FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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セイバー戦の続き!
今回は、クー・フーリンとオルガマリー、クーガーとセイバーパート!


星降る丘に将星の堕つ

 もう、何時のことかはっきりとは覚えていないが、昔、夜空を駆ける流星群を見て「星の雨が降っている」と呟いた記憶がある。

 雄大な自然現象が夜空に描く壮大な星のタピスリー。

 しかし、魔術の世界において、それは人の手で叶えうる(わざ)の一つとなる。

 

「藤丸君! もうすぐ、マリーの詠唱が完了する! クーガー君に合図を送ってあげて!」

「はい!」

 

 Dr.ロマンからの通信を受けて、立香はクーガーに供給(パス)する魔力を瞬間的に引き上げる。それが合図だった。

 

「……! せいやぁっ!」

「ふん、馬鹿の一つ覚えだな」

 

 クーガーが、真正面からセイバーに肉薄し、飛び蹴りを放つ。それをセイバーが、当然のごとくエクスカリバーで打ち返すと、クーガーはその勢いを利用して、聖剣を蹴りつけ大きく後方へと飛び立った。

 

「馬鹿を見るのがどちらなのか、今からわかりますよ、王様!」

「むっ!?」

 

 離れ行くクーガーの顔に浮かぶ不敵な笑みに、策の気配を感じたセイバーが、彼を追撃するために瓦礫の丘を駆け下りていく。

 しかし、クーガーの笑みとそれに迫るセイバーの間を、天より降り注ぐ流星が遮った。

 その一撃を皮切りに、一つが小型の建物はあろうかという星の欠片が、セイバーに向けて無数に降り注ぐ。

 轟音と粉塵、そして突風が駆け抜ける。

 マシュの構える盾の裏側まで回り込んでくる衝撃に、立香は恐怖以外の理由で、思わず尻もちをついてしまっていた。

 

「す、すごいです! これが所長の《天体魔術》! あっ、大丈夫ですか先輩!?」

 

 

 あまりにも現実離れした光景に、護るべき対象が尻もちをついていることに気がついたマシュが、慌てて立香に声をかけると、立香は「うん、なんともないよ」と声を返す。

 立香は、ズボンについた埃を払いながら立ち上がると、目の前に落ちる星の雨を、半ば呆然とした様子で見つめながらポツリと呟いた。

 

「でも、これはあれだね……」

「なんですか、先輩?」

 

 その呟きを拾ったマシュが問いかけると、立香はその顔に苦笑いを浮かべマシュを見た。

 

「やっぱり、お星様は空に浮かんでいるのを眺めるのが一番だなって思ったよ」

 

 そのどこか場違いな答えに、マシュは一瞬キョトンとした表情になってから、クスリと一つ笑いを零した。

 

「そうですね。……でしたら先輩、ここから無事に帰れたら、一緒に星を見ませんか?」

「それはいいね、みんなで見ようか」

 

 立香が笑顔で答えると、今度はマシュも満面の笑顔になった。

 

「はいっ! 所長やクーガーさんやドクターや、フォウさんも、みんなで一緒に見ましょうね!」

「おやおや、何か楽しいことの相談かい、お二人さん!」

「あっ、クーガーさん!」

 

 飛び退いた動きのまま、立香たちの元まで帰って来ていたクーガーにいつもの調子で声をかけられ、マシュが思わず声を上げる。

 

「ええ、先輩と大切な約束をしたのです」

「そうかい、それならもうひと頑張りしないと、だな」

「えっ?」

「まだ何かあるんですか、クーガーさん」

 

 先程までと打って変わって、クーガーがいつになく真剣な調子で喋るので、立香とマシュはその視線を辿る。

 クーガーの視線の先には、今や瓦礫ではなく流星群の丘となったセイバーの玉座があった。すると、次の瞬間、丘に突き立つ流星に光の線が刻まれ、その全てが線を挟んで上下にずり落ちる。

 

「そんな!?」

「こんなことって……!」

 

 思わず叫び声を上げる二人の前に、崩れ落ちた流星の巻き上げる砂煙の向こうから現れたのは、無傷に等しい姿のセイバーだった。

 服や鎧についた砂埃を払おうともせず、悠然と歩みを進めるセイバーの真正面にクーガーが立つ。彼我の距離はおよそ20メートル。互いに全力で飛び込めば必殺の間合いである。

 

「お召し物が汚れてますよ、王様。お色直しなんてどうです?」

「構わん、この程度の余興にそこまでする必要はない」

 

 クーガーの軽口に、セイバーはエクスカリバーを軽く振るって応える。

 

「ならいいんですが。これからやられるってときに、服がボロボロだと様にならないと思ったんですがね」

「ふん、道化もここまで来るといよいよ目障りだな。そろそろ退場願おうか。だが、その前にーー」

 

 セイバーが言葉を切ると、エクスカリバーの刀身に、黒く悍ましい魔力が迸る。

 

「ーー我らの勝負に水を指した羽虫どもの始末だ」

 

 続く言葉とともに聖剣が振り抜かれた瞬間、聖剣に纏わりついた魔力の奔流は、黒い閃光となって宙を駆け、とあるビルの屋上を薙ぎ払った。

 

 

ーーーーー

 

 

「うそでしょ……!? 星辰の動きを完璧に演算しての《惑星轟》を無傷で凌ぐなんて!?」

「ちいっ! 奴さん、思ったよりも聖杯に馴染んでやがった! まさか、嬢ちゃんの魔術を防ぐだけの出力がもう出せるなんてな!」

 

 セイバーの玉座を見下ろせるビルの上、《惑星轟》の直撃を受けてなお、何事もなかったかのように歩み始めたセイバーを見てオルガマリーが驚愕の叫びをあげる。

 クーフーリンも、予測を超えて聖杯の泥に適応していたセイバーを見て、自分の認識の甘さに舌打ちする。

 

「早く……早く、次の準備をしないと……!」

「何やってる、嬢ちゃん! すぐに退くぞ!」

 

 立香たちを支援するため、再び魔術の詠唱に戻ろうとするオルガマリーに向けて、クーフーリンが叫ぶ。

 

「でも、このままじゃクーガー達が!」

「今一番ヤバイのは奴らじゃねぇ! さっきの魔術でこっちの位置はバレてんだ! 奴さんがそう何度も横槍を許してくれるものかよ!」

「きゃっ……!?」

 

 言うや否や、クーフーリンがオルガマリーの腰を掻き抱くと、ビルの屋上をセイバーとは反対方向に疾走する。

 

「飛ぶぞ、嬢ちゃん! 舌を噛むなよ!」

「へっ?……きゃあぁぁぁ!?」

 

 屋上を反対側まで駆け抜けたクーフーリンは、そう叫ぶと同時にオルガマリーを抱き上げると、転落防止の手すりを踏み台にその身を宙へと踊らせた。

 オルガマリーが、思わず自分を抱えたクーフーリンの顔を見上げると、その背後、先程まで二人のいたビルの屋上を黒い閃光が薙ぎ払っていった。

 

「っだぁ! ……くぅ〜、キャスターなのがマジに悔やまれるぜ。大丈夫か、嬢ちゃん」

「ええ、なんとかね……」

 

 着地の衝撃を殺しきれなかったクー・フーリンが、痛む脚に苦悶の呻きを上げながらも、なんとか隣接するビルの屋上へと退避することに成功した二人は、お互いに顔を見合わせ安堵のため息をつく。

 

「そいつはよかった。どうだ、立てるか?」

「ええ、もちろんよ…………あれ? んっ、くっ、このっ……ん〜〜!!」

 

 クーフーリンの腕から屋上に降ろされ、自分の足で立ち上がろうとしたオルガマリーだったが、いくら立とうとしても腰が地面に吸い付いたように上がらない。

 そのことに気がついたオルガマリーは顔を真っ赤にして俯いた。

 

「……あの、とても言いにくいのだけど」

「おう、言わなくてもいいぜ。十分にわかってるからよ。そら、もう一度抱えてやるよ」

 

 完全に腰が抜けてしまったオルガマリーを、クーフーリンがもう一度その腕に抱き上げる。

 

「こんな肝心なときに……ごめんなさい、クーフーリン」

「気にすんな、嬢ちゃんはよくやってるさ。それに、あの作戦が外れた時点で、俺たちにできることは終了だ。後はクーガー達に任せるしかねぇ」

「悔しいけど、それしかないのね」

「ああ、仲間を信じて待つのも戦いさ」

 

 《カルデア》のトップでありながら、自分の部下たちに対して何もしてやれない不甲斐なさに下唇を噛み締めるオルガマリー。クーフーリンは、そんな彼女のここまでの健闘を讃えるかのように、彼女を抱きしめる腕の力を少し強めた。

 その心地よい強さに体の緊張を解いたオルガマリーは、ビルの向こうで今も戦っている三人に思いを馳せる。

 

 お願い。どうか、生き抜いて。

 

 オルガマリーの祈りを嘲笑うかのように、ビルの向こうからは轟音が響く。

 しかし、悲観的な彼女には珍しく、不思議と「なんとかなる」という予感が胸の内に渦巻くのだった。

 

 

ーーーー

 

 

「……マスター。令呪、一画切れるか?」

「……! はい、いつでもいけます」

 

 セイバーがビルの屋上を薙ぎ払う一瞬をついて、囁くように届けられたクーガーの声に、立香が同じ程度の声で答える。

 恐らく、この後はもはや十分にコンタクトを取る時間はない。そう判断したクーガーの一瞬だけの作戦会議。

 そして、その判断が正しかったことは、立香たちの正面に立つ、聖剣を構えた騎士王が教えてくれた。

 

「消し飛んだか、あるいは無様に逃げ去ったか。ともかく、小五月蝿い羽虫共は消えた。さぁ、決着といこうか」

「ああ、ここまできてようやく意見が一致したな」

 

 聖剣に再び黒い魔力を纏わせるセイバーに対して、クーガーはサングラスを押し上げると肩幅に脚を開く。

 

「クーガーさん、お願いします!」

「任せな()ジマル! 《世界を縮める男》の本領、とくと御覧(ごろう)じな!」

 

 立香の手から二画目の令呪が光って消える。その瞬間、クーガーの周囲の瓦礫が手あたり次第に虹の煌めきに変換され、クーガーの脚に纏わりつく。だが、その煌めきは脚甲のときのように消えることなく、クーガーの足元で竜巻のような光の渦となる。

 その光景を見て、しかしセイバーは悠然とした佇まいを崩さない。むしろ、先程までよりも冷然とした態度で聖剣を構えていた。

 

「なるほど、奥の手ということか。だが、奥の手を残しているのは何もそちらだけではないぞ? 我が宝具エクスカリバーは、未だにその力解放してはいないのだからな」

「なっ、あれ程の出力でまだ《真名解放》をしていなかったのか!?」

 

 通信からDr.ロマンの驚愕の声が漏れる。

 《真名開放》とは、宝具の本来の性能を発揮するために、秘匿されていた名前や能力を解き放つことだ。

 セイバーの場合は、エクスカリバーという名こそ知れ渡っていたものの、その本来実現しうる性能をここまで隠していたのだ。この辺りの駆け引きの上手さも、彼女を王に押し上げた所以である。

 秘めたる力を解き放ったことで、エクスカリバーは黒い稲光を纏った、背筋も凍るような薄ら寒い燐光を放ち始める。それは、全ての生命がこの世に在ることを否定するかのような拒絶の光だった。

 命あるものは、その悍ましさに直視することすら憚られるようなその光。

 その光を、クーガーはサングラス越しに真っ直ぐに見つめていた。

 

「ピカピカ光ったり、光線を出したり、聖剣ってのは(せわ)しないもんだな。《HOLY》のマクスフェルなんかが見たら喜びそうだが……生憎、俺はもう玩具の剣で満足できるような歳じゃあない」

 

 そこまで言うと、クーガーは瓦礫を踏み台代わりにクラウチングスタートの体勢をとる。それは、人類が最速で走り出すために生み出した、最良のフォーム。

 そんな、先の先を取ることをあからさまに匂わせるクーガーの脚甲のスリットに、彼の足元で渦巻いていた虹色の煌めきが残らず吸い込まれていく。更に黒き輝きを増すセイバーの聖剣とは対象的に、脚甲は顕現したときの元の姿へと戻っていた。

 しかし、魔術に少しでも造詣があるものなら分かるだろう。その内部には今にも弾け飛びそうなほどの魔力が渦巻いていることを。

 

 次の一撃が決戦の一撃となる。

 

 その場にいる誰もがその事実を認識していた。

 

「我が聖剣(生き様)を愚弄するか。道化故に多少の不遜は目こぼししたが、こればかりは赦さぬ。鏖殺だ、塵一つ遺さぬと思え」

 

 今まで見たことがないほど、眉間に深く皺を寄せ聖剣を構えるセイバーに対して、クーガーも応じるように体を曲げて、放たれる寸前の撥条のように力を溜める。

 全身から溢れ出る、力を開放する寸前に見られる特有の緊張感に反して、クーガーの顔は不敵な笑みを絶やさない。

 

「ああ、愚弄してるさ。だがな、その剣を一番愚弄してるのはアンタだぜ、王様」

「何?」

「泥に塗れても叶えたい願い(りそう)がある。そいつは分かる。昔の俺もそうだったーー」

 

 クーガーが、《ロストグラウンド》のアルター使いを取り締まる警察機構、《HOLD》にその身をおいたのは、他ならぬアルター使い達を護るためでもあった。彼がアルター使いの有用性を示すことが、アルター使いの社会的地位を高め、それが長い目で見ればアルター使いの未来を拓くことに繋がる。

 そのために、クーガーは《ロストグラウンド》のアルター使い達から裏切り者と蔑まれても、本土の側に付くことを選んだのだ。

 そんなクーガーだからこそ、セイバーの想いは痛いほどに分かる。本当に大切なものを護るためなら自分がいくら汚れても構わない。二人のスタンスは一致していた。

 しかし、だからこそクーガーはセイバーに吼える。

 

「ーーだが、あんたは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! だから、俺が! あんたと同じように願いを追い求めた俺が、あんたの目を覚まさせてやる!」

 

 泥に浸かるものは、いつの間にか深みに嵌っていることが多い。持つものが多ければ多いほど、その身はより深く泥中に沈み、結局汚してはならないものまで泥に浸からせてしまうことになる。

 クーガーは、セイバーが今まさにその状態であることを見抜いていた。

 

「……世迷言を。我は泥に塗れようとも、自分の理想まで泥で穢してはおらぬ。我の理想は、完全なるブリテンの未来は、ここより始まるのだ。それを今から貴様を消して証明してやろう」

「……残念だ、王様。あんたはもう、何が正しくて何が間違っているのかもわからないんだな。なら、どちらが正しいか、俺が教えて差し上げましょう!」

 

 もはや、問答は無用。

 互いにそう断じた二人が、魔力を高めてゆく。

 二人の口から、ともに宝具を開放する言葉が紡がれる。

 

「卑王鉄槌。極光は反転するーー」

「輝け、もっと輝けーー」

 

 二人の間に流れる魔力が暴風となり、ビル街を吹き荒れる。

 

「先輩! 私の真後ろに!」

「わかった! 頼むよマシュ!」

 

 英霊ですらまともに立つことが怪しいその風の中、マシュは盾についたアンカーボルトを地面に打ち込み、渾身の力でその場に踏みとどまる。立香もその後ろに入り、荒れ狂う風を避けながら目を背けることなく決戦の趨勢を見守る。

 その視線の中で、先に詠唱を終えたのはセイバー。彼女に対して先を取ると思われたクーガーは、まだ詠唱によって力を高めている途中だった。

 

 ーー()った。いくら奴が速く動こうとも、放ち終えたエクスカリバーの極光より速くは動けまい。

 

 勝利を確信したセイバーが、最後の言葉を口にする。

 

「ーー光を呑め!《約束された勝利の(エクスカリバー……)……っ!?

 

 後一節。詠唱の最中、セイバーの目が驚愕に見開かれる。それを見たクーガーがセイバーの背後、ビルの屋上を見上げて叫びを上げる。

 

「……やれやれ、『ヒーローは遅れてやってくる』ってやつですか。まったく、にくい演出をしてくれますなぁ、()()ァ!」

……(モルガーン)》!」

 

 クーガーに向かうはずの必殺の一撃は、踵を返したセイバーによって背後のビルの屋上へと放たれる。黒い光の奔流は、セイバーの背後、僅か数メートルまでに迫っていた螺旋の矢を打ち払い、ビルの屋上で弓を構える赤い弓兵を薙ぎ払った。

 

「エミヤさん!」

 

 立香の悲痛な叫びが、戦場に響く。彼は、契約したアーチャーとの間にあった魔力の回路(パス)が消失したことにより、アーチャーの霊核が砕かれたことをいち早く理解していた。

 まさに、決死の一撃。

 そしてそれは、この戦いの結末を決する一撃でもあった。

 

「見事だ、エミヤの旦那ァ! その想い、俺がしかと受け取ったぁ! ()くぜ、王様!」

「小賢しい! 我の理想を、無礼(なめ)るなぁ!」

 

 紅き弓兵の最期を見届けたクーガーとセイバー、二人の咆哮が呼び水となり、互いの魔力が今、解き放たれる。

 

「受けろよ、俺の《速さ》をーー」

「屍の山に沈め、崩落せよーー」

 

 宝具を解き放つための言葉が、今度は共に紡がれる。

 その解放は同時ーー

 

「ーー《衝撃の、ファーストブリット》ォ!」

「ーー《約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)》!」

 

 ーーその瞬間、世界は一瞬閃光に包まれて、そこに存在する、あらゆるものの知覚が失われた。




次回は、アーチャーパートと、クーガーとセイバーの決着パートですわ~!

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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