FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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続きました!

二次創作ランキング日間94位に入ってました! ありがたき幸せ!


紅き弓兵

「キングアーサー!? なんてことなの……よりにもよってそんなビッグネームが相手なんて……!」

 

 オルガマリーは半ば悲鳴のようにそう漏らすと、思わず崩れ落ちそうになる脚を、何とか踏みとどまらせていた。

 

 ーーアーサー王。

 

 かつての英国、ブリテン島を支配した聖剣使い。

 彼女と、彼女に付き従った円卓の騎士たち、その輝かしい栄光と波乱に満ちた戦いの日々、そしてカムランの丘で迎えた最期の時。綺羅星の如く並ぶ彼女の人生を彩るエピソードの数々は、未だに多くの人々を魅了してやまない。

 英霊としての格を決める要素の一つに、その英霊の知名度が上げられるが、その点ではアーサー王に勝る英霊はこの世界にほぼ存在しないと言っても過言ではない。

 加えて、今回のアーサー王は最優のクラスであるセイバーとしての現界だ。その盤石ぶりを思えば、魔術師として《聖杯戦争》などに明るいオルガマリーが、このような反応を取ってしまうのも無理からぬ話である。

 しかし、そんな状況にあってキャスターは相変わらず笑みを崩すことはない。

 

「そう、悲観するほどのものでもねぇさ。セイバーは確かに強い。だが、それも十全に能力(スペック)が機能すればの話だ」

「アーサー王は、全力が出せない状態なんですか?」

 

 立香の問いに、キャスターは「ああ」と首肯した。

 

「まず、俺らサーヴァントはマスターと契約して魔力を供給(パス)してもらうってのは理解してると思うが、冬木(ここ)が今の有様になったときに、俺たちのマスターたちは一人残らず消えちまった」

「マスターが消えた……? 殺害されてしまった、ということでしょうか?」

 

 「殺害」という言葉を恐る恐る口にしたマシュに向けて、キャスターが首を左右に振る。

 

「いや、ネットのケーブルを抜くみてぇに、ある瞬間から無理やり回路が切れた。まるで元からマスターなんていなかったみてぇにな。たとえ、マスターが殺されたとしても、しばらくは魔力の残滓は残るはずだが、そいつがねぇ」

「となると、世界自体の書き換えが起こった、ということかしら……」

 

 オルガマリーはにわかには信じがたいように呟く。

 世界の改変は、今回の《特異点》のように膨大なエネルギーさえあれば不可能なことではない。しかし、それはかなり大掛かりな事象であって、細部のディテールまでいじろうと思えば、恐ろしい量の魔力(リソース)を割かねばならない。

 《特異点》を生みつつそこまでのことができる魔力を担保できる黒幕の存在。魔術に明るいオルガマリー故にそんな存在がいることは受け入れ難かったのだ。

しかし、キャスターはオルガマリーのその呟きに向けてはっきりと頷いた。

 

「ああ、どうやらここに介入した何かが、自分(てめぇ)の都合の良いように世界を継ぎ接ぎしたらしい。ま、とにかくここに喚ばれたサーヴァントは、皆一様にマスターを失い、《聖杯戦争》は捻じ曲がって、ここは火の海ってわけだ」

「有り得ない、って言いたいところだけれど、有り得ないが起きているのが《カルデア》の現状なのよね……」

「それでも、現状ではアーサー王の魔力は減る一方、という訳ですよね」

 

 頭を抱えるオルガマリーを励ますように、立香が努めて明るい調子で喋る。

 

「ああ、恐らく(やっこ)さんが、自分で更地にしたビル群の中央から動かないのも、さっさと他のサーヴァントを影法師にしちまったのも魔力の節約の為だろうな」

「なるほど、魔力を節約するなら敵を探し回るよりも迎え討つほうが効率がいい。それに、索敵なら影法師に街を徘徊させれば事足りるし、リスクも少ない」

 

 クーガーがセイバーの行動の真意を指摘すると、キャスターも「その通りだ」と認識の正しさを肯定する。

 

「加えて言うなら、魔力の貯蔵量は少なくとも3騎を影法師(シャドウ)にできたセイバーがトップだ。あちらからすれば、俺たち生き残りが逃げ隠れして、戦わずに持久戦に持ち込めば、最後に軍配が上がるのはあちらさんだったって訳だ」

「でも、その目論見は私たちの出現で崩れた」

 

 オルガマリーが指摘すると、キャスターはニヤリと笑った。

 

「そうだ、セイバーの作戦は『俺たちに平等にマスターがいないとき』に成立する。こちらがマスターを確保した現在、あちらさんの戦略は根っこから崩れたってわけだ」

「なら、アーサー王はこちらに攻めて来るでしょうか?」

 

 立香が訊ねると、キャスターは「それは無いな」と首を振った。

 

「並の英霊なら、ここで踏ん張れないだろうが、そこは反転してもアーサー王だ。突然やってきたあんたら(カルデア)に、残された時間があまり無いこと位は気付い(ちょっかんし)てるはずだ」

「戦乱続きのブリテンを一時期とはいえ治めることに成功した英霊……その辺りの駆け引きはお手の物というわけね」

「むしろ、反転した今の方が冷徹になってる分だけ、生前よりも優れていることすらあるな。ま、ということで、だ」

 

 キャスターは、暗い話はここまでと言わんばかりに語気を強めて立香たちを見回す。

 

「その戦略に対抗するには、ひとまずマスター契約を結んじまおう。今は少しでも長く回路(パス)を繋いで決戦の為の魔力を溜めてぇ。いけるな?」

 

 キャスターの確認に、オルガマリーが頷く。

 

「はい、申し出を受け入れます。サーヴァント、キャスター」

「よろしくお願いします、キャスターさん!」

「ありがとうございます!」

「大将みたいないい男と肩を並べて闘えるとは、英霊ってのも存外悪くない」

 

 笑顔で、キャスターの申し出を受け入れる立香たちを見て、キャスターの方も「ははっ、嬉しいねぇ!」と破顔する。

 

「じゃ、俺と契約してくれるマスターはどちらかな。少年の方はもう2体と契約しているようだから、バランス的にはお嬢ちゃんと契約するのがいいんだが……」

 

 そう言って、キャスターがオルガマリーを見ると、彼女は残念な表情で首を振った。

 

「残念なことに、私はマスター適性が皆無なんです。キャスター、貴方との契約は彼ーー藤丸立香が行います」

「よろしくお願いします!」

「おう、そうかい。……ふーん、中々いい眼をしてるじゃねぇか」

「やっぱり、大将もそう思うかい。マスター、ハジマルは中々の人物だろう」

「藤丸ですって、クーガーさん。でも、褒めてもらってありがとうございます。自分はそんなに大した人間ではないと思うんですが……」

 

 二人の英霊から褒められたことが、いかにもこそばゆいという風に、立香が右手で後頭部をポリポリと掻く。そんな彼の背中をキャスターがバシバシと力強く叩く。

 

「いやいや、こんな世界の危機に命張って立ち向かえるだけで大したもんさ! もっと自分を誇りな、マスター藤丸!」

「イテテ、ありがとうございます。なんか、自信が出てきました」

「そうかいそうかい、ならいい気分の時にちゃちゃっと契約しちまおうか」

「そうですね」

 

 立香は頷くと、令呪の宿る左手をキャスターへと掲げ、魔術回路に火を灯す。しばらくの後、令呪が一瞬紅く輝くとキャスターとの間にパスが生まれた。

 

「……よし、契約は完了だ。これから俺はあんたの指揮下に入る。せいぜいうまく使ってくれよ、マスター藤丸!」

「全力を尽くします! よろしくお願いします、キャスター!」

「ははっ、いい返事だ!」

 

 返事を聞いたキャスターがニヤリと笑うと、今度はそのやり取りを少し羨ましそうな視線で見つめていたオルガマリーの方へと顔を向ける。

 

「というわけで、今から俺は間接的にはお嬢ちゃんの指揮下に入ることになる。もし、何かあればお嬢ちゃんも遠慮なく俺のことを指揮してくれ」

 

 キャスターの言葉にオルガマリーは驚いたような表情になる。

 

「それは……構わないのですか?」

「ああ、普通はマスターの命令優先だが、こんな状況だ。マスター藤丸の方が手が回らないなら、そのときは指揮系統が変わるのもやむなしだろうさ。マスターもそれで構わないよな?」

「はい、自分にも限界がありますから、所長にそうしていただけるならありがたいです」

 

 立香がそう言って笑うと、オルガマリーは少し頬を染めて顔を逸らす。人に認められる経験がないオルガマリーにとって、自分のことを無条件に認めてくれる彼の笑顔や、キャスターからの信頼はこの上なく心地の良いものだったのだ。

 油断すると崩れそうになる表情を、何とか気合で繋ぎ止めると、オルガマリーは再び立香たちの方を向く。

 

「そ、そこまで言うならそうさせてもらうわ。キャスター、貴方を私、オルガマリー・アニムスフィアの指揮下に置きます。有事のときは指示に従ってください」

「おうよ、任せな嬢ちゃん!」

 

 オルガマリーの言葉にキャスターが力強く頷くと、オルガマリーは耐えきれず頬を染めて顔を下げた。それを見たマシュが思わず笑顔になる。

 

「あっ、所長が照れてますよ、先輩!」

「ふふっ。そうだね、マシュ」

「て、照れてなんかないわよ!?」

 

 なんだか微笑ましいものを見るような目で頷き合う二人に対して、オルガマリーは思わず顔を上げてツッコミを入れる。しかし、顔が上がったことで彼女の頬が赤くなっているのが誰の目にも明らかになり、その説得力は皆無に等しかった。

 

「ああ、照れる貴女も素敵ですよオリガさん!」

「ははっ、確かにな。嬢ちゃんはムスッとしてるよりも、それぐらい愛嬌を出してる方が丁度いいぜ」

「ちょっ、いや、えっと、私はオルガマリー、じゃなくて、いや、それはよくて、あー! うー!」

 

 加えて、畳み掛けるように二人の英霊から褒められたオルガマリーは、いよいよ茹でダコのように顔を赤らめてオーバーヒート状態に陥った。

 結局、彼女が元の冷静な状態に戻るには、それから四半刻ほどの時間を要するのだった。

 

 

ーーーーーー

 

 

 立香たちがマスター契約を結んでしばらく。

 一行は、情報を共有しながら冬木の市街地を歩いていた。いよいよ目的のオフィス街のビル群は目と鼻の先となった。

 

「それにしても、キャスターさんが、あの《クー・フーリン》だなんて驚きました!」

「本当にね。ランサークラスでの現界でないことが悔やまれるわね」

 

 キャスターの真名ーーケルトの大英雄《クー・フーリン》。その名を先刻聞いていたマシュたちが再びそれを話題にあげると、クー・フーリンはお手上げといった様子で手の平を天に向けた。

 

「まさか俺も、ドルイド僧時代の姿で喚ばれるたぁ、思ってなかったぜ。触媒が悪かったか、あるいは先にランサーの枠を埋められちまったか。全く、ランサーでの現界ならこんなことになっちゃあいなかったんだがなぁ」

 

 そう言ってクー・フーリンは首を左右に振る。

 実際、ランサーとしての彼の強さは折り紙付きだ。ケルトの戦士としてのタフネスやスタミナもさる事ながら、特筆すべきはそのスピードから生まれる宝具《ゲイ・ボルク》による致命の一撃である。「心臓を穿った」という結果を生み出してから、それをなぞる様に放たれる因果逆転の呪いの朱槍は、ランサー自身の卓抜した技量と合わさり、並の英霊では気付いたときには霊核(しんぞう)を穿たれてしまう。

 たとえ回避に成功したとしても、ランサークラス故の仕切り直しの速さのせいで、すぐに二の矢が撃たれるため、無傷で切り抜けることを許さないクラスと宝具の特性が完璧に噛み合った英霊となれるのだ。

 当然、喚び出す側も十中八九この組み合わせを狙って彼を喚ぶので、今回の限界は間が悪かったと言わざるを得ない。

 あるいは、その間の悪さすら、何者かの陰謀なのか。

 

「いやー、しかし残念ですなぁ。クー・フーリンといえば、俺の世界でも名だたる大英雄だ。ぜひ本来のクラスで速さ比べをしてみたかった……」

 

 クーガーが額に手を当てて、心の底から残念そうな表情で首を左右に振る。それを見て、クー・フーリンもウンウンと同意する。

 

「本当にな。《並行世界》の英霊と手合わせできる機会なんて、こんな状況(イレギュラー)でもなきゃまずねぇからな。ただーー」

 

 クー・フーリンはそこまで言って言葉を切ると、立香の方を見つめる。

 

「ーー今回の件で、俺とマスターの間には(えにし)が結ばれた。もし、別の場所で英霊を喚ぶことがあれば、そのときには本来の俺が来るかもしれねぇな」

「そのときはよろしくお願いします、クー・フーリンさん!」

 

 立香がそう返事すると、クー・フーリンは破顔し、しかし、次の瞬間にはすぐに引き締まった戦士の顔になる。気がつけば立香たちはオフィス街のビル群へと足を踏み入れていた。

 

「おうよ! 本当の俺の強さ、存分に見せてやるさ。……さて、そろそろここからが死線(デッドゾーン)だ。この奥には最高で3騎英霊、あるいはその影法師(シャドウ)が待ち受けている」

「セイバー、アーチャー、そしてバーサーカーですね」

 

 確認を取りながら、マシュが盾を構え直す。いよいよ敵地ということもあり、奇襲に備えた無意識の行動。

 結果として、それが立香たちの命を救うこととなった。

 

「……! ビル街から魔力反応! 上だ! みんな気を付けて!」

「えっ!?」

「むっ!」

 

 突如、ロマニの通信が会話に割り込み、マシュは言われるがままに盾を上に構えた。その体勢が整うか整わないかの内に、螺旋の形状の鏃を持つ恐ろしく巨大な矢が、マシュの体を盾ごと吹き飛ばしていた。

 盾と鎧を含めるとかなりの重量のハズのその体は、ゴム毬のように何度か地面を跳ねてようやく止まる。

 

「きゃぁ!?」

「マシュ!」

「マスター! オリガさん! 俺の後ろに!」

「わかったわ!」

「ちっ、ANSUZ(アンスース)!」

 

 突然の凶事に思わず叫び声を上げる立香。

 そして立香とオルガマリー、矢の飛んできたビルの間に割り込むようにクーガーとクー・フーリンが立ち、クー・フーリンのルーンによる炎がビルの屋上を撫でると、そこから一つの紅い人影がひらりと路上に舞い降りる。

 十階以上のビルから落下したにしては、衝撃を感じさせないゆったりとした動作で、人影が立香の前に立ち上がる。その姿を見たクー・フーリンが思わず声を荒らげた。

 

「おいおいおい、随分なご歓迎じゃねぇかよ、アーチャー!」

 

 一陣の風が、彼らの間を吹き抜ける。

 その風を浴びて、アーチャーと呼ばれた紅い男はただ無言で立香たちを眺めているのだった。

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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