FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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続きました!

投稿し過ぎて、FGOの魔眼列車の復刻イベントが完走できそうになかったので時間があきましたわー!


決戦前、円卓を囲んで

「さて、これから決戦をしかけるにあたり、私の持っているセイバーについての情報を共有しておこうと思う」

 

 先程の戦闘からしばらく。立香たちは同じオフィスビルの中程にあった会議室に腰を落ち着けていた。部屋の中央に鎮座していた円卓を囲うように座った彼らは、決戦に向けて手持ちの情報を共有していた。

 

 先程までは、立香たち《カルデア》一行が、オルガマリーが主導する形で、現在自分たちの置かれている状況をアーチャーに伝えていた。ここからは、それを受けてアーチャーが情報を開示する流れとなっていた。

 

「まずは、セイバーではなく周囲の状況から説明させてもらおう」

「周囲の、というとバーサーカーかしら」

 

 オルガマリーの確認にアーチャーが頷く。

 

「それも含めて、だな。では、お望みの通りバーサーカーのことから話させてもらおう。結論から言って、バーサーカーは既にセイバーに撃破されてシャドウ化している」

「つまり、バーサーカーとセイバーが交戦している隙を突くってプランは崩れたわけね」

 

 オルガマリーが険しい表情で額に手を当てる。

 アーサー王(ばけもの)狂戦士(ばけもの)をぶつけて漁夫の利を狙おうとしていた彼女からすれば、搦め手が使えないというのは頭の痛い話だった。

 そんなオルガマリーの心痛を気遣うように、アーチャーは口元に笑みを浮かべてみせる。

 

「ふっ、そう悲観するものでもないさ。五体満足のバーサーカーと戦わなくてよくなった、と考えることもできる」

「バーサーカーは、それほどまでに強い英霊の方だったのですか?」

 

 マシュが訊ねると、アーチャーは少し険しい表情で応えた。

 

「……ああ。今回の《聖杯戦争》でバーサーカーに充てがわれた英霊は、かの名高きヘラクレスだよ」

「へ、ヘラクレスですって!?」

 

 オルガマリーが思わず椅子から立ち上がって目の前の長机を両手で叩く。しかし、そんな彼女の反応も無理もない話だ。

 ヘラクレスといえば、ギリシャ神話に燦然とその名が輝くアーサーに匹敵するビッグネームだ。単純な身体能力もさることながら、恐ろしきはその宝具《 十二の試練(ゴッド・ハンド)》である。生前、彼が打ち立てた命がけの12の偉業がそのまま宝具になったそれは、彼の身にその偉業の数だけ命を吹き込む。

 つまり、ヘラクレスは12回致命傷に至る攻撃を与えて初めて斃すことが可能なのである。尋常ならざる大英雄ヘラクレスに12度の致命傷を与えることがどれだけ困難なことかは想像に難くないだろう。

 そんなオルガマリーの様子を見て、アーチャーは険しかった表情を少し緩める。

 

「そう、ヘラクレスだ。だが、かの大英雄も既に影法師(シャドウ)となった。影法師には宝具は使えないし、戦闘力も格段に劣る。ヘラクレスは最早そこまでの驚異ではない」

「大英雄ヘラクレスを驚異ではないって言うのはどうかと思うけど……ここは直接見た貴方の見立てを信じましょう、サーヴァントアーチャー。となると問題はーー」

「ーーその大英雄を倒すだけの力を持つアーサー王、というわけですか」

 

 オルガマリーの言葉をクーガーが拾う。彼は先程からアーチャーの話を興味深い様子で聞いていた。

 

「そういうわけだ。クーガー殿」

「クーガーでいいぜ、エミヤの旦那」

 

 クーガーは人差し指でサングラスを額に押し上げてニヤリと笑う。

 クーガーの中では、一度拳を交えたアーチャーとの間に最早遺恨はない。それは、共に肩を並べて戦う戦友に他人行儀は無用との、彼なりのアピールだった。

 そして、その意図を汲み取ったアーチャーも、笑顔でそれに応えた。

 

「ならこちらも遠慮なくそうさせてもらおう。クーガー、君の世界にもアーサー王は存在したのか?」

「ああ、『アーサー王と聖杯』の本は読んだことがある。俺の世界でも、アーサー王は選定の剣を引き抜き聖剣に選ばれ、円卓の騎士と共に夷狄と戦い、ブリテンを守護した偉大なる王だった」

 

 クーガーの言葉に、アーチャーは「ふむ」と頷く。

 

「そうか、やはり並行世界といっても、大筋では世界の流れは変わらないということか。なら、話は早いな」

「みたいですな。ただ、細部のディテールは異なるようだ。まさか、この世界のアーサー王が女性とはね」

「それは自分も驚きました。この世界でも、伝え聞くアーサー王は男性でしたから」

 

 クーガーの言葉に立香が同意を示す。

 一般的な人類史しか知らない立香にとっても、アーサー王が女性という事実は、目を瞠る驚愕の情報だった。

 

「アーサー王は、選定の剣を抜いてから、王であるために少女であることを捨て、王としての人生を歩み始めたんだ。それは、ある意味では人を捨て《ブリテンの守護者》となるに等しい大いなる決断だったんだ」

 

 一人の少女が聖剣に選ばれたことにより、その人生の歓びを全て捨ててまで王になる。

 もちろん、王になったことで得られた歓びもあっただろう。しかし、それは本来得られたはずの、平穏の中のささやかな幸せとは程遠いものだったはずだ。アーサー王は、ブリテンの繁栄と栄光との引き換えに、多くのものをその手から取り零して生きてきたのだ。

 アーサー王の生き様を語るアーチャー。その顔には悲壮とも取れる表情が浮かんでいた。

 

「……エミヤの旦那は、アーサー王に(ゆかり)のある英霊なのか?」

「……ああ、円卓の騎士というわけではないが、彼女とは少なからず因縁があるんだ」

「なら、決戦は旦那とアーサー王で一対一(サシ)の場を(あつら)えてもいいが、どうする?」

「なら、俺も大英雄のお相手って訳だな。俺は特に異論はねぇな。あとはアーチャー、お前さん次第だぜ」

 

 クーガーの提案、それは彼とクー・フーリンがヘラクレスを引き受けて、アーチャーがアーサー王と決戦をするという作戦(プラン)だった。

 

 腹に一物抱え続けるぐらいなら、拳を交えて(なぐりあって)スッキリする方がいい。

 

 そう考えてのクーガーの提案は、アーチャーが左右に振る首によって否定された。

 

「いや、事ここに及んでは私情よりも確実な勝利を優先させたい。最強の戦力には最強の戦力をぶつけるべきだ。私がヘラクレスを引き付ける。クーガーとクー・フーリンには、アーサー王の撃破をお願いしたい」

「そうか、わかったぜ旦那」

「そうかい。お前さんがそう決めたのなら、俺が口を挟むことではねぇな」

 

 恐らく、アーチャーに思う所がないわけでは無いのだろう。いや、間違いなく思うところはあるのだ。

 しかし、それを押し込めてまでの覚悟の提案に、男たちは力強く頷いた。戦士たちの間には、言葉を交す以上に相手を理解する強い絆が確かにあった。

 

「というわけで、セイバーは俺たちの担当になった。勝手に話を進めたが、問題ないかハジマル、オリガさん?」

「はい、名前が間違ってる以外は問題はないです」

「藤丸の言うとおりね」

「そうかい、それはよかった」

「よくないわよ! 名前は直しなさいよ!」

 

 そう言って「ムキー!」と怒りながら、隣に座ったクーガーの肩をポカポカ叩くオルガマリーとそれを宥める立香とマシュ。肩を叩かれガクガク揺れながら「はーっはっは! すみません、オリガさーん!」と相変わらずの態度のクーガー。

 土壇場とは思えない、いつも通りのやり取りをする《カルデア》一行を見てクー・フーリンが思わず「ははっ」と笑いを零す。

 

「いやぁ、いいマスターに恵まれたなぁ、クーガーは」

 

 マスターは触媒によってある程度英霊を選べるが、英霊はマスターを選べない。互いの相性によっては、喚び出した瞬間に殺し合いが始まってもおかしくはないのだが、《カルデア》チームとクーガーの関係は恐ろしいほどにうまく噛み合っていた。

 

「ふっ、これも俺の人徳ってやつですかね」

「いや、ないから。徳とか一切ないから」

「ふっ、ここまでマスターたちとサーヴァントが友好な関係なら、安心してセイバーの相手を任せられるというものだ」

 

 マスターとサーヴァントの繋がりの太さは、時にサーヴァントにスペック以上の力をもたらすことがある。そのことをよく理解していたアーチャーは、彼らの姿を見て何度も頷いていた。

 

「エミヤさん……でも、いいんでしょうか……」

「もちろん構わないさ」

 

 マシュがアーチャーを気遣うような声をあげると、彼はマシュに向かって大きく頷く。

 

「この一戦には人類史の存亡がかかっているんだ。自分の役割(ポジション)くらいは分かっているつもりだよ。それに、信頼するに足る相手に背中を預けるんだ、不安などある訳がないさ」

 

 そう言い切ってアーチャーがマシュに微笑む。

 その顔は、大人びた英霊の顔というよりは、どこか無垢な少年のような笑顔だった。

 あるいは、それこそがこのアーチャーエミヤという英霊の本質なのかもしれなかった。

 

「……わかりました! 不肖、このマシュ・キリエライトも勝利のために全力を尽くします!」

 

 アーチャーからの言葉に自分に向けられる確かな信頼を感じたマシュがぐっと拳を握りしめる。

 

「ああ、よろしくたのむよ。では、それぞれが戦う相手も決めたということで、セイバーの情報と私の考えた戦術を伝えたいが、いいかな」

「もちろん」

「よし、お前さんの絵図を見せてもらおうか」

「お願いするわ」

「お願いします、エミヤさん」

「よろしくお願いします!」

「わかった。では、まずはーー」

 

 迫る決戦を前に、一同は円卓を囲んで額を突き合わせる。

 円卓には上座や下座の概念がない。そこに座る者が位置によって優劣を持たぬよう、どこに座っても円周の一部になるような配慮があるが故の円卓なのだ。

 そんな円卓を囲う立香たちには、今マスターやサーヴァントの垣根を超えて、同じ苦難に立ち向かう同士としての確かな絆が芽生えているのだった。

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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