FGO+スクライド Fate Grateful Olderman −ある偉大な兄貴の物語− 作:なんJお嬢様部
リアル多忙でクッソ時間が空いて申し訳ありませんわ!
感想をいただいたので、これ以上おまたせするのはあまりにも不義理だと思い、なんとか仕上げましたわ!
それでは、本編をどうぞですわ!
「
「……っ!」
突然、全力で叫ばれた自分の名前に、思わず体が反応する。気付かないうちに、場の空気に飲まれて固まっていた体に熱が流れ込んできたみたいだ。
ーー虎の子の令呪、いつでも切れるようにしておいてくれ。
そして、呼ばれた名前とともに、つい先程自分が託されたクーガーさんの言葉が頭にリフレインする。
「クーガーさん!」
我に返った自分は、反射的に彼の名前を呼びながら左手の令呪に魔力を流していた。
「行くぜぇ! 輝け、もっと輝け、俺のアルター!」
返事はなかった。もうそんな余裕すらないことは、自分もよく
でも、返事がないということが、そこまで心が通じ合っているような気がして、不思議と不安な気持ちはしなかった。
目の前ではクーガーさんが、令呪によってブーストされた魔力で、周囲の物質や大聖杯の汚染された魔力すら手あたり次第に虹の煌めきに変えて、脚だけではなく全身に煌めきを纏っていく。
……脚だけじゃない!? つまり、これが
全身を虹の煌めきに包まれるクーガーさんを見て、自分の胸に押し寄せてきた感情。
それは、驚愕と安堵。
驚愕は、今までのクーガーさんがまだ本気を出していなかったということに対して。そして安堵は、今のクーガーさんなら必ず所長を救ってくれるという期待からくるものだ。
もちろん、目の前に立つレフ教授の皮を被った何かにクーガーさんが勝てる保証があるわけじゃない。アレは平凡な魔術師である自分が見ても分かる化け物だ。
それでも、自分の目の前に立つクーガーさんの背中を見ていると、不思議と負ける気がしない。理屈なんかじゃない。本能がクーガーさんの勝利を確信しているんだ。
そして、自分の目の前で、クーガーさんの背中は菫色をした鎧に包まれていく。恐ろしいまでに洗練された流線型を描くその鎧の背には、ジェット戦闘機の噴射口のようなスリットが無数にあって、これこそが彼の目指した《最速》の形なのだと一目で分かった。
お願いです、クーガーさん。貴方の《
そんな自分の祈りに応えるように、クーガーさんは大声でその《速さ》の名前を叫んだ。
「さぁ、受けろよ、俺の《速さ》を! 《ラディカル・グッドスピード》完全解放! 《フォトン・ブリッツ》!」
その瞬間、クーガーさんの姿はこの世から消えた。
いや、正しくは自分が知覚できなくなったのだ。
今、自分の目に映るものは、クーガーさんの背中から噴出される虹の煌めきだけだ。
「きゃっ!?」
「うわっ!? マシュ!?」
目の前に突如としてマシュの背中が迫ってきて、自分は咄嗟にその背中を支えてしまう。
「大丈夫かい、マシュ!?」
「す、すみません先輩! クーガーさんの出した衝撃波があまりにも凄まじくて!」
思わず叫んでしまった自分に、マシュが盾を構えたまま振り返って答えてくれる。クーガーさんの放った虹の煌めきは、その恐るべき出力で、盾を構えた状態のマシュを、一瞬で自分の側まで後退させていた。地面に刻まれた
「なんて力だ! でも、これなら……!」
「ええ! これなら、所長が《カルデアス》に落ちる前に助けられるかもしれません!」
自分とマシュは顔を見合わせて頷き合うと、正面に顔を戻して虹の煌めきの向こうにいるはずのクーガーさんに向けて大声で叫んでいた。
「「いっけぇ〜! クーガーさん!」」
ーーーーー
その叫び、確かに聞き届けたぜ、藤丸、マシュ!
クーガーは、背後に確かに二人の声を聞きながら己の纏う《最速》を精妙に制御して、オルガマリーへの距離を詰めていた。
《全速力》ではダメだ。それでは
もしこれが、レフを倒すためならクーガーはこの姿のまま全速力で大空洞を駆け抜けただろう。
しかし、今回の目的はあくまでもオルガマリーの救出。クーガーのアルター能力の全力を、不安定な霊体のオルガマリーが受け止められるとは到底考えられなかった。
故に《フォトン・ブリッツ》は、あくまでも初速を得るためだけに利用して、後はそれを解除しながら身体に働く慣性の力によって残りの距離を詰める。そうすれば《カルデアス》に落ちゆく彼女の身体を受け止める瞬間には、アルター能力を全解除して生身の彼女が耐えられる速度にまで減速できる。
これがクーガーの描いた絵図だった。
「ハハハ、無駄な足掻きだ人間!」
そんなクーガーの耳に、レフの姿をした何かの放つ哄笑が響く。
「もう手遅れだよ。彼女はもう、私が聖杯によって開いた穴を通って《カルデア》と繋がった。この特異点ならともかく、《カルデア》側に墜ちた肉体のない今の彼女には、もう触れることすらかなわないのだよ!」
んなこたぁ分かってんだよ、この毛虫野郎!
己の策が成就することを確信して、もはやこちらの妨害すらしてこないレフに向けて、クーガーは内心で悪態をつく。
しかし、肉体のない今のオルガマリーに触れることができないというレフの言葉は
実は、クーガーはオルガマリーへの接近方法は考えていても、どのように彼女を救けるのかについてはノープランで突っ走っていた。それでも、今はとにかく走り出さなければ、救出が間に合わなかったからだ。
しかし、クーガーが諦めることは決してない。高速で流れる世界の中、それ以上の思考の速さで彼は解決策を模索する。
精神体のオルガさんに、魔力で編まれた仮初とはいえ実体をもつ俺が触れられないのは解る。その辺りの知識は《英霊の座》が教えてくれたからな。
でも、俺が霊体になってオルガさんに触れられるようになっても、結局オルガさんと一緒に《カルデアス》に落ちるだけだ。流石に、このスピードで膨大な質量を持つ《カルデアス》に向かっていけば、いくら俺でもオルガさんを連れての脱出は無理だ。
《カルデアス》に落ちないようにするには、俺は実体を維持していないといけない。ならどうする? どうする、どうする? 考えろ、ストレイト・クーガー!
思考はフルで回転させながら、オルガマリーに接触するときに備えて、クーガーは《フォトン・ブリッツ》を徐々に解除していく。まずは、鎧の兜の部分が解除され、虹の煌めきに戻って彼の視界が開ける。
……そうだ! あるじゃないか、完璧な解決策が!
《フォトン・ブリッツ》の解除で広がった視界。その端を後ろに流れていく煌めきを横目で追ったその時、クーガーの頭の中に一つの妙案が思い浮かんだ。
問題はタイミングとスピードだな。スピードを殺し過ぎず、かつ《フォトン・ブリッツ》の解除を
「ーー意地があるんだよ、男にはなぁ!」
「ハハハ、その意地は徒労に終わる! 潔く諦め給え!」
「そうするなら、ハナからこんなところに来ちゃあいないんだよ!」
叫び声をあげてクーガーがオルガマリーに迫る。その姿を、彼女は全てを諦めたぼんやりとした目で眺めている。
そんな彼女に、諦めることを知らない男は心の底から呼びかける。
「オルガさん! もし、貴女がまだ生きることを諦めていないなら、俺に手を伸ばしてください!」
クーガーの《フォトン・ブリッツ》は、もう
「あ…………」
その手を見たオルガマリーの目が僅かに輝き、まるで誘蛾灯に惹かれる羽虫のようにフラフラとした動きで伸ばされる。
それは、オルガマリーという全てを喪ったパンドラの匣の奥底に、たった一つだけ残っていた最後の希望。生きたいという、生き物の本能が彼女の手を動かしていた。
その手を見たクーガーの顔には、いつもの笑みが浮かんでいた。
「ありがとう、オルガさん。貴女は俺のことを信じてくれた。だから、その信頼に今俺が応えてみせましょう!」
そう宣言するとクーガーは全力でその手を彼女に伸ばす。
「届けぇー!」
クーガーの身体を包む《フォトン・ブリッツ》は、そのほとんどが失われていた。最後に残った指先の一部が虹色の煌めきに変わったその時、煌めきは彼の指先を離れてオルガマリーの指先へと移る。
その瞬間、クーガーの手は触れ得ざるはずのオルガマリーの手を確かに握りしめていた。
ーーーーー
私はもうあの世に堕ちたのかしら。それとも、まだその途中なのかしら。
なんだか、とても温かいわ。私はこれからどんどんあの燻る炎に灼かれていくのかしら。
それとも、あの世はこんなに温かいところだったのかしら。悪いことをいっぱいしてきた私は、冷たく暗い地獄に行くはずなのに。
信じていたものに裏切られ、自分の命すらも絶え果てることが必定となる。全てを諦めた意識の中で、私はぼんやりとそんなことを考えていた。
それにしても、あの世ってこんなに心地良いのね。私が向かう先はきっと地獄のはずなのに。それとも、此岸が地獄なら、彼岸の方が少しはましなのかしらね。
「……さん、オ……ん……」
なんだろう、私を呼ぶ声が聞こえる。それは、不思議と心の底にまでストンと落ちてくるような声だ。
「オ……ガさん、オル……ん……」
声は、どんどん大きく近くで響いてくる。
もう最近は久しく忘れていた、聞いているだけで温かくて安心する、そんな声。
この声を、私は知っている。
そう思ったとき、私の頬をもう枯れ果てたと思った一筋の涙が伝い、私は思わずその名を口にしていた。もう、久しく口にすることのなかったその名を。
「マリスビリーお父様……?」
「……っ! 起きましたか、
「……!」
お父様とは違う大きな声に、私は思わず閉じていた目を見開いた。私の目に映るのは、額にサングラスを掛けて、不敵な笑みを浮かべる赤毛の青年。
「クーガー……?」
「ふふっ、ようやく眠り姫のお目覚めですか」
「何バカなこと言ってるのよ……」
「いやぁ、もう少し目覚めないようならキスでもして差し上げようかと思ってたんですがねぇ!」
「えっ……きゃっ!?」
クーガーの言葉で、私はようやく自分がどんな状態なのかようやく理解した。今、私はクーガーに片手を握られた状態で抱きかかえられていたのだ。いわゆる、お姫様抱っこの状態で。
「は、早く離しなさい、クーガー!」
「おっと、分かりましたから暴れないでくださいよ、オルガさん」
流石に恥ずかしくなった私が思い切り手足を振り回すと、クーガーは私をそっと地面に下ろしてくれた。
なんだかそれは、遠い記憶の彼方、お父様がまだ生きていた頃に私にしてくれたみたいで。
私は、思わず手足を振り回すのを止めて、じっとクーガーの顔を見つめてしまった。
すると、視線が合ったクーガーが微笑んで、思わず私は顔を反らしてしまった。
「まったく、許可もなくレディの体に触れるわ、名前は言い間違えるわ、貴方にはデリカシーってものがないのかしら」
あ〜!? 違うでしょ、私!
本当は感謝の言葉を言いたかったのに、私は恥ずかしさのあまり、思わず悪態をついてしまう。いつだって、私はこうなのだ。本心を隠すために必要以上に言葉の棘をまとってしまう。
でも、そんな私の内心を見透かしたようにクーガーは微笑みを崩さない。普通の人間なら、不愉快に感じるようなそれも、なぜだか彼なら許せてしまうのだから、ズルい性分だと思う。
「申し訳ありません、緊急事態だったもので。それと、名前でしたら、
「…………あっ」
そう言われて気付いた。
確かに、さっきからずっと私は「オルガさん」と呼ばれていた。クーガーは、正しく私のことを呼び止めてくれていたのだ。
……ズルいわ。普段は
何度考えてもクーガーはズルい。でも、それを帳消しにしてしまえるほどのものを、彼は私に与えてくれた。
私は、ゆっくりと、しかし確かに自分の足で再び立ち上がった。
「ば、バカな!? 一体何が起こっている!? なぜ、お前はオルガマリーに触れられる!?」
私の目の前では、レフが信じられないものを見たと言わんばかりに瞠目して狼狽えている。だが、それは私も同じだ。
「クーガー、あなた、どうやって私を助けたの?」
「簡単なことです。俺のアルター能力の応用ですよ」
私の問いに、クーガーは前髪のくせ毛を指で跳ね上げながら、事も無げに答える。
「アルター能力の応用……確か、アルター能力は、周囲の物質を原子レベルで分解して、その持ち主の望む形に再構成する力、よね……? ……! ということは、まさか!」
「貴様、オルガマリーの身体を能力で再構築したのか!?」
「ご明察だぜ、毛虫野郎」
私の言葉を受けるように、レフもどきの口から紡がれた正解に、クーガーが不敵な笑みで答える。
「この体は、貴方の力でできているのね、クーガー」
私は自分の胸に手を当てる。
クーガーにとっての《理想》は《速さ》だ。故に彼の《アルター能力》は全てを《速さ》に注いでいる。
しかし、その《速さ》を曲げてまで、彼は私を助けてくれた。彼の《理想》の中に、私を置いてくれた。そう思うと、作り物であるはずのこの体が、なんだか生身を持っていた頃よりも温かく感じられた。
クーガーはそんな私を見て満足そうに頷く。
「はい、その通りですオルガさん。最も、再現度の高さには些か不満がありますがね! もし、詳細なデータをいただけるのでしたら、それはもう隅から隅まで完璧に再現してみせますよ!」
「さらっと、セクハラするのはやめてもらえるかしら」
私がジトっとした視線を送ると、クーガーは戯けたように両手を左右に振った。
「冗談ですよ冗談! さてと、場を和ませる小粋なジョークはここまでにしてーー」
クーガーは、そこで言葉を切ると、未だに狼狽を隠せないレフもどきへと向き直る。その顔に、先程までの戯けた表情はなく、今にも飛びかからんとする獣のような剥き出しの闘志が浮かんでいた。
その横顔に、どんなに戯けていても、やはり彼は一人の優れた戦士なのだということを改めて実感させられる。
「ーー正解者にはご褒美だ。お前に、敗北を進呈してやるよ、毛虫野郎!」
そう言い放つとクーガーはクラウチングスタートの構えをとる。それは、人が最速に近付くために編み出した、《文化の真髄》とでもいうべき構え。
「さぁ、オルガさん! 俺に
今にも放たれようとする、引き絞られた矢のような緊張をまとったクーガーが、私を見ることもなく言葉を発する。
そう、これは私が向き合わなければならないこと。今までの私との決別。そして、《カルデア》の長としての私の責務。ありがとう、クーガー。そして、藤丸とマシュ。あなた達が、あなた達の責務を果たしたように、私も私の責務を果たす!
私は、胸を張って前を向く。
「クーガー、貴方のマスター藤丸立香の所属する、人理保証機関《フィニス・カルデア》の長として命じますーー」
大きく息を吸い込みながら、私は右手を天高く掲げる。
目の端には、険しい表情を浮かべた藤丸とマシュの顔が見える。私は彼らの方を少しだけ見て微笑んでみせた。
本当に上手く微笑むことができたかはわからない。でも、今の私はきっと上手くやれている。
大丈夫。だってもう迷いはないから。
「ーーレフ・ライノール……いえ、レフの皮を被った人理の敵を撃滅しなさい!」
私の振り下ろした手の先には、レフの姿をした何かが憎悪を剥き出しにこちらを見ていた。
こんなものを、私は今の今まで心の支えにしていたのだ。私は孤独のあまり、縋るべき相手を見誤っていた。
でも、今の私には縋るだけじゃない、背中を預けられる仲間がいるのよ。だから、もう、偽物の優しさは必要ないの。
「よく吠えた! なら、その
それを示してくれるかのように、クーガーが私の声に応えてくれる。ただ、それだけで無限に勇気が湧いてくるようだ。
「ほざけぇ、人間風情がぁ!」
レフもどきがその姿を歪め、その内から悍ましい何かが溢れ出ようとしている。しかし、それが何かをする前にクーガーが動いた。
「行くぜぇ、毛虫野郎! お前に足りないもの、それは!」
叫び声と共に、クーガーがその脚に虹の煌めきを纏いながら駆け出していく。その姿が、眩いほどに輝いて見えるのは、きっと彼の能力のせいだ。
「情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ!」
そしてなによりもォォォオオオオッ!!」
雄叫びとともにクーガーの脚が光の速さで振り抜かれる。
それは、全ての闇を切り裂く希望の光。
彼の追い求めた理想の光だ。
「《速さ》が足りない!」
「ガァァァァァ!?」
レフもどきにとっての不幸は、それが本性を現すために人の姿を捨てようとしていたことだった。
レフという実体を失い、なおかつ本性の実体を結ぶことも間に合わなかった霊体のそれは、自分の策略とはあべこべに、苦悶の叫びとともに《カルデアス》へと墜ちていく。
一体、レフ教授がいつからああなったのかは私にはわからない。あるいは、最初からああだったのかもしれない。
それでも、彼が私にとっての拠り所であったのは紛れもない事実だ。
「……レフ教授。私は、前に進みます。ありがとう、そして、さようなら」
だからこそ、消えゆく彼への別れの言葉を
この瞬間、私は過去と決別し、未来へと歩き始めたのだ。
第一章は、残りあと一話ですわ!
頑張って早めに投稿しますわ!
邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?
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どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
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ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)