FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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続きました。
くっっっそ時間が開きましたが、これにて《特異点F》終了ですわ~!


debriefing : 特異点F《炎上汚染都市冬木》 後編

 

――なんだろう。意識が微睡(まどろ)んでいる。

 

まるで、ぬるま湯を張った湯船に頭まで浸かっているような気分だ。それは、抜け出すにはあまりにも心地よく、しかしそれでいて、気を抜けば何時でも溺れてしまいそうな、死の気配を孕んでいる。

 

――起きないと。▓▓▓▓が待ってる。

 

肉体は、このまま眠りの淵に落ちていけと囁く。しかし、それは二度と戻れぬ奈落への入り口だ。

だから、起きなければならない。瞼を開いて、いよいよ現実と向き合うときだ。

なんだか、それはとても辛く、そして苦しいことである気がする。命を喪うことよりも、もっと恐ろしいものが待っている、確信めいた予感があった。

――でも、僕を待っている▓▓▓▓がいるから。

 

それでも、どんなに恐ろしい苦難が待ち構えていようとも、それを一緒に乗り越えてくれる人がいる。僕を支え、そして僕が支える人がいる。その事実だけで、目を開けるには十分だ。

 

――さぁ、行こう。

 

心の中でそう呟いて、僕――藤丸立香――は、微睡みの海から抜け出した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「……ここは?」

 

目を覚ました立香を待っていたのは、見知らぬ真白き天井だった。まるで病院のように、穢れを排したそれを眺めているうちに、彼の意識は断片的に回復していく。

 

 

カルデア。魔術師。マスター。テロ。爆発。裏切り者。炎。冬木。特異点。サーヴァント。人理焼却。アーサー王。反転。聖杯。レフ。そして――

 

「っ! み、皆は!? ……ぐっ!」

 

パズルのピースを組み合わせるように、立香の記憶が繋がる。そこに、《特異点》をともに駆け抜けた仲間の姿が現れたその瞬間、立香はベッドから飛び起きていた。

立ち上がろうとして、しかし、自分の頭を襲った鈍痛に顔をしかめ、立香は思わず倒れそうになる。

 

「おっと、こいつはマズいな」

 

しかし、崩れ落ちそうになる立香の体を、脇から差し伸べられた腕が支えた。白いスーツに包まれたその腕は、服の上から分かるほどに鍛え上げられた男の腕だ。

 

「……クーガーさん!」

「やれやれ、寝る子は育つとは言うが、3日も眠りっぱなしじゃあ、流石に不健康だぜ()ジマル」

「……ふじまる、ですよ、僕は」

 

立花が苦笑いを浮かべると、クーガーはニヤリとした笑みを浮かべて、支えていた腕を背中に回し、立花の肩を抱いた。

 

「ははっ、それだけ口が回るなら大丈夫そうだな。……よく戻ってきた、ハジマル。やっぱりお前は見上げた男だぜ」

「ありがとうございます、クーガーさん。ご心配をおかけしました」

「いやいや、俺はハジマルは絶対に戻ってくるって信じてたからな。それほどでもないさ」

 

クーガーは、空いた方の手のひらを、やれやれと言わんばかりに天に向けて首を竦める。

自分が、絶対に戻ってくると信じてくれた。その事実が、立花には何よりも心地よかった。

 

「クーガーさん……」

「おっと、感激するにはまだ早いぞ」

 

感極まったような声で、名前を呼ぶ立花をクーガーが制する。出鼻を挫かれたような形になった立花は、思わず「えっ」と声を上げていた。

 

「ここには、俺よりも、お前さんのことをもっと心配してた奴らがいるからな」

「……あっ」

「今の時間、付き添いはたまたま俺の番だったがな。お前さんのバイタルは、常にカルデアの管制室がチェックしてるんだ。目が覚めたことはもう伝わってるだろうから、今にみんなここにやってくるぜ」

「それじゃあ……」

 

立花がそれ以上言葉を発するよりも、部屋の扉が開くのが早かった。

 

「せ、先輩! おはようございます! お体は大丈夫ですか!」

「マシュ……!」

 

最初に飛び込んできたのは、藤色に近い髪をした乙女、マシュ・キリエライトだった。彼女は、クーガーに支えられて立つ立花に駆け寄る。立花が「うん、なんともないよ」と応えると、彼女は、ほっと胸をなで下ろした。

しかし、立花が体をクーガーに支えてもらっていることに気付いて、再びその表情が曇る。

 

「まだ、お一人では立てませんか?」

「いや、久しぶりに立って立ちくらみがしただけだよ。ほら、この通り」

 

不安気なマシュの様子に、立花が慌ててクーガーから離れて両手を上げ下げしたり、脚を上げたりしてみせると、今度こそマシュは満面の笑みを浮かべた。

 

「ああ、よかった……。また、こうしてお話できて嬉しいです、先輩」

「僕もだよ。マシュが無事でよかった」

「先輩……」

 

立花の微笑みに、マシュがうっとりした表情で頬を染めたその時、再びドアが開いて、騒がしい足音ともに銀髪の女性が部屋に駆け込んでくる。

 

「マスター藤丸! 起きてるの!? 」

「オルガ所長!」

 

立花が意外な来客の名前を呼ぶと、オルガマリーは少し目を見開いたあと、大きなため息を1つ吐いた。

 

「はぁ……いくらなんでも眠り過ぎよ、まったく……」

「すみません、何分疲れていたもので……」

「疲れたからといって、3日も寝続けたら逆に健康に悪いわよ! 後でバイタルチェックをするから、それまでに食堂で軽く何か入れておきなさい、いいわね!」

「は、はい! あの、お気遣いありがとうございます、所長」

 

立花が、オルガの言葉の中に混ざる気遣いに、背筋を伸ばして素直に礼を述べると、彼女の耳は冬の寒さに触れたように真っ赤に染まった。

それがバツが悪いとでも言うように、オルガは立花からそっぽを向いた。

 

「ふ、ふん! これくらい、カルデアの所長として当然の責務です」

「も〜、素直じゃないんだからさ、マリーは。こんな時ぐらい『よかった』の一言でいいじゃないか」

 

オルガの言葉に反応したのは、いつの間にか彼女の後ろに立っていた、Dr.ロマンだった。

いかにも「やれやれ」といった風に、首を左右にふるDr.ロマン。そんな彼に向けて、オルガの首がゆっくりと動く。まるでそれは、油の切れかかったブリキのおもちゃのように緩慢な動きだった。

 

「何か言ったかしら、Dr.ロマニ・アーキマン?」

 

立花からはオルガの顔は伺えないが、恐らくその表情は般若の如きものだろう。Dr.ロマンの顔は、一瞬で色を失い、素早く左右に振られた。

 

「なんでもないでーす! あ、立花君、無事で何よりだよ、恥ずかしくて言えないマリーの代わりに、僕が言わせてもらうよ」

「ちょっとお話をしましょうか、Dr.ロマニ?」

 

言うやいなや、オルガの右手がDr.ロマンの頬を掴んでいた。

 

「いふぁい!? いふぁいから、ほっへをひっふぁらないで、まりぃ〜!」

 

そうして、そのままほっぺを抓られたまま退場していくDr.ロマンを、苦笑いを浮かべて立花は見送った。

 

――ああ、僕は本当に帰ってくることができたんだ。

 

いつもと変わらない日常の喧騒。それが、立花に《特異点》からの生還を強く認識させた。

無事に、仲間たちの下へ帰ってこれた喜び。その歓喜に震える彼の肩に、ポンと何者かの手が載せられた。

 

「うんうん、無事に帰ってこれたようで何よりだね。『カルデアに無事に帰るまでがレイシフト』とはよく言ったものさ」

「そんなこと、どこの誰が言ったんですか……」

 

立花は、そう言いながら新しく肩に載せられた手の主を振り返る。

それは息を呑むような美女だった。

緩やかなカールを描く、亜麻色の豊かな髪を腰のあたりまで伸ばし、頬に朱のさす美しい顔には、薄く微笑みが湛えられている。瑞々しい唇は少し開いて、先程立花にかけられた言葉は、間違いなくここから放たれたものだと言うことが分かる。

そんな美女を前に、立花の口から溢れたのは、

 

「……えっと、本当にどこの誰です?」

 

さも当然のように隣に立っていた、謎の美女への戸惑いだった。

 

――えっ、何この人!? 本当に初めて見る人だ!? ……でも、なんだか、この人、どこかでみたことがあるような……?

 

「えーっと、すみません」

「ん〜、何かな~?」

 

立花の言葉で、目の前の美女が前のめりに彼の顔を覗き込む。吸い込まれそうなその瞳に、立花は思わずたじろいだ。

それでも何とか呼吸を整えると、立花は胸の内に湧いた疑問を彼女にぶつける。

 

「あ、あの、もしかして以前何処かでお会いしましたっけ?」

「ふふふ、ナンパの口説き文句としてはありきたりだなぁ〜」

「先輩!?」

「ち、違いますよ! そんなんじゃないですって!」

 

美女の軽口でマシュが色めき立ち、立花は慌てて首を左右にふった。

 

「……そういうんじゃなくてですね、本当に何処かで会ったことありませんか? なんだか見覚えがあるというか……」

 

立花が探るように尋ねると、美女は思わせぶりな微笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、そうかもね。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「えっ?」

「君はもしかすると私に会ったのは、美術館かな? それとも歴史書や芸術書の中かもしれないね。本なら教科書って可能性も捨てがたいかな。あ、少し前には映画にもなったから映画館って線もあるかも」

「ということは、貴女はサーヴァントですか?」

 

立花も、そこまでヒントを出されれば、彼女がサーヴァントであることは自ずと分かった。書物や映画に登場する有名人で、カルデアに縁があるのは歴史上の人物に他ならない。

立花の考えが正しかったことは、目の前の美女の首肯によって証明された。

 

「イエス! さぁ、私が誰か当ててごらんよ〜」

「ええ〜、そんな無茶な!」

 

立花は、魔術師としては三流もいいところの家系なので、このような知識には疎い。歴史上の人物も、本当に教科書に載るような有名どころしか知らないレベルだ。

 

――でも、教科書に載ってるって言ってたし、多分有名人なんだ。ごくごく普通の僕でも分かるレベルの。「美術館」とも言っていたから、芸術家なのかな?

 

手持ちの情報を、自分の知識と合わせて整理しながら、なんとか正解に辿り着こうとする立花。しかし、その情報は中々目の前の美女と結びつかない。

そのまましばらく、立花がうんうんと唸っていると、美女がおもむろに部屋の中にあった一脚の椅子へと腰掛けた。

 

「それじゃあ、出血大サービスだ。私が、最もよく知られているポーズをとってあげよう!」

「お、お願いします」

「オッケー、じゃあ、これでどうだ!」

 

そう言うと、目の前の美女は、椅子に座ったままポーズを決めた。

それは特に奇抜なものではなく、ごくごくありふれたものだった。両手を腿の上で重ね、背筋を軽く伸ばしたリラックスした姿。顔は正面を向いて微かに微笑みを湛えている。

あまりにもありきたりなはずのそのポーズは、しかし、立花に激しい既視感を覚えさせるものだった。

 

「あ、ああ! これって、あのルーブル美術館の……!」

「お、その調子、その調子!」

「世紀の名画、『モナ・リザ』!」

 

立花は実際にルーブル美術館に行ったことはないし、美術に明るいわけでもない。それでも、「モナ・リザ」という絵画は、生まれてこの方何度も目にしている。恐らく、文明圏では、この絵画を目にしたことのない人間の方が少ないのではないだろうか。

だから、文明圏に生きる立花も、この絵については決して見紛うはずもない。

 

「大正解〜!」

 

そして、彼の目が正しかったことは、そのまま目の前の美女が肯定してくれた。

 

「ということは、貴女は……」

「そう!」

 

立花が答えを言う前に、美女はそれを遮るように叫んだ。

彼女はそのまま椅子から立ち上がると、その場でくるりと回ってからポーズを決めた。

 

「私こそが、かの有名な万能の人! 完全無欠のダ・ヴィンチちゃんさ!」

「ええ〜!?」

 

目の前に、現れた「モナ・リザ」姿のサーヴァント、レオナルド・ダ・ヴィンチ。そのあまりにも唐突なビッグネームの出現に、しばらくは開いた口が塞がらない立花なのだった。




少し生活にゆとりができたので、ぼちぼち投稿する予定ですわ~

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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