ルディ(♀)、体液魔法を開発する   作:範婆具

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今回は溜め回。シルフィとルディが出会うお話です。


ルディ(♀)とシルフィ(♀)の家庭教師の出会いのお話

「…おおおー-…村の中ってこんな風になってたんだ…」

 

現在、どういう訳か死んだはずなのに異世界でまた生まれ、

女の子の身体になってしまった俺ことルディは生まれて初めて一人で村の中を歩いていた。

 

村のあちこちを歩いてみると、時々いる村人に挨拶をする。

偉丈夫や子供がいる母親、その子供など、いろんな人が俺に笑顔で挨拶を返してくれた。

挨拶しても特に怖い事はなかった。ロキシーがトラウマを溶かしてくれたお陰だ。

…そのロキシーとも体液魔術の試運転の件で色々やってしまったが、今は考えない事にしよう。

 

(正直まだ完全に人が怖くない訳じゃないけど…これは今後の課題だな。)

 

少しばかり問題もあるが、これはもう慣れの問題だ。

時間をかけてゆっくり解決していくしかないだろう。

そして人の交流も楽しかったが、特に俺の興味を引いたのは村の景色だった。

 

(…うわー、すげぇ…色んな色の葉がついてる木があちこちに…)

 

正直、自分の貧弱な語彙力では表すことが出来ない風景がそこは広がっていた。

異世界の植生も関係しているのか、ずっと見ていても飽きない光景がそこには広がっていた。

(せっかくだし、もうちょい見ても…いやいや、

今日は村を半分は見ておきたいし、今は我慢だ!)

 

正直家から植物図鑑でも持ってきてどんな植物が生えているのか確認してみたかったが、

今はそれどころではない。早く村の全体像を把握しておきたいのだ。

正直そこまで急ぐ必要もない気がするが、

一人で外に出たのが初めてな俺はすっかりはしゃいでしまっていた。

 

(次はあっちに行ってみようか…おや?)

 

そこでふと、誰かの声が聞こえて俺は足を止めた。

 

「…おい!いい加減帰れよ魔族!」

 

「消えちまえ!緑髪の魔族!」

 

…おう、いじめですか。

折角いい気分だったのに台無しである。

複数いる子供が泥をぶつけながら相手を罵倒していた。

そのせいですっかりフードは泥だらけになり、ぶつけられていた子は必死にフードを被って耐えていた。

 

(…どうする、止めたいけど今の身体だと止められるかどうか…)

 

男の身体なら割って入って止める事も出来たかもしれないが、あいにくと今の身体は女性だ。

下手に割って入って余計に悪化しました、なんて事になったらしゃれにならない。

魔術で止めるべきか…?それも危ないかもしれない。

もし魔術を使って怪我をさせた場合、いじめっ子が親にチクってパウロにばれるかもしれない。

そうなったらかなり面倒なことになるかも…

などと頭の中で考えていたら、いじめっこが別の動きをし始めた。

 

「…こ、これでも…」

 

手に持っているのは泥ではなく、石…!

いかん、それはまずい!

友達になってくれるかもしれない子が怪我をするかもしれないと思った瞬間、

俺は駆け出していた。

 

「やめろおおおおおおおおおおお!!!!」

 

咄嗟に無詠唱で作り出したウォーターボールを目の前のいじめっ子…

ではなく、地面に向かって思い切り叩きつけた。

 

ビシャアッ!!

 

「おわあっ!?」 「な、なんだぁ!?」

 

目の前で弾けた水の玉が思いっきり地面にぶつかってしぶきを上げる。

水が入らないように反射的に慌てて目を背けたいじめっ子の隙を狙って、

俺は泥をぶつけられてフードを被っていた子を助け出した。

 

「ふざけんなー!」「追えー!」「なんだお前、そいつのなかまか!」

 

「ほら、行くよ!」

 

「えっ、あっ…う、うん!」

 

いじめっ子の怒号を無視してフードを被っていた子と一緒に全速力で走り出す…が、いくらパウロとの修行で鍛えているとはいえ、

あくまで常人の範疇を出ない小娘の速度、しかも普通の子供と手を繋いで走っているのだからすぐに追いつかれそうになる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…!」

 

「ごめんなさい、もうちょっとだけ耐えてくださいね…!」

 

やはり息が切れているのだろう、苦しそうな声を上げるフードの子に対して声をかけると、

ふるふると首を振って大丈夫だと意思を示していた。

なら、大丈夫か。後は…

 

「なんだこいつ、変な水出してきたぞ!」

 

「へんなの使ってくんなー!」

 

「女のくせに生意気だぞ!」

 

 

「生意気で悪かったですね!ほら、女に負けるのが悔しかったらこっちまで来てみなさい!」

 

後ろで文句を言ういじめっこsに対してこちらも挑発。

 

後は目の前の麦畑に飛び込めば…!

 

「よいしょっ!」「ふわっ!?」

 

フードの子よ、危ない目に合わせてゴメン。

後でしっかり謝ろうと心に決めながら一瞬だけフードの子を担いで麦畑に飛び込む。

目くらましようにまたウォーターボールを地面にたたきつけて一瞬だけ視界を制限すると、

いじめっ子達は一瞬あっけにとられたがすぐに麦畑に飛び込んできた。

 

 

「…おい!どこ行ったー!?」「探せ―!」

 

麦畑に飛び込んでがむしゃらに進む。

左右のあちこちから声が聞こえてくる。麦畑のおかげで俺達の姿は見えていないが、

あいつらは俺達を探して回っているのだろう。

 

(…後はあっちに向かって…そりゃ!)

 

「おい!あっちにいるぞー!」「そこかぁ!」

 

無詠唱で距離の離れた場所からウォーターボールを出現させる。

水の玉がふわふわと麦畑の上を漂っているおかげであいつらはすぐに気付いたようで、

見当違いの場所を探していた。後はこれを数回繰り返せば、

子供の体力なら諦めて引き返してくれるだろう。

「…あ、あの…あ、あり…と…」

 

「…もう少ししたらあいつらもいなくなると思うから、それまで待っててね?」

 

「う、うん…」

 

フードの子が小さく遠慮がちに服を引っ張りながら何かを伝えようとしているが、それはもう少し後に聞こう。

ちょっと頬も赤いし、息が上がっているのだろう、乱暴な方法で連れてきてしまったし後でもう一度謝ろう。

そう思いながら、俺はフードの子が不安にならないようにいじめっ子が麦畑から去るまでずっと手を握っていた。

 

「やっぱり…かっこいいなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと…さっきはごめんね。手荒な方法で助けちゃって…」

 

「う、ううん。そんなことないよ!…あ、ありがとう…」

 

いじめっ子達が諦めて帰った後、フードの子と俺は麦畑から出ると、

フードの子から人があまり来ないらしい木の傍で向かい合い、改めて話をする事にした。

俺が先程走らせたり麦畑に突っ込んだりした事を謝ると、

フードの子からは強く否定したが大きな声を出したのが恥ずかしかったのか、顔を赤くして目を背けてしまった。かわいい。

だがしかし、フードを目深に被る前の美形な顔を俺は見逃さなかった。

…これは将来女泣かせに育ちそうな感じのいい顔だな。中性的なのもポイントが高い…

そしてその顔はかなり汚れてしまっている。ちょっと落としてあげた方がいいだろうか。

 

「それと、重ね重ね言うようだけどごめん。

ちょっとだけ前かがみになって?泥を落とすから。」

 

「え?あ、うん…ひゃあっ!?」

 

すごい素直に前かがみになってくれた子のフードをめくると、

少し抵抗していたが泥を無詠唱で出したお湯で泥を流すと大人しくなった。

…正直さっきからやってる事が危ない感じだが、今は目を背けよう。

後は最近考えてた火と風の魔術を合わせて…と。

 

「あ、ありがとう…あ、あったかいね…?」

 

「今乾かしてるから少し待ってね?

服についてるのは後で家で洗ってもらいなよ。」

 

おどおどしながらもなんだか少し楽しそうな顔をしている子の髪に

俺はゆっくりと風を当てていく。正直服もどうにかしてあげたいが、

服までびしょ濡れにしたら風邪をひいてしまうかもしれないのでやめておいた。

この子はいつもこんな事をされてるのだろうか…?

フードの子が着ていた服は泥だらけで、かなり執拗に汚されていた。

少しばかりゼニスの家事を手伝っているせいか、この服の汚れはすぐには落ちない事が分かってしまった。

石をぶつけようとしていた事も腹が立ってしまったが、この場にいじめっ子がいないのにそんな事を考えてもどうしようもない。

今はこの子に声をかけて少しでも支えてあげたいと思った。

 

「あいつら、いつもやってくるの?

反撃しないとずっとああしてくるよ、あいつら。」

 

「え、あ…うん。…そ、その…ボクが、怖くないの?」

 

つい言ってしまった忠告に、少しばかりフードの子はびくりと体を震わせると

こちらを見てぷるぷると震えていた。

その言葉の意味…彼女の髪は、緑色だったのだ。

 

フードの子の髪の色は師匠が前に言っていた、この世界で恐れられているらしいスペルド族と一致する緑の髪。

しかしスペルド族にあるはずの宝石はない。

実はさっき逃げているときに額が少しだけ見えていたので、あの時点でこの子を警戒する理由はなくなっていた。

…どちらかというと、そのピコピコ動いているエルフっぽい耳に興味があるけど。

 

「いや、私は特に怖くないよ?師匠が魔族だったから。君の家族か誰かが魔族だったりするの?」

 

「…!う、ううん…」

 

そこからぽつりぽつりとフードの子は身の上話をした。

どうやら父親は普通の人間、母はエルフのハーフらしい。

父親も母親も特に魔族ではないらしく、隔世遺伝のようなものらしい。

途中から感極まって泣き出してしまったので、

やってしまったと慌てながら俺はその子の頭を撫でたり手を握って落ち着かせることになった。

 

「そ、その…なんで、助けてくれたの?」

 

何とか落ち着いてくれたので、今は二人で村の中を歩いている。

泣き出してしまったのが少し気まずかったのか、フードの子は少し後ろを歩いていた。

…うーん、助けた理由…理由か…

 

「うーん、なんというか…君が気になったからかな?

いじめられてるのが気に食わなかったのもあるけど…」

 

「へっ!?」

 

ヤバい、ごく普通に返事をしようとしたらなんか口説き文句みたいになってしまった。

フードの子も顔を赤くしてしまっている。いや、ナンパではない…よな?

 

「…と、とにかく!その、気にしなくていいから!」

 

「で、でも…今度はあなたがいじめられちゃうんじゃ…」

 

照れてるを誤魔化すためにわざと大きな声で言った俺に、

フードの子は申し訳なさそうに声を小さくして答えた。

いやまぁ、それはあるかもしれんがさっきみたいに何とかなるだろう、それに…

 

「…いいよ。だって私もう友達いるもん。いじめてくるような奴と友達になるのは

あっちが謝らない限りしないよ。」

 

「え?そ、その…友達…いいの?」

 

「うん、その手伝いとかで忙しくない時に一緒に遊べたらなって…ダメかな?」

 

 丁度自分も友達が欲しかったのだ。この世界で初めての友達がこの子なら文句はない。

かなりの美形できっと女の子にもモテるような女の子になる、そんな予感がするし…

何より、この子となら気が合いそうだ。

なので勢いも付けて少し顔を近づけて友達アピールする。

どうだ…どうだ…?

 

「…あ、その…忙しくないので、大丈夫!

こ、こちらこそよろしくお願いします…」

 

なんか頭を下げられてしまった、いや別に友達になるだけだよ?

なんでお嫁に行きそうな台詞を…いやこの子ならお婿か?

 

「う、うんよろしく。私の名前はルディ。

えーっと…君の名前を教えてもらっていい?」

 

「う、うん。私の名前はシル…」

 

おっと、強い風が吹いたな…

シルフィ?なんだかかっこいい名前だ。

 

「シルフィ…風の妖精さんみたいな名前でいいね!

これからよろしく!」

 

「あ…う、うん…!」

 

思わず口に出してしまったが、どうやら高評価だったようで嬉しそうだ。

折角なので手を差し出して握手もしておこう。初の友達が出来た記念だ。

 

「…えへへ。」

 

(…なんか嬉しそうだし、もう少し握ってようかな?)

 

こうして、初めての友達作りは成功し、俺達は握手を交わした。




【おまけ:その後の話】

(手を離さずにシルフィの顔見てたら恥ずかしくなってきた…)

(…うう、なにしてるんだろうボク…
折角友達になってくれた子なのにずっと手を握っちゃった…)

…その後、なんだかシルフィがとても嬉しそうで手を離すに離せず
しばらく手を握り合った状態で向かい合ってしまい、お互いの顔をまじまじと見つめてしまったが、
ちょっと失敗だったかと思うので、後日会ったらなかったことにして話す事にしようと心に決めた。










【おまけ:シルフィside】

家に帰ると、汚れていた服を見てお母さんがびっくりしていた。
なんでもない…と言おうとしたけど、お母さんは何か察したように服を洗濯してくれた。
お母さんには申し訳ないけど、少しだけいい事もあった。
お母さんに友達が出来た事を言うと、嬉しそうにボクの身体を抱きしめてくれた。
ボクの髪が緑色なせいでお母さんやお父さんには迷惑をかけてしまっているけれど、
ボクの事を大切に思ってくれていることがどうしようもなく嬉しくて、ボクも少し泣きながらお母さんの身体をぎゅっと抱きしめた。

「えへへ…友達、友達…」

夜、嬉しくてついベッドの上で呟いてしまう。
いじめられた事は悲しいけど、今日の出来事はそれを帳消しにするくらい嬉しかった。

(…初めての友達があの子だなんて、嬉しいなぁ…)

前から少しだけ見かけた事のある女の子。茶髪にきれいな顔をしていたからよく覚えている。
青色の髪をしていた女の子と一緒にいた子。
今日は見かけた時よりももっと印象が変わった。あの子はとてもかっこよかった。

(えへへ、明日も会えるかなぁ…)

すっかり浮かれた気分で今日の事を思い返しながら、ボクはいつの間にか眠ってしまった。


(…いつか、あの事も聞けるかな。)
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