恋姫無双〜黄鬚伝〜   作:ホークス馬鹿

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霞の想いです。


霞の想い

普段動物や虫達がさざめき合うこの場所も、皆シーンと静かで、夜空には美しい月と星があるだけだった。

その中で、純は一人未だ来ぬ待ち人を想い、ふぅっと息を吐いた。

 

純「もうそろそろかな・・・。」

 

そう言って岩場に背を預け、耳を澄ました。すると小川が流れる涼しげな水音に混ざって、木々の枝葉が揺れる音が聞こえた。

 

霞「・・・純ー?」

 

そして、待ち合わせの相手である霞の声も聞こえた。

 

純「霞!こっちだ、こっち。」

 

霞「おー、純~!お待たせ~。」

 

霞「どないしたん?いきなりこんなとこに・・・」

 

そう言いかけた霞だが

 

霞「・・・っ・・・。」

 

小川の周りにある、所狭しと沢山の蝋燭が立てられ、一本一本火が灯っていた。それは、まるで闇の中に浮かぶ幻想的な光景であって、霞は見開いて動きを止めたのだった。

 

霞「・・・これ・・・」

 

純「・・・綺麗だろ?」

 

霞「綺麗、やけど・・・え、これ何?どうかしたん?」

 

純「おいおい・・・この前の約束、忘れたのか?」

 

霞「約束・・・」

 

しかし、霞はまるで思い当たらないのか、ぽかんと口を開けて首を傾げて

 

霞「・・・この時期、なんか祭りでもあったかいな?」

 

そう言った。この台詞に

 

純「・・・本気で忘れてんじゃねーか。」

 

純はがっくりと項垂れた。何時間も掛けて用意したのだから、尚更だろう。

 

霞「ちょ、ちょと待って!思い出す!」

 

純「良いよ、もう・・・」

 

純のへこんだ雰囲気に

 

霞「や、お願いやからへこまんとって!思い出すて!絶対に思い出すから!」

 

霞は必死の形相でそう言い、頭を押さえて唸り始めた。

 

霞「祭りがちゃうんやったら、何かの祝い事・・・?うぅ~・・・何があったっけなぁ・・・。」

 

霞「あ!他にも誰か来るのん?」

 

純「来ねーよ。お前と二人っきりに決まってるだろ。」

 

霞「決まってるやろ、て・・・もしかしてそこんとこが、重要やったりする?」

 

純「・・・どうだろな。」

 

霞「・・・ふたり、きり・・・」

 

純「・・・。」

 

そして

 

霞「・・・あんな、純。」

 

純「んだよ。」

 

霞「ウチの勘違いかもしれへんし、思い上がりかもしれへんし、違ったら凄い恥ずかしいねんけど・・・」

 

霞「・・・これって『雰囲気』やったり、する・・・?」

 

と尋ねた。それに対し

 

純「・・・それ以外、何があんだよ。」

 

純がそう答えると

 

霞「嘘・・・」

 

と驚いた。

 

純「それとも、これじゃ足んねーか?」

 

すると

 

霞「ちゃう!ちゃうよ!!」

 

大袈裟なくらい首を左右に振って、霞は純の言葉を否定した。

 

霞「だってまさか、あんな約束、純が覚えててくれるなんて思わんかった・・・!」

 

純「覚えてるに決まってんだろ。・・・俺だって楽しみにしてたんだ。」

 

純の言葉に

 

霞「純・・・。」

 

霞はほんのりと頬を染め、瞳を潤ませた。

 

霞「どうしよ・・・めっちゃ嬉しい・・・。」

 

この姿に

 

純「あんまし可愛い事言うんじゃねーよ。こっちが照れんだろうが。」

 

と言った。

 

霞「だって・・・」

 

純「ほら、美味い料理と霞の大好きな酒。ちゃんと用意してるからさ。」

 

と純は岩場の多いこの場所で、比較的座りやすい、大きな木の根元の部分に霞を誘い、腰を下ろさせた。

 

霞「純、ウチも何か手伝わんでええのん?」

 

純「良いから良いから。今日ぐらいやらせてくれよ。」

 

そう言って純は落ち着かない霞を手で制し、並べておいた料理皿の上から、埃除けの布を取り去った。

 

霞「うわあぁ、美味しそうやなー!」

 

純「悪いな、つまみ系のもんばっかで。」

 

霞「ウチはこういうんが大好きや。・・・なあ、これ全部純が運んできてくれたん?大変やったんと違う?」

 

純「大した事ねーよ。・・・で、後はコレ!」

 

安心させるように、霞の頭を優しく撫でつつ、隠しておいたとっておきを茂みから取り出した。

 

純「これがねーと始まんねーよな。」

 

霞「わーい♪お酒やお酒やー!」

 

そして、純は盃になみなみと酒を注いで

 

純「ほい・・・どうぞ。」

 

霞に手渡した。

 

霞「ありがとう。」

 

純「ん・・・しょっと。」

 

そして、純は霞の隣に腰を下ろし、自身の分の盃にも酒を注いだ。

 

純「そんじゃあ、乾盃だ。」

 

そう言って、盃を霞に向け差し出すと、霞は上目遣いに悪戯っぽい笑みを浮かべ

 

霞「乾盃って・・・何にやの?」

 

と言った。

 

純「そうだなあ・・・。んじゃあ、宙天に輝く銀月の美しさに。」

 

しかし

 

霞「・・・へ?」

 

霞の反応が鈍かったので

 

純「いやだから、宙天に輝く銀月の美しさに。」

 

と再びそう言ったら

 

霞「・・・それ、誰に教えてもろたん?」

 

と笑いを堪えるような表情で言った。

 

純「何が・・・?」

 

霞「いや、今の台詞、誰かに教えてもろたんやろ?」

 

純「・・・姉上から・・・だよ。」

 

すると

 

霞「あはははははっ!や、やっぱり・・・っ。」

 

と堪えきれず笑ってしまった。

 

純「何で分かったんだよ!」

 

霞「はははっ・・・だって、純にはそんな言葉、似合わんって!!」

 

純「・・・悪かったな。」

 

霞「あははははっ・・・」

 

どうやら霞は相当ツボったらしく、腹を抱えて笑い続けた。それでも酒だけは零れないように死守していた。

 

純「・・・俺もそう思ったんだけど、場の雰囲気を盛り上げるためには、こういう言葉も必要かなと思ったんだよ。」

 

霞「・・・あははははっ・・・」

 

純「・・・あんまり笑うんじゃねーよ・・・。」

 

霞「はははっ・・・ご、ごめんごめん!だっておもろいやもん・・・っ。」

 

純「・・・帰んぞ、俺。」

 

霞「あぁっごめんっ!もー笑わへん!笑わへんから待ってー。」

 

純「・・・ホントか?」

 

霞「ホンマホンマ!宙天に輝く、銀月の美しさに誓うから!!」

 

すると

 

純「ふっ・・・。」

 

純も笑ってしまった。

 

霞「な、おもろいやろ?」

 

純「だな。・・・じゃ、改めて・・・」

 

霞「へへっ・・・乾盃。」

 

純「乾盃。」

 

そして、二人は盃を合わせ、微笑みを交わしながら酒を飲んだ。

大木を背にくつろぐと、二人の間には穏やかな時間が流れた。

 

霞「・・・うん、美味しい。良い香りの黄酒やね。」

 

純「それは良かった。霞のために奮発したからな。」

 

霞「ウチのためて・・・いややわそんな、うまい事言うても、何も出えへんで?」

 

純「別にそんなつもりじゃねーよ。霞のために用意したのは本当だし、この料理だって、灯りだって、全部霞のためだからな。」

 

これには

 

霞「・・・。」

 

純「霞?どったの?」

 

霞は嬉し恥ずかしい表情をした。

 

霞「・・・純がモテる理由、少しは分かった気がする。」

 

純「はっ?んな事ねーよ。」

 

霞「何言うてんの。秋蘭を筆頭に、栄華、稟、愛紗、楼杏。みぃ~んな純にめろめろや。」

 

純「・・・一刀には負けるよ。」

 

霞「まあ、一刀は華琳を筆頭にキリが無いからな~。」

 

霞「でもな・・・ウチ、正直純は顔が良いからモテるんやと思った。」

 

霞「腕っ節も強いしな。」

 

純「んな事ねーよ。」

 

霞「んな事あるって!せやけど、一緒に戦ったり仕事したりしてるうちに、純の魅力はそんな事じゃない。そういう次元の話やないって、ウチにも分かってきてん。」

 

純「俺には分かんねーな。」

 

霞「にゃはは♪そーいうのんも純のええとこやと思うで。」

 

純「・・・そっか。」

 

霞「・・・。」

 

純「・・・。」

 

そして、二人の間に沈黙が流れた。すると

 

霞「・・・。」

 

霞が純の肩に頭を置いた。

 

純「霞?」

 

それに純は少し驚いた。すると

 

霞「あんなぁ、純・・・。」

 

純「ん?」

 

霞「・・・好き・・・。」

 

と言った。

 

純「・・・。」

 

霞「ウチ・・・純の事が・・・メッチャ好きやねん。」

 

純「・・・霞。」

 

霞「抑えられへんねん。好きで苦しいねん。いつも、純の事が頭に浮かんでしまうねん。我慢出来へん。」

 

純「・・・霞。」

 

すると

 

ギュッ

 

霞「純!?」

 

純は霞を抱き締めた。

 

純「俺も・・・お前の事・・・好きだよ。」

 

霞「!?・・・ホンマか。」

 

純「ああ・・・。お前のその天真爛漫で明るい所や、時々見せる可愛い仕草に、俺はお前が好きになった。」

 

霞「純・・・。」

 

純「けど・・・俺には・・・」

 

霞「構へん。秋蘭達がおろうが、関係あらへん。ウチも愛してくれたら、それでええ。」

 

純「霞・・・。」

 

霞「けど・・・今は・・・今だけは・・・ウチだけ考えてくれへんか?」

 

と霞は潤んだ瞳で純を見上げた。

 

純「・・・分かった。」

 

そう言った純は

 

純「んっ・・・。」

 

霞に口付けし、それに霞も

 

霞「純・・・。んっ・・・。」

 

純の背中に手を回し、口付けをしたのだった。そして、二人は一つとなり、その様子を美しい月と星が優しく見守っていたのだった。




投稿できました。

上手く書けたかな・・・。

それでは、また。
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