恋姫無双〜黄鬚伝〜   作:ホークス馬鹿

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78話です。


78話

曹彰軍

 

 

 

 

その日の夜、純は外の空気を吸いに出ていた。

 

純「・・・。」

 

純(鎖で船酔いする兵も減った。さて・・・。)

 

その時

 

純「風向きが変わった・・・。」

 

純は背後から吹いていた風が、対岸からに変わったのに気付いた。

 

純「成程。稟が言っていたのはこれか・・・!」

 

そう言った純は、陣に戻った。

 

霞「純!」

 

純「黄蓋が火を放ったか?」

 

霞「沙和達が怪しい言うた連中が、予想通りの動きをしおったで。今秋蘭と愛紗が対処に向かっとる。」

 

純「火事の方は?」

 

霞「そっちは風が楼杏達に指示を出して、消火に向かっとる。」

 

純「そうか・・・。」

 

霞「後、呉の船団も近付いてきとる。明かりが無かったから、気付くんが遅れたって。」

 

純「今の兵力差なら、地の利を活かすのは当然だ。稟には風向きが変わった事だけを伝えておけ。俺の軍は?」

 

霞「とっくに準備完了しとる。出られるで!」

 

それを聞いた純は

 

純「ならば俺達も呉の本隊を迎え撃つぞ!」

 

と言い、出撃した。

 

 

 

 

呉の船団

 

 

 

 

甘寧「蓮華様、後もう少しで接敵します。」

 

孫権「・・・そう。」

 

孫尚香「姉様・・・急ごう。祭を見捨てられないわ!」

 

孫権「ええ・・・。」

 

孫尚香(死なないで、祭・・・。)

 

 

 

 

 

黄蓋隊

 

 

 

 

黄蓋達は東南の風を利用して火を使った奇襲を仕掛けたのだが

 

曹彰軍兵士A「でえええいっ!」

 

ズバッ

 

黄蓋隊兵士A「ぐわあぁっ!」

 

黄蓋「く・・・っ!韓当!」

 

黄蓋隊兵士B「こ・・・っ、黄蓋様!お逃げ下さいっ!・・・ぐはっ!」

 

黄蓋「同じ鎧を着た相手を、ここまで迷い無く攻めるか・・・曹彰め、一体どんな手を使ったというのだ。」

 

奇襲が上手く行かず、何より同じ鎧を着てるにもかかわらず攻撃されてる事に疑問を感じていた。

しかし、その疑問はすぐに解決した。

 

沙和「黄色い布を巻いてない相手は敵なの!皆、今日だけは、黄巾を付けてる人を斬らないように戦うの!」

 

秋蘭「苦しかった黄巾党との戦いを思い出せ!あの時瞳に焼き付いた黄色い布、一瞬たりとも見逃すな!」

 

愛紗「とは言え、お前達もあの布は巻いていだがな。」

 

愛紗がそう言うと

 

「「「おおーっ!!」」」

 

愛紗「返事をするな!」

 

返事を返されてしまったのだった。

 

黄蓋「成程な・・・嫌な識別の仕方をするものだ。だがしかし、風は既にこちらに吹いている!火計だけでも成功すれば・・・」

 

しかし

 

真桜「消火が間に合わん船は片っ端から外に押し出し!鎖の付け根の絡繰を押せば、鎖はすぐに外れるようにしとる!」

 

真桜「強度を保ちつつ、簡単に外せる仕掛けなんて無茶ぶりしおってからに・・・けど、これがウチの見せ所や!」

 

真桜「ぽちっとな!」

 

そう言ってあるボタンを押すと

 

黄蓋「な・・・っ!」

 

風「せーの、で押し出して下さーい!せーの!」

 

楼杏「慌てないで‼︎せーの!」

 

連結された船が切り離されたのだった。

また

 

稟「使えそうな船なら、少々壊しても構いません!・・・凪!」

 

凪「はいっ!」

 

凪「はあああっ!!」

 

気弾でぶち壊しただけでは無く、爆発の勢いで炎を吹き飛ばしながら消して、被害を最小限に抑えたのだった。

 

黄蓋「気の爆発や破壊で、火をかき消すじゃと・・・?一体、誰がそんな芸当を・・・」

 

黄蓋「これほどの将兵を束ね、それぞれの特性を活かし、自らも一騎当千とは・・・流石、『黄鬚』曹彰じゃ・・・。」

 

黄蓋隊兵士C「黄蓋様!曹彰の本隊が・・・!」

 

すると

 

黄蓋「く・・・っ。く、くくく・・・はははははっ!」

 

と高笑いした。そして

 

黄蓋「兵を纏めろ!これより我らは、曹彰に最後の一撃を叩き込む!」

 

「「「・・・はっ!」」」

 

そう指示した。

 

秋蘭「そうはさせん!」

 

すると、秋蘭が黄蓋の前に立ち塞がった。

 

黄蓋「夏侯淵か!同じ弓使い故、お主との対決も楽しみにしておったが、ちと早いぞ。出直すが良い!」

 

秋蘭「純様を狙うと公言する以上、そうはいかんよ。」

 

黄蓋「まあ、仕方あるまいの・・・。」

 

その時

 

純「その対決、この俺が預かろう。」

 

愛紗「純様!?」

 

霞「愛紗、ウチもおるでー!」

 

純が現れた。

 

秋蘭「このような場所に・・・危のうございます、純様!」

 

黄蓋「ほほぅ。いきなりお主からか、曹彰!」

 

純「ふんっ!」

 

黄蓋「我が計略、ここまで完璧に破られるとは思わなかったぞ!見事じゃ!」

 

純「テメーこそ、孫呉の宿将に恥じない剛胆無比な振る舞いだったな。敵ながら見事だ!」

 

純「しかし、その呉の宿将も、俺達の掌の上で踊るだけだったという事だな。」

 

黄蓋「ふんっ!その余裕さをかき消し、その首級を取らせて貰おう!」

 

純「やって見ろ!」

 

そして、純達と黄蓋が、激突した。しかし、純達が有利に事を運び、黄蓋を追い詰めていった。

 

黄蓋隊兵士D「黄蓋様・・・ぐはっ!」

 

黄蓋「くっ・・・。最早、これまでか。」

 

黄蓋も、純との一騎打ちに圧倒され、至る所に傷が出来、最早満身創痍だった。

 

黄蓋「せめてとも思ったが、『黄鬚』曹彰に一矢報いる事も出来んか。此奴は更に強くなって先を行く・・・。おのれ・・・。」

 

純「覚悟は良いか?」

 

その時

 

純「・・・孫策達が来たか。」

 

純はそう言って南岸の方に気配を向けた。

 

黄蓋「・・・馬鹿なッ!」

 

これに黄蓋は、驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

呉軍

 

 

 

 

孫尚香「急ぎなさい!絶対に祭の所に辿り着くのよ!絶対に、絶対に間に合わせるんだから!」

 

孫権「祭一人をやらせはしない!総員、櫂を漕ぐ手に力を込めなさい!帰りの事は考えなくて良い、この片道に全てを尽くしなさい!」

 

「「「おおーっ!!」」」

 

孫策「総員、蓮華の乗ってる船に遅れを取ってはならないわよ!」

 

周瑜「蓮華様・・・。小蓮様・・・。」

 

孫策「こうなること、あなたも望んでたんじゃないの?蜀の船団も動き出しているようだけれど。」

 

周瑜「・・・どうだかな。しかし、このまま勢いに乗って、全力で曹彰を叩くのみだな。」

 

孫策「当然!我が国一の忠臣、必ず助け出してみせるわよ!」

 

「「「おおーっ!!」」」

 

 

 

 

 

 

蜀軍

 

 

 

 

 

 

劉備「朱里ちゃん、私ね・・・誰かを犠牲にする作戦は、やっぱり間違ってるって思うんだ。」

 

鳳統「・・・黄蓋さん。」

 

諸葛亮「構いません。ですが、動いた以上は後戻りは出来ませんよ。」

 

趙雲「桃香様がお決めになられた事だ。全力で支えよう。総員、更に船団の速度を上げろ!孫呉の船に遅れを取るな!」

 

「「「おおーっ!!」」」

 

諸葛亮「では、私は後方で指揮を取ります!前線の事は、皆さんにお任せします!」

 

鳳統「朱里ちゃん、私は・・・」

 

諸葛亮「・・・うん。雛里ちゃんは前線の指揮をお願い。」

 

鳳統「ありがとう・・・。」

 

鳳統「それと朱里ちゃ・・・」

 

諸葛亮「誰か舟をお願いします。私は後方に戻ります!」

 

しかし、諸葛亮は鳳統が何か言おうとした事に気付かず、そのまま後方に戻ったのだった。

 

鳳統「あっ・・・。」

 

鳳統(朱里ちゃん・・・。病は、どこまで進行してるの?)

 

その後ろ姿を、鳳統は悲しい顔で見ていたのだった。

 

そして

 

孫策「祭!」

 

周瑜「祭殿!」

 

黄蓋「・・・策殿!冥琳!」

 

孫策達が追い付いた。

 

周瑜「祭殿・・・ご無事か!」

 

黄蓋「どうしてこのような場所に来た!この役目は老兵の役目である事を、雛の子に伝えたはずじゃろう。退けい!」

 

そう言って、黄蓋は孫策達を退かせようとした。

しかし

 

周瑜「退きません!貴女をお迎えに上がったのです、早くお戻り下さい!」

 

そう周瑜は聞かなかった。

 

黄蓋「・・・ふむ。それはちと、難しいのぉ。」

 

しかし

 

黄蓋「・・・何せ、この様じゃ。」

 

誰が見ても分かるように、黄蓋は満身創痍で、既に立ってるのもやっとの状態だった。

 

孫策「祭・・・。」

 

周瑜「・・・祭殿。」

 

黄蓋「お主に打たれた背中が痛うて、しくじってしもうたわ。もう年じゃな。」

 

周瑜「それは・・・!申し訳ありません、祭殿・・・。」

 

この周瑜の謝罪に

 

黄蓋「良い。もはや一線から退けと、体が言うておるのじゃろう。良い頃合いよ。」

 

黄蓋「それに・・・やはり『黄鬚』曹彰は強い・・・。ははは・・・。」

 

すると

 

権・尚香「「祭!」」

 

孫権と孫尚香が現れた。

 

黄蓋「何と、蓮華様に小蓮様まで・・・」

 

これには、黄蓋は驚いた。

 

孫権「祭・・・。」

 

黄蓋「おお。お二人とも、最早お目に掛かれぬと思うておりましたが・・・よもや、ここで叶おうとは。」

 

孫尚香「祭ぃ・・・。」

 

黄蓋「小蓮様にもこの黄蓋秘伝の手練手管、ご教授したかったのじゃがな・・・。」

 

孫尚香「そんなの、これから教えてくれれば良いじゃない!祭より、ずっと良い女になってやるんだから・・・ちゃんと見てなさいよぅ・・・!帰りましょう・・・よ・・・。」

 

黄蓋の姿に、孫尚香は涙が溢れた。

 

孫権「姉様!」

 

孫策「ええ!皆、祭を助けるわよ!総員・・・」

 

突撃しようと号令を掛けようとしたその時

 

黄蓋「来るなっ!ぐぅっ!」

 

黄蓋が満身創痍の身体を押してそう叫び、周瑜に打たれた傷だらけの背中を真っ直ぐに伸ばした。

 

孫策「祭!」

 

黄蓋「聞けぃ!愛しき孫呉の若者達よ!聞け!そしてその目にしかと焼き付けよ!」

 

黄蓋「我が身、我が血、我が魂魄!その全てを我が愛する孫呉の為に捧げよう!」

 

孫策「祭・・・。」

 

黄蓋「この老躯、泰平の世の礎となろう!この赤壁の地より・・・我が母なる長江の底から江東を守る、盾となろう!」

 

孫権「祭!」

 

黄蓋「呉を背負う若者達よ!我が愛しき娘達よ!これからはお主らの望む世を築いていくのだ!思うがままに、皆の力で!」

 

孫尚香「・・・祭ぃ!」

 

黄蓋「しかし、決して忘れるな!お主らの足元には、呉の礎となった無数の英霊達が眠っている事を!そしてお主らを常に見守っている事を!」

 

黄蓋「我も今より、その英霊の末席を穢す事となる!」

 

黄蓋「曹彰!」

 

純「・・・何だ。」

 

黄蓋「儂を討て!そして儂の愚かな失策を、戦場で死んだという誉れで雪いでくれ・・・!」

 

純「・・・良いんだな。」

 

黄蓋「ふん!『黄鬚』曹彰相手に討ち死になら、武人として本望!」

 

周泰「祭様!」

 

甘寧「公覆殿!」

 

黄蓋「何を泣いているのだ、馬鹿者め!早う撤退の用意をせんか!」

 

呂蒙「そんな・・・祭様を置いて・・・!」

 

黄蓋「炎の勢いはまだ残っておる。早く逃げねば、雪蓮様達も危ないじゃろうが!」

 

孫策「・・・祭!」

 

黄蓋「策殿。最後に一目会えて、ようございました。これからの事、宜しくお頼み申します。」

 

周瑜「・・・祭殿。」

 

黄蓋「冥琳・・・。その様子なら、心配ないな。」

 

周瑜「当たり前でしょう・・・あなたがいた時より、良い世にしてみせましょう・・・!」

 

黄蓋「ならば思い残す事もない・・・。」

 

純「もう良いか・・・?」

 

黄蓋「あぁ・・・。さぁ曹子文!」

 

そして

 

純「フンッ!」

 

ズバッ!!!

 

黄蓋「・・・見事じゃ!」

 

純の一太刀を浴びて、孫呉の宿将黄蓋は討ち死にした。

 

策・権・尚香「「「祭ぃぃぃぃぃっ!」」」

 

周瑜「貴様ぁぁ・・・っ!曹彰!」

 

周瑜の怒りに

 

純「俺は一人の武人としての行動を取っただけだ!」

 

と純は答えた。

 

孫策「あなた・・・言うに事欠いて・・・!」

 

孫尚香「祭・・・祭・・・ッ!」

 

泣きじゃくる孫尚香に、もう泣くなと訴えるように、黄蓋は瞳を此方に向けたが、その言葉は漏れる事は無かった。

 

趙雲「・・・遅かったか!」

 

鳳統「そんな・・・!」

 

孫策「・・・趙雲、伏して頼むわ。祭の弔い合戦に力を貸して。」

 

趙雲「言われるまでもない!!」

 

鳳統「黄蓋さん・・・母様・・・。」

 

甘寧「まずい・・・蓮華様、小蓮様、船が沈みます!お早く!」

 

船の様子を見た甘寧は、そう言って離脱させるが

 

孫尚香「いやっ!祭を・・・祭をっ!祭を連れて帰るの・・・!」

 

孫尚香はそう言って黄蓋の骸がある船に近寄ろうとしたが、既に激しい炎に包まれているため、近寄る事が出来ない。

 

甘寧「明命!」

 

周泰「・・・は、はいっ!小蓮様!」

 

孫尚香「祭ぃぃぃぃ・・・っ!!!!」

 

孫権「祭・・・。」

 

そして、抱え上げられた孫尚香達と共に離脱した。

 

愛紗「純様、この船は最早焼け落ちます!ひとまず離脱を!」

 

純「分かった!」

 

そして、純達も焼け落ちる船から離脱したのだった。

 

 

 

 

 

曹彰軍本陣

 

 

 

 

 

風「純様、お帰りなさいませー。」

 

稟「黄蓋は・・・?」

 

純「あの船ん中だ。俺自ら討ち取った。最期まで武人らしかった・・・。」

 

それを聞いて

 

稟「・・・そうですか。」

 

と稟は淡々と答えた。

 

風「恐らく敵は、黄蓋さんの死に団結し、本来以上の力を出してくるかとー。」

 

風「とはいえそれも、想定の内。存分にその力、更にお振るい下さいませ。」

 

純「ならば稟、指揮は任せたぞ。」

 

稟「承知致しました。ならば純様、我らにお言葉を。」

 

純「ああ・・・。」

 

そして

 

純「聞け!魏武の精兵達よ!」

 

純「敵将の誇りある死を心に刻め!」

 

純「その誇りに倣い、我らも自らの誇りを天に向かって貫き通す!」

 

純「己を信じろ!己を信じる戦友を信じろ!『黄鬚』たる俺を信じろ!そして、覇王たる我が姉曹孟徳に勝利を届けろ!その誇りと共に、進め!魏武の兵達よ!」

 

そう覇気を全面に出して純は将兵達に鼓舞した。

 

純「稟!」

 

稟「全軍突撃!魏武に逆らう敵兵全てを、この長江の水底へ叩き落とせ!」

 

「「「おおーっ!!」」」

 

そして、赤壁の戦いが始まった。




投稿出来ました。

祭のファンの方、大変申し訳ございません。

それでは、また。
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