ビースト達は記憶喪失   作:若杉優太(テト/teto)

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エピローグ

「また、私のおはぎ食べましたね……っ!?」

「あれは貴方のものじゃなくて、マスターが私の為に用意してくれたものです!勘違いも程々にしてください!!」

 

 多数の英霊で賑わう食堂の真ん中にて、仇敵のように睨みつけ合う元ビーストの殺生院キアラとカーマの二人。

 今にも互いに取っ組み合いを始めてしまいそうな程に険悪な雰囲気を出す彼女らであったが、周囲に居た英霊達は軽く二人を諌めるのみで、あまり心配はしていない様子であった。

 何故ならば――

 

「もう、堪忍袋の緒が切れました!こうなれば、ここで宝具を――って、痛……ぁ……ッ!?」

 

 突然後頭部に走った痛みに顔を驚かせつつも、すぐさま顔を怒らせ後ろを振り向くカーマ。

 その顔は一瞬で、引きつったものへと変わった。

 

「こ、こんにちは……エミヤ、さん……」

「前にも言わなかったか……?今度騒ぎを起こしたら出禁にするぞと、私はよく言い聞かせたつもりだったんだがな……」

「あ、あの……これは……その、出来心と言いますか……その……」

「ほう、出来心か。出来心で宝具を使おうとするとは、どういう出来心だろうな?」

 

 苦し紛れの言い訳をするカーマを鋭い眼で睨み付け、手に持っていたフライパンを下ろすエミヤの姿。

 その眼はカーマだけでなくキアラにも向けられ、にやにやと笑っていたキアラの表情はカーマと同じ引きつったものへと変わった。

 

「どうにも最近お前達二人の行動は目に余る。このまま行動を改めないようであれば、マスターと相談して本当に出禁にしようと思っているんだが……」

「「――それだけは勘弁してください!!」」

 

 普段は頭を下げる姿など想像できない二人も、やはり食堂の長の前では強気に出れないようで、二人同時に頭を躊躇いもなく深々と下げた。

 もはや食堂ではお馴染みの光景と化しているのだろう、周囲に座っていた英霊達もくすくすと笑いつつ、そんな三人の様子を温かい目で見守り続ける――

 

 

 

 

「ふふ、相変わらずだね……キアラとカーマは……」

 

 少しばかり騒がしい食堂の真ん中からは外れた隅の席で、少女ダヴィンチは穏やかな笑みを溢しながら三人の姿を見つめていた。

 

「(あれから、数日……魔力供給に関しては問題ないようで良かったよ……)」

 

 ダメ元で試し、結果的には成功した直接的な魔力供給手段である接吻。

 立香、ジャック、エミヤの三人の頑張りもあってか、カーマとキアラの霊基がカルデアから消滅してしまう寸前であったところを持ち直し、無事に異常が起きていた魔力のパスも繋がった。

 問題は意識が戻るかどうかであったが、それも取り越し苦労に終わり、二人は一日も経たない内に目を覚ました……だが。

 

「(まさか、記憶喪失の時の記憶が無くなっちゃうとはね……まぁ、本人達の名誉の為には無くなった方が良かったんだろうけど)」

 

 今の二人の姿からかけ離れたように優しく、純粋な心を持っていた彼女達。

 本人達が聞けば黒歴史と吐き捨ててしまうだろうが、それでもあの二人は確実にエミヤとジャックの心の中へと生き続ける。

 それ程までに、名残惜しい存在であった。

 

『ねぇ、エミヤ。もういいでしょ?キアラもはんせいしてるから、ゆるしてあげて』

『……っ!?そ、そうですよ!こんな小さな子供も言うぐらいですから、許していただいてもよろしいのでは……?』

 

 しかし、記憶喪失時の記憶がないはずというのに、不思議と二人は記憶喪失の時に居たエミヤとジャックを見る度、その表情を無意識に綻ばせるようになっていた。

 それが幸福なことなのかは分からないが、少なくともエミヤとジャックの顔は喜びで満ち溢れている。

 

『そ、その……エミヤ、さん……後でお話したいことがあるので来てもらえますか?』

『……?ああ、いいぞ』

 

 エミヤにカーマ、キアラにジャック……それぞれ四人は、あんな騒動が起こってから一層仲を深めたと言える。

 もちろん、マスターである立香との絆も深まってはいたが、それ以上に四人の英霊――いや、カルデアの英霊達の絆の強さを再認識することができた。

 

「(やっぱり、ここは素晴らしい場所だ……本来二人を従わせることですら大変であろうサーヴァントとの信頼関係を無数のサーヴァントと築ける最高のマスターが居て、それを支える最高のスタッフ達が居る。私は、本当に幸せものだな……)」

 

 改めて認識するカルデアの素晴らしさ、立香の素晴らしさ。

 ――ああ、君が託したカルデアは美しい……

 志半ばで倒れたもう一人の自分を想いつつ、ダヴィンチは温かな目線を食堂の真ん中へと送り続けるのだった。




 閲覧いただきありがとうございました。以上を持って、このシリーズを終わらせていただきます。これまで見て頂きありがとうございました!
 シリーズは終了しますが、これからも二次創作を書いていくので、これからも見て頂けると嬉しいです!

 pixivにも投稿しているので是非! https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18466633
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