FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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一ヶ月経たない内に、UA10000↑+お気に入り200↑ありがとうございます! 漢の義務教育を履修済みの方がこんなにもいること、嬉しく思いますわ!


紅き嚆矢は疾風を纏う

 クー・フーリンの双眸は、それを見るものに紅玉の輝きを想起させる。それは、彼という英霊の輝きをその瞳を通して垣間見ていることに他ならない。

 そんな彼の瞳には、今、怒りの炎が揺れている。その炎の向かう先は、それに負けぬ紅に染まる1騎のサーヴァント。

 

「一体、こいつはどういう了見だ、ええ? アーチャーよぉ!」

 

 キャスターは、杖の先にルーンの火を灯し、怒りとともにアーチャーへと突き付ける。彼の熱さとは対象的に、アーチャーは揺らぐその火を冷めた目で見つめていた。

 

「セイバーを狩るためには共闘が必要なことぐらい、お前さんなら理解してんだろ、なぁ?」

 

 クー・フーリンの激情に、対するアーチャーは無言。

 その様子を見て、クー・フーリンは短いため息を一つ吐く。

 

「だんまりか。お前はもっと、合理的な考え方ができる奴だと思ってたんだがなぁ」

「いや、極めて合理的な判断をしているとも、キャスター」

 

 ここで初めて、アーチャーが口を開く。言葉の内容に違わず、彼の口調は極めて冷静なものだった。

 

「だったらーー」

「ーーもちろん、セイバー(あれ)を倒すには共闘が必要なことは理解しているさ。ただーー」

 

 クー・フーリンの言葉を遮るように話し始めたアーチャーが言葉を切る。次の瞬間、彼の両手には白と黒、陰陽を示す一対の短剣が握られていた。

 

「ーー今回の作戦は必殺を期さなければならない。私にも組む相手を選ぶ権利があるということだ」

 

 英霊同士の戦いにおいて、数は絶対に有利に働くとは限らない。《聖杯戦争》などで、マスターである魔術師が、無能な働き者(あしでまとい)であるせいで、優れた英霊が脱落したという例は枚挙に暇がない。

 特に今回などは相手が相手だ。マスターがいなくてもある程度の活動を可能にする《単独行動》をクラススキルに持つアーチャーが、中途半端な戦力(あしかせ)を嫌うのは無理からぬ話だった。

 そして、アーチャーは黒白(こくびゃく)の双剣を構えてみせる。それは「お前たちの性能がセイバーに通用するか否か、白黒つけてやろう」という無言の挑発に他ならない。

 

「はっはぁ! なるほどなるほど」

「……っ! クーガー!」

 

 それを見たクーガーが、オルガマリーの静止を振り切って立香たちの前に進み出る。

 

「こちらの力を、ぶん殴って確かめる。手っ取り早くて嫌いじゃないぜ、そういうのは」

 

 《ロストグラウンド》という無法地帯で生きてきたクーガーにとって、彼の幼年期を支配した唯一のルールは「拳と拳で語り合い、勝った奴が正義」というシンプルなものに他ならなかった。故に、彼は傍から見れば意外な程に、自然にアーチャーの振る舞いを受け止め、その正面に立った。

 お互いに、後一歩踏み込めば死線というその場所で、クーガーは立ち止まると脚を肩幅に開く。彼の周囲の瓦礫が虹の煌めきとなって、その脚に纏わりついてゆく。

 

「ただ、その『力を測るのは俺の方』って態度が気に入らねぇ。要するに、何が言いたいかっていうと、だ」

 

 クーガーが先程よりも語気を強める。

 そうする内に、虹の煌めきは実体を伴い薄紫の脚甲へと変わる。瞬間、クーガーの姿は陽炎となり、その実体は既にアーチャーへと肉薄していた。

 

「見下してんじゃねぇ!」

「むっ……!」

 

 突如として目の前に現れた薄紫の旋風に、しかし、アーチャーはしっかりと反応してみせた。クーガーの回し蹴りを干将莫耶の二振りの剣を交差させていなすと、吹き飛ばされる勢いのまま大きく距離をとる。

 

「なるほどな。大口を叩くだけのことはあるか」

「そっちこそ舌がよく回るようだな! 次は俺の速さで目を回してやるよ!」

 

 クーガーが、返す刃で飛び込みざまの膝蹴りを撃ち込もうとするも、アーチャーは今度は交戦を避け、すぐ側のビルの一階に窓を突き破って逃走を選択する。

 

「ちっ、逃がすかよ!」

「言葉は正確に使え。誰が『逃げた(・・・)』というんだ?」

 

 当てが外れたクーガーが、追いかけるように窓からビルへと飛び込むと、そこでは廊下の奥、既に短剣を弓に持ち替え、(けん)をつがえたアーチャーが立っていた。

 

「はあっ!」

「ちっ!」

 

 窓から侵入したクーガーに向けて、アーチャーが矢を放つ。廊下という左右への回避を許さない空間は、アーチャーにとって必殺の陣地だ。

 クーガーもそれを察知して、迫る矢を回避ではなく蹴りで捌く。硬質な金属がぶつかり合う不快な響きを残して、アーチャーの放った矢はクーガーの脇を通り窓の外へと消えていった。

 

「はっ、止まって見えるなぁ! 弦の代わりに輪ゴムでも張ってるんじゃないのかぁ!」

「これを躱すか、面白い」

 

 クーガーの軽口には取り合わず、アーチャーは呟くように言葉を零すと2階への階段を駆け上がる。

 

「今のうちに楽しんでな! すぐに笑えない状況になるからなぁ!」

 

 クーガーも叫びながら廊下を駆け抜け、階段へと向かう。吹き抜けから見上げるビルの階段は、各フロアの防火扉が全て閉められ、すぐに駆け上っていけないように細工がされていた。しかし、クーガーは「しゃらくせぇ!」と叫ぶと、手すりを足場代わりにして、階段中央の吹き抜けの部分を跳んで一気に最上階へと向かう。

 吹き抜けを駆け上がる最中、クーガーはこのビルがアーチャーによって仕組まれた巨大な陣地であることを見抜いていた。

 

 アーチャーに、ビルの防火扉を閉めている時間はなかった。となると、奴も俺と同じルートで屋上に向かったはずだ。そして、この建物は意図的に作った奴の陣地だ。屋上には間違いなく罠が張ってあるだろうな。

 

 最初の一撃を凌いでからの素早い転進。 

 窓から飛び込んだ先の廊下での冷静な奇襲。

 階段とフロアの行き来を隔てる閉じられた防火扉。

 これは、明らかにクーガーを屋上へと招き入れるようにアーチャーが仕組んだ罠だ。アーチャーは攻撃を躱すために咄嗟にここへと逃げ込んだのではなく、あえてこのビルを選んでクーガーを誘い込んだのだ。

 

 とするならば、俺が取るべき合理的な戦略は、屋上のひとつ下のフロアの防火扉をぶち破って、屋上にいるアーチャーを足下から奇襲することだ。俺の《ラディカル・グッドスピード》なら、天井の一枚くらいぶち抜いてその先にいる奴を叩くぐらいわけの無い芸当だ。

 

 わざわざ敵の懐へと無策で飛び込む必要は無い。アーチャーは、策を見抜いたアドバンテージを十分に活かさなければ、苦戦必死の相手である。

 

「だがなぁ!」

 

 屋上へと続く階段まで吹き抜けをショートカットしたクーガーは、下のフロアには向かわず、その勢いのまま屋上への入り口となる鉄扉を蹴り飛ばした。

 

「ほう、正面から来たか」

「ああ、来てやったぜ」

 

 扉を蹴破ったクーガーの視線の先。ビルの屋上は、その一面に無数の武器が墓標のように打ち立てられていた。

 その最奥、転落防止の手すりを背に、アーチャーが悠然と立っている。アーチャーは、ビルを抜ける風に紅衣の裾をはためかせながら、落ち着いた動作で弓に矢をつがえる。

 

「この程度の策、見抜けぬ無能とは思わなかったが」

 

 弓を引き絞りながらアーチャーがそう零す。しかし、彼の放つ言葉に落胆の色は無い。彼にはクーガーが罠だと知ってあえてこの場に来たことが分かっていた。

 その言葉に応えるように、クーガーは不敵な笑みを零す。

 

「ああ、そうさ。この程度の策、正面からぶち破れなければ、俺の力がアンタに示せない」

 

 クーガーは脚甲のつま先を何度か地面に打ち付けてからクラウチングスタートの体勢を取った。

 そう、この戦いは()()()()()()()()()()()()()。アーチャーに搦め手で勝ったとして、それがセイバーに通ずるに足る力を示すことになるかと言われれば、答えは「NO」だ。

 ここでクーガーが示さなければならないのは純然たる力。

 多少の策など物ともせず、あの、アーサー王(でんせつ)と真っ向から撃ち合える、それに足る力がある。これは、その確証をアーチャーに与える為の戦いなのだ。

 アーチャーはその上で、あえて安い策でクーガーを誘ったのだ。その策をあべこべに利用しようとする程度の英霊なら、セイバーとの決戦には不要。彼にはそれだけの覚悟があった。

 そして、クーガーは見事にその覚悟に応えてみせたのだ。

 気がつくと、いつの間にかアーチャーの口元には笑みが浮かんでいた。

 

「ふっ、ならば見せてもらおうか。お前のその力とやらを!」

「ああ、瞬きなんてするんじゃないぞ、目を瞑ってる間に全部終わっちまうからなぁ!」

 

 お互いが口上を述べ合った次の瞬間、クーガーが紫紺の風となった。彼は屋上に刺さる武器などものともせず、それらを轢き潰しながら地を這うようにアーチャーへと駆ける。

 

「はぁっ!」

 

 応ずるアーチャーは、つがえた偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)をクーガーへと放つ。螺旋を描いて飛翔するその矢は周囲の空間を巻き込んで進み、その突破力は矢の本体だけではなく、周囲の空間すら捻じ曲げて武器とする。マシュが先程この矢を受け止め切れなかったのも、この空間のねじれの余波を相殺しきれなかった為だ。

 

 ……本体を避けるだけでは避けきれない。しかし、横に避ければ命綱のスピードが殺される。さぁ、これをどう凌ぐ!

 

 力を試すとはいえども、無論アーチャーは本気でクーガーを殺しにかかっている。この程度で殺されるような英霊はそもそも不要だからだ。

 まともに受ければ、致命傷は必死。

 そのアーチャーの一糸に対してーー

 

「はああぁぁぁ!」

「なんだと!?」

 

 ーークーガーは真一文字に直進した。

 お互いに向かい合う速度でぶつかれば、いかに強固な英霊でも偽・螺旋剣の突破力を受け止めきることは至難の業だ。流石のアーチャーも、ここでは本心から驚愕の声を上げる。

 しかしーー

 

「ーーいい速さだ。ようやく、俺のいる世界が戻ってきた気がするぜ」

 

 クーガーはその速さを知覚していた。本気を出せば音すら置き去りにする《世界を縮める男》は、迫りくる偽・螺旋剣の生み出す破壊の力を確かに見抜いていたのだ。

 そして、その圧倒的な暴力に対してクーガーが取った行動。

 

「こいつを、くらえぇ!!」

 

 トップスピードでクーガーの脚が振り抜かれる。その瞬間、クーガーの足から一本の矢が確かに偽・螺旋剣へと放たれた。

 しかし、クーガーの《アルター能力》、《ラディカル・グッドスピード》にはそのような能力はない。

 では、放たれた矢の正体は何なのか。

 その答えはアーチャーの口から零れていた。

 

「……っ!? ……そうか、(オレ)の剣か!」

 

 クーガーが放った一本の矢。

 それは、他ならぬ、アーチャーが屋上に投影してあった剣の一振りだった。クーガーは全速力でアーチャーに駆け込むときに、進路上に刺さった剣を、迫りくる矢に向けて思い切り蹴り上げたのだ。

 そして、互いに矢となった名のある宝剣の投影(フェイク)は、真正面からぶつかり合い、金切り声を上げながら弾けて空に消える。

 その行く末を確かめるよりも早く、投影した二の矢を弓につがえるアーチャー。

 しかし、彼の動作は冷気を感じるほどの距離で首筋に添えられた薄紫の脚甲によって阻まれた。

 

「言うのが遅かったが、よそ見も駄目だぜ、弓矢の旦那。どうだい、俺の速さは?」

 

 己の首筋に脚を突き付け、不敵に笑う一人の男(クーガー)

 間近でその顔を見て、アーチャーの顔にも男と同じ笑みが浮かんでいた。

 

「満点だ。先程までの非礼を詫びよう」

 

 アーチャーが弓を下ろすと、クーガーも脚を下ろして頭を下げた。

 

「詫びる必要なんてないさ。俺も旦那の立場なら、全く同じことをしていただろうからな」

「ふっ、ならばお互い様ということか」

 

 そう言って、下げようとしていた頭を止めたアーチャーの前に、クーガーの右手が差し出される。

 

「改めて、はじめましてだ旦那。俺の名前はストレイト・クーガー、人呼んで《世界を縮める男》さ」

 

 その右手をアーチャーは力強く握り返す。その強さが、試練を乗り越えた男に対する彼の信頼の強さであると示すかのように。

 

「ならば私も名乗ろう。サーヴァントアーチャー、真名はエミヤだ。クーガー、君の背中は私が守ってみせよう」

 

 二人の男の間に固い絆が結ばれたその時、階段を駆け上って、2つの影が屋上へと飛び込んだ。

 

「クーガーさん!」

「クーガー、無事なの!?」

 

 地上でのやり取りのあと、慌ててクーガーを追いかけてきた立香とオルガマリー。息を切らして階段を上ってきた二人が目にしたのは、その顔に笑みをたたえ固い握手を交す男たちの姿だった。

 その、あまりにも美しく力強い光景に、思わず二人の頬も弛む。

 

「……なんとか、なったみたいですね」

「心配させないでよ、全く……」

 

 今までの不安が一気に安堵へと変わった疲れから、その場にへたり込む二人の前で、男たちは十分に互いの健闘を称え合うのだった。

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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