帰宅部活動記録1945   作:長命寺桜

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空襲の六 帰宅部中国へ行く!

――

あざらし「夏休みだー」

――

 

 

桜「わーい中国だー」

 

夏希「中国だけど、中国地方だよッ!! ここ広島じゃないですか!!」

 

 

――

 

 

 

空襲の六 帰宅部ヒロシマへ行く!

 

――広島駅前――

 

牡丹「でもどうして突然広島なんだ?」

 

桜「いやーなんでも広島は空襲がないらしいからね。今日本では、広島旅行が一大ブームになってるんだよ! 空襲で夜も眠れない日々が続いてたから、鹿と戯れてリフレッシュしよう!」

 

クレア「たまには旅行もいいものよね。私、もう何年も日本を出てないのよ」

 

桜「そりゃー戦時中だもん。いくらお金持ちでも、海外旅行できないのは当然でしょ!」

 

クレア「はぁ……そうよねぇ。戦前はハワイに別荘があったんだけど、どこかのお馬鹿さんが真珠湾攻撃をしちゃったせいで、閉鎖されちゃったのよ。うちの工業地帯も毎日爆撃されちゃうし、ほんと帝国政府ってゴミクズ同然よねー。いっそ潰しちゃおうかしら」

 

 

夏希「……………………あ……あはは」

 

 

クレア「あら? 夏希さん、今までみたいに突っ込んでくださらないの?」

 

夏希「今の発言に触れたら暗殺されそうな気がしますんで……」

 

桜「クレアちゃん! 軍上層部と繋がってるからってー、さすがにクーデター発言はやばいよ! 治安維持法に引っかかる可能性あるよ!」

 

クレア(レイプ目)「うふっ……そんな法律怖くないけど?」

 

夏希「この人が一番怖かったーッ!! お願いだからその目やめてーッ!!」

 

クレア「ところで、花梨さんはどこか行きたいところあるかしら?」

 

花梨「はいっ! 広島と言えばお好み焼きですから、まずはお好み焼き食べに行きたいです!」

 

夏希「お好み焼き……? それ昭和20年にあるんだっけ……」

 

クレア「それはいいわねー! 宮島の前に市内でお食事をしましょー」

 

夏希「しかも朝からって……って朝!? あぁぁさぁああ!」

 

 

牡丹「どうしたんだ夏希。急に大声出して」

 

桜「夏希ちゃん、ご近所迷惑だよ!」

 

夏希「す、すみません。えっと……今日って何月何日でしたっけ?」

 

桜「8月6日だけど……それがどうかした?」

 

夏希「えっ……8月6日ぃいいい!! じ、時間は何時ですか!?」

 

牡丹「えーっと……8時ちょい過ぎだな」

 

 

夏希「なっ……………………!

 

 

花梨「なっちゃんが固まっちゃったー!」

 

 

夏希「ややっ……やばいですよ桜先輩!!」

 

桜「へ? やばいって何が?」

 

クレア「花梨さんの可愛さかしら~はわわ~(*´Д`)」

 

花梨「あぁん、クレア先輩くっ付きすぎですぅ~」

 

夏希「ふざけてる場合じゃありませんよ! 私もどう説明していいか分からないんですけど、8月6日の8時過ぎはとにかくまずいんです! 絶対に広島に居ちゃダメなんですッ!」

 

桜「そんなこといってー夏希ちゃん、鹿が怖いんじゃないのぉー? ほれほれぇ~ツンツン!」

 

夏希「やめろぉおおお!」

 

 

――

あざらし「うーうー やっぱり警報だー」

――

 

 

クレア「ちょっと桜さん、広島には空襲がないんじゃなかったの?」

 

桜「あれー……? 聞いてたとの違うけど……。でもほら、3機だけだよ?」

 

牡丹「それにあれは空襲警報じゃなくて、警戒警報だ! ただの観測機だよ」

 

 

夏希「3機だけ!? 観測機ッ! ま……まっ……まさかエノラ……ゲイッ!?」

 

 

花梨「へぇー、なんだー観測機かぁー怖かったー」

 

夏希「ぼ、牡丹先輩! お願いですからあれを撃墜してください!」

 

牡丹「撃墜? やっ……撃墜はまずいだろ。私達は民間人なわけだし、爆撃しに来たならともかく、観測機を攻撃したらテロリストじゃないか?」

 

夏希「で、ですがあのB-29からはとてつもなく危険な臭いがするんですッ!!」

 

牡丹「し、しかしな……正規軍ならともかく、OSSは敵に回すとやっかいだぞ」

 

夏希「正規軍は何とかできるのかよッ!!」

 

 

――

あざらし「ターバンあざざし!」

――

 

 

桜「あっ、B-29から何かが落ちたよ? この軌道だと、原爆ドーム辺りに落っこちるね」

 

夏希「って、えぇええ! 原爆ドームあるのぉおおお!! いやもう、何でもいいからあの爆弾をブッ飛ばしてえええ!」

 

 

牡丹「まかせろっ! はぁぁぁあああ!」

 

 

夏希「うおっ……牡丹先輩の周囲から青い閃光が!?」

 

花梨「おおっ……あの技は!」

 

夏希「知っているのか花梨ッ!!」

 

花梨「…………あは?=^_^=」

 

夏希「思わせぶりなリアクションとるなー!」

 

 

桜「あれは……電脳制圧《デバッガー・コマンド》だよ!」

 

夏希「知ってる人いたー! で、そのデバッガー何とかはどういう技なんですか?」

 

桜「牡丹ちゃんが編み出した萩月流の究極奥義・電脳制圧《デバッガー・コマンド》。萩月流と並行してあらゆるゲームを極めた牡丹ちゃんは、もはやコントローラーに触ることさえなく、精神をプログラムに直接アクセスして全クリすることが出来るようになった」

 

夏希「なぬー! それもう武術家じゃなくて超能力者ですからー!! って……そんな技が今何の役に立つのー!」

 

 

クレア「今だから役に立つのよ、夏希さん」

 

夏希「えっ……どういうことですか?」

 

クレア「極限まで出力を高められた電脳制圧《デバッガー・コマンド》は、ゲームの理を越えて現実世界に直接作用するの!」

 

夏希「なにぃいいいいい!! 生徒会長かよぉおおッ!!」

 

クレア「いいえ、それ以上よ! 牡丹さんの技は、"校則"による概念リミッターを受ける会長と異なり、その対象・範囲・効果が無制限なのっ……!」

 

桜「そう、牡丹ちゃんの思考がそのまま現実に具現化する! まさに牡丹ちゃんの到達した固有結界なんだよ!」

 

 

夏希「結局ゲーム脳なのかよぉーッ!!」

 

 

牡丹「もう、爆発しなくていいんだよ……秘儀・宇宙葬(そらおくり)ぃいいい!」

 

ドゴーン!!

 

 

桜「ナイシュー牡丹ちゃん! あの爆弾、電離層まで吹っ飛ばされたね!」

 

夏希「あ、ありがとうございます牡丹先輩」

 

 

バチバチバチバチ!!

 

夏希「うわあっ! なにこれー! そこら中の電柱や街灯が火花吹き始めましたよ!」

 

花梨「あれは高高度核爆発によるEMPの影響だよ、なっちゃん」

 

夏希「えっ……花梨が突然意味不明なこと言いだしたんだけどぉー!」

 

桜「夏希ちゃんEMP知らないの?」

 

夏希「いーえむぴー? イギリスのレコード会社ですか?」

 

桜「それはEMIでしょ! EMPというのは、雷とかで発生するパルス状の電磁波のことだよ。その影響で電線に高エネルギーのサージ電流が流れて、負荷のかかりすぎた回路が爆発しちゃったんだよ。これ、中学で習ったよ?」

 

夏希「あんたどこ中出身だよー! そんなもん中学で習ってたまるか!」

 

クレア「まぁ落ち着いて夏希さん、電磁パルスは人体に影響はないから心配しなくていいのよ」

 

夏希「はぁ……分かりましたよ。とにかくみんな無事でよかったです……」

 

 

牡丹「いや、安心するのはまだ早いぞ、夏希!」

 

夏希「まだっ!? どういうことです牡丹先輩!」

 

牡丹「私の電脳制圧《デバッガー・コマンド》は、確かに一時的に『場の量子』を制圧することができる。だがその効果はあくまで限定的なんだよ。『観測者』である私達の意識に少しでも隙が出来ると、『世界』による『揺り戻し』が起きて、均衡を保っていた量子状態が崩れてしまうんだ」

 

夏希「でたよインチキ量子論! てか古武術なのに量子力学ってわけわかんないよ!」

 

 

――

あざらし「インチキ量子論とは、魔法や超常現象の存在を、現代物理学を曲解することでなんとなく肯定する手法だよ。ラノベにおける超能力の解説などに使われるよ。関連ワード:シュレディンガーの猫」

 

花梨「へぇー」

――

 

 

桜「えーっと……つまりはどういうことなの、牡丹ちゃん?」

 

牡丹「つまりはだな。今は何ともないけど、私達が眠ったり死んだりして意識を失えば、広島は核の炎で壊滅するんだ」

 

桜・夏希・クレア・花梨「………………」

 

夏希「って……うええええええええええ!!! じゃあ私達助かってないのぉお!」

 

花梨「ね、眠っちゃわないようにみんなで部屋の四隅に立って、順番に起こし合いましょう!!」

 

夏希「私達は雪山で遭難したのかっ!」

 

花梨「うわーん! でも5人いるから起し合えないよー」

 

夏希「むしろ5人いないと成立しないヤツだよッ!」

 

花梨「ってあれー!? 眠らなくても私達死んじゃいますよー!? やっぱり眠りましょうッ!! だ、だけど眠ったらみんな死んじゃうよーッ!! 一体どうすればー!」

 

夏希「Oh my Goodness!! このままみんな仲良く影葬(かげおくり)されちゃうのぉおおお!」

 

 

桜「ぐはっ……もう……ゴールしていいよね?」

 

夏希「あかんわアホォーッ!!」

 

クレア「私、この戦争が終わったら花梨さんにプロポーズするわ」

 

花梨「クレア先輩……!」

 

夏希「典型的死亡フラグ立てないでくださいッ! てか、隣に居るんだから今すればいいだろォ!」

 

クレア「そ、そうよね! 花梨さん! 『この戦争が終わったら』、私と結婚していただけません?」

 

花梨「は……はい! 『この戦争が終わったら』、わたし、クレア先輩と永遠の愛を誓います!」

 

桜「(//////)」カァァァ

 

 

夏希「だから、『この戦争が終わったら』を付けるなぁーッ!! もう嫌ぁああ! あたし高1で死ぬぅうーッ!! ロイドより先に死んじゃいますぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

 

牡丹「落ち着け夏希。みんなも何か勘違いしてないか? リトル・ボーイが作り出した『因果の量子場』、つまりは『広島』から脱出すれば私達は何ともないぞ?」

 

夏希「ええっ……そうなのーッ!? 牡丹先輩、びっくりさせないでくださいようッ!! 死ぬかと思いましたよ文字通りの意味でー!!」

 

クレア「(くっ……! あと少しで花梨さんと入籍できましたのに!)」

 

桜「なら善は急げだね! 鹿と遊べなかったのはちょっぴり心残りだけど」

 

花梨「お好み焼き食べたかったなぁ……」

 

夏希「そこは我慢するしかないよ」

 

桜「そうそう、命あってのお好み焼きだよ! それじゃ私、電車の時刻見て来るね!」トトトト

 

夏希「あの、ちょっと待ってください! ……って行っちゃった」

 

 

クレア「そうだわ。帰ったらうちのシェフに作らせましょう! みんなでお好み焼きパーティーをするのはどうかしら~♡」

 

牡丹「おーそれ最高じゃないか! 最近イモしか食ってないからな。それに、さっきの技で体中の脂肪使い果たしたから栄養失調気味なんだよ」

 

夏希「何気に牡丹先輩が一番死に近づいてるじゃないですかッ! あたしの乾パン食べてください!」

 

牡丹「これ夏希のおやつだろ? いいのか?」

 

夏希「おやつより牡丹先輩の命の方が大事ですから!」

 

牡丹「夏希お前……うん、ありがたく貰っておくよ!」

 

 

桜「見てきたよー! 電車は全滅だけど汽車は動いてるっぽい! 次の特急に乗って帰ろっか!」タタタタ

 

クレア「それじゃあ私は切符を変更してくるわ」

 

花梨「私は駅弁を買ってきます!」

 

桜「それじゃーレッツ・ゴー!」

 

 

夏希「ウェェェェェェェェイト!」

 

 

桜「な、夏希ちゃん! そんな敵性言語を使ってまで待ってくれだなんて! どれだけ私に待って欲しいの!」

 

夏希「いくらなんでも、このまま帰るのはまずいでしょ道義的に! 広島の人達を避難させないと!」

 

クレア「あっ……夏希さん、言いにくいんだけど、それは無理じゃないかしら」

 

夏希「なんでですか!? クレア先輩がいれば、軍も特高も口出しできませんよね!?」

 

クレア「いえ、そういうことじゃないのよ。なんというか、『量子の因果』は単純な空間だけに作用するわけじゃないの。それは『世界』そのものに直接働くのよ」

 

夏希「……い、意味が分かりません! 日本語でお願いします!」

 

クレア「分かりやすく言えば、一旦死ぬ運命を背負ってしまえば、どんな方法を使ってもそれを変えることはできないの」

 

 

夏希「なーにーッ!」

 

花梨「えっ……じゃあ私達も死んじゃうんですか? クレア先輩、私死ぬのいやですー」

 

 

牡丹「いや、私達が死ぬ心配はない。あの爆弾によって形成されるはずだった私達の『死の因果』は、電脳制圧《デバッガー・コマンド》の衝撃と打ち消し合って完全に消滅している。広島に止まって『揺り戻し』の影響を受け続けない限り、私達に関しては問題はないんだ」

 

 

夏希「だ……だからもう訳分かりませんから! じゃあもういいですよ! とにかく、一刻も早く帰りましょう!!」

 

桜「夏希ちゃんの帰宅スピリットも、入部以来着実に成長してるね!」

 

夏希「今は帰りたいんじゃなくて死にたくないんですよッ!」

 

桜「そうなの? じゃあ帰りにどっか寄る?」

 

夏希「いいですけど……どこ行くんですか?」

 

 

桜「香川!」

 

 

夏希・牡丹・クレア・花梨「おぉッ………………うん?」

 

 

桜「香川に寄ってうどんを消滅させる!」

 

 

クレア「香川……!?」

 

牡丹「消滅?」

 

花梨「うどん!(^^)!」

 

夏希「……え」

 

 

――

あざらし「帰宅部海を渡る!」

 

牡丹「帰宅する時、また海を渡らないとな!」

 

――

 

 

 

――次回予告――

 

夏希「広島を離れ、海路で香川を目指した私達帰宅部。そんな私達の前に、最強の敵、『第38任務部隊』が立ちはだかる! 艦載機に襲われてしまった私の前に現れたのは、ド派手なコスプレをした花梨だった! 花梨は自分が魔法少女であること、帰宅部は『第38任務部隊』を倒すために作られた日本軍の特殊部隊であること、魔法の源は愛国心にあること、そして力をもった私は『第38任務部隊』を倒すための術を学ばなければならないことなど、辛辣に語った。自分の置かれた状況に納得のいかない私だったが、生き延びる為『第38任務部隊』へ対抗する手段を学ぶことを決心するわけないだろーッ! なんだこの予告はーッ!」

 

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