FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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兄貴!兄貴!兄貴!兄貴!兄貴!
(デレレレレレレン! デレレレレレレン! オレヲミテクレェ!) 
兄貴と私! ボディビル!…………

いよいよ兄貴たちの共闘です。兄貴の兄貴らしさが出るように頑張ります。

※キャスニキのルーン魔術を一部盛ってあります。

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兄貴×兄貴=超兄貴

 黒煙を上げるマシンを背に、一人の男が仁王立つ。

 その悠然とした佇まいに、アサシンの影法師は思わず半歩、その身を退かせていた。

 それを見た男は獰猛な笑みを浮かべる。狩りの悦びに浸る肉食獣(クーガー)の如き笑みを。

 

「逃げるのか? まぁ、それも一興か。アンタは中々に速そうだ。《 特異点(ここ)》のボスに王手(チェック)をかけに行く前の()慣らしには丁度いい」

「グゥ……! 世迷イ言ヲ……!」

 

 闖入者のあまりの傲岸不遜ぶりに、こらえかねたアサシンが素早く両手で6本の短刀を投擲する。6本の短刀は、同時に放たれたように見えて、全てがわずかな時間差で手元を離れている。

 そのため、盾のような面での防御ができない場合、無傷で凌ぐには迫る短刀を順番通りに一筆書きの要領で撃ち落とす他ない。初見では同時の攻撃だと錯覚し、タイミングを崩されて負傷を免れない危険な技だ。

 にもかかわらず、その男ーークーガーは、手に持ったハンドルで迫りくるそれを、順番通りに打ち払ってみせる。

 

「ナッ……!?」

「この程度の細工、俺に見抜けないとでも? これなら、このサングラスを作りにメガネ屋に行ったときの視力検査の方がよっぽど難しかった」

 

 勢いを失い、地に落ちて硬い音をたてる短刀を見たアサシンが驚愕の声を上げる。対するクーガーは、人差し指でサングラスを押し上げると、軽口を溢した。

 

「はっ、やるじゃねぇか!」

 

 一連のやり取りを見たキャスターが喝采をあげると、クーガーはそちらを振り返ってニヤリと笑った。

 

「この程度、朝飯どころか前日の夜食前だ。助太刀、してもいいかい、大将?」

「嬉しいねぇ、助かるぜライダー!」

 

 クーガーの笑みに向けて同じ不敵な笑みを返すと、キャスターはアサシンのサーヴァントに向けて杖を構える。

 

「さて、どうやら形勢逆転のようだなアサシンの旦那。悪いが俺は、おたくらと違って体勢が整うのを悠々と待ったりはしねぇ。すぐに決めちまおうか」

「最高だぜ、大将! 速さこそが文化の基本法則だ! 即時即決即断、素早く決着と行こう! マスターハジマル、魔力を俺に回してくれ!」

 

 キャスターの言葉に気を良くしたクーガーは、立香に魔力の供給(パス)を要求する。

 しかしーー

 

「オロロロ……」

「オロロロ……」

「せ、先輩! 所長! 大丈夫ですか!?」

「……あらま」

 

 ーー遊園地の絶叫マシンすら子供騙しに感じるレベルで、横Gと縦Gに翻弄された立香とオルガマリーは、シンガポールの某有名な石像よろしく、冬木の川面に向けてその胃袋の中身を放物線を描いて垂れ流している最中だった。

 

「おいおい、アンタのマスター、かなりグロッキーじゃねぇか」

 

 呆れた調子でキャスターがその様子を眺めると、クーガーは「はて」と首を傾げた。自分には立香たちの不調に思い当たる節がないといった様子だが、彼らの不調の原因がクーガーの世界を縮めるドライブであることは、火を見るよりも明らかだった。

 

「んー、どうやらさっきまでのドライブで、少しばかりはしゃぎ過ぎたらしい。こりゃ、しばらくはまともに動けそうにないな」

「だ、誰がはしゃいでるっていうっぷ……」

 

 見当違いなクーガーの解釈に、思わず反論しようとしたオルガマリーだったが、胃袋から迫り上がってくる熱いパトス(ゲロ)を堪えきれず、再び川面に向けて口から放物線を描き始めた。

 その様子を確かめたクーガーは、未だ警戒してこちらの出方を窺っているアサシンへと視線を戻す。

 

「まぁ、マスター無しでも俺の速さに揺るぎはない。俺だけでもどうにかなるってところお見せしますか」

「へぇ、期待させてもらおうか」

「それじゃあ、しっかり目に焼き付けな大将! 《ラディカル・グッドスピード》脚部限定!」

 

 クーガーが《アルター能力》の名を叫ぶと、その手に持ったハンドルが虹色の輪となりクーガーの脚に絡みつく。そして、先程地面に叩き落とした短刀と周囲の地面なども虹色の煌めきに変化させると、彼の脚にはいつもの薄紫色の脚甲が装着されていた。

 

「オフェンスは任せてもらっていいかい?」

「ああ、しっかりと合わせてやるよ」

 

 クーガーの問いに、キャスターは杖を掲げて応える。

 

「恩にき る  ぜ   大    将」

 

 それを見た瞬間、クーガーの言葉が引き伸ばされ、その姿がかき消える。

 

「喰  ら え、《ヒールアンドトゥ》!」

 

 次に現れたとき、クーガーは脚甲の足裏一面をアサシンに向け、跳び蹴りを放っていた。

 

「グゥッ!?」

 

 アサシンからすれば、先程まで十分な距離を取っていた筈の相手が目の間に現れたに等しい。何とかククリナイフで受け止めるも、その体は大きく後ろにずり下がる。

 

「へぇ、あれに反応するか! なら、こいつはどうだっ!」

 

 跳び蹴りを放ったクーガーは、しかしまだ地面に降りることはない。脚甲の側面に設けられたジェットスリットから推力を発生させて、空中で何度も追撃の蹴りを放つ。マズルカのように不規則な緩急をつけた蹴りの嵐に、アサシンは反撃の糸口を掴むことができない。

 

「ヌゥッ……押シ込マレルカ……! ダガッ!」

「むっ!」

 

 クーガーの蹴りの“緩”の部分を突き、アサシンが身を捩ると横方向へと抜け出す。直線的な動きが持ち味のクーガーは、咄嗟に反応しての追撃ができない。

 だが、クーガーは慌てない。

 なぜなら、今のクーガーにはその背中を守る男がいるのだ。

 

THORN(ソーン)!」

「グッ!?」

 

 キャスターの唱えた《トゲと巨人》を指すルーンにより、地面から発生した棘の柱にアサシンの体が突き上げられる。

 

「ナイスアシストォ! 逃がさんぜっ!」

「ガァッ!!」

 

 地面から浮き上がり無防備となったアサシンの体に、体勢を立て直したクーガーが回し蹴りを叩き込む。

 ジェットによる加速を受けた蹴りを腹部に叩き込まれたアサシンは、黒いゴム毬のように不規則に地面を跳ねると、植え込みにめり込むような体勢でようやく停止した。

 衝撃で白面を砕かれながらも、何とか起き上がろうとするアサシンに向け、ようやく着地したクーガーが向きを合わせる。

 

 ダメダ……コノ英霊タチ、互イノ戦型ガ噛ミ合ッテイル……!

 

 アサシンは、完全な自分の不利を悟った。

 直線に爆発的な加速力で迫るライダーだけなら、攻撃軸から逸れることで避けようもある。しかし、避けた先にルーンによる魔術をピンポイントで撃てるキャスターの存在がそれを許さなかった。

 

 ダガ、コチラモ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……! アサシンの本質ハ獲物ノ不意ヲ突クコトデアルト、ソノ身ヲ以テ知ルガイイ!

 

 そして、クーガーが今にも突撃しようと構えを取ったその瞬間、アサシンは喉を枯らすような大声で叫んだ。

 

()()()()! 今ダ!」

「何ぃ!?」

「しまった!」

 

 アサシンの声に慌てて振り返ったクーガーとキャスターの背後、未だ火を上げる橋桁の爆心地から火達磨となったランサーが躍り出た。その飛び出た先には、クーガーのマスター、藤丸立香が立っていた。

 

 

ーーーーーー

 

 

 奇襲を受け、橋桁にめり込んだまま燃やされたランサー。その心臓たる《霊核》が、未だ破壊されていないことを感知していたアサシンは、マスターとクーガーたち英霊を引き離すことで、ランサーによるマスター殺害という王手詰み(チェックメイト)を狙ったのだ。

 

「せ、先輩!」

「グガァァァ!!」

「くぅっ!?」

「マシュ!?」

 

 デミサーヴァントであるマシュは、何とか奇襲に反応できたものの、ランサーの振るう燃え盛る薙刀によって盾ごと弾き飛ばされる。

 もう、ランサーと立香の間を遮るものはない。

 

「ガガッ! 拙僧ヲ゛甘グ見ダナ、魔術師! 御首、()ッタリ゛ィ!」

 

 元は《仁王立ち》の逸話を持つ、偉大なる日本の英霊として召喚を受けたランサー。その耐久力(タフネス)を生かした策がはまったことに、焼け焦げた喉で哄笑し、今、必殺の薙刀を立香の脳天へと振り下ろす。

 

 コレデ、アノ方ヘノ面目モ立ツワイ……ハテ、「アノ方」とは誰デアッタカ……?

 

 肉体へのダメージと、影法師と化して混濁した意識の中、ランサーはその勝利を捧げるべき主の顔を思い浮かべようとする。

 しかし、その姿は記憶の靄の中、一向に像を結ぶことはない。最早、その記憶を再現する脳の領域は焼け焦げていた。

 その、刹那の疑問が、ランサーの必殺の薙刀から“必”の一文字を奪い去った。

 

「……ハアッ!」

「ヌ゛ゥッ!?」

 

 横合いから走った鋭い衝撃、それは体内の気の流れを伝ってランサーの全身に染み込みその動きを狂わせる。

 振り下ろされた薙刀は、狙うべき立香の脳天を遥かに逸れて舗装された地面を叩き割った。

 

「ぼさっとしてないで早く逃げなさい、藤丸!」

「所長!」

 

 ランサーが未だに制御の効かぬ体を横に向けると、そこには銀の髪を靡かせた少女が、こちらに指先を突きつけていた。

 オルガマリーによる《ガンド》撃ち。

 立香の缶コーヒー一本分の優しさが、今の彼女をランサーに立ち向かえるほどに奮い立たせていた。

 

「オノ゛レ小娘ェ!」

「ひっ……!」

 

 しかし、そのなけなしの勇気もランサーからの殺意をまともに受けて霧消してしまう。竦んでその場から動けなくなったオルガマリーに向け、ランサーが再び薙刀を振りかぶる。

 

「させねぇよ、SIGEL(シゲル)!」

「ガッ……フッ……!」

 

 しかし、その薙刀が振り下ろされることは無かった。キャスターの唱えた《太陽》を指すルーンが、燃え盛る大火球となってランサーの胸を霊核ごと貫いていた。

 それは、オルガマリーの振り絞ったなけなしの勇気が、ランサーにとって必殺の刃となった瞬間だった。

 

 ……アア、終ワリカ。イザ、終ワッテミルト……呆気ナイ……モノ……ダ……。主ヨ、申シ訳……

 

 霊核を失い、急速に崩れ始める影法師の体。その刹那、ランサーの意識は、先程まで思い出せなかった主の顔を、靄の向こうにはっきりと確かめてから消えていった。

 

 

ーーーーーー

 

 

「バカナ……!?」

 

 必殺を期したランサーによる奇襲。

 それが失敗に終わったことでアサシンは動揺を隠せなかった。しかし、奇襲が不発だった以上、己が身一つでこの局面を乗り切らねばならない。

 

「グッ……!?」

 

 制御の効かぬ体にムチを打ち、何とか植え込みから立ち上がったアサシンを待っていたのは、こちらに向かって既にクラウチングスタートの構えを取るクーガーの姿だった。

 最早、勝ち目がないことは分かっていた。

 しかし、汚染されてもなお残る聖杯に選ばれた英霊としての矜持の欠片が、アサシンに武器を構えさせていた。

 その姿を眺めるクーガーの顔には、いつもの不敵な笑みはない。ただ、目の前に立つ一人の英霊への敬意があった。

 

「決着といこうか、アサシン」

「アア……、ソウシヨウカ」

 

 互いに呟くように言葉を交わすと、黒と紫、一陣の風となった二人の英霊が交錯する。二人の姿が再び視認できるようになったとき、アサシンの顔から白面が落ちると、それは地面に着く前に解けるように消えていく。

 それは、アサシンの霊核が砕かれたことを示していた。

 自分が起こした結果を振り返ることもなく、クーガーはサングラスをぐっと目元に押し上げる。

 

「……感傷だがな、アンタとは影法師(こんなかたち)じゃない、ちゃんとした姿で逢いたかったぜ」

「ククッ……縁がアれバ、マた、逢えるさ……」

 

 最後の刹那、お互いの力を認め合うと、アサシンの影法師は先に解けた白面の後を追うように、その身を宙に溶かして消えていった。




《次回予告》
燃える炎の海の中、漢たちの絆が結ばれる。背中を預ける友を得て、熱き漢の血は(たぎ)る。ああ、しかし彼らは気づいているのだろうか。悪意ある者の手がその背に爪をかけようとしていることに。燃え盛る《特異点》の熱風に、漢たちの流す血が(けぶ)る。
             (ナレーション:若本規夫)

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)

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