陳留城下裏通り
一刀と華琳が担当する街の中央部は、真ん中を走る大通りと、そこに並ぶ市場がメインであった。
一刀「なあ、華琳。」
華琳「何?」
一刀「大通りは見て回らなくて良いのか?」
華琳「大通りは後でいいのよ。大きな所の意見は、黙っていても集まるのだから。」
一刀「ああ、そういう事か・・・。」
華琳「それより一刀。・・・この辺りを見て、貴方はどう思う?」
一刀「どうって・・・」
そう言われ、一刀は周りを見渡した。
一刀「十分賑わってると思うけど。」
一刀(流石に大通りには負けるけど、小さい所は小さいなりに、賑わってるように見える。俺の感覚からすれば、地域密着の商店街って感じだな。)
華琳「そのくらい、見れば分かるわよ。もっと他に、気付くことは無いのかしら?」
一刀「気付くこと?」
そう言われ、再び見渡した。
一刀「・・・食べ物屋ばっかりだな、この辺。季衣が喜びそうだ。」
華琳「ええ。他には?」
一刀(あれ。適当なことを言ってみた割には、華琳の反応が渋くない。もっと嫌な顔されるかと思ったのに。)
一刀「料理屋も結構多い。」
華琳「でしょうね。食材がすぐ手に入るのだから。で?」
一刀「・・・で?」
華琳「他に気付くことは無い?何でも良いわ。」
そう言われ、今度は料理の屋台を眺めてみた。すると、おじさんがバカでかい包丁を使って、肉の塊を器用に切り分けているのが見えた。それを見て、
一刀「・・・包丁。」
と呟いた。
華琳「包丁?」
一刀「包丁を研ぐ店や、調理器具を売る店があったら、儲からないかな。」
華琳「・・・鍛冶屋の事?」
一刀「そう、それ。」
華琳「鍛冶屋は三つ向こうの通りに行かないと無いわ。」
一刀「え、だって、その辺のお客さんなんて、皆城の鍛冶屋さんと同じ格好を・・・」
華琳「向こうの通りには料理屋が無いの。」
一刀「・・・何で華琳、そんなに詳しいんだよ。」
華琳「そのくらいは街の地図を見れば分かるもの。」
一刀「じゃ、わざわざ視察しなくても・・・」
華琳「街の空気は地図や報告書だけでは実感出来ないでしょう。」
華琳「たまにはこうして自分の目で確かめておかないと、住民達の意にそぐわない指示を出してしまいかねないわ。」
一刀「・・・もう州牧様なのに?」
華琳「州牧になったからこそよ。」
そう言って、華琳は露店の前の人だかりで視線を止めた。
華琳「・・・ああいう光景も、執務室に座っているだけでは分からないもの。」
真桜「はい、寄ってらっしゃい見てらっしゃーい!」
そこには露天商らしき少女がおり、その狭いスペースには、竹カゴがずらりと並べられていた。そして
一刀「・・・何だこれ?」
華琳「カゴ屋のよう・・・だけれど?」
一刀「いや、カゴじゃなくて・・・こっち。」
そう言って一刀が指さしたのは、少女の脇に置いてあるなんとも言えない物体があった。
一刀「・・・あれ?」
その箱状の中には、木や金属で作られた歯車があった。
一刀(この時代に、歯車なんてあったっけ・・・?」
それを見て、一刀は少し疑問に思った。
華琳「あら。一刀は歯車が珍しい?見るのは初めてかしら?」
一刀「歯車くらい見たことあるけど・・・ああ、木製のは、流石に無いな。」
一刀「いや、それでもなくて、あれって何の装置?」
華琳「・・・さあ?」
すると、
真桜「おお、そこのお二方、なんともお目が高い!コイツはウチが発明した、全自動カゴ編み装置や!」
と彼女はそう答えたのだった。
一刀「全自動・・・」
華琳「カゴ編み装置・・・?」
一刀(っていうか、全自動・・・!?)
真桜「せや!この絡繰の底にこう、竹を細ぅ切った材料をぐるーっと一周突っ込んでやな・・・、そこの兄さん、こっちの取っ手を持って!」
一刀「お、おう・・・?」
一刀は、言われるがまま、機械の取っ手を手に取る。
真桜「でな。こうやって、ぐるぐるーっと。」
一刀「ぐるぐる・・・?」
言う通りにぐるぐる回していくと、セットされた竹の薄板が機械に吸い込まれていき、暫くすると、装置の上から編み上げられた竹カゴの側面がゆっくりとせり出してきたのだった。
真桜「ほら、こうやって、竹カゴの周りが簡単に編めるんよ!」
一刀「おお・・・すげー!」
一刀(思いっきり手動だけどなっ!)
華琳「・・・底と枠の部分はどうするの?」
真桜「あ、そこは手動です。」
華琳「・・・そう。まあ、便利と言えば、便利ね。」
一刀「全然全自動じゃないじゃないか・・・。」
真桜「う。兄さん、ツッコミ厳しいなぁ・・・。そこは雰囲気重視、っちゅうことでひとつ。」
一刀「あ、そう・・・。」
そう言い、一刀はまだハンドルを回していたら、
真桜「あ、ちょ!お兄さん、危ないっ!」
一刀「え・・・?」
彼女にそう言われたのだが既に遅く、
ドカンッ
一刀「どわあっ!?」
華琳「ちょっと大丈夫?一刀。」
一刀「ば・・・っ、爆発した・・・!爆発した・・・っ!」
カゴ編み装置が爆発したのだった。
真桜「あー。やっぱアカンかったかぁ・・・。」
一刀「え・・・?え・・・?」
真桜「まだそれ、試作品やねん。普通に作ると、竹のしなりにこう、強度が追い付かんでなぁ・・・こうやって、爆発してまうんよ。」
一刀「そんな物騒なもん、何で持って来たんだよ。・・・ついでに言えば、その中に爆発する要素無いよな!?」
と色々突っ込んだ一刀。
真桜「何でや!こういう時は爆発するもんやろ!」
華琳「ならここに並んでいるカゴは、この装置で作った物ではないの?」
真桜「ああ、村の皆の手作りや。」
華琳「・・・。」
一刀「・・・。」
真桜「なぁ、お兄さん。」
一刀「・・・何。」
真桜「折角の絡繰を壊したんやから、一個くらい買うて行ってぇな。」
一刀「・・・。」
色々言いたい事がある一刀だが、
華琳「・・・一つくらいなら、買っておあげなさい。一刀。」
と華琳に言われてしまい、買う事になったのだった。
その頃、春蘭と栄華達は
春蘭「この辺りは、服屋ばかりか・・・。」
栄華「ちょっと。今日は視察なのですから、お買い物はナシですわよ。無駄なお金は使わないようにして下さいまし。」
春蘭「そんな事は分かっている。服などどうでも良い。」
しかし、
栄華「あら。この服、可愛らしいですわね・・・。季衣さんや香風さんに着せたら似合いそう。」
栄華が服の誘惑に負けていた。
春蘭「言う端からなんだ、栄華。今日は視察に来たのだから、買い物はナシなのだろう。」
栄華「わ、分かっていますわよ。私物を買いに来るのなら、ちゃんと日を改めて参りますわ。」
春蘭(やれやれ。本当は華琳様と二人で視察をしたかったのだが、純様の命令だしな・・・。)
栄華(・・・うぅ。やっぱりさっきの服、気になりますわね。)
栄華(それに、本当はお兄様と行きたかったですわ・・・。そうすれば、とても充実した視察だったはずですわ・・・。)
栄華(でも、お兄様の命令ですし、仕方ないですわ・・・。)
すると、何か良い服を見つけた春蘭は、
春蘭「むぅ・・・、これは。」
春蘭「この華麗な装い・・・華琳様がお召しになったらさぞお似合いになるだろうな。」
そんなことを言ったのだった。
栄華「・・・ごほん。春蘭さん?」
春蘭「わ、分かっている!買いに来るのなら、日を改めてだろう。」
春蘭「だが、一着しかなさそうだし、取り置きだけでも・・・」
栄華「・・・お取り置きまでするなら、もう買うのと同じではありませんの。」
春蘭「・・・。」
栄華「・・・。」
春蘭「・・・なあ、栄華。」
栄華「・・・なんですの。」
春蘭「街の賑わいを確かめるなら、自身でも体感してみるのが一番だとは思わんか。」
栄華「あら。春蘭さんにしては、良い事をおっしゃいますのね。」
栄華「それに街にお金を回すのも、時には必要な事ですわ。」
春蘭「・・・なんだ、金は使わないのが一番ではなかったのか。」
栄華「世の中には、使ってはならないお金と使うべきお金がありますの。使うべきお金を使うのは、世間にお金を回すための健全な行いですのよ。」
春蘭「お前の言っていることはよく分からんが、私はひとまずこの店を視察してみようと思う。」
栄華「視察ですのよ。あくまでも、これは視察ですからね・・・。」
そう言って、二人は服屋に入った。
店員A「いらっしゃいませー!」
春蘭「おお、これはなかなか・・・。」
栄華「これも可愛らしいですわ・・・。」
店員A「あのぅ、お客様。失礼ですがこの辺りは、お客様よりも少々小さめの・・・。お客様に合うものでしたら、あちらの棚に。」
春蘭「私の物など買ってどうするのだ。」
店員A「え、お客様・・・?」
栄華「申し訳ありません。私達、知り合いの服を買いに来ただけですので・・・。」
店員A「そうでしたか。でしたら、何かありましたらお声掛けくださいませ。他の大きさもご用意出来る物がありますので。」
栄華「ええ。その時はお願い致しますわ。」
春蘭「ほほぅ・・・これも悪くない。ああ、あれも華琳様に・・・」
すると、
??「じゃあ、これは?」
1人の少女が春蘭に声を掛けたのであった。
春蘭「おおっ。これは素晴らしい!」
沙和「やっぱりなの!それだったら、こっちも合うと思うのー。」
春蘭「・・・そうか?それはイマイチだろう。むしろ、これを内側に合わせたほうが・・・」
沙和「おおーっ。お姉さん、なかなかやるのー。」
春蘭「お主もな・・・って、誰だ貴様っ!」
沙和「うーん。さっきから、服を見る目がすごく熱かったから・・・。こういう服が好きなら、これも気に入るんじゃないかなーって思ったの。」
栄華「あら。そちらは、今年の流行りですわね。」
沙和「そっちのお姉さんも詳しそうなの!なかなかやるの・・・。」
栄華「ふふっ。まずは基本を抑えてこそ。その辺りは外しませんことよ。」
沙和「それにそっちのお姉さんは、自分のこだわりがちゃんとあるみたいなの・・・。そういうのも、とってもステキなの!」
春蘭「ふっ。貴様、この私とやり合う気か?華琳様のための私は、自分で言うのもなんだが・・・かなり凄いぞ?」
沙和「んー。このお店、可愛い服がたくさんあるし・・・わかったの!その勝負、受けて立つの!」
栄華「面白くなってきましたわね・・・。なら、私も負けませんわよ!」
そして、勝負が始まったのであった。春蘭と栄華は肝心の視察を忘れて・・・。
そして、
春蘭「・・・うむ、久しぶりに良い戦いであった。血がたぎったぞ!」
沙和「私も楽しかったの。その買った服も、きっとその子達に似合うと思うのー。」
栄華「ふふっ。あなたの見立ても、なかなかお見事でしたわ。」
沙和「お姉さんとも、またいい勝負が出来る気がするの・・・。」
春蘭「しかし、少々服を買いすぎたな。これでは持って帰るまでに落としてしまいそうだ・・・。」
すると、
沙和「あー。それなら、この竹カゴを使うといいの。」
と言った。
春蘭「おお、それは助かる!感謝するぞ!」
沙和「あ、でもそれ、売り物なの・・・。」
春蘭「なんだ、そうなのか。」
沙和「あと今思い出したけど、今日中にこのカゴ、全部売らないといけないの・・・。」
春蘭「ふっ。それならそうと早く言え。今日の勝負の礼だ。そのようなカゴ、私が全て引き取ってやろうではないか!」
しかし、
栄華「ちょっとお待ちなさい、春蘭さん!それとこれとは別問題ですわよ、必要な分だけ買えば十分でしょう!」
栄華は、買いすぎであると反対したのであった。
春蘭「好敵手には相応の敬意を払わねばなるまい。任せろ!」
沙和「おおっ!お姉さん、太っ腹なのー!」
春蘭「はっはっは。誰がお腹がたゆんたゆんで子供が乗ったらフカフカだとー?」
沙和「誰もそんなこと言ってないのー。」
春蘭「まあ良い。ほれ、これで・・・」
そう言って、春蘭は金を出したのだが、
沙和「・・・。」
春蘭「・・・。」
栄華「・・・。」
服を買いすぎて、もう殆ど残っていなかった。
沙和「・・・それはさすがに、一個しか売れないの。」
春蘭「え、栄華・・・!」
栄華に助けを求めたが、
栄華「お金なら貸しませんわよ。それは、使う必要のないお金ですもの。」
春・沙「「そ、そんなぁ・・・。」」
はっきりと断られてしまったのであった。
一方、純と秋蘭、そして華侖達は
秋蘭「・・・。」
純「・・・。」
凪「・・・。」
華侖「・・・。」
秋蘭「・・・。」
純「・・・。」
凪「・・・。」
華侖「・・・ふぁあ。」
秋蘭「・・・純様。良いものですね、このカゴは。」
純「ああ、そうだな。」
凪「・・・どれも入魂の逸品です。」
秋蘭「・・・そうか。」
純「・・・へえ。」
凪「・・・はい。」
秋蘭「・・・。」
純「・・・。」
凪「・・・。」
そして、純と秋蘭はまたカゴを身ながら、じっくり考えていた。一方華侖は、
華侖「・・・あ。こっちはお肉売ってるっす。くださいなー。」
純と秋蘭と凪のカゴを巡っての静かなる戦いに飽き、遊んでしまった。
秋蘭「・・・。」
純「・・・。」
凪「・・・。」
華侖「・・・むぐむぐ。お肉おいしいっす!もう一本欲しいっす!」
男「姉ちゃん、このカゴひとつおくれや。」
凪「・・・まいど。」
秋蘭「・・・。」
純「・・・。」
凪「・・・。」
華侖「あ!こっちは何すか・・・?わ、ぴゅーって吹いたら変な音が出るっす。面白いっすー!」
秋蘭「・・・。」
純「・・・。」
凪「・・・。」
華侖「よし!これを季衣と香風のお土産にするっす。二人とも、ぜったい喜んでくれるっす・・・!」
そして、
秋蘭「・・・よし。」
純「・・・よし。」
凪「・・・っ!」
純・秋「「これを一つ、もらおうか。」」
凪「・・・はっ。」
最終的に、秋蘭と純が一つずつカゴを買うという事に決まった。
突き当たりの門
華琳「・・・で?」
春蘭「・・・。」
秋蘭「・・・。」
純「・・・。」
一刀「・・・。」
華琳「どうして皆、揃いも揃って竹カゴを抱えているのかしら?」
純「実は今朝、部屋のカゴの底が抜けているのに気付きまして・・・。」
秋蘭「私も同じくです。」
華琳「・・・なら、仕方ないわね。どうせあなた達の事だから、気になって仕方なかったのでしょう?」
純「直そうとは思ったのですが、流石に無理だと思ったので・・・。」
秋蘭「私もです。」
華侖「あたしは季衣と香風にお土産を買ってきたっすよ!」
華琳「そう、喜んでくれると良いわね。・・・で、春蘭と栄華は?何か山ほど入れているようだけれど・・・。」
春蘭「こ、これも・・・季衣の土産にございます!」
栄華「え、ええ・・・。それと、香風さんにも。」
華琳「何?服?」
春蘭「はっ!左様でございます!」
華琳「・・・そう。土産も良いけれど、ほどほどになさいね。」
栄華「ええ。そうしますわ。」
純「で、何で一刀もそんなにカゴを背負ってんだよ?」
一刀「・・・やむにやまれぬ事情があってだな。」
純「・・・そうか。ならしゃーねーな。」
華琳「それで、視察はちゃんと済ませたのでしょうね。カゴなり土産なりを選ぶのに時間をかけ過ぎたとは言わせないわよ。」
華侖「もちろんっす!」
栄華「お、お任せくださいまし・・・。」
純「栄華、声が震えてるぞ。」
栄華「いえ、何でもありませんわ。」
華琳「ならいいわ。帰ったら今回の視察の件、報告書にまとめて提出するように。・・・一刀もね。」
一刀「え?俺も?」
華琳「こういう資料は質もだけれど、まずは色々な視点からの報告が大切なのよ。・・・分かったわね?」
一刀「・・・了解。」
そして、城に帰ろうとしたその時、
??「そこのお若いの・・・。」
純「ん?」
華琳「・・・誰?」
謎の声の主にかけられた。
??「そこの、お主・・・。」
栄華「何ですの?占い師?」
春蘭「華琳様は占いなどお信じにならん。慎め!」
華琳「・・・二人とも、控えなさい。」
春蘭「は?・・・はっ。」
そして、占い師は華琳を見つめて、その結果を述べた。
占い師「強い相が見えるの・・・。稀にすら見たことの無い、強い強い相じゃ。」
華琳「あら、一体何が見えると?言ってごらんなさい。」
占い師「力のある相じゃ。兵を従え、知を尊び・・・。お主が持つは、この国の器を満たし、繁らせ栄えさせる事の出来る強い相。この国にとって、稀代の名臣となる相じゃ・・・。」
春蘭「ほほう。良く分かっているではないか。」
占い師「・・・国にその器があれば・・・じゃがの。」
栄華「・・・どういうことですの?」
占い師「お主の性、今のひび割れた国の器では収まりきらぬ。」
占い師「その野心、器の内に留まるを知らず・・・溢れた野心は、国を侵し、野を侵し・・・いずれ、遙か地の果てまで名を轟かせて、類い稀なる奸雄となるであろう。」
と占い師はそう言った。
栄華「あなた!それ以上お姉様を侮辱するならば、容赦は致しませんわよ!」
それを聞いた栄華は鋭い目つきで怒った。
華琳「栄華!」
栄華「し、しかしお姉様!」
華琳「そう。乱世においては、奸雄となると・・・?」
占い師「左様。それから、そこのお主・・・。」
純「俺か?」
すると、今度は純を見て
占い師「お主は、そこの娘以上に危うい。その器は、あらゆる理を全て破壊し、敵味方問わず多くの者の命を奪い、恐れられ、その名は遙か天の果てまで轟かせ、類い稀なる梟雄となるであろう。」
そう言った。
純「!・・・そうか。」
その際、純は少し驚いた表情をし、そう呟いた。その時、
秋蘭「貴様!純様を愚弄する気か!」
栄華「お姉様に飽き足らず、お兄様も侮辱するならば、許しておけませんわよ!」
一刀「!!」
秋蘭と栄華が烈火の如く怒り、一刀はその剣幕に驚いてしまった。
純「秋蘭!栄華!」
秋蘭「・・・し、しかし純様!」
栄華「この方は、お姉様だけでなく、お兄様も侮辱し傷つけたのですよ!」
純「いいから下がれ。」
そう言って、純は二人を下がらせた。
純「そうか。乱世において、姉上は奸雄、俺は梟雄になるのか・・・?」
占い師「左様。それも、千年、万年・・・人の世が続く限り、名を残すやもしれぬほどのな。」
純「・・・そうか。」
華琳「・・・ふふっ。千年、万年と・・・ね。」
華琳「気に入ったわ。栄華、この占い師に謝礼を。」
栄華「は・・・?」
純「聞こえなかったのか?礼だよ。」
栄華「ですがお姉様、お兄様。このような胡乱な輩に出すお金など・・・。」
純「・・・一刀。この占い師に、幾ばくかの礼を。」
一刀「お、おう・・・。」
そう言い、一刀は幾らかの金を占い師の脇に置いてある茶碗に入れた。その際、栄華と秋蘭は華琳と純、特に純の事を悪く言われたのが気に入らなかったのか、静かに睨みつけたままだった。
純「乱世の梟雄大いに結構だ。それが例え悪名だろうが何だろうが、人の世が続く限り人々の記憶に刻まれるのならばな。」
華琳「ええ。私も大いに結構。人の世が続く限り名を残すなら文句は無いわ。」
そう言い残し、その場を後にしたのだった。
その帰り道
華琳「・・・それにしても春蘭。よく我慢したわね、偉かったわ。」
春蘭「・・・はぁ。」
純(こいつ、あの占い師の言った意味、分かってねーな。)
そう思っていると、
華侖「ねえねえ純兄、一刀っちー。あの占い師の人、結局なんて言ってたんすか?らんせの・・・?かんゆー?と、きょーゆー?」
一刀「ああ。乱世の奸雄っていうのは、ええっと・・・」
純「奸知に長けた英雄という意味だ。」
華侖「かんち・・・。」
純(こいつもかよ・・・。)
栄華「奸知というのは、ずる賢くて、狡猾という意味ですわ。」
華侖「おー!じゃあ、きょーゆーは?」
秋蘭「残忍かつ強く荒々しい人という意味だ。」
栄華「ええ、そうですわ。あの占い師、お兄様にあのような酷い事を・・・!」
華侖の疑問に、秋蘭は怒りを抑えた感じでそう言い、栄華は今にもあの占い師を殺そうかという感じだった。
華侖「おー!そーなんすねー!」
一刀「要するに、奸雄は世が乱れれば、ずる賢い手段でのし上がるヒドい奴で、梟雄は強いだけでなく、残酷なやり方で上へのし上がる悪人って意味だ。」
その時、
春蘭「何だとぉっ!貴様、言うに事欠いて華琳様と純様に何という事をっ!」
一刀「ええ!?何でそこで春蘭がキレるんだよ!って、そこで掴みかかるな!首が絞まる、閉まるっ!」
突然春蘭がキレて、一刀の首を絞めたのだった。
純(やっぱコイツ、分かってなかった・・・。)
秋蘭「・・・姉者。あの占い師の言葉、分かっていなかったな。」
栄華「ああ・・・そういうことですの。」
春蘭「あのようなもって回った物言いをされて分かるものか!おのれ、人が理解出来んからといって華琳様と純様に何という侮辱を!」
春蘭「華琳様、純様、すぐに引き返しましょう!あのイカサマ占い師め!北郷の前に木っ端微塵に叩き斬って、城の外堀に放り捨ててくれる!」
華琳「・・・だから、いいと言っているでしょう、春蘭。とりあえず一刀を離しなさい。」
秋蘭「そうだぞ。落ち着け、姉者。占い師より先に北郷が死んでしまう。」
春蘭「これが落ち着いていられるか!くそぅ!」
一刀「だから、首!首ーっ!」
一刀(や、もうやばいっ!頭が、ぼうっとして・・・!)
純「春蘭、いいから落ち着け。二度は言わんぞ。」
春蘭「は・・・はい。」
純の一言で春蘭はやっと落ち着き、一刀は何とか落ちずに済んだ。
純「・・・。」
秋蘭「純様?」
栄華「お兄様?」
純「ん?どうした、秋蘭?栄華?」
秋蘭「いえ、何でもありません。」
栄華「私も、何でもありませんわ。」
純「そうか・・・。」
秋蘭「・・・。」
栄華「・・・。」
その時、秋蘭と栄華の目には、純の感情が僅かに乱れていただけではなく、深く傷ついた表情をしていたのを一瞬だったが見逃さなかったのだった。
一方季衣と香風は、例の盗賊三人組を追っていたが、途中その三人組が例の旅芸人に書物を渡したのだが、これが後に大陸中を騒がす事になるのは、この時誰も知る由は無かったのである。
投稿できました。
今回は、結構長くなってしまいました。
読みにくかったら、大変申し訳ございません。
こんなに投稿したの久し振りだ・・・。メッチャ疲れた・・・。
そ、それでは、また。