FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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セイバー戦3話目!
セイバー戦は後2回の予定!
今回は、クーガーと、オルガマリー&クー・フーリンのチームにフォーカス!


星の流した涙の跡は

「ちぃっ!」

 

 もう何度目になったか分からない攻撃の失敗に、クーガーは思わず舌打ちする。

 

 今のは結構いい線いったと思ったが、これを避けるかね!

 

 先程、クーガーは直進すると見せかけて、セイバーに肉薄する直前でほぼ直角に右へとステップ、その先にあった瓦礫を蹴って再びセイバーに突入するサイドワインダーのような攻撃をしかけていた。

 しかし、その攻撃を体を捻るような動きと、振り下ろしたエクスカリバーを返す刃で掬い上げるような斬撃で、セイバーは見事にいなしていた。

 

「小癪な手を使う。だが、私には無意味だ」

「どうかな? 今のは無理に体を捻ったように見えたがなぁ!」

 

 攻撃を避けられ、横をすり抜ける形となったクーガーは、セイバーに背を向けたまま大きくバックステップ。その動きの中で体を捻り、セイバーの頭部に踵落としを見舞う。

 普通ならば、体を反転させ相手と正対し、踏み込みと同時に攻撃動作に移るという2行程を必要とする動きを、クーガーはその尋常ならざる脚力で、1行程に縮めてみせた。紛れもなく、回避至難の速攻。

 

「ふん!」

 

 その一撃を、それでもセイバーは頭上に()()()()()()()エクスカリバーで受け止めてみせる。そのまま払いのけるようにクーガーを宙に跳ね上げると、剣身に《 風王結界(インビジブル・エア)》を展開。風の結界をクーガーに向けて解き放つ。

 

「なんのっ!」

 

 蹴り出す足場がなければ空中では動けない。並の英霊であればまともに食らう一撃だが、クーガーはそれを脚甲の側面にあるスリットからのジェット噴射で躱す。風に煽られて乱れる髪を撫でつけながら、クーガーとセイバーは再び仕切り直しの位置についた。

 

「いやぁ、こいつは中々に手強いですなぁ」

 

 クーガーがいつも通りの少し戯けた調子で話しかけると、セイバーはそれを「ふん」と鼻で笑う。

 

「見え透いた道化気取りはやめたらどうだ。お前の隠したつもりの牙はもう丸見えだぞ」

「おやぁ? この程度で俺の力を全部見たと思ってらっしゃる? なら、もっと道化を楽しんでいってもらいましょうか」

「力がまだあるというのなら出し惜しみはしないことだ。そうせねば、その首すぐにでも宙に舞うことになるぞ」

「さぁ、そう上手くいきますかねぇ」

 

 攻撃の次は言葉の応酬を繰り広げ、再び両雄は構えを取る。低く短距離走のような構えのクーガーに対して、セイバーは屋根(ダック)と呼ばれる、剣道でいうところの大上段に構える。一太刀で相手を仕留めてみせるという極めて攻撃的な構えだ。

 

 俺の速さに応じて斬れるってことか。嫌な感じだ。

 

 セイバーの構えを見て、クーガーはその姿にある男の姿を重ねていた。

 男の名はーー無常(むじょう)矜侍(きょうじ)。クーガーと同じく《向こう側の世界》を見たアルター能力者で、彼の命を終わらせるきっかけとなった男だ。

 無常は、そのアルター能力によって他者のアルター能力を吸収し、自分に都合のいい形に変質させて使うことができた。

 それによって得た、無常の最たる能力の一つ、それが《 未来予知(フォアサイト)》だった。無常は未来に何が起こるかを先読みすることで、クーガーの速さに対抗してきたのだ。

 そして、今のセイバーの動きに、クーガーは無常の《未来予知》に近いものを感じ取っていた。

 

 セイバーは、明らかにこちらの動きを読んだような防御をしてみせる。だが、その動作には無常ほどの余裕はない。もしかすると、()()()()()()()()()のか?

 

 クーガーのこの読みはまさに正鵠を射ていた。

 セイバー、アーサー王には《直感》のスキルがあり、正常な状態であれば、それは《未来予知》に近しい、戦闘における最適解の動きを彼女に可能とさせていた。反転した(オルタ)の状態である今は、本来の性能は喪われているものの、それでも武術の達人程度の先読みは可能だ。

 クーガーの動きがあまりにも規格外の為に、今のセイバーは際どい回避を強いられているものの、彼の速さに慣れ始めれば戦いの天秤は彼女に大きく傾くことになる。

 

 速さに対抗するために、自分の速さを上げる必要は無いということか。なるほど、英霊ってのは面白い!

 

 戦えば戦うほど不利になるはずの状況で、しかしクーガーは内心に湧き上がる歓びを抑えきれないでいた。

 戦いの中に身を置くクーガーにとっては、強者との戦いは心沸き立つものであり、逆境はそれをさらに引き立てるスパイスのようなものだった。

 

 蛇野郎みたいな(ひね)た陰謀屋ならともかく、反転したとはいえ、セイバーの叶えたい理想は本物だ。だからこそ、俺の速さ(りそう)をぶつけるだけの価値がある!

 

 無常の理想が、全てを踏み台に己を伸し上げる我欲であれば、セイバーの理想は私欲を捨てて全てを他者の幸福に捧げる献身だった。前者の理想はクーガーにとっては唾棄すべきものあったが、後者のそれが泥に塗れてまで手に入れたいものなのだとしたら、クーガーにはそれを軽んじることはできなかった。

 なぜなら、それは彼が既に辿ってきた道なのだから。

 

「さぁ、仕切り直しだ! 受けろよ俺の速さを!」

「野犬風情が、何度でも躾けてやろう!」

 

 その叫びは狼と獅子のそれに等しい。

 二匹の誇り高き獣たちは疾風となり、再びその爪牙を交え始めた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「おお、やってるねぇ~。流石はクーガー、反転した騎士王相手に五分でやれるたぁ、見上げたもんだ」

「異常に強いとは思っていたけど、まさかここまでとはね……」

 

 決戦の地である倒壊したビルでできた瓦礫の丘、そこを見下ろせるビルの屋上にクー・フーリンとオルガマリーは陣取っていた。

 この位置取りは、オルガマリーがクー・フーリンに提案したものである。ここからなら、クーガーの戦う戦場も、彼女の祖たる《アニムスフィア》の一門が目指した(そら)の果ても見通せる。

 

「しかし、この戦い長引くとクーガーに不利そうだ。セイバーが、段々クーガーの速さに慣れてきてやがる」

「わかったわ。すぐにでも準備を始めましょう」

「ああ、俺たちの作戦は嬢ちゃんの《天体魔術》で、セイバー目がけて流星をぶつける、これで間違いないな」

「ええ、クー・フーリン。セイバーの守りを突破するには中途半端な魔術では無理でしょうから」

 

 キャスター、クー・フーリンとオルガマリー、この二人の共通点はともに《ルーン魔術》の使い手ということである。ただし、どちらかというと速攻を意識した小〜中規模の魔術を得意とするクー・フーリンに対して、オルガマリーは長い詠唱と星辰の動きを利用した大掛かりな魔術を得意としていた。

 今回相手取るセイバーは、元の騎士王の状態よりも魔術耐性は落ちているとはいえ、それでも生半な魔術では傷一つつかぬほどの堅固な魔術防御を展開している。加えて、聖杯からの魔力リソースの常時供給によって、攻撃を分けて徐々に防御を減衰させるという手段も取れない。一撃で防御を貫く火力でなければ、時間とともに減衰した防御は回復してしまうのだ。

 故に、二人が採ったのは最大出力による一点突破。

 人の力を超えた、星の力を呼び込むことで護りごとセイバーを撃ち抜く手段を選んだのだ。

 

「じゃあ、俺は魔除けや気配遮断のルーンを刻んでいく。嬢ちゃんは術式の準備を進めてくれ。俺のルーンが完成して魔力の流れをセイバーが探知できない状態になったら、そこで詠唱開始といこうじゃねぇか」

「ええ、それじゃあ始めましょう」

 

 クーフーリンの言葉にオルガマリーが頷いて、二人は杖やナイフなどでビルの屋上にルーン文字を刻みつけていく。不意打ちという役目を果たす以上、魔力利用はご法度なので物理的な手段を取らざるを得ないためだ。

 ゴリゴリと屋上を削る音が響く中、クーフーリンが手を休めることなく「なあ、嬢ちゃん」とオルガマリーに話しかける。

 

「どうかしましたか、クー・フーリン」

「いや、ただ黙々と作業するのもあれだろ。ちょっと喋りながらでもいいかって思ってな」

「そんなことですか……何か重要な連絡かと思いました」

 

 呆れたように応えるオルガマリーに、クーフーリンは「ハハッ」と笑ってみせる。

 

「いやいや、行動前にリラックスするのも大切なことだぜ。ずっと張り詰めたままだと、英霊だって保ちゃしないさ。……それに、嬢ちゃんはずっと気を張りっぱなしだからな」

 

 クーフーリンから図星をつかれた、オルガマリーの肩がビクリと震える。しばらくの沈黙の後、彼女の口からふっとため息が漏れて、作業の手が止まる。

 

「……やっぱり、そう見えますか」

「ああ、見えるね。嬢ちゃんは、会ったときからずっと肩肘張りっぱなしさ。《カルデア》の連中とやいのやいの言ってるときでも、嬢ちゃんだけはどこか吹っ切れてねぇ」

「……仕方ないのよ。これは私が背負うべき責任なんだから」

 

 オルガマリーが絞り出すように言葉を零す。その口調には先程までの丁寧さが失われ、どこか意固地になった子どものような、そんな部分が入れ替わるように現れていた。

 

「父さんが、突然亡くなって、アニムスフィア家の当主になって、《カルデア》の事業を引き継いで、私は人の上に立つ人間になったの」

「そうかい」

「だ、だから、人の上に立つ人間として、弱みは見せられない、見せられないのよ。だって、だってそうしないと……」

 

 オルガマリーの言葉が止まる。ここを超えてしまえばもう後戻りはできない。そんな彼女の最後の意地が言葉を堰き止めていた。

 重苦しい沈黙が屋上に流れ、いたたまれなくなったオルガマリーが顔をあげると、そこには彼女を見つめるクーフーリンの顔があった。

 彼は真剣な表情で、ただ黙ってオルガマリーの話の続きを待っていた。それは英霊というよりも、人生の先達として、一生を全力で生き抜いた者として、彼女の苦しみを受け止めてやろうという、一人の男の気概があった。

 それを見た瞬間、彼女の頬を一筋、温かいものが伝った。それは、彼女の心の堰がついに彼女の想いを外へと解き放った証だった。

 

「……私、誰にも認めてもらえないもの! わ、私だって、せ、精一杯頑張って、(そば)に誰もいないのに、必死にやってるのに、みんなそんなことできて当たり前だって……でも、失敗したら、失望されて……うう……」

 

 一度溢れ出したそれは、それを溜め込んでいた長さに比例するように、後から後から彼女の頬を伝った。

 溢れ出るものの多さに言葉を失い、頭を垂れる彼女の頭に、温かいものが触れる。驚いた彼女が見上げると、そこにはクーフーリンの笑顔があった。それは、いつもの気さくな兄貴分のそれや、野生の獣を思わせる戦闘中のそれではなく、家族に向けるような慈愛に満ちたものだった。

 

「それでいい、それでいいんだ」

「あっ……」

 

 オルガマリーの頭に載せたクーフーリンの手が、優しく彼女の頭を撫でる。その感覚は彼女の奥底に眠っていた古い記憶を呼び覚ました。

 それはまだ、彼女が愛されていた頃の遠い遠い記憶。優しく彼女の頭を撫でて、微笑みを投げかけてくれるあの人の記憶。

 

「人間はな、心に全部のことを溜め込めるほど丈夫にできちゃいないんだ。それこそ、そこらのガキンチョから、一国の王に至るまでな。だから、嬢ちゃんだって耐えられなくなったら、吐き出しちまっても構わないんだ」

「うぅ……」

「今は、《カルデア》の目もクーガーたちの方に集中してる、他には誰も見ちゃいないさ。遠慮なんてしなくていいぜ」

「わぁぁぁ……!」

 

 クーフーリンの囁くような言葉に従い、オルガマリーはそのまま声を上げて泣き続けた。クーフーリンはその間、また黙って彼女の頭を撫で続けていたのだった。

 

 

ーーーーー

 

 

「……ありがとう、もう大丈夫よ、クーフーリン。みっともないところ見せたわね」

 

 時間にすれば数分足らず。ビルの屋上にオルガマリーが立っていた。濡れた頬を頬を手で拭って、涙の跡はもはや泣き腫らした目元だけとなったその顔は、先程までと変わって生気に満ちていた。

 

「気にすんな、嬢ちゃん。若者の悩みを受け止めるのも年長者の役目だからな。もういいかい?」

 

 クーフーリンも、そんな彼女の回復に気付き、いつもの気さくな笑顔で応えてみせる。

 

「ええ、クーガーや藤丸、マシュたちだって頑張っているんですもの。残りの準備、すぐにでも済ませましょう」

「ああ、いっちょやったりますか!」

 

 そして、二人がほぼ完成に近かったルーンを刻み終えると、その中央にオルガマリーが立ち、クーフーリンが自身の刻んだルーンに魔力を流す。

 

「よし、これで偽装は完了だ。あれだけ魔力が荒れ狂ってるなら、俺たちの魔力は術式が完了するまで辿れねぇ。後は任せたぜ、嬢ちゃん!」

「ええ、私は私の役目を果たすわ!」

 

 偉大な英霊から頼られている。その事実が、臆病なオルガマリーを奮い立たせる。

 オルガマリーが、クーフーリンに向け気力充実の返事をしたその瞬間、周囲にぶつんとノイズが走り、《カルデア》のDr.ロマンと通信が通じる。

 

「準備はできたかい、マリー! 下の状況はかなり逼迫してきてるよ!」

「わかったわ、こちらはいつでもいけるわ。私の術式が完成する寸前に、藤丸に合図を送ってくれるかしら」

「ああ、任せてくれ!」

 

 ーー時はきた。さあ、私の役目を果たしましょう。

 

 Dr.ロマンに指示を出し、ついにオルガマリーの口から呪文の言葉が紡がれる。

 

「星の形。(ソラ)の形。神の形。我の形。天体は空洞なり。空洞は虚空なり。虚空には神ありき」

 

 《天体魔術》。それは、宇宙を舞う星辰の力を利用する魔術。代表的なものには星を落とす《コメット》などがあるが、これは星の動きを精緻に把握しなければなし得ない非常に高度な魔術である。

 しかし、この《特異点》という環境はオルガマリーにとって大きくプラスに働く。

 《特異点》は既に過ぎ去った過去。つまり、術式に必要な天体の動きは()()()()()()()()()。例え、《人類史》が失われようとも、宇宙を駆ける星には無縁のことだからだ。

 加えて、この《特異点F》は現在から極めて時間軸が近い。即ち、観測の精度は極めて高く、それらは全てデータとして《カルデア》に蓄積されているのだ。

 故に、彼女の魔術は、《特異点》において英霊にすら有効な宝具クラスの刃となるーー!

 

「スターズ・コスモス・ゴッズ・アニムス・ホロウ・ヴォイド・アニマ・アニムスフィアーー!」

 

 彼女の詠唱が終わる。

 それは即ち、星の落ちる刻ーー

 

「いっけぇー!」

 

 オルガマリーの叫びが、ビルの屋上に響くのと同時に、空を覆う雲と黒煙を切り裂いて、冬木の街に星が降った。




???「オルガマリー所長カワイイヤッター!」
???「フィーヒヒヒ、マーケティング的にもこれは大成功ですよ!」
???「オルガマリー所長と激しく前後したい! フヒヒヒアバーー!?」
???「破廉恥海賊死すべし。慈悲はない」
???「アイエエエエエ!?ニンジャ、ニンジャナンデ!?」
???「ドーモ、カベニンジャクラン、オサカベヒメ=サン、フーマニンジャクラン、コタローデス。ハイクを詠め。カイシャクしてやる」
???「アバーー!?」

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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