アサルトリリィ Thousand Flower 作:汐風波沙
遅くなりました!
よろしくお願いします!
「……なんだ、また保健室か」
天井を見上げ、ここが保健室であること、自分が戦闘中に倒れたことを理解したが、自分が倒れた理由がわかっていないようだ。
「こんな所で寝てる暇なんてない、早くあのチャームを……」
「まだ動いちゃダメよ!」
美夢がベッドを出ようとしていると、保健室の先生がその動作を制止した。
「定盛先生、また私を無理やり休ませるんですね……」
「ヒメヒメ先生でしょ!まあ、貴方はすぐ無理をするので、ゆっくり休んで、1度回復してください!」
姫歌は、頬を膨らませながら言う。
「流石に30の大人がそんな事したら、恥ずかしいと思います」
「失礼な!まだこれでも27だから、あと3年は猶予があるわよ!」
「今年で28ですよね?何が3年猶予あるですって?」
「も〜!またそうやって姫歌を苛めて!姫歌だって、怒る時は怒るんだからね!」
顔を真っ赤にしながら、姫歌は美夢に言い放つ。
「でも、事実ですよね?」
「うぐっ……」
美夢の的確すぎる指摘により、姫歌は何も言い返すことが出来なくなった。
「まあ、冗談はこの辺にしておいて……」
「その歳でまだアイドルの振る舞いをされるのは、冗談でもキツイです」
「も〜!!!また私をバカにして……、ほら、貴女の大尊敬している百由様ですよ!」
そう言うと、カーテンを思い切り開く。
ベッドの前の机の後ろに座っていたのは、もちろん百由だった。
「やあやあやあやあ、2人とも仲が良さそうで何よりだよ!」
「「どこがですか!」」
「そういう所よ……」
百由は、少し引き気味に言った。
「じゃあ、少し美夢と2人で話をしたいから、姫歌さんは、少しだけ外に出ていてくれる?」
「は、はい。分かりました……」
姫歌は、保健室の外に出た。
「さてと、美夢ちゃん。私と少し話をしましょうか?」
「改まって、何でしょうか、百由様……」
「貴女、私に隠していることあるでしょ?」
「ッ!?」
美夢は、核心を突かれたのか、無言になった。
「いや、貴女のレアスキルについてはもう知っているのだけど、それよりも、
百由は、目を真っ直ぐ見て、美夢に迫る。
「ちょっ、近いっ……」
美夢は、後ろへたじろいだが、もう既に壁であった。
「ちょ、百由様?一度話し合いましょう?」
「何を言ってるの?私は
百由は、美夢をベッドに押し倒し服を脱がす。
「本当にスベスベな肌で、いい肉付きしてるわね……」
「ひゃぁっ!?」
美夢は、少し色っぽい声を出した。
「でも、マギの色は、濁っているわね。たくさんの色が混ざって、混沌のような色をしているわ……」
「え……」
美夢は、言葉を失った。
そしてそのまま両腕で百由の首を掴んだ。
「アンタに!アンタに何がわかるってんだ!」
百由は、美夢に首を掴まれながら、押し倒された。
その表情は、憎しみ、悲しみが混ざり、そこに怒りという負の感情が、目の奥にあった。
「何もかも失って、挙句の果てには、目の前で仲間を失う!そして呪いのようにまとわりつく!こんな力、好きで身につけたわけないでしょ!」
そう言った瞬間、
パチンッ!
という鈍い音と、
バタンッ!
という美夢がベッドから落ちる音がした。
「甘ったれるなよ、クソガキ」
その一言で、美夢が豆鉄砲を食らった鳩のようにキョトンとしていた。
「誰かの優しさに甘えるのは辞めなさい。何事も自分だけが苦しいなんて思うな!貴女は、リリィであり、アーセナルなのよ!誰かを守り、誰かを救うためのチャームを開発する。苦しくないわけが無いの!それを何も見えてないのに、苦しいと勘違いするとは、本当に子供じゃないの!」
美夢は、目を大きく見開いたまま、唖然としていた。
そして、一筋の雫が頬を落ちた。
「あれ、何でだろう……」
美夢は涙を拭くが、その度に何度も溢れかえっていた。
「うっ、ぐぅっ……」
止まらなくなった涙が、想いが、何もかもが溢れ出した。
「え、あ、ちょっと!?ごめんなさい、そんなに強く言っていたつもりは無かったんだけど……」
百由は、あわあわしながらそう言った。
「ずっと、ずっとそうだったんです!いつも同情されるか、蔑まれて、嫌われるかのどちらかでしか無かった!そのせいで、自分の中にも負の感情が溜まっていって、いつの間にか、そんなじぶんがきらいだった……、でも、百由様は、そんな私を叱ってくれた。私を、私の甘えてた部分をちゃんと叱ってくれた!」
美夢は、「ありがとう、ございます」と涙を流しながら言った。
「迷っていた旅路は、やっと道が見えたようね」
百由は、嬉しそうに言った。
それに同調するように、
「はい!」
と笑顔で答える美夢だった。
________________続く
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