盗賊団の討伐は、快勝に終わった。
桂花「逃げる者は逃げ道を無理に塞ぐな!後方から曹純様の部隊で追撃を掛ける、大人しく力尽きるのを待って良い!」
一刀「・・・ほんと、えげつない事言うな。」
桂花「正面からヘタに受け止めて、噛みつかれるよりはマシでしょう。」
一刀「そりゃそうだけどさ・・・」
その時、騒々しい兵達の波が本陣へと向かってきた。その声は興奮と歓声に包まれており、その中心に
純「姉上、ただいま戻りました!これは賊の指揮官の首です!奴らは砦に逃げていきました!」
純が端正な顔に人懐っこい笑みを浮かべながら戻ってきた。これだけなら女性が見たら黄色い声を上げるのだが、返り血と左手にぶら下げた敵の指揮官の首で台無しになった。
華琳「ご苦労様、純。相変わらず見事な働きだわ。」
純「はっ、ありがたきお言葉!けど、これも全て、俺の部下の働きのおかげです!」
華琳「そう。貴方らしいわね。」
純「へへっ。」
華琳「けど、ちょっと一刀の事考えなさい。」
純「えっ?」
そう言われた純は、一刀を見ると、一刀は青い顔をしながら口元を抑えてうずくまっていた。
純「わ、わりい一刀・・・。戦でつい気が昂ぶっちゃって・・・。」
それを見た純は、そう言って一刀に謝罪した。
一刀「い、いや・・・良いんだ・・・。・・・これも何とか慣れていくよ・・・。」
それに対し、一刀はそう言ったのだった。
すると、
秋蘭「純様。ご無事でしたか。」
秋蘭が本隊に来たのだった。
純「見事な働きだったぞ、秋蘭。」
秋蘭「はっ!!ありがたきお言葉!!」
一刀「あれ?春蘭は?」
すると、春蘭がいないことに気付いた一刀はそう言った。
桂花「どうせ追撃したいだろうから、季衣に夏侯惇様と追撃に行くよう指示しておいたわ。」
それに対し、桂花はそう言ったのだった。
一刀「・・・え、追撃は柳琳がするって」
桂花「誰も曹純様だけが追撃するとは言っていないでしょう?」
純「・・・俺も参加したかったなぁ。」
それを聞いた華琳は、
華琳「なら、あなたも行きなさい。」
と純に言った。
純「え、良いんですか!?」
華琳「ええ。まだ暴れ足りないでしょう?追撃して、好きに思いっ切り暴れなさい。」
それを言われた純は
純「はっ!では直ちに追撃して参ります!!」
満面の笑みを浮かべながら拱手し、
純「行くぞ!!黄鬚曹彰に付いて来い!!」
そう言いながら颯爽と馬に乗ってその場を後にしたのだった。
華琳「別に良いわよね、桂花。」
桂花「はい。曹彰様が加われば、討伐の時間も更に短縮出来るので。」
秋蘭「相変わらずだな、純様は・・・。」
栄華「そうですわね・・・。」
純の様子を見た秋蘭と栄華は、笑みを浮かべながらそう言った。
桂花の言葉を聞いた一刀は、
一刀(春蘭と季衣が追撃している状況で、純が更に襲いかかる。鬼だ、鬼がいるぞ。)
と思っていた。
桂花「・・・何か、私に対して失礼な事考えてたでしょ。」
一刀「別に。」
華琳「桂花も見事な作戦だったわ。負傷者も殆どいないようだし、上出来よ。」
華琳の褒め言葉を聞いた桂花は、
桂花「あ・・・ありがとうございます!曹操様!」
嬉しそうな笑みを浮かべながらそう言ったのだった。
華琳「後は、栄華。」
栄華「はい。事後処理に関しては、お任せ下さいませ。」
華琳「任せるわ。それと・・・一刀。」
一刀「え、俺?俺も何かした方が良い?」
秋蘭「・・・。」
桂花「・・・。」
華琳「・・・良く逃げなかったわね。感心したわ。」
一刀「え、そこって褒めてくれる所なんだ・・・。」
まさかその事で褒められると思わなかった一刀は、驚いてしまった。
秋蘭「少なくないのだぞ。初陣で使い物にならなくなる奴は。」
華琳「ええ。それに、天の国にはこういった戦はないのでしょう?」
一刀「まあね・・・。逃げたかったのは本音だし、さっき純が持って来た生首を見てたら・・・」
華琳「それは誰しも同じよ。少なくとも、初陣でその気持ちを御する事が出来ただけで大したものだわ。」
一刀「・・・ありがと。それじゃあ、純も同じだったのかなぁ・・・。」
秋蘭「純様は、初陣の時逃げたいという気持ちは湧かなかったと言っていたな。その頃から激しい気性を示しており、何度も戦功を挙げていた。」
華琳「ええ。あの子は、武人になるべく産まれてきたのかも知れないわね。」
華琳「けど、よくお父様にその気性を戒めるために学問を薦められていたけどね。」
一刀「・・・そう・・・なんだ。」
華琳「けど、純は純。一刀は一刀よ。気にしなくても良いわ。」
一刀「・・・ああ、分か・・・った・・・。」
すると、一刀が突然倒れてしまった。
栄華「ち、ちょっと、北郷さんっ!?」
秋蘭「・・・緊張の糸が切れたようですな。」
桂花「もういっそ、このまま捨てていっては如何ですか?」
華琳「栄華。一刀を後方に預けておいて頂戴。桂花と秋蘭は、本陣を前に移す指揮をなさい。このまま砦も落とすわ。」
秋蘭「はっ!」
桂花「承知致しました!」
栄華「えっ、お、お姉様!?私に任せると言われましても・・・私こんな汚らしい奴を、あの・・・っ!お待ちになってー!」
そして、砦は陥落したのであった。
その帰り道
一刀「・・・あれ?」
秋蘭「やっと気が付いたか。」
猛烈な背中の痛みに、一刀は目を覚ました。
一刀「・・・って、砦は!?」
春蘭「とっくに陥としたぞ。その間、貴様はずっと眠りこけていたがな。」
春蘭「それに比べて純様は相変わらず凄まじかったぞ。」
桂花「役立たずもここに極まれりね・・・。」
一刀(ちょっと・・・マジすか。)
一刀「・・・どれだけ寝てたの、俺。」
季衣「聞きたい?」
一刀「・・・聞きたくない。」
一刀(あの山影を見る限り、一日や二日ってレベルじゃないな、こりゃ。)
一刀「・・・それでさ、一つお願いがあるんだけど・・・」
桂花「あ、強引に話変えた!」
一刀「いや。目が覚めたんだし、この縄、解いてくれないのかな・・・って思ってな。」
一刀は、荷車の上にいるが、落ちないための配慮なのか、縄でぐるぐる巻きにされていたのだ。
華琳「どうせ馬に乗れる体力など戻っていないのでしょう?ついでだから、そのまま戻ってはどう?」
純「ははっ、それもそうですね。」
すると、
華侖「あ、一刀っち!目が覚めたっすか!」
柳琳「ご無事で良かったです・・・!」
華侖達が一刀の様子を見に来たのだった。
一刀「やめて!こんな俺の姿、見に来ないで!」
香風「お兄ちゃん・・・また・・・。」
華侖「え、またって何すか?香風。」
それを言われた香風は
香風「ええっと・・・」
目線を逸らしたので、
一刀「だからその話はやめてー!」
一刀はそう言って止めようとした。
一刀(っていうかこれ、実質公開処刑だよな・・・!)
そんなことを思っていると、
華琳「良く分かっているじゃない。」
と華琳に心を読まれたのだった。
一刀「・・・あれ?そういえば、栄華は?」
栄華「・・・いますわよ。」
その声に反応した栄華だったが、一刀とはかなり距離を取っていた。
純「本陣で倒れたお前を、栄華が後方に下げてくれたらしいぞ。お礼を言いな。」
一刀「え、そうなんだ。ありがと、栄華!」
栄華「・・・そのお陰で、お兄様以外の男が臭くて汚くて重くてどうしようもない生物だと、改めて理解出来ましたわ。うぅ。」
これを聞いた一刀は、また暫くまともに話してくれないと痛感したのだった。
一刀「・・・でも、皆無事で良かったよ。」
春蘭「ふんっ。あの程度で死ぬような軟弱者が、我が軍にいるはずもなかろう。」
桂花「死ぬような軟弱者はいないけど・・・ねぇ。」
一刀「まだ言うかこのネコミミ頭巾。」
桂花「ふん。お荷物扱いで荷車に積まれてる奴なんて、何を言われても怖くも何とも無いわよ。」
一刀「それは言わないで!!」
華琳「ふふっ。今回は一刀の負けね。」
純「ははっ。そうですね。」
秋蘭「ただ心残りなのは・・・華琳様が気に掛けておられた古書が見つからなかった事だな。」
春蘭「うむ。大変用心の書だな。」
華琳「・・・太平要術よ。」
純「・・・ったく。」
一刀「・・・。」
柳琳「・・・。」
桂花「・・・。」
春蘭「言ったよな!私、そう言ったよな!」
純「稟と風は、あの古書について聞いたことある?」
稟「ええ。噂程度で、危険な書物であると。」
風「風も、稟ちゃんと同じ意見ですね~。」
純「そっか・・・。つっても、俺も良く分かんねーけどな。」
一刀「じゃあ、あの三人の賊は?」
香風「そっちも、良く分かんない。」
華琳「無知な盗賊に焚き付けにでもされたか、落城の時に燃え落ちたのか・・・。まあ、代わりに桂花と許緒という得難い宝が手に入ったのだから、それで良しとしましょう。」
一刀「・・・そっか。季衣、華琳の所に残るんだ。」
春蘭「ああ。季衣には、今回の武功をもって華琳様の親衛隊を任せる事になった。」
季衣「それに僕の村も、しばらくは曹操様が治めてくれることになったんだ!」
季衣「税もずっと安くなるし、警備の兵や曹操様の信用してる役人も連れて来てくれるっていうし、それが一番嬉しいよ。」
季衣「だから今度は僕が、曹操様をお守りするんだー!」
一刀「え?ちょっと待って、それって・・・」
栄華「しばらくは今回の件の後始末も必要ですし、警護の名目も兼ねて沛国のあの方に申し出ておきましたの。」
一刀「陳珪さんか。・・・でもそれって、それこそ侵略になるんじゃないの?」
華琳「侵略などしたつもりはないわよ。あくまでも一時的な借りであって、返せと言われればすぐに返すと約束してあるもの。」
季衣「えー。僕、曹操様がずっと村を治めてくれるほうが嬉しいんですけど。」
一刀「・・・領地もだけど、遠征費用だって向こう持ちだろ?こっちの取り分が多過ぎじゃない?」
一刀(その見返りが盗賊団の討伐一つって、いくら沛国が困ってるっていっても高すぎる買い物な気がするんだけど。)
栄華「ええ。タダより高い物は無いと言いますし、いずれどれだけの取り立てが来るやら・・・。」
華琳「あれが怪しいのは折り込み済みよ。それにあの程度の小者も呑み込めないようでは、朝廷の魑魅魍魎と渡り合う事など到底出来ないでしょうね。」
一刀「・・・まあ、そうか。」
一刀(覇道を歩むと決めた以上・・・前に進むしかないんだよな、やっぱり。)
純「さて、後は桂花の事ですね・・・。」
華琳「そうね。」
そう言って、華琳と純は桂花を見た。
桂花「そ・・・曹彰様、ここでですか!?」
見られた桂花は表情を少し硬くしたのであった。
純「皆も揃っているし、ちょうど良いだろう。」
一刀「秋蘭。桂花の事って?」
秋蘭「北郷は知っているだろう。桂花のした約束の件だ。」
純「桂花、最初にした約束、覚えているな?」
桂花「・・・はい。」
純「城を目の前にして言うのもあれだけど、俺・・・スゲー腹減ってんだよ。分かるか?」
桂花「・・・はい。」
桂花「ですが曹彰様。言い訳を承知で言わせていただければ、それはこの季衣が・・・」
季衣「ほえ?」
一刀「え?って事は・・・」
秋蘭「半分は、北郷の予想通りだ。」
一刀「半分は・・・って?」
秋蘭「話せば長くなるのだがな・・・」
そう言って、秋蘭は一刀に説明した。
結論から言うと、桂花は純との賭に負けてしまった。糧食は昨晩で尽きてしまい、皆朝飯を食っていないのだ。
ただ、それは自分達の損害が少なすぎて、兵が予想以上に残った事も原因の一つなのであった。
一刀「・・・うん。流石に不可抗力なんじゃないかな。」
純「不可抗力や予測出来ない事態が起こるのが、戦場の常だ。それを言い訳にするのは、適切な予測が出来ねー、無能者のする事だと思うぞ?」
桂花「そ、それはそうですが・・・。」
一刀「・・・けど、糧食を人の十倍食べる味方がいきなり加わるってのは、いくらなんでも予想の斜め上だと思うぞ。」
季衣「え?えっと・・・僕、何か悪い事、した?」
柳琳「ううん、大丈夫よ。季衣さんは気にしなくて。」
一刀「なあ、純。今回の遠征が大成功したのは、桂花のお陰なんだし・・・あの約束は・・・」
純「どんな約束であれ、反故にする事は良くねーよ。少なくとも、無かった事にする事だけは出来ねーな。」
秋蘭「純様・・・。」
桂花「・・・分かりました。最後まで糧食の管理が出来なかったのは、私の不始末。首を刎ねるなり、思うままにして下さいませ。」
春蘭「ふむ・・・。」
桂花「ですが、せめて・・・最後は、曹操様か曹彰様ご自身の手で・・・!」
春蘭「・・・。」
純「とは言え、今回の遠征の功績を無視出来ねーのもまた事実だ。・・・良いだろう、減刑して、姉上に何かしてもらえ。」
桂花「曹彰様・・・っ!」
純「宜しいですか、姉上?」
華琳「良いわよ、それで。」
純「御意。それから、季衣と共に、俺を純と呼ぶことを許そう。今後はより一層、姉上に奮起して仕えるように。」
華琳「桂花、私もあなたに真名の華琳を呼ぶことを許すわ。」
それを聞いた桂花は
桂花「あ・・・ありがとうございます!か、華琳様っ!純様っ!」
満面の笑みを浮かべながらそう答えたのだった。
華琳「ふふっ。なら、桂花は城に戻ったら、私の部屋に来なさい。たっぷり・・・可愛がってあげる。」
桂花「え?そ、それは・・・ま、ままま、まさか・・・!」
栄華「お、お姉様っ!?あの、それはいくら何でも・・・」
華琳「あら。なら、栄華は純に可愛がって貰ったら?」
栄華「え・・・そ、それは・・・。でも、お兄様が望まれるなら・・・」
春蘭「・・・いいなぁ。」
一刀「え、な、何・・・?」
華侖「えーっ。何か楽しそうなんすけど。ね、柳琳。華琳姉ぇ達、何の話してるんすか?」
柳琳「そ、それは・・・その・・・あぅぅ。」
純「あはは・・・。」
そして、一同は無事陳留に帰還したのであった。
投稿できました。
いつも通り、内容を少しアレンジしましたので、読みづらかったらお許し下さい(土下座)
それでは、また。