FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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セイバー戦ラストォ! 長くなるので分割2部ですわ〜!

今回はエミヤパートですわ~!


荒野に旅立ちの鐘が鳴る(前編)

「流石はギリシャ神話の大英雄……決して侮ったわけではないが……」

 

 決戦直前、確実な勝利を掴むための布石として、影法師となった狂戦士(バーサーカー)シャドウ・ヘラクレスを引き受けたアーチャーは、その強さに自分の見通しの甘さを呪っていた。

 彼には、生前のとある経験によりバーサーカーとして現界したヘラクレスの知識を持っていた。それ故に、今の自分であれば()()()()()()()()()()()()()()()という確信があった。

 だからこそ、彼はその確信を前提として、ヘラクレスの相手を引き受けたのだ。

 

 しかし、結論から言うと、アーチャーのその判断は間違いだった。

 

「まさか、()()()()()()()()()()()()()()がこれほどの力とは……!」

 

 そう、彼の誤算の原因は、ヘラクレスが以前とは違い、マスター付きの英霊ではなく、大聖杯の泥によって動くシャドウ・サーヴァントになっていたことだ。これがヘラクレスという英霊にとっては、デメリットではなく、逆にメリットとして働いていた。

 そもそも、英霊はマスターからの魔力供給により現界するのだが、当然、英霊の格によって消費される魔力の量には雲泥の差がある。歴史に名だたる大英雄、神や半神ともなれば、一回の戦闘で十分に性能を引き出せないままに魔力を枯渇させてしまう魔術師すらざらにいる。それどころか、補助的な道具を用いなければ維持するだけで精一杯ということすらありえるのだ。

 アーチャーの知るヘラクレスは、《聖杯戦争》に勝利するためだけに生み出された、アインツベルンの白き少女をマスターとして彼の前に立ちはだかった。全身に巡らされた魔術回路に、それに見合う巨大な令呪。恐らく、ヘラクレスのマスターとしてはこれ以上の適格者はいないと思われる人選だった。

 しかし、そんな彼女ですらヘラクレスにとっては()()()()()だったのだ。

 実際、彼女はヘラクレスを本来の適性があるアーチャーなどのクラスでは維持できないため、狂化により意思の疎通ができない代わりに魔力を抑えられるバーサーカーのクラスで現界させていた。故に、アーチャーはその隙を突いてヘラクレスを6度も斃してみせたのだ。

 だが、今のヘラクレスにはその魔力という枷がない。彼に魔力を供給しているのは、無尽蔵ともいえる冬木の大聖杯。いくら魔力を使おうともすぐにその穴が埋まってしまう。

 加えて、バーサーカーというクラスで底上げされたヘラクレスの“暴”の力は、シャドウ・サーヴァントになることで《 十二の試練(ゴッドハンド)》という宝具を失うという対価をもってしても、有り余る程になっていた。クラス適性、魔力源、サーヴァントの格、その全てが噛み合った結果、ヘラクレスは本物の怪物になったのである。

 

「GRUAAAAGA!」

「くそっ、障害物もお構いなしとはな!」

 

 気配遮断と機動力を生かしてビル街を縦横無尽に駆けるアーチャーに対し、ヘラクレスはビルをぶち抜いて最短距離で追い縋る。宝具を撃つための決定機を作れないまま、(いたずら)に時が過ぎていく。

 

 このままでは、せっかく立香君に貰った令呪一画分の魔力を垂れ流すだけだ。……どうやら、私も覚悟を決めるときか。

 

 もはや、逃走を続けることは無意味。そう判断を下したアーチャーの目の前には、とあるビルがそびえ立っていた。そこは、彼の遠い記憶の中で、セイバーとライダーが壁面を駆け抜けながらしのぎを削りあった決戦の地だった。

 

「さて、ここが正念場だ。私に着いてこれるか、ギリシャの大英雄!」

 

 ヘラクレスへの挑発と、自分自身への喝を含めた叫びを上げると、アーチャーは手元にアサシンの使っていたダガータイプの短剣を複数投影、それをビルの壁面に投擲して打ち込んでゆく。

 打ち込まれた短剣はどれも微妙にずれた配置になっており、その短剣を足場代わりにしてアーチャーはビルを駆け登って行く。

 

「GAAAUUu……!」

 

 それを見たヘラクレスも、後を追いかけるべくビルの壁面へと足をかけるも、アーチャーの使った短剣は既に彼の手で消滅させられており、壁をそのまま蹴上がろうにも、壁はヘラクレスの重量を支えきれずその足は壁面を踏み抜いてしまう。必然、ヘラクレスは壁を手足でよじ登ることしか適わず、ここで初めて両者の間に十分な距離が生まれた。

 ヘラクレスがまだ下層で苦戦しているとき、既にビルの屋上に手を掛けていたアーチャーは、遥か下で登攀に手間取るヘラクレスの姿を見て自分の策の成就を確信した。

 

「やはり、直線的に追ってきたか。今回は、影法師故の思考力の無さが仇となったな。もし、彼女がマスターであれば、私の策などには目もくれず、()()()()()()()()()()()()だろうな」

 

 そう呟いて目を瞑るアーチャーの瞼の裏に映るのは、冬を擬人化させたような純白の少女の幻影。

 しかし、次の瞬間にはそれを振り払うかのように彼は瞠目し、己が引き受けた敵の姿を正面から見据える。

 

「さぁ、決着といこうかバーサーカー!」

 

 宣言するやいなや、アーチャーはその手に干将と莫邪、二振りの剣を投影する。

 

「……ふん!」

 

 次の瞬間、あろうことかアーチャーは二振りの剣を壁面に置いた()()()()()()()()()()

 投影とはいえ干将・莫邪は紛れもない宝具。それがもたらす痛みにアーチャーは思わず顔を顰める。

 

「くっ……、だが、これで私も壁面に立つことができる!」

 

 そう、一見するとただの自傷行為に見えたアーチャーの行為は、実は「足を壁面に縫い付けることで、重力に逆らって壁に立つ」という芸当を可能にするためのものだったのだ。目論見通り、重力に逆らい壁に立ったアーチャーの前には、迫りくるヘラクレスの姿がある。

 それを確かめると、アーチャーは弓と捻くれた剣を三本投影する。その内の二本をビルの壁面に突き立てると、残る一本を矢の代わりに弓へと(つが)えた。

 これこそが、アーチャーの考えた布陣の完成形。

 重力に逆らいビルの壁面を攀じ登るという状況下にいるヘラクレスへの、重力の加速度まで加えた《偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)》による連続射撃。いかに大英雄といえども、負傷は免れ得ぬ回避至難の計略である。

 引き絞った弓矢越しにヘラクレスを眺め、アーチャーは不敵な笑みを浮かべる。

 

「さぁ、来い! 私の試練が貴様の乗り越えてきた《十二の試練》に勝るかどうか、その身で確かめてみろ!」

「GuRuAAAA!!」

 

 アーチャーの叫びと、ヘラクレスの咆哮が重なった瞬間、第一矢が放たれる。

 螺旋の矢となった《偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)》は、壁面に立つという無理な体勢から放たれたとは思えないほどの唸りを上げてヘラクレスに肉薄する。

 しかし。

 

「AAaaG!!」

「何!?」

 

 叫びを上げたヘラクレスが壁面を蹴って跳躍、螺旋の矢はヘラクレスと壁面の間を素通りしていった。ヘラクレスが跳躍した後の壁面に開いた穴からは、不格好な飴細工のようにねじ曲がった鉄骨が見て取れた。

 ヘラクレスが着地すると、ビルの滑らかな壁面は、そこにあばたを作りながらもなんとかその体を受け止める。

 

「なるほど、下に柱があるところを足場にしたのか! だが、まだだ!」

 

 跳躍によって再び距離を詰めるヘラクレスに、アーチャーは焦ることなく第二矢を番える。そして、再びヘラクレスに対してそれを放つ。直線的に放たれた第一矢に対して、こちらは下から上へとやや斜行気味にヘラクレスへと向かう。

 

「GAaa!!」

 

 それでも、ヘラクレスは先程と同じように下に柱のある壁面を蹴って跳躍、再び矢を回避してみせる。

 しかし、その後に彼を待ち受ける展開は、先程とは異なっていた。

 

「GRuOoo……!?」

「残念だったな。そこには柱はないんだ」

 

 アーチャーの言葉が示す通り、斜行する矢を避けて斜めに跳んだヘラクレスの体は、着地の衝撃で腰の辺りまで壁面にめり込んでいた。同じ直線上に跳ばれては先程の二の舞になると判断したアーチャーによる咄嗟の判断。それは大英雄にとって、致命的といえる隙を産んだ。

 ビルにめり込んだ体を、なんとか引き抜こうとするヘラクレスの前で、アーチャーは悠々と3本目の矢を弓に番え、弦をめいいっぱいまで引き絞る。

 

「さらばだ、大英雄。残念だが、ビルに登った化け物というものは、最期は地面に墜ちると相場が決まっているんだ」

「GAAAaaa……!!」

 

 言い終えたアーチャーの手から放たれた矢は、今度は過たずヘラクレスの胸の中央を射貫いていた。

 英霊の姿をなぞるだけのシャドウ・サーヴァントには、宝具を使うことができない。故に、たった一つしかない霊核(いのち)を砕かれたヘラクレスの肉体は、地に墜ちるとそのままバラバラに砕け散った。

 その様子を見届けたアーチャーは、干将と莫耶の二振りの剣を霊体化して屋上へと登る。

 

「無傷、とは言わないまでも、なんとか最低限の役目は果たしたか。だがーー」

 

 そこで言葉を切ったアーチャーの視線の先、別の高層ビルの影からは激しい衝撃音が届いてくる。

 

「ーークーガーがまだ戦ってくれている」

 

 その音で、アーチャーは、セイバーとの決戦がまだ終わっていないことを悟っていた。

 クーガーが、限りなく最速を目指す英霊であることはこれまでの短いやり取りの中で、アーチャーも理解している。そんな彼が、まだ、セイバーとの決着をつけていない。それは即ちーー

 

 ーー彼は、私にセイバーとのケリをつけさせるために踏み留まってくれている。

 

 アーチャーとセイバーの間の因縁は、作戦会議のときにクーガー達も知るところだ。それでも、勝利を優先させるために、アーチャーはセイバーとの決戦に横槍を入れられぬように、ヘラクレスを引き受けた。

 だが、クーガーは信じたのだ。

 アーチャーが、必ずヘラクレスを斃すことを。そして、セイバーとの戦いに参じることを。

 

「ならば、私もそれに応えるとしよう!」

 

 アーチャーは、痛む足の傷の回復もそこそこに、ビルの屋上へと登ると、隣接するビルへと飛び移りながら戦地を目指す。ヘラクレスとの戦いで、アーチャーが立香の令呪から貰い受けた魔力はほぼ底をついている。ならば、傷を治すより移動や攻撃に魔力(リソース)を割いたほうがよいという判断を彼は下した。

 痛む足でビル群を駆けるアーチャーは、しかし、痛みすら押して動けるほどに、その胸の内は晴れやかだった。

 

 ーー信頼されている、というのはこうも心地よいものなのだな。

 

 ずっと独りで戦ってきた。

 常に正義のために動いてきた。

 人ではなく正義の味方であることを選んだ自分を、理解するものなど誰もいなかった。

 だが、どうだ。

 今、私は信頼されている。

 あの、大英雄を必ず倒すと。そして、彼女との戦いにケリをつけに来るのだと。

 そのためだけに、土壇場で歯を食いしばって耐えている戦友(とも)がいるのだ。たとえそれが、《特異点》から退去すれば消える記憶だろうとしても。この一瞬の信頼こそが、何ものにも代え難い、人を衝き動かす原動力となるのだ。

 だからーー

 

「ーー今の私には、それで十分なんだ」

 

 ビルの縁にアーチャーが足を掛ける。足下ではセイバーとクーガーが互いに魔力を高めている。いよいよ決着のときだ。だが、間に合った。

 呼吸を整え最後の魔力で《偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)》を投影、弓の弦へと番える。

 正真正銘、これが最後の一撃となる。

 構えた弓矢越しにセイバーを見る。今、まさに振りかぶられようとする彼女の聖剣の先にはクーガーとマシュ、そして立香が立っていた。

 

「そうじゃないだろう、君の生き様(りそう)は」

 

 アーチャーは知っている。セイバーの振るう聖剣は、彼女の在り方を決めた彼女の写し身なのだと。弱きを助け強きを挫く、人々の笑顔を護るための剣なのだと。

 故に、彼女にその剣を立香に向けて振るわせることなど許されない。それは、彼女自身を否定することに他ならない。

 

 だからこそ、(オレ)がセイバーを止めるんだ。

 

「さぁ、これが今の私にできる全てだ! 受け取れ、セイバァー!」

 

 叫びと共に螺旋の矢は宙を舞う。空間すらも削ぎ落とす回避至難の一撃は、しかし、聖剣の放つ黒い閃光にかき消される。それでもなお、勢い衰えぬ閃光は、その先に立つアーチャーを一瞬でその奔流の内に飲み込んだ。

 聖剣の放つ恐るべき魔力に霊核を砕かれ、座へと戻る彼のその心は、凪の海のように穏やかだった。

 

 私の役目は全て果たした。ありがとう、クーガー、立香、オルガマリー、マシュ、クー・フーリン。後は、君たちが彼女をーー

 

 心の内で、一時の縁を結んだ仲間たちに声援を贈ると、紅き弓兵は少年のような微笑みを浮かべながら、魔力の奔流の中へと溶けていった。




ついに次でセイバー戦決着!

そして、いよいよアンケートの〆切のときが来ましたわ!
アンケート結果を受けた《特異点F》最終話は、あと一話後に投稿ですわ~!

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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