FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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セイバー編ラストォ!
今度は、クーガーVSセイバー決着パート!

なんだか急に閲覧数が増えて、「日間の二次ランキングの隅っこにでも載ったのかしら?」とか思ったら、まさかの日間総合31位!

んぁ〜! ありがたき幸せですわぁ〜! 読者の皆様には、感謝っ…! 圧倒的感謝っ…! ですわ〜!


荒野に旅立ちの鐘が鳴る(後編)

 判断は間違っていなかった。

 あの、紅い弓兵の攻撃は無視してよいものではなかった。恐らく、英霊としての存在の全てを載せた一撃。おおよそ躱せるものではなく、必ず防がなければならない一撃だった。

 しかし、それは目の前に立つこの男を前にして、取っていい行動ではなかった。先程までのやり取りで、この男の速さは十二分に理解していた。この間合いで刹那でも隙を見せれば、それ即ち死。そんなことは分かりきったことだったはずだ。

 

 ーーそうか、そうだったのか。

 

 そこまで考えて私はようやく思い至った。

 

 私は既に詰んでいた(チェックメイトだった)のか。

 

 その事実を認識した瞬間、胸の霊核を砕いて、恐ろしく速く、そして心地よい風が戦場を吹き抜け、私は思わず、構えた聖剣をその手から取り落としていた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「決着、だな」

 

 星屑の丘の上、先程までセイバーが座していた玉座のあった場所に、クーガーが砂煙と共に現れる。距離にして100メートルはある不安定な瓦礫の足場を、彼は瞬きの刹那に駆け抜けていた。

 そして、その速さがもたらしたエネルギーは進路にあるものに対して、圧倒的なまでの破壊を撒き散らす。

 彼が丘に現れたのと時を同じくして、彼の背後で反転した黒き騎士王が、その手から聖剣を取り零して膝を付く。その左肩から心臓にかけて、鎧の肩当てと胸甲を切り裂いて真一文字に傷が走っていた。

 クーガーは彼女の上を飛び越すようにして、その蹴りを袈裟斬りに浴びせていたのだった。

 誰が見ても明らかな致命傷。

 

「……まだ、だ」

 

 しかし、どう考えてもまともに動けるはずのない傷を受けてもなお、セイバーは右手で左肩を押さえ、ゆらりと立ち上がる。

 だが、彼女は地に突き立った聖剣を抜くことはなく、ゆらりとクーガーへ歩みを進める。立香とマシュは固唾を呑んでその成り行きを見つめている。

 セイバーはゆっくりと、しかし確実に前へと進んで遂にクーガーの待つ丘の下で歩みを止めた。その構図は、奇しくもクーガーたちがこの場所に現れたときと正反対の立ち位置であった。

 二人の視線が交わり、セイバーの口が開く。

 

「……なぜ、私は負けたのだろうな」

 

 セイバーの口から零れた問いに、クーガーがその先を促すように「なぜ、ですか」と復唱する。

 

「ああ、そうだ。大聖杯の潤沢な魔力に、敵を迎え撃つ万全の陣、そして、あらゆる判断を合理的に下す怜悧な心。おおよそ、私が負ける要素はなかった。故に問いたい。そこ(玉座)に立つお前と私の差は何だったのか。私にも仲間があれば貴様に負けることはなかったのか」

 

 次第に語気を強め身を乗り出して詰め寄るセイバーに、クーガーは笑みを浮かべて首を横に振る。その笑みは、先程までの不敵なものではなく、どこか人懐っこさを感じる好青年の笑みだった。

 

「それもあるでしょうが、本質はそこじゃありませんよ王様」

「ではなぜ……」

「それはねですね、王様、あなたは後ろ向き過ぎたんですよ」

「後ろ向き……」

「あっ、もちろんこれはさっき後ろを向いたこととは無関係ですよ。まぁ、あれも俺の勝利を支えてはくれたんですが、俺が言いたいのは、そう、考え方の問題です」

 

 訝しげに眉を顰めるセイバーに向けて、クーガーが戯けた調子で両手を振る。

 

「王様、貴女はブリテンの繁栄を願いここから新たなブリテンを始めようとした。自らのせいで滅びの運命を辿ったあの国をやり直そうと」

「そうだ、その通りだ。大聖杯は万能の願望機。歴史を一からやり直すことなど造作もない事だ」

「それですよ」

 

 自分の言葉に対して突き付けられたクーガーの言葉と彼の人差し指に、セイバーが「何?」と一瞬怯む。

 

「その願いがそもそも『後ろ向き』なんです。貴女は過去をやり直すのではなく、ここから新しいブリテンを始めるだけでよかったんだ」

「それは、しかし……」

 

 クーガーの言葉に対して、答えあぐねるセイバーに向けて、彼は畳み掛けるように言葉をつなげる。

 

「確かに、貴女の愛するブリテンは滅びました。これを貴女は間違ったことだと考え、聖杯の力で1からやり直そうとした。でも、でもですよ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「……っ!」

 

 その瞬間、セイバーは弾かれたように顔を上げた。彼女の胸の奥を駆け抜けていくのは、輝かしかったあの頃の夢の欠片たち。

 聖剣に選ばれ、人々の歓喜とともに王位を戴いた戴冠式。

 綺羅星の如く居並ぶ円卓の騎士たちと轡を並べて戦った華々しき戦場。

 戦場から勝利の凱旋をする騎士たちの戦列に駆け寄り、私に一輪の花を手渡してくれた少女。

 

「あ、ああ……!」

 

 セイバーの口から嗚咽にも似た慟哭が零れ、彼女はその場に跪いた。

 

 ーー忘れていた。全て、忘れて置き去りにしていた。私の人生は、こんなにも美しかったことを。私は、何という、愚か者だ。

 

 戦いの塵労に(まみ)れるうちに、いつしか置き去りにしてきた思い出を取り戻したセイバーの肩に、丘を下ったクーガーが右手を添える。

 

「思い出しましたか? 貴女が《過去》に積み上げてきたその全てが今の貴女を作っているのですよ。今の貴女の行為はその全てを否定する、それはつまり貴女自身を否定することだ。だから貴女は負けたのですよ」

 

 そこまで言うと、彼は空いている左手を広げ、セイバーの視界を開けてみせる。

 

「どうやったって《過去》ってのは変わらないんです。だったら、その先に目を向けるのも悪くないんじゃないですか」

「そうか……お前は、英霊になってもまだ、未来を夢見ているのだな」

 

 英霊とは、既に終わった存在だ。彼らは、彼らの人生や役割を生きて、それを終えることで座へと登録される。故に、本質的に彼らは《過去》の存在なのである。

 しかし、《過去》を本質とする英霊の中にあって、クーガーは決して過去を振り返らない。最速を目指す男は、常に前を向いて《未来》を目指すのだ。一秒一瞬でも世界を縮めるために。

 それこそが、クーガーの英霊としての特異性であり、そして、クーガーの強さの源でもあった。《過去》という重荷を背負わないだけ、彼はより速くより高みへと駆け抜けることができるのだ。

 セイバーは、その開けた視界の先に、荒野を駆け抜けていくクーガーの背中を幻視していた。

 

「はい、そうですとも。だってその方がずっと面白いでしょう」

 

 クーガーがそう言っていつもの不敵な笑みを浮かべると、セイバーもその邪気の無い笑顔につられて「ふっ」と笑みを溢した。そしてーー

 

「ーーふんっ!」

「ぬおうっ!?」

 

 突然、セイバーが気合いを込めて肩に添えられていたクーガーの手を振り払う。唐突なその行為に思わずクーガーが尻餅をつくと、その間に彼女は丘の上の玉座へと歩みを進めた。そして、玉座のあった場所の前に立つと悠然とクーガーたちの方を振り返った。

 

「道化たちよ、もう一度その名を聞こうか」

 

 セイバーが肩を押さえていた右手を前に掲げ高らかに声を上げる。

 

「いいでしょう! 俺の名前はストレイト・クーガー! 人呼んで《世界を縮める男》だ!」

「はい、私は人理保証機関《カルデア》所属のデミ・サーヴァント、マシュ・キリエライトです!」

「同じく、《カルデア》所属のマスター、藤丸立香です!」

 

 セイバーの声に応えるようにクーガーたちが名乗りを上げると、それを見た彼女は満足そうに頷いた。

 

「お前たちの奮戦、見事である! お前たちは見事に私という試練に打ち勝ってみせた!」

 

 そこまで言うと、セイバーは再びその顔に笑みを浮かべた。その笑みはマシュが思わず「あっ」とため息を零すほど、今までの険が失われた、美しく慈愛に満ちたものであった。

 

「故に、その栄光を讃えるために、褒美を取らす。クーガー、私の前に」

「わかりました、王様」

 

 呼びかけに答えたクーガーが、丘を上りセイバーの前に立つと、彼女は自分の胸に手を当てるとその手をクーガーへと差し出した。

 その手の上には、いつの間にか虹色の輝きに包まれた酒杯のようなものが置かれていた。

 

「あ、あれは聖杯!? そうか、この《特異点》を生み出していたのは聖杯の力だったのか!」

 

 思わぬ聖遺物の登場に、Dr.ロマンが通信越しに声を上げる。立香たちも、その言葉で興味深そうに聖杯に視線を注ぐ中、クーガーがセイバーの手から恭しく聖杯を受け取ってみせる。

 

「貴女の想い、確かに受け取りました。ありがとう、王様。貴女と競い合えたことに感謝を、そして、これを貴女に、貴女にはやはりこれがないと様にならない」

「うむ、そうだな」

 

 受け取った聖杯を左手に抱え、右手を差し出したクーガー。その手には、彼が拾い上げたエクスカリバーが握られていた。刃を持って差し出された聖剣の柄をセイバーの右手がしっかりと握る。

 

「礼を言うのは私の方だ、クーガー。お前は、私に答えを与えてくれた」

「そこまで大それたことはしてませんよ。俺が与えたのはきっかけに過ぎません。答えに気付くことができたのは、貴女の中に、ちゃんと答えが眠っていたからです」

「……ふっ、そうか」

 

 二人がお互いに笑みを交わして手を話すと、セイバーの体がその縁から輪郭を失い解け始める。霊核を失った英霊は現世から退去せねばならない。大聖杯の膨大な魔力によって遅れていたそれがようやく始まったのだ。

 

「どうやら、私もここまでらしい。最後にもう一つお前たちに褒美を取らせる。心して聞け」

「は、はい!」

 

 セイバーの言葉にビシッと居住まいを正したマシュを見て、彼女の目が刹那慈しむように細められる。

 

「私は、クーガーに授けた聖杯、これを持つ者によってこの世界の王に仕立て上げられた」

「……! ということは、その聖杯の持ち主が今回の件の黒幕ということかい!」

「然り」

 

 Dr.ロマンの声にセイバーが頷く。

 

「へぇ、こっちにもやっぱりいけ好かねぇ蛇野郎みたいなのがいるってわけだ」

 

 獰猛な肉食動物のような表情で、クーガーが拳を手のひらに打ち付けると、セイバーも険しい表情を浮かべる。

 

「ここから先、お前たちを苦難の道が待ち受ける。冠位指定(グランドオーダー)への旅立ちの鐘は、今ここに鳴らされた」

 

 そしてセイバーは右手の聖剣で玉座のあった丘を指し示す。

 

「この下、冬木の街の下に人為的に造られた地下道に通じる道がある。その(はて)、大聖杯の膝下でその者はお前たちを待ち受けているだろう」

「なるほど、じゃあひとっ走りして、そいつの横っ面に一発いいのをお見舞いしてやりましょう」

「そうだな。クーガー、お前ならあるいは奴に手が届くやもしれん」

 

 そうして、全てを語り終えたセイバーは右手をゆっくりと下ろす。しかし、その腕は下ろすよりも先に光の粒となって消えてゆく。

 

「では、お別れだ。《カルデア》の若きマスター藤丸、盾の乙女マシュ、そして最速の英霊クーガー。お前たちの旅路の無事を祈っているーー」

 

 そうして、光に溶けてゆくセイバー。

 彼女が光に還る最後の瞬間。立香たちはそこに、青い衣を纏った偉大なる騎士王の姿を確かに垣間見ていた。

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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