曹彰軍本陣執務室
純「・・・それは確かか?」
稟「はい。地元の漁師の話によると、この土地の風は北西方向に吹くのが基本ですが、一日だけ東南の風が吹く日があるという事です。」
純「すると・・・東南って事は・・・俺達側だ。・・・そうか!稟、お前はこれを予測したのか!」
稟「はい。恐らく諸葛亮と周瑜はこれを待っております。その状態で火攻めを受ければ、我が軍は壊滅です。」
純「・・・そうだな。」
その時
黄蓋「曹彰。曹彰はいらっしゃるか?」
執務室の外から黄蓋の声が聞こえた。
純「黄蓋か。入れ。」
そして、黄蓋は鳳統と一緒に執務室に入った。
黄蓋「少々話をしたいのじゃが・・・構わんか?」
純「酒の相手ならお断りだ。悪ーが、今はそういう気分じゃねーんだ。」
これに
黄蓋「やれやれ。酒は百薬の長、かの神農大帝も大いに楽しんだというに・・・」
黄蓋はそう言った。
純「聞いた事ねーよ。それで、酒席に誘いに来ただけなのか?」
黄蓋「いや。昼の魏の訓練を見ておっての、少々気になった事があったのじゃが・・・。」
純「何だ?」
すると
黄蓋「・・・その前に、少々人払いを頼めんか?」
黄蓋はそう純に対し言った。
それに対し
純「稟の事なら、気にする必要ねーよ。」
稟「わっ!?じ、純様・・・!」
純はそう言って稟の頭を優しく撫でた。
それを見て
鳳統「あわ・・・。」
鳳統は何かを察したのか顔を赤く染め
黄蓋「・・・ははは。成程成程、それは儂と酒を呑む気になれんのも当然だな。我ながら、何とも間の悪い事をしたものだ。」
黄蓋は笑いながらそう言った。
純「分かったんなら、早く用件を済ませてくれ。俺は途中で邪魔されて、ちと機嫌が悪ーんだ。」
黄蓋「そうよの。ならば、手短に・・・」
そして
黄蓋「今日の訓練、随分と船酔いの兵が多いように見えたが・・・あれは一体どうした事だ?」
と黄蓋は眉間にしわを寄せながら言った。
純「返す言葉もねーな。こちらの主力は陸での戦ばかりでな。実戦での舟戦の経験は数える程しかねーんだ。」
純「舟を操るのは荊州の水軍なんだが、こちらの舟の扱いはともかく、本隊ほど戦慣れしてねーしな。」
黄蓋「ふむ・・・想像した通りか。孫呉の兵はいずれも船上の戦と操船の技に長けておる。兵の数が上でも、これでは技量で押し切られるぞ。」
純「そこをウチの軍師の策で補う、と言いてー所なんだが・・・そこまで理解しているという事は、何か対策でもあんのか?」
黄蓋「うむ。実はそのために、此奴を連れて来た。」
と言い、鳳統に目を向けた。
純「・・・お前は確か、黄蓋が投降に来たとき、一緒にいたな。」
黄蓋「鳳雛と言ってな。呉で儂が面倒を見ておった・・・まあ、娘か弟子のようなものだ。」
そして
鳳統「よ・・・宜しくお願いします・・・。」
と鳳統は挨拶した。
純「良いだろう。話せ。」
鳳統「はい。この辺りの漁師達は、船酔い対策や小さな舟を大きく使うため、舟同士を縄で結ぶ方法を使っています。それを船団で応用します。」
純「そういや、今日の訓練の間にも縄で繋がってる小舟をいくつか見たな・・・。」
稟「はい、私も見ました。」
鳳統「はい。舟同士を繋げば、舟の安定が増しますから酔いにくくなりますし、兵も陸と同じように動けます。」
鳳統「勿論舟の大きさが違いますから、縄ではなく、丈夫な鉄の鎖を使う必要がありますが・・・」
純「・・・けど、そこまで頑丈に繋いだら、火計を防げねーな。」
この疑問に
鳳統「この季節、風は長江北岸のこちらから、向こう岸へと吹いています。風下の蜀呉の連合が火計を使う事はあり得ません。」
鳳統はそう答えた。
純「成程・・・。それで、その鎖はすぐに準備出来んのか?」
鳳統「はい。この辺りでは大きな船も作られていますし、それに使う鎖も用意されていますから。」
黄蓋「実のところ、既に近くの鍛冶屋に話は付けておってな。許可さえ出れば、いつでもこちらに取り寄せられる状況なのだ。」
純「・・・そうか。ならば、その交渉は任せたぞ。細かな指示は風に手配しておく。」
そう言うと
稟「わわっ!?純様・・・!」
純は稟の肩に手を回した。
鳳統「ふわ・・・っ!?」
純「どうした、稟。黄蓋も用は済んだんだから、少しは気ぃ利かせろよ?」
これには
黄蓋「ははは。堅殿もそうであったが、英雄色を好むとはよく言ったものだな、子文殿。夜はまだ長い、存分に愉しんでくれ・・・。鳳雛、行くぞ。」
鳳統「は・・・はいぃ・・・っ。」
そして、黄蓋と鳳統は執務室を後にしたのだった。
稟「・・・純様。」
純「し。まだ外に気配がある・・・。」
そう言われ
稟「・・・。」
稟は黙った。
純「それにしても・・・」
稟「はい?」
純「お前、益々色気が増したな・・・。」
稟「な!?何を言ってるのですかっ!?不埒ですよ!」
純「あはは!・・・ふぅ。そろそろ良いかな?」
純「しかし、ああまで堂々と火計の予告をされるとは思わなかったな。」
稟「そ、そうですね・・・。」
稟(純様の手が私の身体を優しく・・・。ああ・・・熱くなって何も考えられなく・・・。)
純「稟。」
稟「ふぇっ?」
純「はは。何だ、そのだらしねー顔は。」
稟「そ、そんな事・・・」
純「このままお前の相手しよっかなぁ。少し気分が乗ってきたし・・・。どうする?」
稟「え・・・そ、その・・・」
その時
秋蘭「・・・純様。」
純「・・・ん。思ったよりも早かったな、秋蘭。」
稟「え・・・?」
秋蘭の声が外から聞こえた。
秋蘭「申し訳ありません。少し急いで参ったのですが・・・もう少し、辺りを回ってきた方が宜しいですか?」
純「良いよ。稟をからかうのも一段落したし、入りな。誰を連れて来た?」
秋蘭「風を連れて参りました。」
純「そうか。なら、一緒に入れ。」
秋蘭「はっ、失礼します。」
そう言い、秋蘭は風と一緒に入った。
風「おお、稟ちゃん。完全にお邪魔でしたねー。」
稟「ふ、風!」
純「ははは。秋蘭、黄蓋には気取られなかったか?」
秋蘭「はい。翠にも感付かれておりません。」
純「そうか・・・。」
一連の話を聞いて
稟「もしかして純様。まさか・・・!」
稟は全てを察した顔をした。
純「ああ。お前の思ってる通り、ある程度の情報は掴んでいた。」
稟「なら何故・・・?」
純「黄蓋の意見も聞きたかったんだよ。それで、ある程度条件が揃うからな。」
稟「そうですか・・・。」
純「別にお前を疑ったわけじゃねーからな。そこは安心しろ、な。」
そう言って、純は稟の頭を優しく撫でた。
稟「あ・・・はい・・・。」
すると、撫でられた稟はウットリとした目をし、それを見た秋蘭は、ちょっとモヤモヤした気持ちになったのだった。
純「まあいいや。揃った事だし、始めるとするか。」
そして、極秘の話し合いを始めたのだった。
投稿できました。
この戦い、もし曹操軍が勝利したら、100%完全に歴史が変わってただろうなぁ・・・。
歴史にifは厳禁ですけどね・・・(笑)
それでは、また。