます!ごめんなさい!謝りますから、許してください!」
「何言ってるの?私の腕を折ろうとしたのに許してもらえるとでも思ったの?もちろん許すわけないわよね!オラァ!」
「イヤァァァァァ!」
ここから10秒間ほど、何者かの悲鳴が部屋に響いていた。
「百由様、そろそろ勘弁して上げてください。ウチのナンバーワンリリィを潰すのだけは辞めてください」
ここでようやく鶴紗が止めに入った。
何者かは、ほぼ半泣き状態で心が折れていたようだった。
「さてと、貴女は何処のどなた?」
百由は追い打ちをかけるように聞いた。
______________第8話 [完]
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