FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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クーガー兄貴の戦闘シーンがあるよ!

※魔術とアルター能力に関する独自の解釈があります。アルター能力は「周囲の物質を分子レベルで分解して、自分の望む形に再構成する」能力なのですが、そこにFGO世界に馴染むように魔術的な要素を加えてあります。


世界を縮める英霊

 それは一筋の光だった。

 暗闇の中、微睡みの中にあった男の顔に、確かに一筋の光が差し込んでいた。(かそけ)き、しかし眩く暖かな光。男は思わず立ち上がると、光の指す方をしげしげと眺める。

 

「おおぅ? こいつぁ何だ? どっか建て付けが悪くなったのか?」

 

 思わずそんなことを口走ったところで、男は自分が在る場所が現実の建物ではないことに思い至る。

 

「あー、違うな、違う違う。そういえば、俺は世界と契約して《英霊の座》ってところに収まったんだった」

 

 男は、その全速力で駆け抜けた短い人生の中で、人としての偉業を打ち立てた結果、人類の守護者たる英霊として座に登録された。故に男は、一度(ひとたび)願いを受ければ、常世に戻り人類のために戦う使命を帯びているのだ。

 しかし、人類の危機などそう容易く起きるはずもなく。加えて、男はある理由から英霊としての知名度にひどい欠陥を抱えていた。

 2つの要因が合わさった結果、男を喚び出そうとするものは誰もおらず、男は座の中で不遇をかこつことになったのである。

 自分の立ち位置を改めて認識した男は、再びその場にゴロンと横になる。口から出るのは大きなあくびが一つだけだ。

 

「ふぁ〜あ。しっかし、《英霊の座》ってのも案外退屈な所だな。世界がピンチになったときに貴方の力を貸して欲しい、な〜んて言うからほいほい契約したものの、ちっとも呼ばれないのは想定外だったーー」

 

 そこまで呟いて、男は弾かれたように飛び起きる。

 

「ーーってまさかまさか!? これがもしかして召喚ってやつか!? おいおいおいおい! いよいよこの俺が世界を《最速》で救う時が来たってことですかぁ〜! くぅ〜、燃・え・て・きたぁ~!」

 

 男はその場で歓喜に打ち震えると、直ぐにクラウチングスタートの姿勢を取る。

 

「待ってろよ、世界! 最速の俺が今から即時即断即決で平和を取り戻すからなぁ! イヤッフゥー!」

 

 言うやいなや、男は幽かにさす光に向かって全速力で駆け抜けていく。それに応えるように光はより強くその輝きを増していく。その眩さに、男は一つ心当たりがあった。

 

 ……この輝き、まさかカズ()の。

 

 それは、男の弟分だった、一人の(おとこ)のアルターが放つ輝きだった。

 その漢、決して曲がらず、決して折れず。必要とあらば道理も無理でこじ開けてみせる。世界に対する反逆者(トリーズナー)

 しかし、そこまで考えて男は首を横に振った。カズヤは、どんなにピンチになろうとも()()()()()()()()()()()()()()()()()。アイツなら、例え荒野に立つ者が自分ただ一人であろうとも、構わずにどこまでも突き進んでいくだろう。

 もしもアイツに助けがあるとするならば、それはただ一人風を切って荒野を進むその背中を、支えてやりたいと願う者が自らの意思で力を貸す、その時だけだ。男にはそういう確信があった。

 だが、願わくば。

 俺を喚び起こすマスター(そいつ)が、カズヤのような世界(うんめい)(あらが)(おとこ)であってほしい。

 そうして、男は虹色に輝き始めた光の渦の中へと考えうる最速の速さで飛び込んでいった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「というわけで、えーっと、よろしくお願いします。ストレイト・クーガー、さん?」

 

 始めての召喚に成功(?)してからしばらく、紆余曲折(揉めに揉めた上で、最終的にじゃんけん)の末にマスターをすることになった立花が、ストレイト・クーガーと名乗った男へと恐る恐る右手を伸ばす。

 すると、男はズイッと立花の方に歩み寄ると差し出された右手を両手で握って、残像が残るような速さでブンブンと上下に振り回した。

 

「おー! 少年が俺の《マスター》ってやつか! よろしく頼む! さっきも名乗ったが、俺はその通りストレイト・クーガー、人呼んで《世界を縮める男》だ!」

「あわわわわ……!」

「せ、先輩の腕があまりのスピードで消失して見えます!」

「ちょっと、加減なさいこの莫迦(バカ)!」

 

 サーヴァントのマスターに対するあまりの暴挙に、クーガーの後ろに回り込んだオルガマリーが、その頭に手刀を叩き込む。虚を突かれるかたちとなったクーガーは「あいたっ!」と叫んで立花から手を離した。

 ちなみに、立花は手を離されてからもしばらく、余波で一人、手をブンブンと振り回し続けていた。

 

「いやー、失礼いたしました、ミス(おじょうさん)。英霊としての初めての召喚、些か興奮しておりました」

「ふ、ふん。分かればいいのよ分かれば」

 

 オルガマリーは、急に自分に対して恭しく腰を曲げたサーヴァントに少し戸惑いながらも、肝心なことを聞き出すために再び口を開く。

 

「それで、その……英霊、ストレイト・クーガー。貴方、一体何者なの? 私の知る限り、『ストレイト・クーガー』なんて名前の偉人は歴史上存在しないわ。かといって、精霊やましてや神格の持ち主には見えないし、それにさっき言っていた《HOLD》と《HOLY》? それについても情報を開示してもらえるかしら」

 

 オルガマリーの疑問はどれも最もなものだった。

 サーヴァントを行使する以上、その情報の開示はマスターにとっては必要不可欠だ。クラスや特性が分からなければ、司令塔としての役割を十二分に果たすことはできない。

 更に加えて、「ストレイト・クーガー」なる英霊の名前が耳馴れないものであることもオルガマリーにとっては懸案事項だった。7人のマスターが7騎のサーヴァントを使役し、《聖杯》を巡って争う《聖杯戦争》のときであれば、マスターが魔術などで記憶を抜かれて、対策をされることを避けるため、真名や宝具の開示をあえてしないということもある。

 しかし、現状はそのような心配はない。今は、相手はこちらへの対策を打ってきてはいないし、逆にこちらとしては未知の脅威への対策を練るために仲間のスペックは確実に把握する必要があった。

 

「確かにその通りですね、ミス。俺も何分(なにぶん)座からこちらに招かれるのは初めての経験なので少し戸惑ってしまいました。物事を円滑に最速で進めるためにも、まずはお互いの情報を共有しようじゃありませんか!」

「そ、そうね……」

 

 何か一言喋るたびに、ずずいっと自分に近寄ってくるクーガーから、のけ反るように身を反らしながらオルガマリーが同意する。

 

 話が通じるタイプの英霊であることは僥倖だったけど、距離感が近すぎるのは考えものね。本当に藤丸にマスター権を押し付けられたのは僥倖だったわ。じゃんけんを始める前に「3回勝負よ!」と言った私を褒めてあげたいわ。うんうん、よくやったわ、私!

 

 オルガマリーは、数分前に2本先取された状態から、怒涛の3連勝でじゃんけんに勝って、ガッツポーズをしていたときの自分を心の中で密かに讃えた。

 

「それじゃあ、まずあなたのクラスをーー」

 

 とりあえず、認識の一致が見られたところで、オルガマリーが早速クーガーに質問を投げかけようとしたその時。

 

「所長、先輩! 周囲に敵性反応があります! どうやら下級のアンデッドのようですが……5、6、7っ、かなりの数です!」

「了解! ありがとうマシュ!」

「ちっ、召喚の時の魔力の流れに引き寄せられたのね。なんて間の悪い!」

 

 マシュからの報告で、立花たちは辺りを警戒し臨戦体制を取る。しかし、その中で先程までとは変わらぬ態度の男が一人。

 そう、英霊ストレイト・クーガーである。

 頭の後ろで手を組んで、飄々とした態度を崩さないその姿を見て、オルガマリーが抗議の声をあげる。

 

「ちょっと、クーガー! 敵がいるのよ、早く戦闘態勢を取りなさい!」

 

 オルガマリーの叱咤の声を受けて、それでもクーガーは足下の石ころをつま先で弄んだりと、緊張感の欠片もない。

 

「敵? どこにそんなのがいるんです?」

「周りを見て周りを! スケルトン! 見えるでしょ!」

 

 そこまで言われて、クーガーはようやく辺りを見回す。スケルトンの数は気がつけばもう20体近くに膨れ上がり、その半数近くは廃材などで武装していた。

 それを確かめたクーガーは、サングラスをゆっくりと押し上げると不敵な笑みを浮かべる。

 

「見ましたよ。でも、敵なんてどこにもいませんよ、ミス。スケルトン? あんなもの俺にとっては敵には値しない」

「なっ……」

 

 クーガーの傲岸不遜ぶりに、オルガマリーが絶句する。しかし、これも自分たちの喚び出した英霊の力を見るいい機会だと判断した彼女は、すぐに気を取り直して指示を出す。

 

「なら、その力見せてもらいましょう。マスター藤丸、サーヴァントストレイト・クーガー、周囲の敵性反応を撃滅しなさい」

「はい、所長!」

「初陣の相手にしちゃ物足りないが、肩慣らしには丁度いいか! マスター! 俺に少しばかり魔力を回してくれ!」

 

 クーガーの言葉に、立花が「わかった!」と頷き、すぐに突き出した左手の魔力回路からクーガーに魔力を注ぐ。

 

「来たきたキタァーー! 行くぜ! 《ラディカル・グッドスピード》!」

 

 魔力をパスされたクーガーが、歓喜の雄叫びを上げて、彼のアルター能力の名を叫ぶ。

 変化は一瞬だった。

 クーガーを取り巻く瓦礫の山。その一部が突如として砕け散ると、虹色の煌めきとなって彼の脚に巻き付いてゆく。次々と瓦礫が砕け、彼の脚を煌めきが覆い尽くしたその瞬間。煌めきが全て消し飛ぶと同時に、彼の足には踵に鋭い棘にも似た刃を備えた、薄紫色をした脚甲(グリーブ)が装着されていた。

 

「なっ……!」

 

 その様子を見たオルガマリーが絶句する。

 それほどまでに、今、彼女が目にした光景は魔術師としてありえないものだった。

 

 周囲の物質(マテリアル)を分子レベルで分解して形を無くし、強制的に霊的(アストラル)魔力(エネルギー)に変換してから、自分の望む形に作り変えた!? そんな芸当、《根源》に手が掛かるレベルの大魔術師じゃないと不可能よ!?

 

 オルガマリーの混乱は無理もない。

 そもそも、何かを触媒として使い、そこから魔力を得て発動する魔術は世に数多存在する。例えば、この冬木の街を本来であれば管理しているはずの御三家の一つ、《遠坂家》などは、代々宝石魔術の優れた使い手だった。

 しかし、それは()()()()()()()()()()()()場合の話だ。宝石のような貴石は、魔力を溜め込むタンクとしての役割を果たすもので、魔術師にとっては定番の触媒だ。他にも《ヒュドラの幼体》や《ペガソスの鬣》といった幻獣の一部、《円卓の欠片》や《呪文書》のような神秘の込められた遺物などが魔術の触媒足り得るものだ。これらは、どれもこれも入手至難の貴重な品ばかりだ。

 だが、クーガーはそんなものではなく、あろうことかその辺りに転がっている神秘の欠片もないコンクリートのような人工物から魔力を引き出してみせたのだ。これに驚かずにいられる魔術師がどれほどいるだろう。

 

「ストレイト・クーガー……、一体何者なのよ……?」

 

 半ば呆然としたオルガマリーの口から紡がれた疑問に答える者は当然いない。この場にいる者はオルガマリーを含めて、立花もマシュもクーガーの見せた芸当に、ただ呆然とするしかなかった。

 しかし、そんな芸当をやってのけた当の本人であるクーガーは、そんなことはどこ吹く風といった表情だ。彼は脚甲の具合を確かめるように、爪先で何度か地面を叩く。

 

「さーって、こちらの準備も整った。マスターたちはここに来るまで何度か戦闘をしてきたみたいだが、俺にとっちゃ正真正銘、これが初陣だ」

 

 クーガーは、もう一度包囲の輪を狭めるスケルトンたちを見回す。心を持たぬ人の名残は、目の前の異常事態に怯むことなく前進を続けていた。

 

「マスターたちは俺の力を知りたがってる。わざわざやってきてもらったところで悪いんだがーー」

 

 クーガーが、ここで一旦言葉を切ると、サングラス越しに目の前のスケルトンを睨んだ。

 

「ーー瞬殺させてもらう」

 

 クーガーが最後の言葉を放った瞬間、彼の姿と包囲の輪を作っていたスケルトンの一体が姿を消した。

 瞬きの刹那の後。500メートルは離れているだろうか、立花たちの正面にある15階建てのビルのど真ん中、そこに小さなクレーターが穿たれ、それはそのままビルを突き抜け向こうの空と繋がる。それと同時に、先程までスケルトンが立っていた場所に、先程と変わらぬ悠然とした姿のクーガーが立っていた。

 

「なっ……」

「うそ……」

「えっ……」

 

 立花たちの反応は困惑が2つに驚愕が1つ。

 困惑は、何が起きたのか知覚することができなかった立花とオルガマリーのもの。

 驚愕は、クーガーがまだ20メートルは離れていたスケルトンに一瞬で肉薄し、それを蹴り一つで500メートル先のビルまで吹き飛ばしたことを認識できたデミ・サーヴァントであるマシュのものだった。

 

「さぁ、目を離さないでいてくれよマスター! 瞬きしてる間に全部終わっちまうからなぁ!」

 

 そう叫ぶや否や、再びクーガーの姿が消え、それと同時に周囲のスケルトンがクーガーの隣から順に根こそぎ消し飛んでいく。

 恐らく、砕け散ったスケルトンの骨粉であろう塵が、砂埃と渾然と一体になり風に舞って消えていく。立花たち人間が認識できたのはそれが精一杯だった。

 そうして、10体以上いたスケルトンが最後の一体になったとき、スケルトンの前にクーガーが姿を現す。

 

「よう、残ってるのはもうお前さんだけだぜ」

 

 挑発されたことに怒った訳ではないのだろうが、クーガーの言葉に反応して、スケルトンが持っていた鉄パイプを振り上げる。

 

「スロウリィなんだよ、お前は!」

 

 しかし、鉄パイプを振り下ろす前に、クーガーがほぼ垂直に上げた右脚から繰り出した踵落しによって、スケルトンは真っ二つに切断され、左右それぞれのパーツがクーガーの脇をフラフラと地面に崩れ落ちていった。

 それを振り返りもせず音だけで確かめたクーガーは、高々と両手を天に掲げ、空を仰いだ。

 

「8.59秒……また一つ世界を縮めてしまった……」

 

 そう呟いてサングラスの奥から涙を頬に伝わせるクーガーを眺めて、立花たちは言葉の一つも出せないのであった。




クーガー兄貴の戦闘シーンは数秒で終わるけど、これを書くのには数十分かかるんだよなぁ……。

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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