拓馬と『コンビニちゃん』   作:よくかんさん

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その5

 水島隊員の搭乗する強化型D2がマシンガンで残り一体のインセクターを破壊する。

 ゲッターロボアークが逃走したインセクター追ったあと、D2部隊は地上のインセクター軍団の鎮圧にあたった。一体でも多く撃墜しアークが戻るまで戦況を有利にしていく……はずだった。だが、インセクターはまるで戦意を喪失したかのように回避行動すらとらなくなったのだった。

―マジで殺虫剤かけた小蝿みてえにおちてくじゃねえか。

 手に掛けたインセクターが抵抗せずチリになっていく最期に水島は得も言えぬあっけなさを感じた。敵の思惑通りに動かされているようでインセクター軍団を掃討したというのに吐き気すらする。まるで敵の掌の上で何もできずに藻掻いているようだ。

 本当にこれで終わりなのだろうか。敵が何を目的として行動しているか分からず手こずっていたと聞いたが、そのとおりだった。全く状況が読めない。

 水島の小チームも事態の変化に戸惑っていた。このインセクター軍団はアークのゲッタービームで倒される事が目的じゃないのか?これから何があると言うんだ?

 この浮足立つ空気は何かあったときに隙を作るだろうと、水島は緩んだテンションを張るため発破をかけた。

「ハッ、なんだよ。お前らこんなのに手こずってたのかぁ?あーあ、あっけねえったらねえぜ」

『なんだと!!ちっ、こっちはインセクターどもの無茶苦茶な回避行動のせいで一掃作戦がパーなんだよパー。お前のような猪が初っ端からいたら、いの一番に弾切れ起こすだろうさ!』

『まあ、おちつけよ。今回は過程は置いといてアークチームより功績挙げたんだ。いい気分に浸ってようや。はは、今日はうまい酒が呑める』

「バーカ。お前いつも酒じゃねえかよ。あんな臭いだけの飲み物、どこがいいんやら。おい、ぼさっとすんなよ。帰投だ帰投だ」

 不安を飲み込む余裕くらいは出来たろう。「さあ司令に報告するぞ」。そう水島は言葉を掛けるつもりだった。

 水島の乗るD2に警告音が鳴る。それと同時に水島機以外のD2が電池の切れたおもちゃのように動きを止めた。

 通信からは『水島ァ!こちらコントロールが……!』と音声に雑音が重なり、完全に通信が切れたと同時に水島機以外のD2が一斉に墜落していった。

「おい……おいっ!応答しろ!なんだよ…オレのD2だけが無事なのか?何が起きてんだ!?」

 さらに不安を煽る歪んだ音の緊急通信回線アラートが鳴る。

 回線を開くと神司令の姿が現れた。その表情はいつになく険しく、狂気を覗かせる眼をしていた。

「神司令!これはなんです?自分以外のD2が機能を停止し墜落しました!」

「水島、今この街一帯に大規模な電磁パルスが発生している。かなり強力なものだ。そのために各D2が機能を停止した。敷島博士からも説明があったろうが、お前のD2は実験段階だが電磁パルスを無効にできるコーティングが施されている。そのため影響がほぼ出てない。電磁パルスの発生源は……」

 耳の奥がキリキリする。聞かなければならない戦況を脳みそが拒否している。

「街の大広場だ。このままいけば最悪、この街は壊滅するだろう」

 神司令の宣告に、敷島博士の言葉が頭に浮かんだ。

『狂気に飲まれずに平静が保てていると?あっはっひゃ!そりゃあ地獄を見るのぅ』

 敷島博士はいっそ戦うことに狂っていたほうが気が楽、と言いたかったのだろうか?水島は切り離していたい心配を振り払えずにいた。軟弱な自分をD2パイロット失格だと罵倒したい。そうヒステリックに思うことすら、女々しい。

―頼む神様。チビ子をどうか護ってくれよ。オレの大事な家族なんだ。どうか、どうか…どうかっ!

 神様なんていない。多くの戦友を亡くしてそう悟ったはずなのに、それなのにどうしても助けもしない神様に願わずにはいられなかった。

 

*

 

 地上に戻ったアークチームが見たものは無残にも墜落したD2部隊だった。何があったのか各D2への通信を試みたが応答はなかった。

「たった数分の間でこれほどの状況になるとはな……」

 カムイは計器を確認し異常事態の原因を探る。計器は微弱な減衰傾向の電磁波を観測した。

―あのD2のパイロット達は生きてんのか?

「拓馬、気持ちはわかるが今はやめたほうがいいぜ。安心しろよ、みんな生きてる」

 拓馬が留めていた思考は獏に先読まれていた。

「断言するほど今日は見えてるのか」

「まあな。でも、パイロットの安全は保証できない」

 獏はアークが降下するときに自身の予知でパイロットは生きていること、そして今この街一体に禍々しい気が流れていくイメージを見たことを告げる。

「今日は妙に見えるんだよ。赤い霧ような力が一点に集中していくんだ。ハッキリとは見えたんだが、何を表しているのかはその時はわからなかった。もっと具体的に見えてたら……違ったのかもな」

 こういう時の獏の予知は説得力がある。拓馬は経験上信用したが、カムイはその予知に関しては一歩引いた見方をしていた。

「所詮、予知はオカルトだ。データに出せないものを鵜呑みにする気はない」

「それならあの時の幽霊もオカルトじゃねえか」

 あのゲッター線が見せたのはオカルトか?と拓馬の突っ込みにカムイは「そういう事を言ってるんじゃない」とあてつけて舌打ちをした。

「この街に起こっているのはEMP攻撃……電磁波の攻撃を受けた跡が見られた。もし一点に集中していくイメージを見たのなら真逆だな。電磁波とは拡散するもの。獏の見たものは別なものだろう」

 カムイは頭ごなしに否定している訳ではなかった。「なんだよ、そう最初から言えって!」と言う拓馬の声を無視してカムイは状況を説明した。

「D2が機能を停止しているのは高出力の電磁波にやられた可能性がある。ゲッターロボアークはどのような環境でも対応できるよう、電子部品が宇宙線でも故障しない構造をしている。それをオミットして工期を早めることに特化しているのがD2だ。この状況は高出力の電磁波によりショート状態になっているからだと思われる」

 カムイの説明を聞きながらなら、どんな敵が電磁波攻撃をしたのかと拓馬が疑問に思った。と同時に水島からの通信が入る。

「ゲッターロボアーク聞こえるな?こちら水島。今、早乙女研究所は軽微ながらも電磁パルスの影響を受けて、早急な復旧作業に入っている。オレは神司令からこの事態の発生源のデータを取るように言われた。通信が開けなかったときの為にお前たちへの伝言も預かっている。ゲッターロボアークは研究所に帰投し待機せよ、だとよ。それと、D2の野郎どもはまだハジかいてねえから安心しな、間もなく救護車が来る」

 一方的に淡々と伝言を言う水島に、拓馬は違和感を覚えた。さっき送り出した時より言葉に力が、気迫が薄くなっている。

「了解。なあ水島隊員、アンタさっき自分でヒーローは遅れてくるって言ってたよな」

「……そうだな、言ったよ」

「なら気合入れろよ!仲間がいなくなっても一人になっても立ち上がりやがれ、ヒーローってそういうもんだろ?じゃあ俺達は先に研究所へ戻ってるぜ!」

 そう言い残すと拓馬は回線を切りアークを研究所へと跳ばした。

 

 水島の耳に拓馬の声が残る。今この局面でその声は大きな支えになった。

 目を閉じ、集中する。今やるべきことは、D2パイロットとしてやるべき事は……。

 ジジジ……と観測機が異音を発する。水島は、強化型D2から電磁パルスの発生源を『耳』で見ていた。

 そして、目を見開く。モニタには赤黒く光る繭が皮膜を八方に張り出させていた。アレが、街を壊滅させようとしている。

「わかってる……やらせるもんかよ!」

 悲劇を気取るのはオレらしくない。水島はアンドロメダ流国への怒りを闘志に変えた。

 

*

 

 ゲッターロボアークがゲットマシンに分離し早乙女研究所に帰投すると、いつもより廃オイルやグリスに塗れた整備スタッフがわらわらと各ゲットマシンに集まり早々に緊急整備が始まった。

 デッキではアーク号を待ち構えてた整備長らしき男が、緊急パスコードでコックピットのハッチを強制的に開き拓馬を引っつかもうとする。

「ほら整備すっから早くでろ!!こっちは人足りなくて時間ねえんだ!」

「うわっ!?ちょっとやめろ!この服新品なんだ待てよ触んな染みになる!!」

「知るか!普通はそんなカッコで乗るもんじゃねえしオメェが座席のシミになってねえのがオカシイんだ!さっさとでろ!」

「わかったから!だから出るって!」

 油が染み付いた作業手袋につかまるまいと拓馬はなんとかゲットマシンから脱出した。

 コクピットから1歩出れば聞こえなかった怒声が格納庫中を余すことなく響かせていた。ここは修羅場、もはや格納庫内は戦場だった。所員やスタッフ達が生き残った数少ない機材を使い五月雨式に発生するエラーに対応し、絶える間もなく復旧作業に当たっている。誰も彼もほんの僅かな余裕さえなかった。

 その中で待機する事に少し気が引けた拓馬だったが、心で感謝と敬意をはらい、獏、カムイとともに格納庫を後にした。

 

 作戦室へ行く最中、拓馬は思い出したように二人にパイロットスーツに着替えてくると断わると急いで更衣室に駆け込んだ。流石にこの格好のまま作戦室で待機するのは場違いだ。

 荒っぽくロッカーを開けると脱いだジャケットをハンガーに掛け、ジャケットの内ポケットに入れていたプレゼント用のブレスレットを取った。

 本当はこの服でコンビニちゃんとデートに行くはずだった。そしてこのブレスレットを感謝と謝罪を込めて渡したかった。

 ……そうしたら彼女はどんな顔をするのだろう、俺だけに俺の為だけの顔を見せてくれたんだろうかと残念がる拓馬自身がいた。

 そんな自身の気持ちに思わず息を呑む。

「……俺、こんな気持ちだったか?こんなこと考えてたか?」

 

 その気付きは拓馬に衝撃を与えた。急に心臓が締め付けられる。体を駆け回る血が心臓に向けて走り出し、鼓動が早くなっていく。戦場の荒ぶる血の滾りから来る緊張感とは違う、ジリジリと胸の内側が焦がれる感覚。ずっと燻っていた胸のモヤモヤが身を焼く炎になっていく。

 彼女を思い出す時、いつも最初のイメージは『星』だった。黒髪に光る星飾り、その揺らめく銀星の向こうにある、あの笑顔を思い出すことが拓馬には出来なかった。

 いや、出来ないのではない。無意識が本来欲しいと思っていたモノを見えなくしていた。

 初めて彼女の笑顔を見たとき、息が詰まってしまったあのときには、すでにこの焦れた感情は芽吹いていた。彼女の柔らかな笑顔が俺だけにあったならと幼くさもしい欲望を持っていた。だが、彼女にその感情を向けたくないという反発した心理が無意識にあった。

 それはあまりにも青い純情だった。拓馬は無自覚に自身に湧き出る身勝手な独占欲を『嫌だ』と思ってしまっていた。

 戦いが一旦終わったある意味感情がニュートラルに入っている状態だからこそ、彼女を思い出しても余計な思考が邪魔することなく、やっと本心と向き合うことができたのだった。

  これを恋と呼んでいいのなら、恋とはなんて貪欲なんだろうか。

 けれど、こんな独占欲だらけの俺だけに、その笑顔を見せてほしいと焦れる思いが止まらない。

―俺は彼女に、コンビニちゃんに恋をしてたんだ……。

 この掌にあるブレスレットを、今すぐにも彼女に渡せたら。拓馬はそれだけで、すべて満たされてしまいそうだった。

 

「拓馬、少し遅いと思わないか?」

 思った以上に時間がかかる拓馬に、二人は気になり始めていた。待機とは、指定の場所で臨機応変な対応を求められる。

「そうだなあ……少し様子見てくるか」

 獏がカムイに賛同すると同時に、ドアの向こうから慌ただしい走り音が聞こえてきた。

「わりぃ!遅くなった!」

 バン!と、ドアを開け出現した拓馬の頭は文字通りの水浸しだった。見るからに『頭を冷やしてきた』を体現したナリに獏はあっけにとられた。

「拓馬!?いや…なんだ…随分水も滴るいい男だな?」

「冗談を言っていい時じゃない。拓馬お前、まさかまた悩み始まったのか。しかもこんな緊急時に」

「悩んでるんじゃねえし。……思った以上になまぐさい欲を持ってた自分に驚いてるだけだよ」

 言い終わりに拓馬はマズイと俯きがちな目線を二人に移した。カムイは眉をひそめ、獏は思案顔で拓馬に近寄ろうとしていた。

「なあ、もしかしてコンビニちゃんの…」

「今はいいだろ!」

 獏の勘の良さを知ってる拓馬は過敏に反応した。今自分の気持ちを掘り返される訳にはいかない。

「分かってる、戦闘中に余計なことは考えねえさ。電磁波だか怪電波だかを起こしてるヤツをブッ壊す。それだけを考えればいいんだからな」

「……ならいい。俺達はお前には命を預けている。逆も然りだ。雑念でチームワークを崩すなよ」

 カムイも何かしらを感じ取った。拓馬は自分自身の知らなかった感情と戦っている。しかも、その態度を見る限り、快くない感情が伴うようだ。

 命を預けているからこそ、獏とカムイは見届けなければならない。拓馬を焚き付けたのは自分達だ。

 拓馬という人間を知っているからこそ、その感情を自分自身のものにできると二人は信じた。

 

「お前たち!!待機は終了、今から作戦計画を行う。非常にマズくなってきたぞ、気を引き締めろよ!」

 待機終了を告げるのは伊賀利隊長だった。作戦室に様々な機材と人員が集まる。が、その中に神司令はいなかった。

「伊賀利隊長、神司令はどちらに?」

 カムイの問に伊賀利はスタッフや所員に指示をしながら答える。

「神司令は水島隊員の集めてきた観測データを解析班との合同で対策する為、水島隊員と共にモニタリングルームにいる。お前たちの指揮はしばらく俺が取るとこになる、と言っても作戦直前までだかな。よろしく頼むぞ。では、解析されたデータだが……」

 伊賀利の状況報告に3人は気を張らせ、現状把握に入った。

 

 ふと、少しでも何かに触れていたいという気持ちそのままに拓馬はそっと脇にあるポケットに手を添える。

 そこには自分の本音を暴いた一因であるあの星のチャームが付いているブレスレットがあった。

 どうしてもコレは手放せなかった。今手放したら自分に嘘をついている気がして、それこそ拓馬は『嫌だ』った。

 

*

 

 モニタリングルームの隣にあるスタッフルームに水島は呼ばれた。

 神隼人司令直々の呼び出しだ。何もないワケが無い。

 水島はある資料を隼人からを受け取った。そしてそれに沿った動画データがモニタに映る。街大広場のリアルライブカメラが送信していたデータは、『幸運』なことにクラッシュすることなく無事だった。そのデータを解析した隼人のもとに送られた街の大病院からの避難民データと一致した人物を水島に見せた。

「これは……そんな。嘘だろ……」

「水島、選ばせよう。お前の手で弔うか、他人の手で葬らせるか」

 そのデータに映るのは水島のいとこが左目の辺りからどす黒い触手を生やし、モニュメントに近づいて行く姿だった。

 ガクリと頭を垂れると背骨から新しい触手が生え、被膜を張り、モニュメントとその触手の発生源を包んでいき、そして強い赤光が発生したところで動画は終わった。

「神司令!この民間人の生存の可能性は!」

「ない。お前の持ってきたデータも示している通り、人間が高エネルギーにさらされて生還した例はほぼゼロだ」

「『ほぼ』ならば!!」

「起こるか分からない奇跡を信じて作戦を立てるとでも思っているのか?それにこの状態、あの女王蟲に似た寄生生物に操られている。水島、笠原は死んだぞ」

 水島はわかっていた。この男は自身を試している。水島という人間が、この作戦で使い物になるかどうか見定めてるのだ。

「……何故自分にそのような事を打ち明けたのですか。知らなければ何も考えず戦えたはずです。壊せたはずです」

「覚悟のない人間を乗せてこの作戦は遂行できん。もし何も言わず戦わせたとして、事実を知った後にお前は俺達を信用するのか?お前の気質は把握している、真実を知って惑うなら他のD2パイロットに強化型D2を預けるつもりだ」

「他のものには、民間人が取り込まれている事実を伝えるのでしょうか」

「民間人が取り込まていることは作戦内容によって言うだろうが、個人の情報は言わん。作戦に余計な感情を持たせては、また無駄に人員を使い潰してしまうだけだ」

 冷徹な程の状況判断。敵にまわしてはいけない男だ。神隼人という男の圧倒的な無情さに水島の脳が恐怖に染まりそうになる。

 しかし、この『人でなし』であろうとする男の真の声を、水島の耳はしっかりと拾った。

 水島は特技があった。強いストレス下において、通常の人間には聞こえない音を感知する特殊な超聴力。男には力及ばずとも、この特技を活かし戦場では敵への位置取りや把握後の対処が誰よりも早かった。

 かすかに、その男の声に情を殺す息の音がする。自己を覆い被そうとする耐えるような息遣い。

 事実だけを淀み無く語るその口は、きっと何度も悔恨という血反吐を吐いただろう。しかしそれを耐える頑強な意思をこの男は持っていた。異常なまでの忍耐力で耐えきっていた。苦痛と後悔を上回る狂気的な使命感。それは己を縛る無自覚の枷。

 この男が我々の司令なのか。水島の首筋に冷たい汗が流れた。

「自分の家族が取り込まれているということは誰にも言わないのですね」

 ただ、この男も万能ではないようだ。隼人は拓馬と水島のいとこの関係は知らない。それは水島にとって好都合だった。

「了解です。自分がこの作戦を成功させてみせます」

「期待している。お前が以前から欲していた功績も挙がるだろう」

「そのようなもの、もう必要ありません。でしたらその代わりに、噂で聞いた神司令の秘蔵の酒を頂きたい」

 水島は下戸だ。薫りも味も心地のよい酔いも何もかも、酒の良さの何一つ分からない女だった。そう、目当ては酒ではない。

「秘蔵というほどでも無い。俺が持っているのは18年もののボウモア、昔はどこにでも売っていたスコッチだ」

 水島は耳の良さもさる事ながら負けん気もD2パイロット一の持ち主だった。なすがままされるがままじゃどんなヤツでも、たとえこの男でも癪に障る。

 何でもいい、この男から一つでも。

「貴方から奪えれば何でもいいのです」

「……いいだろう」

 隼人は水島に右手を差し出した。水島もそれにならい握手をする。

 この握手は楔。その命と全霊を掛けろ。そう言いたいのだろう。

―チビ子、不甲斐ないオレで悪かった。オレが、弔ってやる……。悲劇を終わらせられるのはヒーローだけなら、オレはお前だけのヒーローになってみせるよ。

 

 握手から離れた水島の手は震える。

 そしてこの手は、愛した家族へ、最期の引き金を引く……。

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