恋姫無双〜黄鬚伝〜   作:ホークス馬鹿

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20話です。


20話

謁見の間

 

 

 

春蘭「・・・というわけです。」

 

華琳「そう・・・やはり、黄色い布が。」

 

その日の軍議は、暴徒の鎮圧から帰ってきた春蘭の報告で始まった。

 

純「てことは、秋蘭の方もか?」

 

秋蘭「はい。こちらの暴徒達も同じ布を携えておりました。」

 

純「そっか・・・。そういや、俺が前に鎮圧した奴らも、黄色い布を巻いていたな。」

 

稟「そうでしたね。」

 

風「・・・。」

 

華琳「桂花。そちらはどうだった?」

 

桂花「は。面識のある諸侯に連絡を取ってみましたが・・・どこも我が兗州と同じく、黄色い布を身に付けた暴徒の対応に手を焼いているようです。」

 

華琳「具体的には?」

 

桂花「ここと・・・ここ、それからこちらも。」

 

そう言って、桂花は広げた地図の上に丸石を置いていく。

 

桂花「それと、一団の首魁の名前は張角というらしいのですが・・・正体は全くの不明だそうです。」

 

栄華「正体が分かりませんの?」

 

桂花「捕らえた賊を尋問しても、誰一人として話さなかったとか。」

 

純「稟達も同様か?」

 

稟「はい。私も捕らえた賊を尋問したのですが、桂花と同様でした。」

 

風「風もですね~。」

 

純「そっか・・・。」

 

春蘭「・・・ふむ。剣を振り上げれば逃げ回るクセに、そこだけは口を割らんのか。さして忠義が厚いとも思えんが。」

 

その時、

 

一刀「黄巾党・・・。」

 

一刀が話を聞いていて、その言葉を言った。

 

秋蘭「知っているのか、北郷?」

 

一刀「名前だけはな。一応・・・」

 

それを聞いた華琳は

 

華琳「なら、それ以上は言わなくて良いわ。」

 

と言った。

 

華侖「えーっ。何でっすか。一刀っち、色々知ってるんじゃないんすか?」

 

一刀「ホントに、黄巾党に関しては名前しか知らないんだよ。・・・そんな正確でもない知識を出しても、桂花達を混乱させるだけだろ?華琳の言う通りだよ。」

 

桂花「ええ。裏付けの無い情報など、寧ろ害悪でしかないわ。」

 

稟「私も桂花の意見に同感です。」

 

風「風もですね~。」

 

華琳「そうね。そんなあやふやなもの、占い師の予言と変わらないわ。」

 

一刀「こないだは占い師の言葉に笑ってたじゃないか。」

 

華琳「あれは私と純の問題だもの。外れたところで、笑い話にしかならない。・・・けれど、国の問題を占いで解決させるようになってはお終いよ。」

 

一刀「成程・・・了解。」

 

華侖「うーっ。一刀っちだけ分かってて、ずるいっすー。」

 

一刀「俺だって分かってない事ばっかりだよ。そもそも俺の知ってる歴史は、華琳も春蘭も華侖もみんな男だしな・・・。」

 

すると、

 

春蘭「何だそれは。私が男だと・・・?」

 

春蘭「私が男だと・・・男だと・・・男なら・・・はっ!男なら、華琳様と・・・!」

 

春蘭がそう言って何かを想像していた。

 

一刀「言っとくけど、春蘭が男の世界は華琳も男だからな?」

 

春蘭「・・・何だそれは!それでは意味が無いではないか!!ああ、私の夢が一瞬で・・・。」

 

しかし、現実を聞いた春蘭は涙を流した。

 

一刀「何を期待してたんだよ・・・。」

 

春蘭「そんなもの決まっているだろう!」

 

一刀「言わないで良いよ。分かってるから。」

 

すると、

 

栄華「ち、ちょっと・・・北郷さん。一つ宜しくて?」

 

栄華が一刀に尋ねた。

 

一刀「何?どうかした?」

 

栄華「あの・・・もしかして、その・・・。あなたの知っている世界とやらでは、まさか、まさか・・・」

 

一刀「・・・ああ。それは・・・」

 

一刀(そうか。男嫌いの栄華だと、別の世界とはいえ自分がどうなっているかは大問題か・・・。)

 

栄華「それは・・・」

 

一刀「・・・想像に任せるよ。」

 

栄華「ちょっと!!それでは生殺しですわ!」

 

一刀「だって栄華、本当の事言ったら絶対大変な事になるだろ。」

 

栄華「・・・その時点で答えは出ているのも同じではありませんの。」

 

柳琳「ほら、栄華ちゃん。大丈夫だから、落ち着いて・・・」

 

一刀「別に栄華本人じゃ無いから。別の世界の、別の歴史の人だから。」

 

栄華「それでもその世界の私なのでしょう!だったら、お兄様は!!」

 

純「そう言えば、俺も気になるな。一刀、お前の知ってる歴史では、俺はどうなんだ?」

 

その質問に、

 

一刀「ああ。純も男だよ。」

 

と一刀は言った。すると、

 

栄華「・・・ああ、何だかめまいが・・・。私の夢が・・・。」

 

とめまいを起こしていた。

 

純「そっか・・・。」

 

一刀「けど、純は華琳の弟ではなく、華琳の息子だったな。」

 

純「そ、そうなのか・・・。」

 

華琳「あら。そうなのね。なら純、私の事、『母上』って呼んでも良いのよ?」

 

純「姉上、それは遠慮します。」

 

華琳「あら残念。まあともかく、不要な知識は、人を不幸にするでしょう?」

 

華侖「あー。何か分かった気がするっす。」

 

華琳「まあ、敵を呼ぶにも名前が必要だわ。黃巾党という名だけはもらっておきましょう。それで皆、他に新しい情報はないの?」

 

秋蘭「はい。これ以上は何も・・・。」

 

春蘭「こちらもありません。」

 

華琳「ならば、まずは情報収集ね。その張角という輩の正体も確かめなければ・・・」

 

その時、一人の兵士が慌てて入ってきた。

 

兵士A「会議中、失礼致します!」

 

純「どうした!」

 

兵士A「はっ!南西の村で、新たな暴徒が発生したと報告がありました!また黄色い布です!」

 

言い終わったとき、皆の顔が引き締まり、真剣な表情になった。

 

華琳「休む暇もないわね。・・・さて、情報源が早速現れたわけだけれど、純、今度は誰を行かせる?」

 

純「そうですね・・・」

 

すると、

 

季衣「はいっ!僕が行きます!」

 

季衣が真っ先に手を上げた。

 

純「季衣か・・・。」

 

しかし、純はすぐに決断しなかった。

 

一刀(戦に関しては即断即決の純なのに、珍しいな。華琳も特に干渉しないみたいだし・・・。)

 

春蘭「・・・季衣。お前は最近、働き過ぎだぞ。ここしばらく、ろくに休んでおらんだろう。」

 

季衣「そんなの平気です!それに、また知らない村が襲われてるんですよ?せっかく僕、そんな困ってる人達を助けられるようになったのに・・・。」

 

香風「なら、シャンが行く。」

 

華侖「だったらあたしも行くっすー!」

 

純「そうだな。今回の出撃、季衣は外そう。確かに最近の季衣の出撃回数は多すぎる。」

 

季衣「どうしてですか、春蘭様っ!僕、全然疲れてなんかないのに・・・!」

 

純「季衣。お前のその心は貴いものだ。けど、自らの力を過信しては、いずれ足元を掬われるぞ。」

 

季衣「そんなこと・・・ないです。」

 

華琳「季衣。純の命令に従いなさい。」

 

季衣「・・・でも、みんな困ってるのに・・・。」

 

華琳「そうね。けれど、目の前の百の民を救うために貴女が命を投げ打っては、その先救えるはずの何万という民を見殺しにする事にも繋がるの。・・・分かるかしら?」

 

季衣「だったらその百の民は見殺しにするんですか!」

 

すると、季衣の発言に、

 

華・純「「するわけないでしょう!/ねーだろーが!」」

 

季衣「・・・っ!」

 

華琳と純が覇気のこもった力強い一声を出した。その一声に季衣だけでなく、その場にいる皆が身を縮ませる程だった。

 

春蘭「季衣。お前が休んでいる時は、私達がその代わりにその百の民を救ってやる。だから、今は休め。」

 

季衣「ううー・・・。」

 

華琳「今日の百人も助けるし、明日の万人も助けてみせるわ。その為に必要と判断すれば、無理でも何でも遠慮なく使ってあげる。それは純も同じ事よ。・・・けれど今はまだ、その時ではないの。」

 

純「それに我が軍がいかに人手不足と言っても、お前一人に全てを背負わせる程ではねーよ。そうだろ?」

 

すると、

 

華侖「おいっす!」

 

香風「・・・うん。任せて。」

 

華侖と香風が返事をした。

 

季衣「・・・。」

 

華琳「純。編成を決めなさい。」

 

純「御意。・・・では秋蘭、柳琳。今回の件、お前達が行ってくれ。」

 

香風「えー。」

 

華侖「なんでっすかー!今、あたしと香風が行く気まんまんだったっすよー!?」

 

しかし、華侖と香風は不満を漏らしたのだった。

 

桂花「今回の出動は、戦闘よりも情報収集が大切になってくると華琳様もおっしゃってたでしょ。・・・二人とも、気が付いたら突撃してるじゃない?」

 

そう言って、桂花は純の選定のフォローをした。

 

香風「・・・そんなことない。命令なら、ちゃんとする。」

 

華侖「そ、そうっすー!」

 

一刀「目が泳いでるぞ、二人とも。」

 

純「これで決まりだ。秋蘭、柳琳。くれぐれも情報収集は入念にな。」

 

秋蘭「は。ではすぐに兵を集め、出立致します。」

 

季衣「秋蘭様!柳琳様!」

 

柳琳「大丈夫よ。私達が、季衣さんの分までしっかり村の人を守ってくるから。」

 

季衣「はい・・・。よろしくお願いしますっ!」

 

秋蘭「うむ。私達にしかと任せておけ。」

 

そして、秋蘭と柳琳は出立をしたのだった。

 

 

 

 

城壁の見張り台

 

 

 

 

秋蘭達の出発を見送ろうと、城壁の見張り台に行った一刀だったが、既に先客がいた。

 

一刀「ここ、良いか?」

 

季衣「あ、兄ちゃん・・・。」

 

一刀「何?落ち込んでるなんて、季衣らしくないぞ。」

 

季衣「僕だって、落ち込む時くらいあるよぅ・・・。」

 

そう言い、季衣は見張り台の縁に腰掛けて、足をブラブラさせた。

 

一刀「さっきの事か?」

 

季衣「うん・・・。僕、全然疲れてなんかないのに・・・。そりゃ、ご飯はいつもの倍は食べてるけどさ。」

 

一刀「胃もたれとかしないのか?」

 

季衣「・・・にゃ?」

 

一刀「いや、分かんないなら、良い。」

 

季衣「変な兄ちゃん。」

 

一刀「でも、華琳達が言うように、今が無理をする時じゃないのはホントだぞ?」

 

季衣「もぅ。兄ちゃんまでそんな事言うー!」

 

一刀「華琳も純も春蘭も、みんな季衣の事が心配なんだよ。勿論、俺もな。」

 

季衣「うぅ・・・そりゃ、分かってるけどー・・・」

 

一刀「今は、黄巾党と張角の正体を突き止める為の、情報を集める時だ。季衣に全力で働いて貰う為には、そいつらの正体が分かった後さ。」

 

季衣「うん・・・。」

 

一刀「だから今は、休める時はちゃんと休んで、こんな騒動を起こした奴をやっつける為の力を、溜めといてもらわないとな。」

 

季衣「・・・分かったよ。」

 

そう答えた季衣は、ひょいと城壁の上に飛び乗った。

 

一刀「おい。危ないぞ、季衣。」

 

季衣「大丈夫だよー。それに今、何て言うか、力が湧いてきて、我慢出来ない感じなんだ!」

 

そう言い、季衣は城壁の上で歌を歌った。

 

一刀「・・・へぇ。」

 

その歌声は、決して上手くは無かったけど、聞いてるだけで元気が出てくるような歌声だった。

その際、柳琳率いる虎豹騎が、一刀達を見上げて手を振っていた。

 

一刀「良い歌だな。何て言う歌?」

 

季衣「分かんない。ちょっと前に街で歌ってた旅芸人さんの歌なんだけどね。確か、張角さんとか・・・」

 

その時、それを聞いた一刀は

 

一刀「・・・は?張角って・・・」

 

季衣「兄ちゃん!」

 

一刀「ああ、季衣は華琳と純に言ってきて!俺は秋蘭達に伝えてくる!」

 

そう言って、秋蘭達に伝えに行ったのだった。

 

 

 

 

謁見の間

 

 

 

秋蘭達が討伐から戻った数日後、その夜遅くに主要なメンバーが集められて報告会が開かれていた。

 

秋蘭「北郷に言われた件を確かめてきましたが・・・今日の村にも、三人組の女の旅芸人が立ち寄っておりました。」

 

季衣「はい。僕が見た旅芸人さんも、女の人の三人組でした。姉妹だって言ってました。」

 

柳琳「村の方達が聞いた歌も季衣さんが城壁で歌っていた歌と同じでしたから、同じ方とみて間違いないかと。」

 

桂花「季衣の報告を受けて、稟と風と一緒に黄巾の蜂起があった陳留周辺のいくつかの村にも調査の兵を向かわせましたが・・・大半の村で、同様の目撃例がありました。勿論、歌も。」

 

華琳「そう。その旅芸人の張角という娘が、黄巾党の首魁の張角という事で間違いなさそうね。」

 

春蘭「これで、張角とやらの正体は判明か・・・。」

 

純「しかし、奴らの目的が知りたいですね。」

 

華琳「ええ、そうね。」

 

一刀「目的、ねぇ・・・。旅芸人の歌手っていうなら、本人はただ楽しく歌っただけで、周りが暴走してるだけ、とかだったりして。」

 

春蘭「そんな下らん理由で暴れているのか!?」

 

桂花「・・・胡散臭いにも程があるわよ。」

 

一刀「分かんないよ。ただの俺の予想だよ。・・・予想は、占い師の予言とは違うよな?」

 

華琳「さして変わりはないけれど、妄言よりはマシね。」

 

純「仮にそうだったら、余計タチがわりーぞ。大陸制覇の野望でも持っていた方が、俺が遠慮無く叩き潰してやれるんだけどな。」

 

一刀「叩き潰す事前提かよ・・・。」

 

純「その手の象徴の潰し方を間違えると、後で奉られてしまうんだよ。そうなっては、それこそ手が付けらんねーんだよ。」

 

一刀「ああ・・・何とか様の遺志を継ぐぞ、ってやつか。」

 

一刀(確かにそういうのを持ち出されると厄介だな・・・。)

 

すると、

 

春蘭「何だそれは。そんなものが力になるとは思えんが?」

 

と春蘭はそう言った。

 

一刀「そうでもないよ。もしもの話だけどさ・・・春蘭。」

 

春蘭「おう。またもしもか。貴様はもしもばかりだな。」

 

一刀「もしもじゃないと春蘭が分かんないからだよ。・・・で、もしも、華琳が志半ばに倒れたとするだろ?」

 

春蘭「何だと!?何をいきなり不吉な話を・・・」

 

一刀「だから、もしもの話だってば。・・・それで華琳が『純を支えて覇業に貢献しなさい』って春蘭に言い残したらどうする?」

 

春蘭「そんなお言葉を託されたら、純様を支えないわけにはいくまい。我が命燃え尽きるまで、華琳様のお言葉に従うまでだ!」

 

一刀「・・・ほら。熱狂的。」

 

栄華「・・・ですわね。」

 

春蘭「だが、当たり前ではないか!華琳様が遺されたお言葉だぞ。側には純様がいて、そして華琳様は私の手を握って、最後の力で伝えて下さったお言葉を・・・ぐすっ、聞き届けぬわけには・・・」

 

と春蘭は泣き始めた。

 

一刀「え、ちょっと、春蘭!?」

 

一刀(何かシチュエーションが盛られてないか?俺、そこまで言ってないぞ。っていうかそれ、もしかしてマジ泣き・・・!?)

 

秋蘭「姉者、あくまでも仮定の話だからな。華琳様はお元気だぞ。」

 

春蘭「わ、分かっておるわ・・・。だが、もしもの事でも考えたら・・・考えたら・・・」

 

柳琳「大丈夫ですから、春蘭様。ご安心なさって。」

 

栄華「全くもぅ。北郷さんのせいですわよ。」

 

一刀「うぅ・・・ごめん、春蘭。」

 

純「・・・いい加減泣き止め、春蘭。お前の働き次第で、その様な運命はいくらでも覆せるぞ。」

 

華琳「そうよ、春蘭。」

 

春蘭「そ、そうですね・・・ひっく。・・・私が何としてでも華琳様をお守りすれば・・・」

 

一刀「悪かったよ、春蘭。ほら、これで涙を拭いて・・・。」

 

春蘭「うむ。北郷にもみっともない所を見せたな・・・ぐすぐす。・・・ちーん。」

 

春蘭「話の腰を折ったな、すまなかった。手拭いは返すぞ。」

 

しかし、鼻水だらけだったので

 

一刀「いや、それはもう良いんだけど・・・。後で洗って返して。」

 

と春蘭に言った。

 

華琳「誰がどんな思いで立ち上げたにせよ、純の言う通り、黄巾党とやらは叩き潰すしかないわ。最悪の事態を招かないよう、首魁の件もきちんと処理してね。」

 

一刀「・・・結局叩き潰すんだな。」

 

華琳「夕方、都から軍令が届いたのよ。早急に黄巾の賊徒を平定せよ、とね。」

 

柳琳「あの・・・今頃ですか?」

 

華琳「ええ、今頃よ。」

 

純「クソッ、遅すぎだぞ!!どれだけ民が苦しんだと思ってんだ!!」

 

それを聞いた純は、怒りの声を上げた。

 

華琳「落ち着きなさい、純。あなたも、朝廷の事は私と同様知っているはずよ。」

 

すると、華琳は純をなだめさせた。

 

純「・・・はっ。申し訳ございません、姉上。」

 

それを聞いた純は、怒りを静めて謝罪した。

 

一刀「それが今の朝廷の実力、って事か・・・。」

 

香風「朝廷のそれは、今に始まった事じゃない。・・・でも、する事は一緒。」

 

一刀「けど今のままじゃ、いつまで経っても終わらないだろ。敵の本隊とか大陸制覇の大軍団とか、分かりやすいのが出てきてくれれないいんだけど。」

 

栄華「それも無理そうですわね・・・。組織化されているわけでもないようですし、もし北郷さんの言う通りなら、その女芸人を捕まえない限りこの騒ぎは終わりませんわ。」

 

華琳「ええ。・・・地道に足取りを追うしかないか。」

 

その時、

 

華侖「華琳姉ぇ、純兄、大変っすー!」

 

夜の警備に回っていたはずの華侖が慌ててやって来た。

 

華琳「どうしたの、華侖。」

 

華侖「ええっと、陳留の隣の郡で、また黄色い布の人が出てきたって報告が届いたっす!それも、沢山!」

 

香風「沢山・・・?」

 

華侖「えーっと、今までに無い規模で、街に近付いてるって!」

 

華琳「・・・あら。今日は一刀の予言が良く当たる日ね。占い師にでもなった方が良いのではない?」

 

一刀「やめとくよ。そうなったら俺の言う事なんかもっと聞かなくなるだろ?」

 

一刀(普段から聞いた試しもないけどさ。)

 

純「まあいいや。桂花、今使える兵はどれほどある?」

 

桂花「それが・・・ここ暫く出動が重なっていましたので、当直の兵くらいしか・・・」

 

桂花「今すぐ招集を掛けるにしても、出立は早くとも早暁になるかと。」

 

純「・・・おせーな。俺の隊も同じだな?」

 

桂花「はい。純様の仰るとおりです。」

 

栄華「それに、糧食も足りません。こちらも急ぎ準備するにしても、同じ頃かもう少し掛かるかと。」

 

純「しゃーねーな。ならば、出来るだけ急いでくれ。」

 

すると、

 

柳琳「お兄様。私の隊なら、まだ旅装を解いている最中です。ご命令を戴ければ、すぐに出立できます。」

 

秋蘭「私の隊も同じです。糧食も残っていますから、先遣隊として動く分には問題ありません。」

 

柳琳と秋蘭が動けると言ってきた。

 

純「柳琳と秋蘭か・・・。」

 

桂花「恐らく連中は、今までの散発的なものではなく、複数の暴徒が寄り集まったものだと思われます。いくら先遣とはいえ、遠征から戻ったばかりのお二人では厳しいかと。」

 

一刀「いつもみたいに、烏合の衆じゃないの?」

 

桂花「それは見てから判断する事よ。最初から烏合の衆と侮れば、万が一の時に足元を掬われるわ。」

 

桂花「人が集まるという事は、集まろうとする意志か、集めようとする意志が働いていると見るべきよ。集団同士が合流するなら、尚更ね。」

 

一刀「・・・はぁ?」

 

一刀(なんか哲学とか、禅問答みたいだな。)

 

桂花「一つ二つの集団が合流しただけなら、ただの偶然でしょう。けれど、それが数十の規模となれば・・・それは最早意思がなければ起こり得ない事。」

 

純「つまり・・・」

 

秋蘭「・・・指揮官がいる、という事か。」

 

純「そういうことだな。」

 

華琳「ええ。仮にいなかったとしても・・・規模が大きくなれば、それだけの能力を持つ者が一人や二人は混じっているものよ。」

 

華琳「特に今回は、初めから張角という芯があるわ。仮に張角自身が無能だとしても、それも祭り上げようとする輩がいずれ必ず出てくる。」

 

それを聞いた一刀は

 

一刀「・・・俺達みたいにか?」

 

と例えるように言った。

 

華琳「限りなく不愉快な例えだけれど、そういうことよ。」

 

純「そんな未知数の連中を前に、秋蘭と柳琳だけを向かわせるわけにはいかねーよ。」

 

その時、

 

季衣「純様!」

 

今まで黙っていた季衣が手を上げ、

 

純「・・・。」

 

季衣「純様!僕も行きます!」

 

と言った。

 

春蘭「・・・季衣!お前は暫く休んでおけと言っただろう!」

 

季衣「だけど、華琳様は仰いました!無理すべき時は、僕に無理して貰うって!それに百人の民も見捨てないって!」

 

香風「純様。だったら、シャンも行く。・・・季衣だけ、戦わせられない。」

 

すると、香風も名乗りを上げた。

 

純「・・・。」

 

柳琳「お兄様!でしたら、それは私達も同じです。」

 

華侖「だったら、あたしも一緒に行くっす!」

 

それに続いて、柳琳と華侖も名乗りを上げた。

 

純「柳琳・・・華侖・・・。」

 

香風「・・・純様。」

 

季衣「純様!」

 

そして、

 

純「・・・こいつらの言う通りですね、姉上。」

 

華琳「ええ、そうね。」

 

季衣「純様・・・。」

 

華琳「けど、どうするかは純、あなたに任せるわ。」

 

純「はっ。・・・ならば季衣。秋蘭と柳琳の隊を率いて、先遣隊としてすぐに出発しろ。香風、お前も出られるか?」

 

香風「勿論、平気。」

 

季衣「はいっ!・・・って、えっ!?僕が秋蘭様と柳琳様の隊を率いるんですか!?」

 

純「二人は討伐任務から帰ったばかりだから、指揮まで任せたくねーんだ。やれるな?季衣。」

 

季衣「あ・・・は、はい・・・。秋蘭様、柳琳様、宜しくお願いします。」

 

秋蘭「うむ。よろしく頼むぞ、季衣。」

 

柳琳「一緒に街の人を救いましょう。」

 

季衣「へへ・・・っ、なんか、くすぐったいです・・・。」

 

純「補佐とは言っても、指揮の経験は他の皆の方が豊富だ。俺達が追い付くまで、秋蘭達の助言には必ず従え。良いな?」

 

季衣「分かりました!」

 

華侖「純兄、あたしは!?あたしは行っちゃ駄目なんすか?」

 

純「お前が出たら、本隊の準備が手薄になる。ここは柳琳達を信じろ。」

 

華侖「うぅ・・・。柳琳、すぐ追い付くっすよ!」

 

柳琳「うん。戦だからお兄様の言うことはちゃんと聞いてね、姉さん。」

 

純「春蘭と華侖はすぐに本隊の準備を。栄華と桂花は、城下に降りて糧食の調達に向かえ。」

 

純「夜明けを待ってはいられねー。夜が明けるまでは、本隊も出陣させるぞ。良いな!」

 

春・侖・栄・桂「「「「はっ!!!!」」」」

 

華琳「今回の本隊は私が率いるわ。けど、いつも言っている事だけれど戦では純の命令に従うように。以上、解散!」

 

そして、皆それぞれ準備のためその場を後にしたのだった。

 

一刀(えーっと・・・。)

 

・・・一刀を除いて。

 

華琳「・・・どうしたの?」

 

一刀「いや、俺は何も言われなかったから・・・どうしたら良いのかな、と。」

 

華琳「寝ておけば?」

 

一刀「・・・良いの?」

 

華琳「良いも何も、する事がないなら体を休めておきなさい。私もひと眠りするわ。」

 

一刀「そ、そんなもんなのか・・・?」

 

一刀(みんな夜を徹しての仕事になるだろうってのに、手伝わなくって良いのかな・・・。)

 

華琳「他の皆は夜を徹して作業する事になるでしょう。恐らく馬上で休む事になるから、その間、事態に即応出来る人間が必要になるわ。」

 

一刀「・・・それは華琳か純の役目じゃないの?」

 

華琳「総大将は私だけど、実質我が軍の指揮をしているのは純よ。けれど、私の注意が及ばない時は純がやっていたように、純の注意が及ばない時は一刀に補って貰う事になるかもしれない。」

 

一刀「お、俺!?でも俺は・・・知ってるだろ、華琳だって。」

 

華琳「勿論。ただ・・・戦場で武器を振るう才と、指揮をする才は、違うものよ。もっとも、純はその両方を持っているけど。」

 

華琳「あなたの働きぶりを見る限り、武の才は見る影もないわ。それは事実ね。」

 

一刀「お、おう・・・。」

 

華琳「けれど・・・指揮をする力に関しては、純には遠く及ばないけど、少なくとも全くない訳では無いわ。」

 

一刀「・・・ないわけじゃない、か。」

 

華琳「豫州に出向いた時も、純のお陰とは言え、次に繋がる手を打ったでしょう?」

 

一刀「そうなのかな?」

 

華琳「何を自身の才にするかは、自身が決める事よ。私は国の主として、純は武人として指揮官としての才があると感じたように。けど、私が何を言っても、貴方がそれを信じなければ私の妄言・・・それこそ、貴方の天の知識や占い師の言葉と変わらないわ。」

 

一刀「命令してくれれば簡単なのに。」

 

華琳「私の命令一つで全てが思い通りに進むなら、本当に簡単なのだけれどね。それは純も同じ事を思っているわ。けど、残念ながら、最後に何とかするのは己自身よ。」

 

一刀(・・・そうだな。やれって言われてやれるなら、誰も苦労はしないか。)

 

華琳「まあ良いわ。ともかく今は人手が足りないのだから、今回はあなたにも季衣のように働いて貰う。その時に生あくびをしているようでは、己の首が飛ぶわよ。」

 

一刀「・・・それ、飛ばすのは敵じゃなくて春蘭か純じゃないの?」

 

華琳「嫌なら飛ばされないようにする事ね。特に春蘭には、ね。・・・私は少し眠ってくるわ。」

 

一刀「俺も寝る事にする・・・。」

 

すると、

 

華琳「ふふっ・・・私の閨に来る?」

 

と華琳が一刀に冗談を言った。

 

一刀「・・・この非常時に、そういうドキッとする冗談は勘弁してくれよ。」

 

華琳「・・・ふふふ。なら、さっさと寝てしまいなさい。」

 

一刀「はいはい。」

 

しかし、逆に寝られなかった一刀であった。




投稿できました。

一万いくんじゃないかの勢いで書いちゃった・・・。

それでは、また。
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