恋姫無双〜黄鬚伝〜   作:ホークス馬鹿

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67話です。


67話

玉座の間

 

 

 

 

 

 

純「姉上、お呼びと聞き参上致しました。」

 

すると

 

霞「純ー!久し振りやなー!」

 

楼杏「純さん、只今戻りました。」

 

霞と楼杏が玉座の間にいた。

 

純「おおー二人とも、ご苦労だったな!」

 

霞「ま、ちょっと休みってだけで、すぐ合肥にとんぼ返りやけどな。」

 

純「そっか・・・。姉上・・・」

 

華琳「ええ。あなたを少し驚かせようと思ってね。」

 

純「成程・・・姉上らしい。」

 

純「それで、状況はどうなんだ?」

 

楼杏「一進一退ね。今合肥を攻めてくるのは主に程普や呂蒙のといった将なんだけど、向こうも牽制以上に仕掛けてくるつもりもないようね。」

 

霞「恐らくやけど、純とウチが蹴散らした分の兵を育てるので手一杯なんやないかな・・・?」

 

純「成程・・・。」

 

華琳「なら・・・建業攻略の準備は整ったから、今度はこちらから攻める番ね。」

 

純「ひとまず、長江の渡河地点として濡須口を確保しようという話になっていますが・・・その辺の話もコミで一事帰還させたって事ですか。」

 

華琳「そういう事よ。」

 

華琳「けど、今日は酒を振る舞おうと思ってるの。あなたも付き合いなさい。」

 

純「分かりました。なら、あの酒を使うのですね?」

 

華琳「ええ。今日はそのつもりよ。」

 

純「なら、久し振りに姉上の楽も聞きたいですね。昨日の夜、姉上は琴を弾いてましたよね?」

 

華琳「ええ、そうよ。」

 

一刀「え、昨日の琴って、女官や楽士の誰かが弾いてたんじゃないのか?無茶苦茶上手かったぞ?」

 

栄華「お姉様なら、あのくらい当然ですわ。琴もですけれど、鼓も打つし笛や笙もお吹きになりますわよ。」

 

一刀「マジか・・・。」

 

栄華「けど、お兄様は楽はお好みになりませんでしたわね。」

 

一刀「そうなのか?」

 

純「まあな。」

 

すると

 

華琳「その事、純はよくお父様に叱られていたわね。」

 

と華琳はからかうような顔で言った。

 

純「俺の性に合わないので。」

 

これに純は、そう言って顔を背けた。

 

一刀(純らしい・・・。)

 

そんなこんなで、夜を迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

一刀「純。華琳が俺達にくれる酒って、そんなに良い酒なのか?」

 

純「ああ。なんでも、天子様に献上する予定だった酒の一部だからな。」

 

一刀「へえ。そこまで・・・!」

 

霞「なら、ウチらも味わって飲まんとな!」

 

純「そうだな。皆と一緒に飲むか!」

 

霞「ええな、それ!ええやろ、愛紗!」

 

愛紗「そうだな!」

 

一刀「良いのか、純?」

 

純「兵にやる分は別にしてるし、構わねーよ。美味ー酒は皆で飲んだ方が美味ーよ。」

 

純「そうだ、翠と楼杏に秋蘭そして稟と風も呼んでおくか。」

 

霞「ええな、それ!純の軍団全てを呼ばんとな!」

 

純「なら、今日は月が綺麗だし、良い場所取って皆で飲むか!」

 

霞「よっしゃ!ならそれで決まりや!ほな、また後でな!」

 

そう言って、霞は翠と楼杏に秋蘭、そして稟と風を呼びにその場を後にしたのだった。

 

純「一刀も遠慮無く飲んで良いぞ。」

 

一刀「ああ!」

 

純「そんじゃあ、俺は場所取ってくる。」

 

そう言い、純もその場を後にした。

その時

 

一刀「・・・あれ。この音って。」

 

どこかで琴の音が聞こえた。

 

一刀「・・・。」

 

一刀は琴の音に誘われるように、音のする方へ足を向けた。そして、東屋に到着すると

 

一刀「・・・本当だった。」

 

華琳「ああ、一刀。どうかしたの?」

 

月光の下、華琳が細い指でゆったりと琴を爪弾いていた。

 

一刀「いや・・・琴の音が聞こえたからさ。華琳が弾いてるのかなと思って。」

 

その姿に見惚れた一刀だったが、すぐに華琳の言葉にそう答えた。

 

華琳「少し興が乗ってね。暇なら聞いて行きなさい。」

 

一刀「あ、良いんだ。」

 

華琳「別に秘密にしているわけではないもの。聴衆が貴方でも、いないよりは良いでしょう。」

 

一刀「なら、ありがたく聴かせてもらうよ。」

 

そう言って、一刀は東屋の一角に腰を下ろして、琴の音に集中するため、そっと瞳を閉じた。

 

華琳「そういえば、一刀にこうして聴かせるのは初めてだったかしらね。」

 

やがて聞こえてきたのは、いつもよりずっとクリアな、華琳の音色だった。

 

一刀「琴の音は前から時々聴いてたけどね。女官か楽士の誰かが弾いてるものだとばかり思ってたよ。」

 

華琳「そう・・・。」

 

そのメロディは、以前一刀が聴いてたのと同じ穏やかなものだった。ただ一つ違うのは、それが遠くから聞こえるものではなく、目の前で奏でてくれるって事だった。

それは一刀の想像した以上に幸せで、心地の良い時間だった。

 

一刀「・・・華琳は、さ」

 

華琳「・・・何?」

 

一刀「ずっとこうしてるつもりはない?」

 

この質問に

 

華琳「ないわよ。」

 

華琳はあっさり答えた。それも平然としたもので、メロディも揺らがなかった。

 

華琳「孫策の振る舞いでも、劉備の理想でも、この大陸を守る事は出来ないもの。」

 

一刀「・・・。」

 

華琳「・・・何?」

 

一刀「いや、一言でそこまで返されちゃうと、言うことなくなっちゃうなって。」

 

一刀(たった一言で五手も十手も読むのが華琳だって、勿論知ってはいるんだけど。)

 

一刀(思考が早すぎて、こっちがそれに追い付けない。純はお姉さんの華琳を信じているとはいえ・・・。)

 

華琳「劉備の理想が気高く、美しいのは否定しないわ。けれどそれは、大陸だけではない・・・その先までを全て平和にした後に掲げるべき理想よ。」

 

一刀「今掲げても、董卓みたいになるって事?」

 

華琳「既に董卓が血抜きを終えている分、少しはマシでしょうけれどね。」

 

一刀「・・・でも、朝廷は綺麗になったけど、戦場に流れる血は変わらないよね。」

 

華琳「それはあの子も分かっているでしょう。」

 

一刀(分かっててなお、旗を掲げる事をやめない・・・か。)

 

一刀「辛いな。」

 

華琳「それがあの子の選んだ道だもの。私達が口を挟む筋合いはないわ。」

 

華琳「そういう意味では、まだ孫策の方が現実を見据えているでしょうね。」

 

華琳「・・・もっとも、あれも進む道を血に染めるばかりで、その先に平和な世があるようには思えないけれど。」

 

一刀「霞がよく言ってる、戦いにしか生きられないってやつ?」

 

華琳「まさに、江東の虎と言われた孫堅そのもの・・・虎の子は虎とは良く言ったものだわ。」

 

一刀「だったら・・・華琳は?」

 

華琳「・・・私?」

 

一刀「前に、占い師に言われただろ。・・・乱世の奸雄か、治世の能臣だって。」

 

一刀「・・・華琳が純の活躍で大陸を手に入れて、戦いが終わって・・・治世になったら、華琳はどうなるのかなって。」

 

一刀(治世の理想に生きる劉備。乱世でしか生きられない孫策。なら、どちらの生き方も示された華琳は・・・。)

 

しかし

 

華琳「さあ・・・どうかしらね。」

 

手元からのメロディは、その問いにも乱れなかった。けれど、弾いた弦の一音は、さっきまでよりどこか楽しそうにも聞こえた気がした一刀だった。

 

華琳「ただ一つ分かっているのは、私が純の活躍で大陸に覇を成したなら・・・私は誰に仕えるわけでもなくなるという事だけれど。」

 

一刀(そっか。主となった時点で、もはや臣じゃなくなるんだもんな。)

 

一刀「・・・結局、能臣の華琳は見られないままか。」

 

華琳「ふふっ。それは貴方の妄想の中だけに留めておきなさい。」

 

そう華琳は言った。すると

 

華琳「ただ・・・そうなった後に心配なのは、純ね。」

 

と言った。それと同時に、僅かにメロディが乱れた。

 

一刀「純?なんで?」

 

華琳「あの子は生まれながらの武人。孫堅と孫策によく似て、乱世にしか生きられない子よ。もし泰平の世が来たら、純はどうなってしまうのか。私が一番憂いているのは、そこね。」

 

そう言い、華琳は姉の顔になった。

 

一刀「・・・華琳は純の事、しっかり考えてるんだな。お姉さんの顔になってるよ。」

 

華琳「当然よ。私にとって、純はたった一人の大切な可愛い弟よ。あの子にもしもの事があったら、私は迷いなく命を絶つわ。」

 

そう言い、華琳は強い意志を込めた目でそう言った。

 

一刀「そっか・・・。」

 

一刀(ホント、弟思いの優しいお姉さんだな・・・。)

 

その時

 

純「お、一刀、やっぱりここか。それに、姉上も。」

 

純が皆を連れてやって来た。

 

一刀「純・・・それに、皆も。」

 

純「姉上の琴の音も聞こえたからな、だから皆も連れてきた。」

 

純「姉上、お邪魔でしたか?」

 

華琳「構わないわ。」

 

季衣「時々聞こえてくる琴って、華琳様だったんですねー。ずっと誰だろうって思ってました。」

 

栄華「でも、こうして皆で聴くのも久し振りですわね。・・・昔よりも、随分と人が増えた気がしますけれど。」

 

桂花「ほら。アンタはどきなさいよ。そこは私が座るのよ!」

 

一刀「はいはい。俺は十分楽しませてもらったから、今度は皆が聞いて。」

 

喜雨「霞さん、そのお酒って、もしかして・・・」

 

霞「せやで。ウチらがもろうた酒やから、誰と飲んでもかまへんよな?華琳ちゃん。」

 

華琳「勿論。好きになさい。」

 

燈「なら、ありがたくいただきましょう。流琉ちゃん。」

 

流琉「はい・・・皆さん、盃は行き渡りましたか?」

 

真桜「ここまで揃ったんなら、とりあえず乾杯やな!」

 

沙和「え、乾杯とかするの?何に?」

 

純「そうだな。姉上と・・・我らが曹魏に!」

 

しかし

 

華侖「そー・・・ぎ?曹魏って何すか?」

 

と華侖が聞いた事ない言葉を口にした。

 

純「昔、姉上と一緒に話した時、もし新しい国を興すならどういった国名が良いか話したんだ。その時に決めたのが、魏なんだ。」

 

純「良いですよね、姉上。孫策も呉を名乗ってますし。」

 

華琳「そうね。それも良い機会かもしれないわね。・・・純。」

 

純「はっ。ならば、改めて・・・姉上と、我らの国・曹魏に!」

 

「「「乾杯!!!」」」

 

そして、皆酒が進んだ頃

 

華侖「華琳姉ぇ、純兄。あれ、あれやって欲しいっす・・・!」

 

と華侖が華琳と純にそう言った。

 

華琳「そうね。あれをやるのは久し振りだけれど・・・」

 

純「まあ、いっちょやってみますか?」

 

華琳「・・・そうね。」

 

一刀「・・・あれって?」

 

秋蘭「琴を奏でながら、即興で詩をお作りになり、それを純様が剣舞するのだ。私達も聞くのも見るのも久し振りだな。」

 

一刀(即興って・・・アドリブって事か?)

 

そう思っていると

 

華琳「さて・・・」

 

華琳は、琴の調子を確かめるように一音鳴らした。

 

華琳「純、準備は良いかしら?」

 

純「大丈夫です。姉上も、いつでもどうぞ。」

 

そして、琴の音色と、穏やかな華琳の声。そして、純の美しい剣舞が始まった。

 

「酒に対しては当に歌うべし・・・」

 

「人生幾何ぞ・・・」

 

「譬えば朝露の如し・・・」

 

「去る日は苦だ多し・・・」

 

「慨して当に以て慷すべし・・・」

 

「幽思忘れ難し・・・」

 

「何を以てか憂ひを解かむ・・・」

 

「惟だ杜康有るのみ・・・」

 

これを見ていた皆は

 

桂花「ああ・・・華琳様・・・純様・・・。」

 

春蘭「内容は分かりませんでしたが、とても良かったです・・・!それに、純様の剣舞も、中々でした!」

 

秋蘭「純様・・・。」

 

栄華「ああ・・・お兄様・・・。」

 

稟「純様・・・。」

 

楼杏「純さん・・・。」

 

など、華琳の美しい歌声とその詩、そして純の剣舞に見取れ、感動していた。

 

一刀(す、凄い・・・。この有名な詩を生で聞けるなんて・・・。)

 

一刀も、史実曹操が唄った詩を生で聞けて、感動していた。

 

華琳「ふふっ、ありがとう。」

 

純「久し振りだったから、どうかなと思ったが・・・。満足できたようで何よりだ。」

 

すると

 

純「姉上、もう一曲やりましょうよ。」

 

と純が言った。

 

華琳「ええ、そうね。」

 

すると

 

春蘭「おおっ!!もう一度ですか!!」

 

霞「もういっちょやー!!」

 

と周りも盛り上がったため、もう一曲弾き、純も舞った。

 

「神亀寿しといえども、なお竟る時あり・・・」

 

「騰蛇は霧に乗ずるも、終には土灰となる・・・」

 

「老驥は櫪に伏すも、志は千里に在り・・・」

 

「烈士暮年壮心やまず・・・」

 

「盈縮の期は、但に天のみに在らず・・・」

 

「怡の福は、永年を得べし・・・」

 

「幸甚だ至れる哉・・・」

 

「歌いて以て志を詠ず・・・」

 

そして

 

桂花「ああ・・・華琳様・・・純様・・・。」

 

春蘭「先程同様、内容は分かりませんでしたが、とても良かったです・・・!純様の剣舞も、中々でした!」

 

秋蘭「純様・・・。」

 

栄華「ああ・・・お兄様・・・。」

 

稟「純様・・・。」

 

楼杏「純さん・・・。」

 

皆それぞれ大きな感動を呼んだ。

 

一刀(これも有名な詩だ・・・。凄い・・・。)

 

一刀も、違う感動をした。

 

純「姉上、見事な詩でしたよ。」

 

華琳「ふふっ。あなたも、中々の剣舞だったわよ。」

 

純「ありがとうございます。」

 

そして、宴は更に大盛り上がりになったのであった。




投稿できました。

曹操の詩は、何か感動しますね!!

何と言葉で表したら良いか・・・!!

曹操って確かに冷徹なイメージが出てくるけど、この詩を読んでみると、実は結構人間味溢れる人だったのかなぁって、個人的には思いますね。

僕は、曹操の友達でも、身内でもないですけどね・・・(笑)

後、曹操の『短歌行』はもうちょっとありますが、お許しください。

詳しくはネットで調べて下さい。

それでは、また。
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