コツ コツ コツ
行動予備隊A御一行は、地下施設を探索していた。薄暗く、やや小汚い。つい先ほども「うえ~もう帰りたい~。」とか、「ゆ、幽霊とか出ませんよねぇ?」などの反応をした隊員もいた。
「それにしても、誰もいないな。本当にここに奴らがいるのか。」
『ダミーが配置されている以上、重要なものがあるのは間違いない。この施設が罠の可能性もあるが。』
「いずれにしろ、脱出を優先したほうが良いですね。クルース、何か聞こえる?」
「…まだ何も聞こえないよ~」
「結構入り組んでいますからね。ところで、皆さん。お腹はすいていませんか、お弁当を持ってきました!」
「「「「後でいい(です)(よ~)」」」」
「そうですか、みんなの健康のためにちゃんと作ってきたのに。」
カン
「ひ!」
『ビークル、空き缶が落ちていただけだ。心配することはない。』
「は、はい。」
(…ダミーは避けることは出来ているが、消耗は激しいな。特に精神的な物は)
ここは、誰もいなかった。ダミーの電子音は鳴り響いているが、それ以外には何もなかった。レユニオンすらすれ違うことはなかった。
(いくらダミーがいるとはいえ、見張りが一人もいないのは可笑しい。)
アダムは、違和感を覚えながらA1と進んでいた。
コツ コツ コツ
歩いていくと扉が目の前に現れた。とても分厚く、ダミーが来たとしても避難所として使えるだろう。プレートには、「B-1」と書かれている。
「…皆、準備はいいか。」
全員、フェンの言葉にうなずいた。
ギィィィィ
「う!」
「これは…」
「………」
「な、なにこれ!」
「き、気持ち悪い。」
そこにあったのは、人型の何かだった。やや細身だが、筋肉質な体つきをした男性の形をしていた。鉄のヘルメットで覆われているが、頭には光る輪が浮かんでおり、天使のようなサンクタであることは見て分かるだろう。
…だが、全身にチューブのような物が取り付けられており、しかも腹部にはマシンガンのような物が取り付けられている。そして何より、ひどい腐臭と、全身に手術痕があった。しかも、血まみれだった。
…その佇まいは一言で言うなら、起動前のロボットのそれである。
(…これは、何だ。この星では、こういうのが作られているのか。)
アダムが、彼女たちを見る。
「なんだよ、これ。何なんだよ、これ!」
「あ、ありえません。こんなの。嘘に決まっています。」
「………」
「こんな冒涜が許されるはずがありません。絶対に!」
「う、うげぇぇぇぇ。」
精神的に参っているのだろう。全員、顔色が青ざめており、中には吐いているものもいる。
『…ハイビス、これを写真に収めろ。クルース、フェン、ビーグル、ラヴァ、周囲を警戒しろ。』
「りょ、了解。」
「けほ、了解…」
「…了解」
「く、了解。」
「あの、アダムさん。写真を取るだけでいいのですか。」
『ああ、本当はこれを持ち帰りたいが、別の部隊に任せた方がいいだろう。』
「わ、分かりました。」
「…これは何でしょう。考えたくもないですが。」
『恐らく、サンクタを改造した兵器だろう。ラヴァ、このようなことが出来るアーツに覚えは。』
「…ない。知りたくもない!。」
『そうか、ならハイビ』
「こ、こんなの分かるわけないよ!あの、ワルファリン先生だってこんなことしたことないよ!」
『…なら、誰がこれを作った?レユニオンには、科学者がいるのか。』
「わかりません。しかし、レユニオンにはかなり残忍な性格の幹部がいると聞きます。こんな倫理観を無視したものを作るのもあり得ます。」
『十分だ。恐らくここは、研究施設だ。通路が入り組んでいたのは実験体を逃がさないための物だろう。ダミーは侵入者を始末するためだ。』
「………」
「クルースちゃんどうしたの、具合が悪いの?」
「…誰かいる。」
クルースの一言で、全員警戒態勢に入った。
「…あの扉の先に誰かいる。」
フェンはすぐさま、扉に近づいた。
「そこにいるのは誰だ!」
『フェン、待て。一旦おち』
ガン‼
フェンは待ちきれず、ドアを蹴破った。
「…あなたたちは?」
そこにいたのは、鳥の特徴を持ったリーベリらしき老人だった。肩には源石が生えている。
「…ああ、そうか私を捕まえに来たのか。」
『失礼ですが、名前は?』
「!アダムさん、どうして!」
『フェン、君はせっかちだ。ドアを開けた瞬間に攻撃されるとは思わなかったのか。』
「あ…申し訳ございません。」
『今、謝るときではない。この老人から話を聞かなくては。』
老人は、一行にお辞儀をすると自己紹介を始めた。
「…私はレユニオンに所属していた。ドクター・プルーフだ。」
「所属していた?」
「奴らに見捨てられてな、お前さんらは?」
「我々は、ロドスの行動予備隊A1です。」
「そうか、ここを調べに来たのか。」
『プルーフさん、ここはどんな場所でしょうか。』
「…ここは、レユニオンのメフェストが管理していた場所だ。今はもう、廃墟同然だが。」
「…ここで何が起きたのでしょうか。」
フェンがそう尋ねると。
「…ここではメフェストが、人体実験をしていた。私は、奴のアーツで生殺与奪を握られ手伝いをさせられていた。助けを呼ぼうにもあのロボットが徘徊していた。」
『具体的にはどんな実験を。』
「それを言わせるのか。まあいいか、それは非感染者を兵器に改造するものだ。」
「ひ、ひどい…」
「私は、逃げ出したかった。しかし奴らはそれを許さなかった。」
『出口はご存じで。』
「ええ、ここに。」
プルーフは一枚の紙のような物を差し出した。そこにはこの施設の地図と出口の道しるべが書かれていた。
「…私もついてきてもいいだろうか。」
『後ろから刺さなければ。』
「…ありがとう。レユニオンの奴らにはうんざりしていたよ。」
「…ところで気になったんだが、人間の見張りはどうしたんだ。」
「私も気になっていたところだ。あのロボットがいるとはいえ、いくら何でも可笑しいのでね。」
「…それは確か。」
プルーフが言いかけたその時だった!
「危ない!」
キシャァァァァァ!
すでに遅かった。先ほどの、それがプルーフに襲い掛かっていた。
「‼しま」
ザシュ
プルーフは心臓を貫かれてしまった!そしてそのまま肉を食いちぎる。
「こいつ!」
フェンはそれを吹き飛ばし、そのままプルーフに駆け寄った。
「プルーフさん、しっかり!」
「ジジイ、おい死ぬな!」
『まさか、動き出すとは。ビーグル、奴の攻撃を防げ。』
「了解しました。」
『ハイビス、治療しろ。』
「今やっています!」
『ラヴァ、クルース。奴に仕掛けろ。』
「分かった。」
「了解~」
「フェン、行けるか。」
「ええ、せっかく救えたかもしれない人を殺されたんです。やってやりますよ。」
アダムは、この星に来て初めての戦闘がこれなのは頭を抱えたくなった。しかし、不思議と負ける気もしなかった。
『あれを改造サンクタと呼称する。全員、配置につけ!』
「「「「「了解!」」」」」
次回、行動予備隊A1およびアダムの初戦闘です。
今回の話は難しかったです。ひょっとしたらこのキャラはこんなことしないというのがあるかもしれません。
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