別働隊
華侖「愛紗ー。秋姉ぇー。本隊、到着したそうっすよー。」
一刀達先遣隊が最後の偵察を終えた頃。そんな報告を華侖が持って来てくれた。
愛紗「そうですか。」
秋蘭「そうか。各隊の報告はまとまったか?」
真桜「ちょうど終わったところやで。連中、かなりグダグダみたいやな。」
秋蘭「ふむ。華琳様の予想通りか。」
愛紗「そうだな。」
一刀「なあ。華琳の作戦って結局何だったんだ?」
秋蘭「後で説明するさ。まずは報告を聞かせて貰おう。真桜。」
真桜「はいはい。連中の総数やけど、約二十万。」
これには、
一刀「二十万って!?おいおいマジか!」
沙和「うはー。もの凄い大軍勢なの・・・。」
香風「本隊って言っても、多い。」
季衣「それって・・・僕達だけで勝てるんですかね?」
と、皆それぞれ本隊の数に驚いていた。
真桜「まあ聞きや。総数は二十万やけど、そのうち戦えそうなんは・・・三万くらいやな。」
愛紗「成程、そういうことか・・・。」
秋蘭「ふっ。愛紗は分かったようだな。」
一刀「えっ、残りの十七万はどこに行ったの?」
真桜「武器も食料も全然足りてへんみたいなんよ。その割に、さっきもどっかの敗残兵みたいなのが合流しとったから・・・。」
凪「二十万というのは、その敗残兵も合わせた数ということか。」
真桜「せや。陣のあっちこっちで小競り合いも見えたから、一枚岩っちゅうわけでもないな。見た限りじゃ仲裁もなかったし、指揮系統もバラバラなんちゃうか?」
華侖「でも、なんでそういう連中が今頃合流してるんすか?そういうのって、関所で止められるんじゃないんすか?」
華侖のその疑問に
秋蘭「大軍ならともかく別れて数名ずつで抜ければ、関所は止めんよ。華琳様がそういう命を出しておられるからな。」
秋蘭がそう答えた。
一刀「・・・えげつないな、華琳。」
一刀(そいつらが略奪でも働けば、純を筆頭に春蘭や真桜達治安維持の部隊が叩き潰すし・・・合流すれば、黄巾党本隊の敗残兵が増える。)
一刀(補給部隊も香風や凪が地道に潰してたはずだから、本隊の負担は多分乗算的に増えていったはずだ。)
真桜「・・・それ、褒め言葉に聞こえへんで。隊長。」
秋蘭「黄巾を旗印に団結を旨とする集団なら、来たものは陣内に取り込むしかないだろうし、拒絶すれば内々に火種を生む遠因となる。」
秋蘭「その結果は・・・見ての通りだ。」
凪「神出鬼没の人食い熊も、太り過ぎればただの的、という事ですね。」
しかし凪の例えは、
真桜「太りすぎたら・・・。」
沙和「・・・イヤな例えなの。」
この二人には不評だった。
香風「・・・?」
季衣「熊なら僕、いくらでもやっつけるよ!」
華侖「それで、どうするっすか?作戦は、最初のでいいんすか?」
秋蘭「問題なかろう。華琳様と純様の本隊に伝令を出せ。皆は予定通りの配置で、各個撹乱を開始しろ。」
秋蘭「攻撃の機は各々の判断に任せるが・・・張三姉妹を殺すような真似だけはするなよ。以上だ。」
黄巾党本隊
黄巾党兵士A「張角様!張宝様!張梁様!」
人和「何?そんなに慌てて。」
黄巾党兵士A「申し訳ありません!しかし、急用だったもので・・・!」
天和「急用・・・?」
黄巾党兵士A「敵の奇襲です!各所から、火の手が!」
人和「何ですって!すぐに消火活動を!」
黄巾党兵士A「各々でやっているようですが、火の手が多いのと誰に指示を受ければ良いかが分からず・・・!」
すると、
黄巾党兵士B「張角様!大変です!火事ですっ!」
黄巾党兵士C「張宝様!大変です!」
黄巾党兵士D「張梁様!火事が・・・!」
色んな報告が三姉妹に届いたので、
地和「ああもうっ、ちゃんと聞いてあげるから、一列に並びなさーいっ!」
収集がつかなくなってしまったのだった。
人和「く・・・っ。人ばかり無駄に増えているから・・・!」
黃巾党兵士たち「「「どうしましょう!」」」
人和「ともかく、敵の攻撃があるならまずはその対処を!火事も手の空いている者が協力して消して!」
黃巾党兵士たち「「「はいっ!」」」
人和「・・・まったくもぅ。」
天和「れんほーちゃぁん・・・。」
地和「人和・・・。」
人和「・・・もう潮時ね。誰かが付いてくるかもなんて言っている場合じゃないわ。・・・よっと。」
天和「何?その荷物。」
人和「逃げる支度よ。三人分あるから・・・三人でもう一度、初めからやり直しましょう。それでいいなら、荷物を取って。」
地和「仕方がないわね。でも、二人がいるなら。」
人和「また貧乏との戦いだけど、いい?」
地和「楽しく歌えるなら、そっちの方がずっとマシよ。」
天和「そだねー。ちーちゃんとれんほーちゃんがいれば、何度だってやり直せるよね♪」
人和「そうだ、これも・・・。」
その時、人和がある一冊の本を取った。
地和「太平なんとか、だっけ・・・?」
人和「そうよ。これがあれば、いくらでも再起が図れるもの。」
天和「もうそんなのいいよ。二人がいれば何もいらないから、早く逃げようよー!」
そう言って、三人は逃げる準備を始めたのだった。
曹操軍本隊
栄華「お兄様。敵陣の各所から火の手が上がりましたわ。秋蘭さん達が行動を開始したようです。」
柳琳「秋蘭様から伝令が届きました!敵の状況は完全に予想通り、当初の作戦にて奇襲をかけると、こちらも作戦通りに動いて欲しいとの事です。」
純「了解・・・。しかし、流石姉上ですね。こうも黄巾の連中をじわじわと追い詰めるとは。」
華琳「あなたの戦場での働きほどではないわよ。」
純「いえいえ。姉上のお陰で、俺も戦場で武を振るいやすくなるものですよ。」
華琳「そう。なら、いつも通り戦場は任せたわよ。」
純「はっ!桂花、稟、風!指揮は任せたぞ。」
桂・稟・風「「「御意!」」」
春蘭「しかし、先日はあれ程苦戦したというのに・・・何ですか、今日の容易さは。」
それに桂花は、
桂花「苦戦したのは春蘭が馬鹿だからじゃないの?」
そう答えた。
春蘭「なんだとぅ!」
純「少数の兵で春蘭程度をあしらえる器はいても・・・、あれほどの規模の兵を纏め、扱える器はいなかった。それだけの事だ。」
春蘭「なるほど。私程度を・・・って純様!それは酷うございます!」
純「はは、冗談だ。」
華琳「あなたなら、あれ程の規模の兵を纏め、上手く扱える事は出来るわ。何せあなたは、大将軍の器なのだから。」
純「ありがとうございます。」
華琳「それより喜雨。燈はともかく、貴女まで来る事はなかったのよ?」
喜雨「ううん。この大陸を散々荒らして、豫州の作物もたくさん略奪して回った連中だもの。その最後くらい、僕にも見届けさせて。」
喜雨「戦場で役に立たない自覚はちゃんとあるから、始まったら邪魔にならない所に退がるよ。後方で良い?」
華琳「後方は奇襲が来るかもしれないから、安全ではないわ。見届けたいと言うなら、燈と共に私の側にいなさい。いいわね?」
桂花「純様。そろそろ、こちらも動こうと思うのですが。」
純「もうか?もう少し時間があるかと思ったんだけど・・・秋蘭達、張り切りすぎじゃねーのか?」
桂花「向こうの混乱が輪をかけてひどいのでしょう。こちらの準備は出来ていますので、お早くお願いいたします。」
桂花「急がなければ、張三姉妹がこちらではなく身内に殺されかねません。」
純「それは問題だな・・・分かった。それでは姉上、皆に言葉を。」
華琳「あら、私が?あなたでも良いのよ?」
純「ここは覇王に相応しい姉上が相応しいかと。それに、先の戦では掛けられませんでしたし。」
華琳「そう。分かったわ。」
そして、華琳は前に立ち
華琳「皆の者、聞け!」
華琳「汲めない霧は葉の上に集い、すでにただの雫と成り果てた!」
華琳「奴らを追って霧の中を彷徨う時間はもうお終い。今度はこちらが呑み干してやる番よ!」
華琳「ならず者どもの寄り合い所帯と、我らとの決定的な力の差・・・この私に、しっかりと見せなさい。」
そう兵士に鼓舞し
純「総員、攻撃を開始せよっ!」
純によって全軍に総攻撃の命を下したのだった。
別働隊
一刀「凪。華琳達の本隊が来たぞ!」
曹の旗を掲げた本隊が、大地を揺らしながら突っ込んだ。
凪「流石、予定通りですね・・・。」
一刀「なら、そろそろ俺達も合流しよう。」
愛紗「北郷殿。私も大丈夫です。」
一刀「・・・華侖達は?」
すると
華侖「一刀っちー!愛紗ー!凪ー!」
沙和「隊長、愛紗ちゃん、お待たせなのー。」
華侖達がやって来た。
一刀「お、来たな。」
愛紗「みんな大丈夫でしたか?」
沙和「大丈夫なの。っていうか、沙和達何もしてないのに向こうが勝手に崩れていったの・・・。」
一刀(そんな、パソコンが壊れたみたいな言い方されてもだな・・・。)
季衣「だから、華琳様と純様も来たし、そろそろかなって。」
華侖「秋姉ぇや香風は、もう右翼の応援に行ったっすよ!」
一刀「よし、なら俺達も急いで本隊に合流しよう。」
凪「隊長、指示を。」
一刀「現場の指揮は皆に任せるよ。季衣、お願いして良い?」
季衣「うー。僕、そういうの苦手なんだけどなぁ・・・誰かやってくれない?」
沙和「そういうの、愛紗ちゃんが得意なの!」
愛紗「いや、そこはご一門の華侖様がやるべきでは・・・。」
しかし
華侖「愛紗の号令、聞いてみたいっす!」
そう言い
沙和「ほらほら愛紗ちゃん、華侖様もそう言ってるの。」
愛紗「やれやれ・・・了解です。なら・・・。」
仕方なく号令を掛けた。
愛紗「これより我らは本隊に合流し、本隊左翼として攻撃を続行する!ただし張三姉妹は生け捕りにせよ!総員、今まで連中に味わわされた屈辱と怒り、存分に返してやれ!」
兵士「応っ!」
愛紗「全軍突撃ーっ!」
そして、黄巾本隊との戦いが始まった。
季衣は、愛用の反魔を振り、黄巾党を吹き飛ばし、凪もそれに負けじと気弾で一気に数人を吹き飛ばした。
真桜も螺旋槍で敵を一掃し、愛紗は青龍圓月刀で黄巾党を斬り、部隊の巧みな指揮で敵を追い詰めていったのだった。
とある場所
地和「この辺りまで来れば・・・平気かな。」
天和「もう声もだいぶ小さくなってるしねー。・・・でも、みんなには悪いことしちゃったかなぁ?」
人和「難しいところだけれど・・・こればかりはどうしようもないわね。正直、私だってこんな事になるなんて思ってなかったし・・・。」
地和「けど、これで私達も自由の身よっ!ご飯もお風呂も入り放題よねっ!」
人和「・・・お金ないけどね。」
地和「う・・・。」
天和「そんなの、また稼げばいいんだよ。ねー?」
地和「そう・・・そうよ!また三人で旅をして、楽しく歌って過ごしましょうよ!」
人和「で、大陸で一番の・・・。」
地和「うん!今度こそ歌で大陸の一番になるんだからっ!」
天和「がんばろーっ!」
天・地・人・侖「「「おーっ!」」」
その時、
天和「あれ、何か多い気が・・・」
一人多いことに気付いた時、
地和「・・・え、ちょっと!あんた誰よ!」
華侖に誰かを尋ねたのだった。
華侖「え?あたしは華侖っす!」
地和「そうじゃない!何者だって聞いてるのよ!」
しかし、
華侖「華侖は華侖なんすけど・・・あれ?じゃあ、華侖じゃない何者だっていうなら、あたしは何者なんすか・・・?」
全く話が伝わっていなかった。
地和「・・・なんだか姉さんがもう一人増えた気がする。」
天和「えー。ちーちゃんひどーい。それに華侖ちゃんだって、華侖ちゃんって名乗ってるじゃない。」
人和「姉さん、多分それ真名・・・。」
天和「あー。ごめーん。訂正するねー。」
華侖「あはは。大丈夫っす!気にしないっす!」
すると
沙和「華侖様ー。どこに行っちゃったのー。」
華侖「あ、沙和ー!こっち、こっちっすー!」
沙和「もぅ。探したのー!」
沙和が馬に乗って頬を膨らませながらやって来た。
地和「なんか増えた・・・。」
沙和「あっ!」
天和「えっ。」
人和「・・・まさか!」
すると、
沙和「もしかして、三人って張三姉妹なの?」
そう言うと、
天和「えー。お姉ちゃん、有名人?」
そう言ったが、
人和「ちょっと姉さん、ここで張三姉妹なんて名乗っちゃダメよ。敵方の追っ手かもしれないんだから。」
そう注意した。
沙和「沙和、三人の歌大好きなの!いつも歌ってるの!」
華侖「あたしも大好きっす!」
地和「ホント!?ありがとー!」
天和「ほら人和ちゃん。私達の歌を応援してくれてる人が、追っ手なわけないよ。こっちの部隊の偵察の誰かじゃないの?」
人和「そ、そうなのかしら・・・?」
地和「ええっと、揮毫はここでいい?」
華侖「わーい!おっきく書いて欲しいっすー!」
人和「ちょっとちぃ姉さんもなんでそんなに適応してるのよ。」
地和「え、だってちゃんと応援してくれる子なら大事にしないと。」
人和「時と場合によるでしょ!」
すると、
愛紗「・・・私もそうだと思うぞ。」
凪「私も同感だ・・・。」
愛紗と凪がやって来た。
華侖「あ、愛紗ー。凪ー。」
天和「あら、二人の友達?」
地和「あなた達も私達を応援してくれてる人?」
凪「それはまあ、応援していないと言えば嘘になりますが・・・。あなた方の歌にはとても感銘を受けましたし、あの歌がなければ私はここに立っていないでしょうし・・・。」
愛紗「それは私もだな・・・。」
天和「ほらね。人和ちゃんは心配しすぎなんだってばー。」
愛紗「いや、そうでもないさ。」
沙和「なの。・・・ごめんね。応援はしてるけど、沙和達その追っ手なの。」
天和「えええええ・・・。」
華侖「大人しく捕まって欲しいっすー。」
地和「ちょっと、あんたまで曹操軍の一員ってこと!?」
天和「どうしよう・・・もう護衛の人達もいないよー?」
地和「くぅぅ・・・っ。まだあんな事やこんな事もしてないのにー!」
人和「だから言ったじゃない。時と場所を考えろって・・・!」
愛紗「・・・とはいえ、乱暴にするつもりはない。大人しく付いて来るなら、悪いようにはしないと約束しよう。」
人和「・・・付いて行かなかったら?」
沙和「えー。困っちゃうの・・・。」
地和「もしかして、その一際大きい圓月刀でちぃ達を斬り殺すの!?」
愛紗「いや、殺しはしない。」
凪「うむ。幸い私は無手の心得があるからな。お主らを傷付けずに捕まえることは出来る。」
天和「でも、痛いんでしょ?お姉ちゃん、痛いのは嫌だなぁ。」
その時、
黄巾党兵士E「張角様っ!」
黄巾党の残党がやって来た。
凪「!」
黄巾党兵士F「テメェ!俺達の・・・」
しかし、
愛紗「はあああっ!!」
ズバッ・・・
全員「「「!?」」」
話が終わる前に彼らは愛紗によって斬り殺された。
愛紗「・・・それで、お前達は私達に付いて来るのか。もし断れば、両手両足をへし折ってでも連れて行くぞ。」
愛紗はそう言って殺気を出すと、三姉妹は顔を真っ青にしながら首を縦に振った。
その時の愛紗の様子は、まるで修羅のようだったと、その場にいた皆は語っていたのであった。
投稿できました。
張三姉妹、捕まりました・・・。
次回は、その裁定ですね。
それでは、また。