FGO+スクライド Fate Grateful Olderman −ある偉大な兄貴の物語− 作:なんJお嬢様部
「……現状は、把握したわ。ひとまず私達は、この特異点F、冬木の街をこの状態にした元凶を特定することにします」
Dr.ロマンとの通信を終えたオルガマリーが、眉間に寄った皺を指で解しながら、今後の活動方針を立花たちに伝える。
「特定、ですか? 解決ではなく?」
立花が聞き返すと、オルガマリーはジトッとした視線で立花を睨んでから、これみよがしに大きなため息を吐いた。
「はぁ〜、あなたね、今この街の有様を見て、この街をこうした元凶に、今の私達で勝てると思う?」
「……ごもっともな意見です、所長」
根本から根こそぎ倒壊した20階はあろうかというホテル。平地になった住宅街。キャンプファイヤーの如く火をあげるオフィス街のビル群。川を挟んだ対岸には産業革命期の工場の煙突排煙を思わせるような黒煙が、街のいたるとこから上がっているのが見える。
これらを改めて確認した立花は、自分がどれだけ間抜けな質問をしているかすぐに理解した。
「見解の一致が見られたようで何よりね。……まぁ、今から召喚するサーヴァントが、よっっっっぽど強ければ考えてみなくもないけど」
「なるほど、因みにどれぐらいのサーヴァントなら考えるんですか?」
藤丸が訊ねると、オルガマリーは腰に手を当ててフフンとふんぞり返る。
「当然、サーヴァント中最優のクラス、セイバーね。じゃなくても、ランサーかアーチャーの3騎士のクラスがいいわ。なおかつ、地球上どこの国に行っても知名度が高い英霊ね。ここは日本だから日本に縁の英霊なんかでもいいけど、それは召喚システム上望み薄ね」
「英霊は、信仰などによる知名度、具えた逸話の大きさ、土地との結びつきで強さが決まるんでしたよね」
マシュがオルガマリーの言葉に合いの手を入れると、オルガマリーが「そうよ」と頷く。
「だからこそ、契約した英霊の性能を十二分に活かすためには、その英霊の真名や宝具をマスターが知っておくべきなのよ。だからマシュ、貴女は半分人間のデミ・サーヴァントな上に、混ざった英霊も分からないから、せっかくの力を全く活かせてない状態なのよ」
「あ、す、すみません……」
マシュは、《カルデア》の爆発に巻き込まれた時に、咄嗟に既に召喚済みの英霊と契約を結んだのだが、真名などを聞く前に英霊が消滅したため、情報がまるでない状態になってしまったのだ。
肝心な局面で、失敗してしまったマシュは恥じ入るように体を縮めてもじもじする。それを見たオルガマリーは、先程立花に向けたため息と同じくらいのため息を放った。
「まぁ、貴女の場合、この盾が宝具なんだから、盾の逸話のある英雄を片っ端から調べるといいわ。そこから何かしらわかることもあるでしょう。ま、それもここから無事に《カルデア》に戻ってからの話だけど」
オルガマリーのこの言葉を聞いたマシュの顔には笑顔が浮かんでいた。
「そうですね! 手持ちの情報から調べれば正体に辿り着けるかもしれません! 所長、アドバイスありがとうございます!」
「なんだかんだ言っても優しいですね、所長」
マシュからのお礼の言葉と、立花からの褒め言葉を受けたオルガマリーは、また顔を真っ赤にしてしまう。
「っ〜〜! あー、もう! そういうのはいいから、ちゃっちゃと召喚を始めるわよ!」
「先輩、所長が照れてます」
「うん、所長ってそういうのわかりやすいよね」
「うがー!! 話を聞けー!!」
なんだかんだで、所長の扱いを心得始めた二人であった。
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「じゃ、召喚について確認するわよ。まず、喚んだサーヴァントと契約するのは立花、貴方の役目よ」
「はい、この特異点から戻ったら所長は《カルデア》からの指揮になるので、都合が悪いんですよね」
「その通り。私は、《レイシフト》適性はそこまで高くないし、マスター適性に至っては皆無なのよ。それに、マスターが現地にいないと魔力供給なんかで問題があるからね」
オルガマリーの言葉に立花が頷く。
「はい、ただし例外はーー」
「ーー万が一貴方の魔力では維持できないような大英雄が来たときね。その時は私が契約することも視野に入れましょう。マスターとして戦闘は無理でも、維持ぐらいならなんとかなるわ。そして、《カルデア》に戻り次第、代わりのマスターと再契約を結べばいいわ」
「わかりました。では、サークルに魔力を流しますね」
立花が確認を取ると、オルガマリーが頷く。それを確かめてから、立花は召喚サークルの中心、盾の上に手をかざし、詠唱を始める。
「素に銀と鉄。祖に石と契約の大公ーー」
マシュは不測の自体に備えて、召喚サークルからやや離れた位置で、サークルとオルガマリーの間に立ち盾を構える。その守りの後でオルガマリーはサークルと周囲の両方を警戒している。召喚に伴う膨大な魔力に惹かれた魔物や、最悪の場合、この特異点を生み出した側の勢力が偵察に来ないとも限らない。現実の悪意は、ヒーローの変身をわざわざ待ってはくれないのだ。
「
詠唱が進むたびに、サークルに魔力が満ち、中心の盾が仄かに燐光を放つ。常世と英霊の
「魔力反応、異常ありません。召喚は正常に進行中です!」
「私も確認してるわ。周囲に敵性反応もなし!」
世界の外に魔力が流れ込んでいく。その感覚を確かめながら、二人は警戒の手を緩めない。
この召喚の成否が、自分たちの任務の成否を握る、ひいては人類の運命を握っていることを彼女たちは十二分に理解しているからだ。
彼女たちの期待を一身に受けて、立香の手による召喚はつつがなく進行していた。
「聖杯の寄るべに従い、この意、この
サークルに流れ込んでいく魔力はいよいよその濃度を増し、常世と英霊の
「魔力反応増大! 先輩、あと少しです!」
「依然として、周囲に敵性反応なし! ここまで来たらいい英霊を引き当てなさいよ!」
少女たちの祈りにも似た叫び声が響く中、今、立花の口から最後の詠唱が紡がれるーー
「
ーーその瞬間、立花は何が弾け飛ぶような音を確かに聞いた。それは、どこか観音開きの扉が勢いよく開け放たれる音に似ていた。
無論、音だけではない。視覚的に分かる変化も召喚サークルに訪れる。立花の注ぎ込んだ魔力は無数の光球となり、サークルの上に輪を描く。
そして、光球は次第に
その色を確かめたオルガマリーは、背筋が粟立つ様な戦慄と興奮を覚えていた。
「……ハイ・サーヴァント! まさか、この大一番で、最高の英霊を引き当てるなんて!」
英霊を呼び出すとき、英霊に縁の深い特定の触媒を用いない場合、その結果は未知数となる。しかし、召喚のときに舞う光球の輝きによって、呼び出される英霊の格がある程度分かることを、《カルデア》での召喚の事例からオルガマリーは経験し、理解していた。
通常の英霊であればその色は白。
より優れた英霊であれば金。
そして、世界に名だたるハイ・サーヴァントと呼ばれる一握りの英霊は、虹の輝きを纏って現れるのだ。
だが、その輝きを見てオルガマリーは自分の中に溢れる不安を拭うことができない。
「……でも、ハイ・サーヴァントのときの輝きはあんな風だったかしら?」
そう、彼女を不安にさせるのは、その虹の輝きがなんだかとても歪に見えることだ。通常なら、虹の輝きはプリズムを通した光のように美しく鮮烈に均等に輝く。
しかし、今回の虹の輝きは、なんだか宙に舞うシャボン玉を見るような、あるいは水の上に張った油の皮膜を見るような、そんな不安定な輝きなのだ。
でも、もう後戻りはできない。何があっても、私が矢面に立たないと。47人の命は背負えなくても、2人分の命なら、アムニスフィアの名にかけて、私が背負ってみせる。
元来、
「ひゃっふうぅーー!」
「えっ?」
「な、なに!?」
「わわっ!?」
その時、場違いに高い叫び声が聞こえて、3人は思わず戸惑いの声を上げてしまう。
一体、誰がこんな空気を読まない叫び声を出すんだ。
3人の心は一つだったが、すぐに、その声の主は今門を潜り抜けた者に他ならないと思い至った。
門を超えた影は、そのまま風の尾を引いて天高く舞い上がると、水泳の飛び込みのように空中で何度も回転してから、体操の床の演技さながらの見事な着地を決めて見せた。
「とうっ!」
「……」
「……」
「……」
沈黙。
ただ、沈黙が場を支配していた。
そんな中、現れた人影は悠然と常世への一歩を踏み出した。
人影は、燃えるような赤毛を持つ長身の男だった。赤毛の左右に、一筋の銀のメッシュを入れて流線型にしたような髪型をした男は、召喚の衝撃でやや乱れた髪を両手で後ろに撫で付ける。男が髪を撫で終えたとき、癖毛なのか一房の前髪がハラリと前に垂れ下がった。
髪型が決まったことを確かめた男は、過去の英霊には相応しくない、どこかの組織の制服のようなスタイリッシュな白い服から、目がチカチカするようなショッキングピンクのスポーツサングラスを取り出すと、キザな動きで耳にかける。その時にサングラスの内に巻き込んだ癖毛を、人差し指でピンと跳ね上げると、男は不敵な笑みを浮かべながら名乗りを上げた。
「ーーロストグラウンド武装警察機関「HOLD」、アルター能力者部隊「HOLY」所属のアルター使い、ストレイト・クーガーだ! 俺が来たからにはもう安心だ、諸君! 即断即決、スパッと
両手の腰に手を当ててふんぞり返るように男は笑う。
その笑い声だけが響く微妙な空気の中、オルガマリーがなんとか勇気を振り絞って声をあげた。
「……藤丸、早く契約しなさい。これはあなたのサーヴァントよ」
「えええっ!? 話が違うじゃないですか、所長! 強い英霊が出たら所長が契約するって!」
「嫌よ! いくらハイ・サーヴァントでも、こんなアクの強そうなのと契約するのはお断りよ!」
「自分だって困りますよ! そこをなんとか!」
「いーやーよー!」
「お、おふたりともどうか冷静に、冷静に!」
「はーっはっはっはー!」
特異点に、一人の男の高笑いが響く。
それをバックミュージックにしながら、人類最後の希望たちは、非常に個人的な理由から醜い言い争いを繰り広げるのであった。
次は兄貴の戦闘シーンが見えるよ!
邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?
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どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
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ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)