FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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お気に入り160超え&10名の評価をくださった方、ありがとうございます! 2目盛りも赤く染めることができました! こんなに早く伸びると思わなかったので、ありがたい限りです!

シビアな評価も、さらなる研鑽の為の励みになります!どしどし感想や評価、お待ちしてます!




比翼の兄貴

「マスター、無事かい?」

 

 アサシンの体が影の呪縛から解き放たれ、消滅するのを見送った後、クーガーは安否を確かめるべく立香のもとに駆け寄った。立香は、川面に面する公園の手すりに捕まって、ようやく立ち上がったところだった。

 

「ええ、所長が庇ってくれましたから。胃の中身が全部、冬木の川の養分になった以外は傷一つないですよ」

「はーっはっは! そいつはいい、晩飯が沢山食えるぞ、ハジマル!」

「……藤丸です。次があるなら、もう少し安全運転でお願いしますね、クーガーさん」

 

 立香の無事を確認したクーガーが高笑いするのを見て、立香は二つの意味でげんなりした表情を浮かべて、力なく釘を刺した。

 

「ふっ、心配無用だ、ハジマル。俺は、どんなにスピードを出そうとも決して事故は起こさない! つまり、俺がハンドルを握る限り、それは必ず安全運転だということだっ!」

「その言葉、あそこの橋桁に突き刺さってる、ブサイクなオブジェ(マシンのざんがい)を見て、もう一度言ってもらえるかしら?」

 

 人差し指と中指を揃えてビシッと決めポーズをするクーガーに、こめかみに青筋を浮かべたオルガマリーが微笑む。彼女の右手の親指は肩越しに、背後の橋桁に突き刺さったまま(くすぶ)っている自動車の残骸を指差していた。

 

「ふっ、でもああ(オブジェに)なる前に、脱出できたでしょう?」

「死ななかったとしても、精神衛生上悪いって言ってるのよ! 心という器は、一度ヒビが入(トラウマにな)ったら、二度と元には戻らないの! これから、車の運転ができなくなったらどうしてくれるのかしら、まったく……」

「安心してください、オリガさん! その時には俺が責任をもって、毎日貴女の送迎をやらせていただきますから!」

「そんなの、事故で死ななくても、ストレスで死ぬわよ!? 運転どころか乗ることすら不可能になるわよ!」

 

 最早、お馴染みとなったオルガマリーが地団駄を踏みながらクーガーに文句を言い、クーガーが高笑いでそれを受け流す光景。それを微笑みながら見守る立香とマシュ。一難去ったことにより、何とか心の平穏を取り戻し始めた立香一行。そこに歩み寄る一つの影があった。

 

「はっはっは! 中々、愉快そうなパーティじゃねぇか!」

「あっ! 貴方は先程の魔術師(キャスター)の英霊の方ですね!」

 

 近寄ってきたのは、先程の死闘を共に生き抜いた、他ならぬキャスターその人であった。

 いち早くそれに気付いたマシュが、声をかけながらキャスターに駆け寄ると、キャスターは自分の顎に片手を添えて、マシュの体を頭の天辺からつま先までしげしげと見つめる。

 

「あ、あの、私の姿に変なところがあるでしょうか?」

 

 キャスターからの舐め回すような視線を浴びて、マシュが戸惑った声を上げる。

 

「んー、いや、お嬢ちゃん、さっき思い切りランサーに吹き飛ばされてたから、怪我でもしてないかと思ってな。タフなサーヴァントは、たまに怪我しても気付かない奴がいるんだよ。ほら、背中の方も見せてみな」

「は、はい!」

「ふむふむ、こっちも傷らしい傷はないな!」

 

 言われるがままに振り返ったマシュの背中を眺めると、キャスターは「よーし、健康健康!」と言って、マシュのお尻の辺りを2回ほど手で叩いてみせた。突然のボディタッチに、マシュが思わず「ひゃん!?」という声を上げる。

 

「あ、大将! セクハラは流石に見過ごせませんなぁ!」

「な、流れるようにボディタッチを!?」

 

 それに気付いた立香とクーガーが、抗議と当惑の声を上げるも、当のキャスターは「怪我の具合を診てやったんだ、これぐらい役得ってやつだろう」と、涼しい顔で答えてみせる。

 

「そう、なんですかね?」

「いや、あれはただのセクハラね。気をつけなさい、マシュ」

 

 ピュアなマシュが、キャスターの発言を鵜呑みにしそうになるのを制しながら、オルガマリーが立香たちの輪から進み出てキャスターの前に立つ。

 

「先程の戦闘では助けていただき感謝します、サーヴァント・キャスター。私は、人理保障機関《フィニス・カルデア》で所長を務める、オルガマリー・アニムスフィアと申します」

 

 オルガマリーは立香たちの代表者としての役割を果たすべく、名乗りを上げて頭を垂れた。

 彼女が頭を上げるのを見て、キャスターが笑顔を浮かべる。それは、先程までの獰猛なものではない、人懐っこい好青年のものだった。

 

「そう言えば、自己紹介がまだだったな。俺はサーヴァント・キャスター、この冬木の聖杯を巡る《聖杯戦争》に喚ばれた英霊の内の一騎さ。ま、もう《聖杯戦争》の枠組み自体が崩壊しちまって、今の俺はマスターもいない《はぐれサーヴァント》ってやつだ」

「《はぐれサーヴァント》……。喚び出したマスターが死亡するなど、不慮の事故でマスターを失うか、《英霊の座》が喚び出して元からマスターが存在しないサーヴァントの総称ですね」

「そういうこと、俺はその前者ってわけだ」

 

 マシュの確認に、キャスターが頷く。

 

「そうか、この年の冬木は《聖杯戦争》があった年だったのか……ということはそちらには最低でも7騎のサーヴァントがいるということかな?」

 

 会話を聞き、通信してきたロマニに、キャスターは「ああ、その通りだぜ、なよっとした兄ちゃん」と答えてから、渋い顔つきになる。

 

「……ただ、まともな英霊(やつ)はもう俺と弓兵(アーチャー)しか残ってねぇ。ランサー、ライダー、アサシンは、反転したセイバーにぶっ潰された。狂戦士(バーサーカー)はどうなったか知らねぇが、あいつは元から壊れてるからな。上手いことセイバーに向かって行ってくれたら御の字ってやつだ」

「……つまり、追加で得られる戦力は、そのアーチャーだけって訳ね。しかも、もしアーチャーがまだ《聖杯戦争》をなぞっているなら、キャスターの貴方に(くみ)した私たちと敵対することすら考えないと……」

 

 オルガマリーが顎に手を添えて眉間に皺を寄せる。現地での英霊との仮契約がほとんどできないことは、《カルデア》にとってかなりの痛手だった。

 半ば事故のようなかたちでのレイシフトを果たした立香たちには、召喚サークルでの追加召喚を行うだけの魔力(リソース)がない。冬木の《霊脈》を流れる魔力を利用した召喚は、既にクーガーに使ったため再利用は不可能だ。

 もちろん、虎の子の《令呪》を一画切るという手段もないことはない。しかし、マスター適性はともかく魔術師としての能力(キャパ)が低い立香にとって、《令呪》は決戦の切り札だ。状況によっては、一戦で三画全てを使い切ることすら視野に入れる必要がある。

 そして、キャスターの話を聞くに、この《特異点》はオルガマリーの予想を超えて終わりが近い。当初の調査をして帰還し、補充を済ませての再潜入が許されるだけの猶予はない。そんなことをしている内に、もしセイバーが聖杯を手に入れてしまえば、この《特異点》は誤った形で《人類史》に定着し、未来は永久に失われることになる。

 指揮官として、苦しい舵取りを迫られるオルガマリーには頭の痛い情報だった。

 そんな、立場による責任に押し潰されそうなオルガマリーに、キャスターは「そう深刻になるなよ、嬢ちゃん。こういうのってのは、大概何とかなるもんさ」と笑い飛ばしてみせる。

 

「それに、悪いことばかりって訳じゃねぇしな。一先ず、ここでランサーとアサシンは退場させられた。それだけでも、ここの盤面はかなり落ち着いた。不幸中の幸いってやつだな」

「なら、もっといい知らせがある。さっき橋を渡って来る前に、俺たちはもう一つ影法師を倒してきてる。あれは多分、ライダーだな。戦うときの動き方に、知性が感じられた」

 

 クーガーが付け加えるように手持ちの情報を出すと、キャスターは思わず「ヒュウ」と口笛を吹いた。

 

「やるじゃねぇか! となると、今の冬木はほとんど安全地帯といっていいな。魔力に惹かれたモンスターは、この街の犠牲者が転じた自然発生のアンデッド程度だ。少なくとも今の俺たちの敵じゃねぇ。んで、肝心のセイバーは、ここから少し離れたビル群の中央に陣取って動かねぇ。バーサーカーは多分いるとしたらセイバーの側だな。マスターの制御が無くなれば、サーヴァントとしての本能で、この辺りで一番強い魔力反応に向かうだろうはずだ。恐らく、十中八九当たりだろうさ」

 

 キャスターが喋りながら杖で地面に冬木の絵図を描いていくと、それを見ながらオルガマリーが相槌を打つ。

 

「ふむ……。そうなると、動きが読めない脅威は貴方の言うところの、()()()()アーチャーだけ、ということになるわね」

「あー、アイツは多分大丈夫だ。いけ好かねぇ、ひねた性格の野郎だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、一番分かってるような奴だからな」

「なら一安心、なのかしらね」

「上手く協力が取り付けられるといいですね、所長」

 

 そうして、立香とオルガマリーは顔を見合わせて、ホッとため息をつく。

 

「ああ。ただ、アーチャーはセイバーを監視しつつ、気取られねぇように、《気配遮断》でビル群のどこかに潜伏してるはずだ。まずは、それを見つけて合流しねぇと、俺たちだけじゃセイバーには勝てねぇ」

「セイバーは最優のクラスって話だけど、今回のセイバーに選ばれた英霊はそんなに強いんですか?」

 

 立香が訊ねると、キャスターは今までで一番険しい表情を見せた。

 

「ああ、剣の英霊と言われれば、誰もが真っ先に名前を思い浮かべるようなビッグネームさ」

 

 その言葉に、誰かの喉がゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。

 

「……名前を、聞いてもいいかしら」

 

 息をするのも憚られるような重苦しい沈黙の中、口を開いたオルガマリーの問に向けて、キャスターはその口をゆっくりと開いた。

 

「……この《特異点》の王、反転した(オルタネイティヴ)セイバー。そいつの真名は《アルトリア・ペンドラゴン》。かの名高き聖剣エクスカリバーに選ばれた王の中の王(キングオブキングス)。ーー《アーサー王》だ」




《嘘次回予告》
《特異点》の砂ぼこりの向こうに、立香たちは遂に真の敵の姿を捉える。その者は、名を口にするのも恐ろしき、音に聞こえし《アーサー王》。かつてない強敵を前にして、男たちは手を取り合う。ああ、しかし。《特異点》という獣の牙は、その絆をも引き裂くのか。次回、『紅き弓兵』。男たちの明日は見えない。
           (ナレーション・若本規夫)

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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