先の戦で、桂花と季衣を手に入れてから暫くが経った。
純は、とある村が賊に襲われているとの報告があったため、稟、風と一緒に自身の子飼いである黄鬚隊五千を率いて出陣していた。
そんな中、陳留の城の純の部屋にて
??「ふっ・・・はぁっ・・・ふぅっ・・・。」
何者かの悩ましげな声が、純の部屋に響き渡った。部屋の主は、現在賊討伐に出陣しているため、当然ここに誰かいるはずも無い。
しかし、寝台の辺りの布団がもぞもぞと動いている。侵入者は純の布団を頭まで被り、その中でなにやら悶えているようだ。・・・声がやけに熱っぽいのは気のせいか。
栄華「うっ・・・ぷはぁっ。」
その時、布団の中で身動きを取っていたため酸素不足で息苦しくなったのか、ようやく侵入者が顔を布団の外に出した。
現れたのは、栄華だった。彼女は、布団から顔を出した状態で大きく息をついた。
栄華「はぁっ・・・はぁっ・・・良い、匂いですわ・・・。」
そうウットリと、熱に浮かされたように栄華は呟いた。ただ、ここは彼女が兄と慕う従兄の純の部屋であり、決して顔を赤くして寝台の布団の匂いに浸る場所では無い。
だが、栄華はそう言った事は全て無視といった様子で、布団に染みついた愛すべき従兄の匂いをゆっくりじっくり丁寧に吸っていく。
栄華「んはぁ・・・お兄、様ぁ・・・お兄様ぁ・・・。」
二回、お兄様と呟いた。
純が出陣したため、いつ帰るか分かるはずも無い。それは彼がこの曹操軍の全てを任せられとはいえ、自身だけが遠征に行く時もあるため、それは今に始まった事ではない。
だが、いつ帰るか分からないというのは辛い所業だ。そのため、彼女は純が遠征等で不在の時は、こっそり純の部屋に行き、こうして寂しさを紛らわせているのである。
栄華「あぁ・・・お兄様・・・。」
その後、数十分にわたって純の部屋は栄華のプライベートルームとなった。
栄華「また・・・やってしまいましたわ・・・。」
純の部屋を出て、栄華は城内を歩き回りながら、一人自己嫌悪に陥り呟いた。
栄華(い、いくらお兄様が恋しいとは言っても、アレは駄目ですわ!!けど・・・)
栄華「お兄様の事を考え始めてしまうと、私は自分を制御出来なくなってしまいますわ・・・。」
この行動について、以前華琳に相談した事があった。すると、
華琳『純の事を好きなのは知っていたけど、かなり重症ね、栄華。』
と一蹴された。それに対して、
栄華『お、お姉様。私も分かっていますわ!!けど、お兄様がいないのは、私にとっては胸を剣で突かれるが如く痛いものなのです!!私は、それが苦しく我慢出来ないのですわ!!』
と栄華は反論したのだが、華琳は呆れ顔で首を振られてしまったのだった。
栄華(それにしても、何でこんな気持ちになってしまうのか、分かりませんわ。)
栄華(きっかけも、良く分かりませんわ。ただ、物心ついた頃から、私はお姉様やお兄様、そして、華侖さん、柳琳、春蘭さん、秋蘭さんと一緒に遊んでいましたわ。)
栄華(お兄様は、いつも皆に優しく接してくれましたわ。優しいだけじゃ無く、非常に強いお方でもあった。もしかしたら、その時からお兄様を好いていたのかもしれませんわね・・・。)
栄華「この気持ち、嘘はつけませんわ。」
秋蘭「だからといって、純様の部屋で自分を慰めて良いとは限らぬぞ、栄華。」
栄華「っ!?」
その時、後ろから声が聞こえたので振り返ると、秋蘭がいた。
栄華「秋蘭さん・・・!」
そして、何かを察した栄華は、
栄華「あ、あの・・・秋蘭さん・・・。この事は・・・お姉様は知っておりますが、それ以外のお兄様達には、秘密にしてくれませんの?」
と秋蘭に言った。
秋蘭「先程の事か?それをやってるのが、お前だけではないぞ。」
栄華「えっ・・・!」
秋蘭「私もお前と同じ事しているし、後は稟だったかな・・・アイツも純様の事を好いておるぞ。」
栄華「そ、そんな・・・。」
それを聞いた栄華は、ガクンと項垂れた。
栄華(ま・・・まさか・・・。稟さんも私と同じ事をしていたなんて・・・。いつも冷静で知略に優れ、規律に厳しい稟さんが・・・!)
すると、
秋蘭「だが栄華、お前の気持ちは私も気付いていた。お前も、純様の事が好きだという事を。だが、大丈夫だ。純様は、お前を受け入れてくれるさ。」
と秋蘭はそう栄華に言った。
栄華「そう・・・ですの?」
秋蘭「ああ。だが、正妻の座は譲らぬぞ。」
と秋蘭は栄華に宣戦布告をした。
栄華「わ、私も、秋蘭さんには負けませんわ!!」
それに、栄華もそう言ったのだった。
秋蘭「そうか・・・では、互いに頑張ろうではないか。」
そう言って、秋蘭はその場を後にした。
ふと、栄華は空を見上げた。目の前には蒼天が広がっていた。
栄華(もしかしたら、お兄様もこの空を・・・。)
栄華「・・・お兄様。もし・・・その時が来たら・・・」
栄華(『貴方様の事が好きです。』と言わせて下さい・・・。)
そう空を見て心の中で最後の言葉を呟いたのだった。
同時刻
純「・・・。」
純は、馬上でふと空に目を向け、そのまま黙っていた。
稟「純様、どうかなさいましたか?」
純「いや・・・何でも無い。」
風「純様~、例の村が見えましたよ~。」
それを聞いた純は、
純「分かった。皆、気勢を上げろ!!罪無き民を襲い、私腹を肥やす賊共を叩き潰せ!!そしてその勝利を、陳留におられる姉上に届けるのだ!!」
黄鬚隊兵士「「「おおーっ!!」」」
純「行くぞ、黄鬚曹彰に付いて来い!!」
そう言い、いつも通り自ら先頭に立ち、兵と共に突撃した。
そして、純の圧倒的武勇と精強で鳴らした純率いる私兵黄鬚隊の活躍で、村を襲っていた賊を完膚なきまで叩き潰したのであった。
投稿できました。
今回は、栄華のオリジナル話を投稿しました。
栄華って、男に対して結構ああいうキツい対応をしてしまいますが、同じ男でも自身が兄と慕う人がいるとこうなるかなぁと思いながら投稿しました。
喋り方が若干変かもしれませんし、尚且つキャラが崩壊してるかもしれませんが、お許し下さい(土下座)
そ、それでは、また。