揚州・建業
孫策「・・・そう、曹彰は合肥から動かずか・・・。」
太史慈「だねぇ。それ以前に、劉備の方を先に何とかするもんだと思ってたけど。」
周瑜「蜀の諸葛亮は、漢中には堅固な砦があるため、迂闊に攻められないと言っていた。謂わば漢中全体が堅固な要塞のようなものだ。その間にこちらを落とせば良いとでも思っているのだろう・・・舐められたものだ。」
黄蓋「いずれにせよ、儂らが南部を統一するまで待って、その上前をはねるつもりなのじゃろうな。効率が良いと言えばそれまでだが・・・あまり褒められた方法ではないのぅ。」
孫策「曹操としては、弟の曹彰に多すぎたお釣りの取り立てを任せただけでしょ。確かに官渡で夏侯惇から貰ったお釣りはちょっと多かったわ。」
孫尚香「もしかして姉様・・・!」
孫策「まさか。父祖から受け継いだこの江東の地、ようやく国まで興したっていうのに・・・むざむざくれてやるものですか。」
魯粛「うぅ・・・やっぱり戦争になるんですねぇ。」
孫尚香「あったりまえでしょ!曹彰なんてシャオが追い払っちゃうんだから!」
張昭「だが、曹彰の武勇と軍才は確かだ。姉の曹操も援軍を出してきたため、その数五十万だ。濡須口を総攻撃する算段だろうな。」
周瑜「それか・・・」
その時
程普「・・・大変よ。」
張昭「どうした粋怜。お主、濡須口に行っておったのではないのか?」
程普「急使が来たからこちらに伝えに来たのよ。皖城が落とされたわ。合肥から別働隊が出ていたみたい。」
程普が皖城陥落の知らせを持って来た。
張昭「・・・何じゃと!?」
黄蓋「ふむ・・・一足遅かったか。」
魯粛「皖城が押さえられたって事は・・・濡須口から渡るのは諦めて、もっと上流から長江を渡るつもりなんでしょうねぇ。」
孫策「で、冥琳。どうするの?策はあるんでしょ?」
周瑜「皖城が落とされるのも考えの内にはある、案ずるな。」
孫策「なら、冥琳に今回の作戦の全権を任せるわ。呉の大都督として私達の総力を使い、『黄鬚』曹彰を追い散らしてみせなさい。」
周瑜「任されよう。」
孫尚香「どんな作戦なの?シャオも今回は出番、あるわよね!」
周瑜「無論です。小蓮様は、濡須口で思春達と合流し、皖城の奪還にお向かい下さい。濡須口は蓮華様がいれば大丈夫でしょう。」
孫尚香「分かったわ!」
周瑜「梨晏と包は使者として長江を遡り、成都へ向かってくれ。何をすべきかは・・・分かるな?」
太史慈「もぅ・・・しょうがないなぁ。」
魯粛「ひゃわわ・・・分かりますけどー。梨晏様の補佐って、包よりもっと偉い誰かが行くべきじゃないんですかぁ!?」
周瑜「手が足りるならそちらに回している。」
太史慈「私は考えるの苦手だから、包、任せたからねー。」
魯粛「・・・うぅ。この国、新人使いがホントに荒いですよぅ。」
孫尚香「なら、すぐに出陣の支度をしてくるわね!」
周瑜「粋怜殿。濡須口から戻ったばかりですまないが・・・」
程普「蓮華様一人だと流石に心配だし、思春達の後詰めに入るわ。私も小蓮様を手伝ってくるわね。」
そう言い、孫尚香と程普はその場を後にしたのだった。
周瑜「それから、祭殿には・・・」
そう言いかけた時だった。
黄蓋「・・・ふむ。包までこき使うて、それで何とかなる戦か?」
周瑜「・・・何だと?」
黄蓋が突然変な事を言い始めた。
黄蓋「何もかも読みが甘くないかと言うておるのだ。机の上でただ思いつくだけなら、それこそ袁術でも万策を思いつこうが・・・ここは、戦場じゃぞ。」
魯粛「ひゃわっ!?祭様?」
周瑜「どういう事だ?何か言いたい事があるなら、今の内に言っておいてもらおうか。」
黄蓋「いかな権謀術数を用いようと、十万の兵で『黄鬚』と名高い勇将、曹彰率いる五十万の大軍団は迎え撃てぬ・・・そういう事だ。軍師殿。」
周瑜「聞き捨てならんな。その五十万の兵を一万の兵で迎え撃てるようにするのが我ら軍師の仕事・・・私はそう思っていたのだが?」
周瑜「それに、曹彰軍は確かに精鋭だが、隙も多い。兵は水辺の戦いに慣れておらず、南部特有の病に抗う術も持ち合わせていないだろう。」
周瑜「そこを突けば、多少の戦力差など・・・」
黄蓋「あくまでも理想であろう。実際には、五十万の軍勢を目にすれば、威に圧されて自然と膝を折るのが人の常というものだ。ましてやその軍勢を率いるのが、あの『黄鬚』曹彰なら、尚更の事。」
張昭「祭、言い過ぎじゃぞ。慎まんか!」
これには張昭も注意したが
黄蓋「そうはいかん。儂は堅殿から孫家の事を託されたのだ。」
黄蓋「儂が生きておる間に孫家の血筋が絶えたとあっては、堅殿に顔向けが出来んのでな。それは雷火、お主も同じであろう?」
黄蓋にそう言われ
張昭「・・・むぅ。」
口をつぐむしかなかった。
太史慈「魏の連中が強敵なのは確かだけど、今から負けた後の事まで話してもしょうがないでしょ?」
黄蓋「袁術に呑まれた轍を踏むのかと言うておるのじゃ!」
周瑜「・・・っ!」
黄蓋「策殿。此度の相手はあまりにも強大。袁術や合肥などと同じように考えていると、痛い目どころでは済みませんぞ?」
孫策「けど、袁術は倒したわよ。」
黄蓋「・・・曹孟徳に大きな借りを作ってのう。そして此度は劉玄徳にも借りを作ろうとしておる。」
黄蓋「手段を選ばぬ事が悪いとは言いませぬ。大殿とて、不意討ちやだまし討ち、他にも表には言えぬ勝ち方で何度も戦場を生き延びてこられた。」
孫策「なら、祭はどうすれば良いと?」
その質問に
黄蓋「・・・降伏なさいませ。」
と言った。
魯粛「ひゃわわ!」
孫策「何ですって・・・!」
これには孫策は目つきを鋭くしたが
黄蓋「揚州の州牧を条件に出す程度なら、曹彰も姉の曹操に伝えて降伏を受け入れましょう。そうすれば、孫家の血筋も、この地の安寧も保たれるでしょう。」
黄蓋「あの姉弟は、袁術のような愚か者とは違います。寧ろ策殿に通じる所も多い・・・。」
黄蓋「・・・あるいは一度下るフリをして、改めて時機を待つのも策かと。」
孫策「・・・。」
魯粛「あ、あぅぅ・・・梨晏様ぁ、どうするんですか、これぇ。」
太史慈「それを考えるのが軍師の仕事でしょ・・・。」
その時
周瑜「・・・ふぅ。文台様の代から仕える宿将も、老いぼれたものだな。」
周瑜がそう黄蓋に言った。
黄蓋「・・・何じゃと?」
周瑜「戦わずして王の座を譲り渡すぐらいなら、国など名乗るべきではない。初めから曹彰の陣営にでも何でも加わっておけば良かったのだ。」
黄蓋「ふん。国同士の駆け引きも知らぬヒヨッコが・・・」
周瑜「何と言われようと、今の私は呉の大都督として雪蓮から全軍を預けられた身。あまり無礼ばかり口にするようなら・・・」
黄蓋「ははは。力ずくで来るか?面白い。大都督の肩書き如きで、この黄公覆を黙らせる事が出来ると思うなよ!」
この一色触発の状況に
魯粛「ら、雷火様ぁ・・・。」
魯粛は張昭に助けを求めたが
張昭「・・・。」
張昭は腕を組んで黙ったままだった。
魯粛「ああもうこの人、分かってるのか分かってるフリなのか分かってないんだか、見分け付かないんですけど・・・面倒臭い・・・!」
張昭「せめてそういう事は心の中でぼやけ、包。」
魯粛「ひゃわわ!」
孫策「・・・祭、冥琳。」
周・黄「「はっ。」」
孫策「戦を挑まれた以上、私の中に戦わずして負けを認めるという選択肢はないわ。そして、江東の地を奪われる屈辱も・・・袁術の一度だけで十分よ。」
黄蓋「・・・。」
孫策「それに、もし私が志し半ばで倒れたなら、その遺志は濡須口の蓮華が継いでくれる。蓮華の後は小蓮がね。だから・・・私が死んでも、孫家が途絶えはしない。」
太史慈「雪蓮!そんな話、やめてってば・・・!」
黄蓋「・・・ふむ。後継ぎを決めていただけるのは、儂としても重畳なのだが。」
周瑜「祭!」
黄蓋「別に死ねと言うておるのではないわ。後継者が決まっておれば、無用な諍いも後継者争いも起きぬ。それを喜んだだけだ。」
周瑜「・・・ぐぬぬ。」
孫策「なら、祭・・・」
黄蓋「しかし、それはあくまでも後継者の問題が解決したのみ。儂とても、策殿に死んで欲しゅうはない。それは雷火、お主らも同じではないか。」
張昭「・・・当たり前だ。誰が主の死を願うものか。」
孫策「・・・そう。分かったわ。」
張昭「雪蓮様!」
周瑜「雪蓮。ここは私が。」
孫策「・・・。」
黄蓋「・・・。」
周瑜「・・・。」
そして、暫くの沈黙の後
周瑜「祭。貴公は、今回の戦線から離れて貰う。軍の規律を乱し、臆病者として振る舞った処罰は・・・追って沙汰をする。退がるが良い。」
と周瑜は黄蓋に処罰を言った。
黄蓋「・・・やれやれ。主に生きる道を説けば罰せられ、死へと追いやる佞臣はそのままか。」
黄蓋「それでよろしいのか、策殿。」
孫策「・・・全権は冥琳に預けてあるわ。従いなさい。」
黄蓋「それが御大将のお考えであるならば。・・・失礼する。」
そう言い、黄蓋はその場を後にした。
魯粛「ひゃわわ・・・行っちゃいましたねぇ。」
太史慈「うぅ・・・シャオちゃんが出た後で良かったねぇ。あんな所、絶対に見せられないよ。」
張昭「・・・祭も分かってそうしたのであろうがな。」
魯粛「ホントに面倒臭いですよ・・・ここの人達。」
周瑜「さて。というわけで、ここからの策を改めて説明させて貰おう。・・・雷火殿。」
張昭「うむ。シャオ様と粋怜には後で儂から伝えておこう。」
孫策「・・・。」
その周瑜の様子を、孫策は凝視していた。
周瑜「・・・どうした?」
孫策「・・・何でもないわ。話を続けて頂戴。」
周瑜「ああ。分かった。」
そして、周瑜は今後の作戦を話したのだった。
投稿できました。
毎度の事ですが、ゲームをベースにアレンジしました。
それでは、また。