恋姫無双〜黄鬚伝〜   作:ホークス馬鹿

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29話です。


29話

曹操軍本陣

 

 

 

純「姉上、これは黄巾党指揮官の首です。奴らを殲滅させ、残りは捕虜にしました。」

 

純は左手に持った首を華琳の前に投げた。

 

華琳「捕虜にした者は、纏めて郷里に送り返させなさい。」

 

純「はっ!」

 

華琳「・・・で、あなた達が・・・張三姉妹?」

 

振り向いた華琳の目の前に並んでいるのは、愛紗達が連行してきた三人の少女だった。

 

地和「え、ええっと・・・あ、あの・・・その・・・うっぷ。」

 

しかし、純が首を持って来たから三姉妹の顔は青ざめ振るえてしまい、地和に至っては吐き気を催していた。

 

華琳「ごめんなさいね、弟は戦になるとこうなるから。」

 

人和「え、あ・・・はい、大丈夫です。」

 

華琳「季衣、間違いない?」

 

季衣「はい。僕が街で見届けたのと同じ人達だと思います。」

 

喜雨「・・・この三人が、張三姉妹。」

 

そして、その三姉妹を喜雨は一刀の隣で見つめていた。

 

華琳「喜雨。思う所は色々あると思うけれど。」

 

喜雨「・・・分かってるよ。」

 

一刀(沛国は、城から村々に至るまで、どこもかしこも黄巾党に荒らされてるもんな・・・。)

 

一刀(張三姉妹が直接手を掛けたわけじゃないにしても、農業指導をして回ってた喜雨からすれば何とも言えない気持ちになるはずだ。)

 

喜雨「無理を言って同席させてもらったんだから、大人しくしてるよ。華琳様にこれ以上迷惑は掛けないから。」

 

一刀「けど、どうしてこんな事をしたんだ。見たところ普通の旅芸人みたいだけど・・・?」

 

天和「みたいじゃなくて、普通の旅芸人だよー。」

 

人和「・・・色々あったのよ。」

 

華琳「色々では分からないわよ。子細に話しなさい。」

 

地和「・・・やっぱり、話したら斬る気じゃないの?」

 

華琳「それは話を聞いてからね。あなた達が黄巾党を率いて各地の略奪を行ったというなら、私達も相応の対応をせざるを得ないわ。」

 

地和「ちぃ達がそんなことするはずないでしょ!」

 

天和「そうだよ。お姉ちゃん達だって巻き込まれたんだから!」

 

その時、

 

喜雨「自分達でこの騒ぎを巻き起こしておいて・・・!」

 

天和と地和の被害者ぶる態度に喜雨は怒りの声を上げた。

 

華琳「喜雨。」

 

喜雨「・・・分かってる。悪かったよ。」

 

それに華琳は止めたのだった。

 

地和「その子は?」

 

華琳「沛国の農業を指導していた子よ。今は兗州と豫州の村々を巡って、働いてくれているわ。」

 

華琳「沛国は、黄巾党の大規模な襲撃を受けて、城まで落とされ掛けたの。勿論村々の被害も相当なものだったわ。私の隣にいる弟が中心にやらなかったら、今頃どうなっていたか・・・。」

 

人和「・・・。」

 

淡々と語る華琳の言葉に、思う所もあったのか、人和はしばらく黙っていたが、

 

人和「・・・分かったわ。全て話す。」

 

天和「人和ちゃん?」

 

人和「ただし、私達三人の命を助けてくれる事が条件よ。そうでなければ、私は何一つ口にしないわ。」

 

華琳「いいでしょう。」

 

そして、人和は、自分達がこれまで辿ってきたこれまでの道程を話し始めたのだった。

 

 

 

 

 

秋蘭「各地を歌って回って、気が付いたらおかしな信奉者が増えていたと。」

 

天和「うん。夜、厠に起きたら壁の向こうからこっちを見てる人とかもいたし・・・怖かったぁ。」

 

栄華「・・・これだから男なんて油断出来ないのですわ。気持ち悪くて、臭くて下品で汚くて。少しはお兄様を見習って欲しいですわ。」

 

桂花「ええ。使った後の厠に入って匂いを嗅ぐとか、お風呂に忍び込んで脱ぎたての下着を集めるとか、まだ温もりの残る寝台に乗ってゴロゴロするとか、人としての品性を疑うわ。」

 

一刀「張梁はそこまで具体的には言ってないぞ、桂花。」

 

一刀(っていうかなんでそんなにストーカー事例が生々しいんだよ。)

 

しかし、

 

栄華「・・・。」

 

栄華は温もりの残る寝台に乗ってゴロゴロするという言葉を聞いて思う所があるのか、少し目線を逸らした。

 

人和「ただその頃には、護衛を申し出てくれるきちんとした子達もいたから・・・そのうち、その子達と行動するようになって」

 

凪「・・・その規模が、気が付いたら大きくなりすぎていた。そういうことか。」

 

人和「ええ。最後のあたりは噂を聞いた子達がどんどん来るようになって、完全に収拾が付かなくなってたけど。あれ、あなた達の策略でしょ。」

 

華琳「さあ、どうかしらね。」

 

一刀「・・・じゃああの黄色い布も、張三姉妹を応援してます、って見分ける印ってだけだったの?」

 

人和「ええ。それで簡単に区別が付くでしょう。・・・もっとも、私達の歌も聞いた事のない連中にまで利用されるようになったのは誤算だったけれど。」

 

華琳「それにしても・・・やはり太平要術の書は、貴女達が持っていたのね。」

 

天和「うん。応援してくれてる、っていう人にもらったんだけどー。逃げてくるとき、置いてきたの。」

 

華琳「そう・・・。」

 

人和「私達の天幕は陣の中枢部にあるから、あの火勢では恐らくもう灰になっているはず。」

 

人和「色々凄い事が書いてあって、ただの書物ではないとは思っていたけど、やはり曰くのある書物だったのね。」

 

華琳「ええ。けれど、そう・・・あの書は灰になったのね。」

 

純「姉上。もう一度、あの陣に火を放ちましょう。」

 

華琳「ええ、そうね。誰かに悪用されては、また今日のような事態になりかねないわね。」

 

純「はい。秋蘭、あの陣にもう一度火を放っておいてくれ。」

 

秋蘭「承知致しました。」

 

天和「それで、これから私達をどうするつもり?これで私達の知っている事は全て話したけど・・・」

 

華琳「そうね・・・。貴女達から見た、黄巾党の事は分かったわ。」

 

華琳「喜雨。」

 

喜雨「何?」

 

華琳「貴女はどうしたい?少なくとも、ここで一番彼女達に憤りを感じているのは貴女でしょう?」

 

喜雨「僕・・・?」

 

一刀(そうか。だから、華琳は・・・)

 

喜雨「・・・そうだね。」

 

喜雨「でも、それは・・・みんな同じだよ。村を焼かれたり、襲われたりした人達の気持ちなら、確かに僕が一番聞いてると思うけど・・・。」

 

喜雨「黄巾党の情報を集めたり、街を守って戦ったり、城を落とされたり・・・悔しい気持ちは、多分村以外のみんなも同じだと思うから。」

 

思う所があるのか、喜雨は自らを納得させるように拳を強く握り、きつく目を閉じていた。

 

喜雨「最初に言った通り・・・戦場では純様、このような話し合いは華琳様の判断に従うよ。」

 

華琳「そう・・・。」

 

人和「やはり、都に連れて行って処刑するの?それとも、塩漬けにした首を晒し者にする?」

 

地和「ちょっと、やっぱり殺すんじゃない!」

 

天和「やだー!お姉ちゃん死にたくなーい!」

 

天和「どうせ死ぬなら、せめて好きな人を作って、美味しい物たくさん食べて、思いっきり歌って可愛いお婆ちゃんになって、可愛い孫の笑顔に囲まれて死にたかったー!」

 

一刀「それ、完全に天寿を全うしてるよな。」

 

華琳「・・・ふむ。」

 

華琳「死なずに済む方法も、ないわけではないわよ。」

 

地和「・・・どういう事?」

 

天和「えっほんと?お姉ちゃん死にたくない!するする!なんでもする!」

 

人和「命乞いが早すぎるわよ姉さん。せめて条件を聞いてからにして!」

 

華琳「太平要術の書のおかげかどうかは知らないけれど、あなた達の人を集める才覚は相当なものよ。」

 

華琳「それを私のために使うというのなら・・・その命、生かしてあげても良いわ。」

 

地和「何?どういうこと?まさかちぃ達を兵士の慰問の道具にするとかじゃ・・・!」

 

華琳「・・・半分は間違っていないわね。」

 

天和「えーっ!やだーっ!お姉ちゃん、初めては好きな人がいい!」

 

その時、

 

ヒュッ、ザクッ

 

天・地・人「「「!?」」」

 

地和の横に槍が飛んできて、地面に刺さった。

 

華琳「純。」

 

一刀「お、おい、純!?」

 

純「すいません。ちょっと野良犬が横でキャンキャンうるさかったので、黙らせるために槍を投げたのですが、少々手元が狂ってしまいました。」

 

華琳「・・・そう。」

 

純「ご安心を。次は確実に仕留めます故・・・。」

 

そう言って、純は槍を手に持った。

 

地和「ひっ!?」

 

天和「あ、あの・・・!?」

 

その際、天和と地和の顔は、青を通り越して真っ白になり、涙目になっていた。

 

一刀「お、おい、純!!」

 

華琳「やめなさい、純。その槍を下ろしなさい。」

 

純「・・・御意。」

 

華琳の声を聞いて、純は槍を下ろした。すると、天和と地和は完全に腰が抜けてしまい、後もう少しで漏れてしまうところだった。

 

人和「・・・詳しく聞きましょう。姉さん達も良いわね?」

 

その時、天和と地和は壊れたロボットのように首を素早く縦に振った。

 

華琳「賢明ね。これ以上私の弟を怒らせない方が良いわよ。我が『黄鬚』は、貴女達を殺すのは造作もないから。」

 

天・地「「コクコク。」」

 

人和「分かったわ・・・。」

 

華琳「私が大陸に覇を唱えるためには、今の勢力では到底足りない。だからあなた達の力を使い、兵を集めさせてもらうわ。」

 

華琳「あれだけの賊を熱狂させ、ここにいる将達にも少なからずの影響を与えた、その歌の力でね。」

 

人和「兵を集める?その為に働けと・・・?」

 

華琳「ええ。活動地域は・・・そうね。私の領内なら、好きに動いて構わないわ。通行証も出してあげる。」

 

すると、

 

地和「ちょっと。領内ならって、それじゃ私達が行きたい所に行けないって事じゃないっ!」

 

立ち直った地和が文句を言ったが、

 

人和「・・・待って。ちぃ姉さん。」

 

地和「何よ。」

 

人和が止めた。

 

人和「・・・曹操。あなた、大陸に覇を唱えるということは・・・これから自分の領土を広げていく気なのよね。」

 

華琳「ええ。」

 

人和「そこは私達が旅出来る、安全な所になるの?」

 

華琳「貴女達のためではないけどね。」

 

人和「・・・分かったわ。その条件、飲みましょう。その代わり、私達三人の全員を助けてくれる事だけは譲れないわよ。」

 

華琳「交渉の必要もなさそうね。私達が欲しいのは貴女達三人だもの。一人でも欠けては、利用価値が落ちてしまうわ。」

 

地和「利用価値って・・・人和、こんなヤツら相手に何勝手に決めてるのよ!姉さんも何か言ってやって!」

 

しかし、

 

天和「えー。だってお姉ちゃん、難しい話ってよく分かんないし・・・。」

 

そう返されてしまったので、

 

地和「あーもう役に立たないわねっ!」

 

地和は頭を抱えたのだった。その姿を見ていた秋蘭は、

 

秋蘭「・・・。」

 

春蘭「・・・どうした秋蘭。なぜ私を見る。」

 

秋蘭「いや・・・、何でもない。」

 

自分と照らし合わせてしまった。

 

一刀(気持ちは良ーく分かるぞ、秋蘭。)

 

稟「・・・。」

 

純「・・・悪かったな、稟。」

 

稟「・・・はい。けど、まだ純様はマシです。」

 

稟も、純の事を少し見たのだった。

 

人和「でも、一つだけいい?」

 

華琳「何かしら?」

 

人和「私達が歌って、あなたの兵を集める。その方針は理解したわ。」

 

人和「けど、私達はお尋ね者よ。その件はどうするつもり?もみ消すの?」

 

燈「・・・これだけの規模の騒乱になっては、もみ消すのはもう無理でしょうね。」

 

華琳「別に。」

 

人和「別にって・・・!」

 

華琳「あなた達、ひとつ誤解しているようだけれど・・・あなた達の正体を知っているのは、恐らく私達だけよ。」

 

地和「・・・へ?どういうこと?」

 

華琳「そうよね、桂花。」

 

桂花「はい。あんた達、ここ最近は華琳様の領を出てなかったでしょ。」

 

人和「それは、あれだけ周りの捜索や国境の警備が厳しくなったら・・・出て行きたくても行けないでしょう。」

 

桂花「だから現状、首魁の張角が旅芸人だってくらいは知られてるけど・・・朝廷や他の諸侯達の間でも、張角の正体は不明のままなのよ。」

 

地和「え、何が言いたいの?意味分かんないんだけど。」

 

華琳「誰を尋問しても、張三姉妹の正体を口にしなかったらしいわよ。・・・大した忠誠じゃない。」

 

栄華「それに、真に断罪されるべき薄汚い連中・・・この騒ぎに便乗した盗賊や山賊は、そもそも貴女達の正体を知らなかったようですわね。」

 

華琳「そいつらのデタラメな証言が混乱に拍車を掛けてね。確か、張角の今の想像図は・・・一刀。」

 

一刀「・・・これか?」

 

そう言われて一刀が見せたのは、ヒゲモジャの大男の姿絵で、それも、腕が八本、足が五本、おまけに角がシッポまで生えていたのだった。

 

天和「えー。これがお姉ちゃん?お姉ちゃん、こんな怪物じゃないよー!?」

 

地和「いや、いくら名前に角があるからって、角はないでしょ・・・角は。」

 

華琳「・・・まあ、この程度という事よ。私達でさえ、季衣が張角の名前を口にするまでは尻尾も掴めなかったわけだし。」

 

華琳「後は・・・そうね。今の名前を捨てて、真名で呼ばれるというのもアリかもしれないわね。」

 

地和「ちょっ!そんなこと・・・!」

 

天和「あ、その手があるねぇ。」

 

地和「姉さん!?ちぃ達の真名を誰にでも呼ばせるなんて・・・ありえないわよ!!」

 

人和「・・・いえ、案外悪くないかもしれないわ。」

 

地和「人和まで!?」

 

人和「信頼を置いた者にしか許されない真名を呼んでも構わないとなれば、応援してくれる子達にとって・・・私達は、名前を呼ぶだけでも特別な存在になれる。」

 

地和「うぅ・・・ちぃの真名は、ちぃだけのものなのに。」

 

人和「ちぃ姉さん。もともと選択肢なんか無いのよ。ここで断れば、私達はこの場で殺されても文句は言えないわ。さっきの槍のように。」

 

地和「・・・。」

 

それを聞いて、地和の顔はまた青ざめた。

 

人和「それに、この騒ぎはまだ暫くは尾を引くはず。どこの州も、旅芸人の出入りは厳しく言われるでしょう。」

 

人和「そこを、生かしてくれる上に、活動するための資金を出してくれて、自由に歌っていいなんて・・・正直、破格の条件だと、私は思う。」

 

人和「・・・活動資金も出してくれるのよね?」

 

華琳「構わないわね、栄華。」

 

栄華「それは・・・貴女達の働き次第ですわね。」

 

栄華「案としては悪くありませんけれど、それが私達が兵を集める経費に勝る効果を出せないようでは・・・お金を使う価値はありませんんもの。」

 

人和「もちろん、やるからには成果は上げてみせるわよ。私達としても当分は情報収集が必要だけれど・・・その結果次第で援助を打ち切ってもらっても構わないわ。」

 

栄華「あら。少しはお金の使い方が分かっている方がいらっしゃるようですわね。」

 

人和「当然。誰にモノを言ってるの?」

 

一刀(え、何この空気・・・。)

 

栄華「・・・。」

 

人和「・・・。」

 

そして、この二人の間に火花が散り、そして、

 

栄華「・・・結構。なら、良い報告を期待させていただきますわ。」

 

地和「けど、援助の打ち切りはともかく・・・用が済んだからって、殺したりしないわよね?」

 

華琳「栄華の言うように、用済みになったら支援を打ち切るだけよ。」

 

華琳「けれど、大陸一の歌い手になるつもりなのでしょう?もし本当にそうなれたら、そもそも私の支援が必要かさえ怪しい所ね。」

 

そう言い、華琳は三姉妹に発破を掛けた。

 

地和「・・・面白いじゃない。なら、あんたがちぃ達を切るより早く、ちぃ達の方からあんたの支援なんかもういらないって言ってやるんだから。」

 

華琳「期待しているわよ。・・・喜雨もこれで良くて?」

 

喜雨「うん。・・・一つ付け加えるなら、これからも辺境の村は回り続けて欲しいかな。あなた達が来てくれて嬉しかったって言ってる人、結構多いんだ。」

 

天和「あ、それならお姉ちゃんも分かる!小さな村の人達って、お姉ちゃん達の事、すっごく喜んでくれるんだよね。もちろん行くよー!」

 

地和「よし!なら決まり!」

 

天和「・・・はいいんだけど。えーっと。結局、私達は助かるって事でいいのかな?」

 

人和「そうよ!しかも、これからも歌い続けられるのよ!」

 

華琳「ああ、そうだ。」

 

地和「ちょっと・・・まだあるの!?これ以上の条件は飲めないわよ!」

 

華琳「舞台に立つ者なら、幕引きはすべきでしょう?次の舞台に立つ前に、まずそれをなさい。・・・この幕引きの報酬をもって、最初の援助とさせてもらうわ。」

 

人和「・・・断れば、その時点で支援打ち切りって事ね。」

 

地和「幕引きって・・・いったい、何をさせるつもりなのよ。」

 

そして、幕引きの後、三姉妹が、仲間に加わったのであった。

 

 

 

 

兗州・陳留

 

 

 

 

華琳達は陳留に帰還したが、

 

一刀「・・・ええっと、だな。」

 

帰って早々に招集をかけられた。

 

香風「おなかすいた・・・。」

 

季衣「うん・・・。」

 

そんな不満な顔をしているのは香風や季衣だけではなく、真桜や沙和も同じ表情だった。

 

一刀「華琳。今日は会議はしないんじゃなかったの?」

 

華琳「私もする気などなかったわよ。あなた達も宴を開くつもりだったのでしょう?」

 

真桜「宴会・・・あかんの?」

 

真桜がそう言うと、

 

華琳「私はそのために報奨を与えたつもりだったのだけれど?・・・私だって春蘭と閨で過ごすつもりだったわよ。」

 

一刀「おいおい、そういうことは・・・」

 

一刀(もっと小さな声で言ってくれ。)

 

純「あはは・・・姉上らしいですね。」

 

燈「とはいえ、都から大将軍直々の急使が到着したとなれば、応じないわけには行かないでしょう。」

 

一刀「大将軍直々の急使・・・!?」

 

一刀「・・・ええっと、それ、式典とか兵士をずらっと並べたりとかしなくて良いの?」

 

燈「急ぎだから、略式で良いと言われたのよ。」

 

すると

 

霞「・・・すまんな。皆疲れとるのに集めたりして。すぐ済ますよって、堪忍してな。」

 

急使のメンバーの一人張遼がそう苦笑いしながら言った。

 

霞「しっかし、アンタが『黄鬚』曹彰か・・・。」

 

純「そうだが・・・。」

 

霞「いやー、生で会えるなんて、ホンマサイコーやなー!!ウチ、アンタにメッチャ憧れとるんよ!!」

 

純「そうか。それは悪くないな。けど、アンタも強そうだな・・・。」

 

霞「ホンマか!?黄鬚に褒められるなんて、武人冥利に尽きるわー!!」

 

それを見た純は、優しく頭を撫でた。

 

霞「あ・・・ええな、これ。メッチャ気持ちエエ・・・。」

 

すると、張遼はウットリした顔をしたのだった。それを見た秋蘭、稟、栄華、愛紗は指をくわえて見ていたのだった。

 

華琳「純、その辺にしなさい。」

 

純「ああ、申し訳ございません。」

 

華琳にそう言われて、純は張遼から離れた。

 

霞「あっ・・・。」

 

すると、張遼は名残惜しそうな声と表情をしたのだった。

 

華琳「張遼殿。あなたが大将軍・何進殿の名代?」

 

霞「や、ウチやない。ウチは名代の副官・・・ああ、うん。ねねは補佐やから、ウチが副官やな。」

 

華琳にそう言われた張遼はすぐに顔を引き締め、そう答えた。

 

春蘭「なんだ。将軍が直々にというのではないのか。」

 

その言葉に、

 

霞「あいつが外に出るわけないやろ。椅子にふんぞり返って賄の銭数えるんで忙しいんやから。」

 

張遼はそうはっきり言った。その時

 

??「呂奉先殿のおなりですぞー!」

 

呂布「・・・。」

 

呂布とその補佐らしき人が入ってきた。

 

??「曹孟徳殿、こちらへ。」

 

華琳「はっ。」

 

呂布「・・・。」

 

しかし、呂布は何も言わず広間の上座でボーッと突っ立ったままだが、純をじっと見つめていた。

 

??「えーっと、呂布殿は、此度の黄巾党の討伐、大義であった!と仰せですぞ!」

 

華琳「・・・は。」

 

呂布「・・・。」

 

??「して、張角の首級は?と仰せなのです!」

 

華琳「張角は首級を奪われることを恐れ、炎の中へと消えました。残った跡をくまなく探させましたが、もはや骨の欠片すらも燃え尽きており・・・」

 

呂布「・・・。」

 

??「ぐむぅ・・・首級がないとは片手落ちだな、曹操殿。と仰せなのです!」

 

華琳「・・・申し訳ございません。」

 

一刀「なあ、春蘭。」

 

春蘭「女狐に聞け。」

 

一刀「なあ・・・燈。大将軍って、そんなに偉いの?」

 

燈「大将軍は、官軍の頂点にいらっしゃるお方よ。天子様に直にお目通り出来る数少ない職の一人ね。」

 

一刀「・・・当たり前だけど、州牧より偉いんだよな。」

 

燈「それを聞くのも烏滸がましいくらいにね。」

 

桂花「当代の大将軍は何進と言ってね。皇后の姉の元肉屋よ。」

 

一刀「・・・肉屋ねぇ。」

 

呂布「・・・。」

 

??「今日は貴公の此度の功績を称え、西園八校尉が一人に任命する・・・という、天子様のお達しを携えて来た。と仰せなのです!」

 

華琳「は。謹んでお受けいたします。」

 

呂布「・・・。」

 

??「任命式は近日、禁中にて行われる。日取りは改めて伝えるゆえ、待つように。と仰せなのです!」

 

呂布「・・・。」

 

??「これからも天子様を支える諸侯の一人として、日々の職務を全うするように。・・・では、用件だけではあるが、これで失礼させてもらう。と仰せなのです!」

 

呂布「・・・おわり?」

 

??「そうですぞ。ささ、恋殿!こちらへ!」

 

霞「・・・ま、そゆわけや。堅苦しい話で時間取らせてすまんかったな。後は宴会でも何でも、ゆっくり楽しんだらええ。」

 

霞「ほななー。」

 

そう言い、呂布達はその場を後にした。

 

華琳「・・・。」

 

一刀(怒ってる。・・・間違いなく怒ってる。それも、ハンパなく。)

 

凪「・・・。」

 

真桜「・・・。」

 

沙和「・・・。」

 

季衣「・・・。」

 

春蘭「・・・。」

 

華侖「・・・。」

 

柳琳「・・・。」

 

一刀(皆純を見てるな。まあ確かに、この場合は純に任せた方が良いかもしれないな・・・。)

 

そう思って、一刀も純の方を見た。

 

純(ったく、しょーがねーな・・・。)

 

そう思った純は

 

純「姉上。」

 

華琳に話し掛けた。

 

華琳「話し掛けないで!」

 

しかし、華琳はまさに怒ってる雰囲気でそう言い、純を鋭く睨みつけ、絶を突きつけた。

 

一刀「・・・っ!」

 

それを見た一刀は恐怖を感じたが、

 

純「・・・。」

 

純はそれに臆する事なく華琳を睨み返した。

 

華琳「悪いけれど、今何か話し掛けられたら、あなたに斬り掛かってしまいそうなのよ。」

 

純「でしたら、俺はその刃を受け入れ、喜んで死にましょう。ですが、死ぬ前に一つ直言を申し上げても宜しいでしょうか?」

 

華琳「・・・良いわ。言いなさい。」

 

純「姉上のお怒りはご尤もです。ですが、そのお怒りをその手に持ってる絶で皆を斬り殺しては、当主としての器が知れますよ。」

 

華琳「・・・。」

 

純「まずはそのお怒りを鎮め、またの機会に秘めて下さい。そして、その時が来ましたら、その刃で姉上の覇道に反目する敵を斬り殺して下さい。」

 

華琳「・・・。」

 

純「・・・。」

 

そのまま長い沈黙が流れ、緊張がこの部屋を支配した。

 

一刀(華琳・・・。純・・・。)

 

それは一刀だけじゃなく、その場にいる皆も緊張し、汗が流れた。

そして、

 

華琳「・・・ふぅ。」

 

華琳は純に突きつけた絶を下ろし、一つ息を吐いた。

 

華琳「・・・そうね。あなたの言う通り、私が間違っていたわ。」

 

純「ありがとうございます。」

 

華琳「いいえ、礼を言わなければならないのは私の方よ。良く言ってくれたわ、純。」

 

純「いえ、とんでもありません。」

 

華琳「ねえ、純。」

 

純「はっ。」

 

華琳「私はこの大陸を全て手にする事が出来るかしら?」

 

純「姉上以外の何者に、それが叶いましょう。不安でしたら、俺が姉上の道を切り開き、邪魔する奴らを倒します。姉上はその後を進んで下さい。」

 

華琳「・・・そう。春蘭、閨に行くわよ。」

 

春蘭「はっ!」

 

華琳「一刀達も明日は二日酔いで休んでも目を瞑ってあげるから、思い切り羽目を外すと良いわ。」

 

一刀「・・・そうさせてもらうよ。」

 

華琳「純もそうしなさい。」

 

純「では、お言葉に甘えて。」

 

そして、黄巾党の戦いは終わりを告げ、朝廷からの次の使者が来るまでの日々を、いくらか穏やかに過ごすことになったのであった。




投稿できました。

今回は、結構長くなりました。

最後の方はグチャグチャな感じですが、お許し下さい(土下座)

それでは、また。
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