FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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すごくお久しぶりですが、続きました。


briefing : 第一特異点《邪竜百年戦争オルレアン》

立香が目覚めてから数時間後、彼のバイタルチェックが終わるのを待って、《カルデア》の主要なメンバーは、司令室へと集められていた。

 

「さて、主要なメンバーは揃ったかな〜。それじゃあ、ブリーフィング、始めちゃおっか!」

「よろしくお願いします、ダ・ヴィンチさん」

 

立香が軽く会釈をすると、ダ・ヴィンチは「オッケー」と軽く応えて、ウインクを一つ飛ばしてみせた。

 

「それじゃあ、まずは現状の把握からだね。みんな、《カルデアス》を見てくれるかな」

 

ダ・ヴィンチの言葉で、一同の視線は、部屋の中央に鎮座する《カルデアス》へと注がれる。《カルデアス》は依然として、人類の生存を許さない灼熱の赤をその身の全てに映している。

 

「……レフ、いえ、レフの皮を被った何かの言っていた通りね。ここから先、人類の生きられる歴史は地球上に存在しない」

 

オルガが呟くように言って、下唇を噛む。人理保証を任された《カルデア》の長たる彼女からすれば、このような結果を招いた自分に、忸怩たる思いがあるのだろう。

 

「でも、俺たちはまだ負けたわけじゃない。そうでしょう、()()()()ちゃん」

「……ちょっと待って、『大ピンチ』って、もしかして私のことかな!?」

 

僅かな沈黙の後、クーガーの発言の意味に気がついたダ・ヴィンチが色めき立った。

 

「クーガーさん、いつにも増して言い間違いが酷いです!」

 

マシュからも鋭いツッコミを受けると、クーガーは目元を手で覆うと高笑いを放つ。

 

「はっはぁー! すみません、人の名前を覚えるのが苦手でして!」

 

まったく悪びれもしないクーガーの様子を見て、ダ・ヴィンチは呆れたように「はぁ」と一つため息を吐いた。

 

「歴史上の人物の中では、覚えやすい名前トップ10ぐらいには入ってると思うんだけどなぁ、私。……えーっと、気を取り直して、クーガー君の言う通り、私達は負けたわけじゃない。みんな、《カルデアス》をよく見てくれたまえ」

「これは……赤が濃い部分がありますね」

「確かに、言われてみれば何箇所か赤が、濃密な部分があるわね」

 

立香たちが気づいたこと、それは《カルデアス》の赤の濃度の差だった。《カルデアス》が、その全てを赤に染めている中にあって、その色が一際濃く現れている箇所がいくつか存在していた。

全員がその認識を共有できたことを確認したあと、ダ・ヴィンチが大きく頷く。

 

「その通り、実はこの赤が濃密な部分なんだけど、高濃度の魔力反応があるのさ」

「高濃度の魔力反応……」「それはつまり……」

「……《聖杯》ね」

 

立香とマシュの呟きを拾ったのはオルガマリーだった。彼女は「このレベルの魔力リソースがまだ他にも、しかも複数あるなんてね」と、半ば呆然としたように呟く。

しかし、それも無理からぬ話だ。

万能の願望機たる《大聖杯》には及ばずとも、少なくとも世界の一部を別の可能性(i f)へと作り変えることができるだけの力。それを複数、しかも同時に用意できることがどれほど途方もないことなのか、《時計塔》のロードたる彼女には身に沁みてわかっていた。

 

「一体、私達は何を相手にしているのかしらね……」

 

自分たちが相手取ることになった敵の、想像を絶する強大さ。いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。部屋に迷い込んだ羽虫のように、隊列をはぐれたアリのように、無造作に払い除けられただけで、自分たちは消し飛んでしまうのではないか。そんな想像をするたびに、恐怖が蔦のように足元から這い上がってくる。

 

「まっ、そんなことは今は考えたところでどうにもならんでしょう」

 

今にも崩れ落ちそうになるオルガマリーの脚から恐怖を振り払ったのは、いつもと変わらずあっけらかんとしたクーガーの言葉だった。

 

「ちょっと、クーガー! こっちは真剣に悩んでるのよ!」

 

あまりの危機感のなさに、オルガマリーがクーガーを嗜めるが、その舌鋒が真価を発揮する前に、ダ・ヴィンチの「いや」という声が水を差す。

 

「クーガー君の言うことは、あながち間違いじゃないよ。敵の正体を暴くには、今の私達にはあまりにも手持ちのカードが少な過ぎる」

「確かに、《騎士王》も、他の敵の存在は示唆していましたが、具体的にそれが何なのかについては言及していませんでした」

「むう……」

 

議論を進めるにも、まずはそのたたき台が必要だ。結局のところ、今はいくら考えてみても、ただいたずらに恐怖を掻き立てるだけでしかない。

ダ・ヴィンチの言っていることは正論だ。

そう判断したオルガマリーはすぐに口篭っていた。

 

「つまり、私達にできるのは、赤が濃密なところの中でも比較的魔力反応の薄い部分から順に《レイシフト》して、現地で相手の尻尾を掴むしかないってことさ」

「結局、出たとこ勝負ってわけね……」

「そういうこと。まぁ、私達もいい出目になるようには精一杯バックアップさせてもらうつもりだよ」

「僕も精一杯頑張りますから」

「はぁ……、貴方にそんなことを言われると何も言い返せないじゃない」

 

オルガマリーは溜息を吐きながらも、その声色にはどことなく前向きな気持ちが滲んでいた。

《特異点F》での旅の中で、オルガマリーは立香に無理をさせたことや気を遣わせてしまったことを忘れてはいない。

本来なら、自分が支えるべきはずの相手に、力強い笑顔で「頑張る」などと言われてしまえば、上に立つべき者として責務を果たさないわけにはいかない。そういう気概をオルガマリーは持ち合わせていた。

そんな、立香たちの様子を見て、話はまとまったと判断したダ・ヴィンチは、満足そうに頷いた。

 

「じゃあ、現状の把握はここまで。それで、2つ目の議題なんだけど、それはクーガーくんの扱いについてだ」

「おや、俺ですか?」

「うん、具体的に言うと、君のマスター権を立香君から、オルガ所長に移譲しようと思ってね」

「「えっ?」」

 

ダ・ヴィンチの発言のあとに聞こえた声は2つ。

一つは、「なぜ、そんなことをするのか」と、純粋な疑問を浮かべた立香のもの。

もう一つは、「なんで、そんなことをするのか」と、純粋に面倒事を引き受けたくないという拒絶を示したオルガのものだった。

 

「うひょー! ということは、俺とオリガさんが今まで以上に強い絆で結ばれるということですかぁ!? んー、エキサイティング、ファンタスティック、ワンダフォー!」

「ど、どうしてよ! 《特異点F》では、藤丸がクーガーのマスターでうまく立ち回ったじゃない!」

 

今にも自分に飛びつきそうになるクーガーの顔面を片手で押さえながら、オルガマリーが必死の形相で抗議の声を上げる。

しかし、すごい剣幕で迫られても、ダ・ヴィンチはどこ吹く風といった様子だった。

 

「ま、これは簡単に言うとオルガ所長、君の安全保障のためだよ」

「え、私の?」

 

ダ・ヴィンチの口から出た意外な言葉に、オルガマリーが毒気を抜かれたような表情になる。

 

「うん。オルガ所長、今の君は、クーガーくんの《アルター能力》で生存できている、というのは認識してるよね」

「ええ。私の、(エーテル)の器である肉体は、カルデアの爆発で消滅してしまったから……。今は、クーガーの能力である物質(アストラル)の再構築で、私の肉体を擬似的に作ってもらっている状態、なのよね」

 

オルガマリーの答えに、ダ・ヴィンチは満足気に頷いた。

 

「流石所長、理解が正確で助かるよ。つまり、オルガ所長、今の君は、もしクーガー君が何らかの理由でカルデアを退去することになったら、その時点でジ・エンドなわけさ」

「クーガーがいなくなれば、能力で構築された肉体は元の物質に戻るものね……」

 

冬木の街で、クーガーの戦闘を経験しているオルガは、彼が戦闘後に《アルター能力》を解除するたび、武装として再構築された物質が、ボロボロになって元に戻る場面を幾度となく見ていた。

つまり、クーガーが能力を解除すれば、オルガマリーの肉体はその時点で元の物質になり、肉体を失った彼女はよくて幽霊(ゴースト)、最悪そのまま消滅というわけだ。

 

「だから、万が一、立香くんがクーガー君の現界や契約を維持できなくなった場合、その時点で君の命はおしまいってことさ」

「他人に生命を預けるよりは、自己管理しろってことね」

「それもあるけれど、最悪の場合、立香くんが作戦中に命を落とすようなことになれば、それで《カルデア》のマスターは全滅。《人理修復》の可能性はゼロってことにもなりかねないよ」

 

そう言ってダ・ヴィンチが立香に向けて人差し指を突きつけると、マシュが慌ててその間に割って入るように飛び込んだ。

 

「せ、先輩は私が護ります!」

「ふふっ、分かってる分かってる。あくまで『最悪の場合』だからね」

「あっ、す、すみません……」

 

立香のことで思わず熱くなってしまったマシュが、頬を赤く染めながら、消え入りそうなほどに体を縮めてみせる。

 

「とにかく、リスクヘッジのためにも契約は必須ってことね……はぁ、仕方ないわね」

 

オルガマリーは、また頭痛の種が一つ増えると言わんばかりに、額に手を当てて大きな溜息を一つ吐いた。

 

「ふふっ、そんな所長にグッドニュースを一つ」

「……? 何かしら」

 

ニコニコと笑顔のダ・ヴィンチの言葉にも、オルガマリーの反応は薄い。その表情は「今の私を喜ばせられるものなんて、この世にあるわけないじゃない」と、半ば達観したオーラを放っていた。

 

「元の肉体を失ったからかどうかはわからないんだけどね、今の所長のマスター適性は特級クラスだよ」

「え」

「それこそ、今の所長なら、ひょっとしたら神霊レベルでも契約できちゃうんじゃないかなぁ」

「な、なんですって!?」

 

ダ・ヴィンチがさらりと口にしたこの言葉に、オルガマリーの目は零れ落ちるのではないかと思うほどに丸く見開かれた。

アニムスフィア家現当主として、圧倒的な魔術回路を持つオルガマリーにとって、唯一のネックはそのマスター適性の異様なまでの低さだった。そのことで、後ろ指を指されることがあった彼女にとって、本来あるべきマスター適性が手に入ったことはこの上ない幸福だった。

ついさっきオルガマリーが見せた、この世の終わりを垣間見たかのような表情はもうそこにはなかった。彼女は、頬を上気させて美少女と呼ぶに相応しい晴れやかな笑顔でクーガーの方へと振り返った。

 

「 ちょ、ちょっと、クーガー! すぐに契約するわよ! さぁ、早く!」

「もっちろん、こっちは準備万端ですよ、オリガさ〜ん!」

「オッケー、貴方と契約してから使う令呪の一画目の命令は、『私の名前を絶対に呼び間違えるな』にするから」

「そ、そんなことに令呪を使わなくても!?」

「私にとっては『そんなこと』じゃないのよ!」

 

先程までの興奮は何処へやら。一転して、こめかみに青筋を立ててクーガーを睨む、オルガマリー。その口から零れた想像を絶する言葉に、立香が慌ててフォローに入る。しかし、一度噴火したオルガマリーという名の活火山は、今までの鬱憤を全て吐き出してやると言わんばかりに、その勢いが留まるところを知らなかった。

 

「いい? 立香、私はカルデアのボスなのよ! ボスがいつまでもサーヴァントに名前を呼び間違えられるなんて締まらないじゃないの!」

「お、思い直してください所長! クーガーさんもきっとちゃんと呼んでくれますから、ね、クーガーさん!」

「はっはっは! もちろん、努力しますとも!」

「その返事は絶対に努力しないやつじゃないの! ムキー!」

「わー、落ち着いてください所長!?」

 

結局、このあと立香たちに代わる代わる宥めすかされおだてられ、オルガマリーとクーガーの再契約が済むまでには小一時間ほどの時間を要した。

契約を終えた彼女の右手に、令呪が三画全て残ったままだったことには、立香たちの並々ならぬ努力があったことは語るまでもない。

 




《カルデアス》周りの設定が違うかもしれませんが、その辺りはフィーリングで流してくださいまし!
余裕があれば修正しますわ!

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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