FGO+スクライド Fate Grateful Olderman −ある偉大な兄貴の物語− 作:なんJお嬢様部
というわけで、続きです。今回は、ちょっと進度を緩めて、立香とオルガマリーパート。オルガマリー所長の可愛さ伝われ、伝われ……。
「ここは……何処なの……?」
目を開けた、オルガマリーは目の前に広がる天井に戸惑う。しかし、すぐに先程までの出来事がフラッシュバックして、彼女の意識は覚醒する。
「そうだわ……さっきの戦闘の後に、私たちはここまで移動してきたのね……」
交戦地点とはそう離れていない場所にある、未だ原型をとどめたビルの一つに、立香たちは潜伏していた。
先程の戦闘を聞きつけた敵が、付近に集まる可能性を考えればできる限り距離を取りたいところではあったが、命の危機に瀕したオルガマリーがまだ本調子ではなかったため、緊急避難というかたちでの潜伏だった。
ビルの二階、恐らく応接スペースだったのであろうフロアのソファに、オルガマリーはその体を横たえていた。死の恐怖からまともに動けなかった彼女を、マシュが盾に載せてなんとかここまで運んできたのだ。
そして、恐怖による疲労から、彼女はすぐに瞼を閉じたのだった。
そこまで思い出した彼女の下に周辺の警戒から戻った立香がやってくる。マシュとクーガーは、それぞれビルの屋上と一階で警戒に当たっている。
「あ、お目覚めですか所長。調子はどうですか?」
「……ありがとう、もう大丈夫よ」
立香の気遣いの言葉に、オルガマリーはソファから体を起こす。
口では「大丈夫」と言ってみせるものの、オルガマリーの体調はまだ万全ではない。気を抜くと、あのときの震えが再び襲ってきそうになる。つい先程、致死の刃が眼前まで迫っていたのだ。すぐに気を取り直せというのは無理な話というものだ。
それでも彼女が体を起こしたのは、自分が《カルデア》の所長であるという義務感と、部下の手前弱みを見せることは許されないという自尊心によるものだ。幼い頃からアニムスフィア家を継ぐものとして育ち、志半ばで父が倒れてからは、ますますその責務に傾倒していった。それこそが魔術師として、《時計塔》を統べる12のロードの一人としてあるべき姿なのだと信じて、自分の信じる理想の姿に自分を押し込め、真っ直ぐにねじ曲がって育った彼女は、無理矢理にでも自分を立ち上がらせることが
そうして体を起こした彼女の前に、立香の右手が差し出された。その手にはコーヒーの缶が握られている。
「これは……」
オルガマリーが訝しむような声をあげると、「コーヒーです」と立香が答える。
「さっき建物を見て周ったときに、自動販売機が壊れてまして。なんでも取り放題だったんですよ。自分も一つ貰ったので、所長もお1ついかがですか?」
そう言う立香の左手には、おなじみの赤い色をしたした缶のコーラが握られていた。それを見たオルガマリーは呆れた表情を浮かべ、それから少し微笑んで缶へと手をのばす。
「
オルガマリーが缶を受け取ると、立香は「これで所長も共犯ですからね」と言って笑い、彼女の向かいのソファに腰を下ろした。
それからすぐ、立香はプルタブを引いて缶を開けると中身を喉へと流し込む。何度か喉を鳴らしてから、彼は勢いよく缶を口から離す。
「ぷはっ、やっぱり健康に悪いものほど美味しいですね。冷えていたらもっと美味しかったんでしょうけど」
「こんな状況だもの、贅沢はいえないわね」
コーラを飲んで一息ついた立香を見て、オルガマリーもプルタブを開けてコーヒーを一口喉に流し込む。ほろ苦さと微糖の甘さが程よく味覚を刺激して、コーヒー党の彼女にはその味わいがありがたかった。
でも、オルガマリーにとってそれ以上にありがたかったのは目の前に座る立香の気遣いだった。
恐らく、立香は、彼女がまだ本調子でないことを想定してコーヒーを持ち帰ってきたのだ。飲み物を飲む間は自然と腰を落ち着けることになる。その分だけ、彼女が再び立ち上がるまでの時間は長くなるというわけだ。
当然、深く考えずに立香がコーヒーを持ってきたということもあり得る。しかし、オルガマリーはこの何処にでもいそうなごく普通の少年が、細やかな気遣いに長けているということに、今までのやり取りの中で薄々気付いていた。
……こんな風に誰かに優しくされるのって、いつぶりかしら。
何度かに分けてコーヒーを飲みながら、オルガマリーは思う。
父が亡くなってからというもの、彼女はその後を継ぐ者として脇目も振らず必死に仕事に打ち込んできた。必死さのあまり、うまくいかないときは周囲の人間に当たり散らし、その度に多くの人が彼女から離れて行った。
それでも彼女は頑張った。父の事業を引き継ぎ、なんとか今の体制を作り上げ、この人類未曾有の危機に立ち向かう準備も整えた。
でも、彼女の下に残った僅かの人間にとっては、それは彼女がやるべき当たり前の仕事だった。誰にも認められず、労われず、褒められず。唯一の味方といえるのは《シバ》の開発で協力したレフ教授だけ。そのレフ教授も、最近では《カルデア》運営に関わる他の仕事の為に、彼女と接するのは共通の案件のときだけだ。
そんなオルガマリーにとって、立香の差し出した手は、彼女に向けられた久しぶりの労いだったのだ。
缶コーヒーの最後の一口を飲み干すと、再び立香が手を伸ばしてくる。
「あ、飲み終わりましたか? じゃあ、自分が捨ててきますよ」
「律儀ね。《
そう言いつつも、オルガマリーが差し出す空き缶を立香は苦笑いしながら受け取る。
「なんとなく性分なんですよ、こういうの。それじゃあ、捨ててきますね」
空き缶を受け取った立香が部屋から出ていく。その背中をオルガマリーが見送る。
「本当に、根が善良なのよね……」
立香が部屋を出てしばらく、オルガマリーの口からポロリと言葉が溢れた。
ああいう人間をいわゆる《善良な市民》というのだと、オルガマリーは改めて思う。
本来であれば《
……無理、させてるわよね。
オルガマリーは、立香の心を案じる。
魔術の才能はほとんど無いに等しい、48人中48番目の
でも、彼は決してそのような姿を見せない。
本当に、あるがままのような姿で、それこそ飲み終えたコーヒーの空き缶をゴミ箱に捨てることと同じような自然さで、当たり前のように世界の危機を救おうとしている。それが、正しいことだからやるのだと。
そして、そんな嵐の只中にあっても、立香はオルガマリーへの気配りさえやってみせた。それは、そうすることが当たり前だという彼の、心の底からの優しさだ。
缶コーヒー1本分のその優しさが、今確かに自分の中にあることを、オルガマリーは感じている。
「……負けてられないわよね、私も」
そうはっきりと口にしてオルガマリーはソファから立ち上がる。立香が部屋に戻ってきたのはそれからすぐのことだった。
「あ、所長! もう立っても平気なんですか?」
「ええ、ゆっくりもしていられないからね。藤丸、マシュとクーガーを集めて。今後の方針を話し合いましょう」
立香の言葉に、オルガマリーは力強く頷く。
その姿を見た立香は、「はい、すぐに呼んできます!」と嬉しそうに部屋を後にする。
「私が立ち上がっただけなのに、本当に嬉しそうなんだから……」
再び元気よく部屋を飛び出す立香の背中を見送って、オルガマリーは思わず苦笑いを浮かべた。
大丈夫。私はまだ、なんとかやっていけるわ。
彼女の体の震えは、いつの間にか消えていた。
次は戦闘パート。
みんながよく知ってるあのサーヴァントが出るよ!
邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?
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どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
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ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)