呉軍本陣
孫権「魏延・・・救援に来てくれた事、心より嬉しく思う。そして、曹軍の奇襲を受けたとはいえ、よく逃れたわね。」
魏延「いえ。このような状態で救援もままならず、大変申し訳ございません。」
甘寧「・・・しかし、劉備が本当に援軍を寄越すとは思ってもみなかったぞ。先の曹彰との戦では二度惨敗を喫し、今回は馬超の奇襲に手も足も出なかったと聞いたが。」
魏延「何だと・・・貴様こそ、曹彰の前に手も足も出ず、涙を流したと聞いたが・・・!」
甘寧「・・・貴様!」
この状況に
孫権「思春!口が過ぎるわよ。」
孫乾「焔耶様。ここは穏便に・・・。」
この二人は窘めた。
甘寧「ぐ・・・っ。」
魏延「・・・むぅ。」
孫乾「そう思うのも当然の事ですわ。我々の主、劉玄徳は曹孟徳の弟曹子文に手痛い敗北を喫したのは事実。」
孫乾「しかし共に曹操と戦う盟友への援軍も寄越さぬとあっては、同盟を結んだものとしての名折れ。十万の大軍の前にはほんの僅かな兵ですが、存分にお使い下さいませ。」
孫権「分かったわ。その力、頼らせて貰う。」
魏延「では、今後の攻めは如何様に?」
孫権「曹子文の武勇とその子飼いの兵の精強さは、我らの予想を越えていた。まさに『黄鬚』の異名に相応しく、こちらの兵の肝胆を寒からしめるものだったわ。だからこそここは足並みを乱さず、進み続ける事が大切よ。」
孫権「増援が加わったとはいえ、こちらの戦力は向こうよりも遙かに優勢。城を取り囲み、そのまま押し潰すわ。」
魏延「・・・ふむ。承知致しました。」
しかし
甘寧「敵の奇襲に対応出来なかった余所者の手は借りん。この後は、我々でカタを付ける。」
と言った甘寧に対し
魏延「ほほぅ。その奇襲を防げず、あまつさえ敵将の前に怖じ気づき、涙を流した輩が、何を囀る。」
魏延もそう言って言い返した。
甘寧「何・・・」
魏延「・・・やるか?」
これには
孫権「思春!」
孫乾「焔耶様。」
また二人が止めたのだが
甘寧「・・・ちっ。」
魏延「・・・ふんっ。」
天幕の空気は更に悪くなった。
呂蒙「あぅぅ・・・。大丈夫なんでしょうか、穏様・・・。」
陸遜「さあ・・・?こればかりは、やってみないと分かりませんねぇ。」
この状況を見た呂蒙と陸遜は、不安になったのだった。
合肥城
愛紗「もうすぐ奴らが来るぞ!準備を急げぇ!」
霞「ぎょうさん応援が来たから、これなら十万相手の籠城戦も乗り切れるで。柳琳、ホンマにありがとうな!」
翠「確かにそうだな!」
柳琳「お姉様が、もしもの事を考えて・・・私達に援護をお命じになったんです。」
霞「おー!流石華琳やな!」
柳琳「しかし、来てみたら予想以上の戦果でしたね。」
華侖「純兄は凄いっすよ!あんな大軍相手にどんどん斬り込んでいって!」
栄華「・・・。」
愛紗「しかし、お三方が来てくれたお陰で、私と楼杏殿は良い具合で敵に一撃を加える事が出来ました。ありがとうございます。」
楼杏「私からも、ありがとうございます。」
そんな話をしていると
純「おお柳琳達!救援感謝するぞ!」
純がやって来た。
愛紗「純様。此度の活躍、お見事でした。」
翠「流石純殿だぜ!」
稟「相変わらず、あなたの武勇は軍師としての常識を疑いますね。」
霞「ホンマやで!ウチも付いてくので精一杯やったわ!」
楼杏「とはいえ、私はどうなるか不安でしたけど・・・良かったです。翠さんの奇襲も成功したようですし。」
華侖「純兄は凄いっすよー!」
そして、愛紗達は口々にそう言った。
純「しかし、皆の奮戦のお陰だ!翠も奇襲、見事だったぞ!」
愛紗「はっ!」
楼杏「ありがとうございます!」
稟「はっ!」
霞「おおきに!」
翠「ありがとう!」
それに純は、そう言って皆を褒めたのだった。
栄華「・・・どうして、お兄様はいつもいつも。」
しかし、その中で栄華は、腕を震わせ怒りを必死に抑えながら呟きを漏らした。
純「どうした、栄華?」
彼女の様子に気付いた純は、栄華に近付くと
栄華「っ!!」
パンッ
純「っ!?」
栄華に頬を叩かれたのだった。その時、栄華は目に薄らと涙を浮かべながら唇を噛みしめていた。
愛紗「栄華様!?」
楼杏「栄華様!?」
稟「栄華様!?」
翠「栄華!?」
霞「栄華!?」
華侖「栄華!?」
柳琳「栄華ちゃん!?」
これには、皆が驚いてしまった。
純「何しやがる・・・!?」
これに純は怒ったが
栄華「どうして、どうしていつもお兄様はそうなんですか!!」
純「栄・・・華・・・?」
栄華の剣幕に言葉を失ってしまった。いつも純を見つめる栄華の瞳は、とても優しげなものなのだが、今は怒りに満ち溢れていた。
栄華「お兄様は、そうやっていつも一人で無茶をして・・・!いくらお姉様の覇道の為とはいえ、やり過ぎですわ!」
栄華「もしかして、自分が強いから戦に関して助けが無くても何でも出来ると、本気で考えているのですか!?」
栄華(ーーやめて。)
純「栄華!俺はそんな事一度も思った事・・・」
栄華「いいえ、思ってますわ。そうじゃなかったら、いつもこんな無茶をしませんわ!」
栄華(ーー違いますわ。こんな事を言いたいのではありませんわ。)
栄華(ーー私はただ・・・)
栄華(ーーお兄様の助けになりたかっただけであって、こんな酷い事、言いたくありませんわ!)
純「ちげーって、栄華!俺は・・・」
栄華「っ!来ないで下さいまし!!」
弁明する純を、栄華は強く拒絶した。
純「・・・!?」
その時
翠「栄華、お前・・・!」
栄華「っ、ぁ・・・」
翠に怒鳴られ、そこでようやく栄華は冷静さを取り戻した。だが時既に遅く、目の前には、傷ついた表情をした純の姿があった。
栄華「ぁ、わ、わた・・・私・・・」
自分は今、何を言っていたのか。純に非は無かった。
けれど、純の自ら大軍団に突入したという危険極まりない行動、その姿勢を頼もしいと思いつつ心配で堪らなかった自分と元気な姿を見れて安心した自分、そういった気持ちがごちゃ混ぜになり、今まで蓄積されていた思いが、思わず爆発してしまったのだった。
栄華「っ!」
純「栄華!」
それがいたたまれなくなって、これ以上純の顔を見る事が出来なくなった栄華は、そのまま駆けてどこかへ行ってしまったのだった。
翠「ほっときなよ、純殿。いくら何でもあれは言い過ぎだぜ。」
それを追い掛けようとする純を、翠はそう言って止めたのだが
純「良いんだ、翠。アイツにどう思われても構わねー。栄華は、俺にとって大切な人の一人なんだからよ。」
と言い、純は栄華を追い掛けに行った。
翠「純殿・・・。」
愛紗「翠、お前の気持ちは良く分かる。けど、これは純様と栄華様の問題だ。私達がいちいち口を出す権利は無い。」
霞「愛紗の言う通りや。翠、ここは純に任せた方がええ。」
その言葉に
翠「・・・分かった。純殿を信じよう。」
翠はそう答えたのだった。
柳琳(・・・お兄様、栄華ちゃんをお願いします。)
その時、柳琳は純の背中を見てそう思ったのであった。
とある部屋
栄華「・・・うっ・・・ぐすっ。」
一方栄華は、とある部屋の寝台に顔を埋め、声を押し殺しながら涙を流した。
栄華「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。」
そして、ずっと謝罪の言葉を口にしていた。それは勿論、純に対してだ。
本当はあんな事を言うつもりはなかった。にもかかわらず、純を傷付けてしまった。悔やんでも悔やみきれず、こうして泣いていた。
ガチャ
栄華「っ!?」
その時、扉の開く音がして
純「栄華・・・。」
純の声が聞こえた。
栄華「・・・お、兄様・・・。」
それに栄華は、顔を上げた。すると
栄華「お、お兄様・・・!?」
純は、栄華を抱き締め
純「・・・悪かった。」
と謝罪した。
栄華「・・・えっ?」
これには、栄華は混乱してしまったのだが
純「そこまで心配させてしまって、本当に悪かった。けど、俺は幼い頃姉上に誓ったんだ。目標とする衛青と霍去病のような将軍になって、姉上の覇道に貢献するって。その為に、俺は最前線で将兵と共に武をふるってんだ。」
純「けど・・・お前にはいつも心配を掛けてしまったな。本当に悪かった。」
栄華「・・・お兄様。」
すると
ギュッ
純「!」
栄華は純の背中に手を回して強く抱き締めた。
純「栄華・・・。」
栄華「こちらこそごめんなさい、お兄様。やはり、お兄様は何も変わっていないのに、あんな事を言ってしまいましたわ。お兄様・・・。」
そう言って、栄華は大粒の涙を流した。
それを見て、純も抱き締めてた腕を更に強めた。やがて、どちらからともなく身体を離し、互いにそれを名残惜しみながら、見つめ合いそして
純・栄「「・・・んっ・・・」」
どちらからともなく、口づけを交わした。
ただ貪欲に相手を求め、貪るように唇を合わせていき、いつまでもいつまでも・・・交わし続けたのだった。
投稿できました。
前回の奇襲の後のお話で、栄華が怒る場面はゲームには無い内容です。
もし変だったら、ご指摘下さい。
それでは、また。