FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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新鯖の登場する戦闘までいかなかった。許して(テヘペロ)


チキチキマシン猛レース in 冬木

 潜伏したビルの二階、応接室に集まった立香たち4人は、ソファに座り額を付き合わせて今後の動きを相談していた。

 どうやら、このビルは元は不動産系の会社だったらしく、テーブルの上にはビルの中で破壊を免れた棚の中に保管されていた冬木市の地図が広げられていた。

 

「では、最終確認よ」

 

 オルガマリーがそう言って地図を指差す。

 

「ここが、今私たちのいるビル。私たちはこれから冬木の大橋を超えて、対岸の巨大な魔力反応が確認された地域に向かう。そこまでのルートは、最短かつ大通りを通って行くわ」

 

 オルガマリーの指先が地図をなぞり、立香たちの視線がそれを追う。

 

「大通りを選ぶのは、裏通りだと襲撃者からの奇襲を受ける可能性があるからですね」

 

 藤丸の確認にオルガマリーは頷く。

 

「そうよ、狭い路地でさっきみたいな高低差を使った奇襲をされたら、万が一ってこともあるから」

「さっきのような影法師ならいざ知らず、本物のサーヴァントとなると、俺もどれだけ戦えるのか未知数ですからね」

 

 クーガーは、謙虚な言葉を言いつつも、その表情はどこか楽しげだ。恐らく、誰が相手だろうと自分は負けないという絶対の自負があるのだろう。

 しかし、そんな様子を見たオルガマリーが釘を刺す。

 

「クーガーは確かに護りにも役立つようだけど、分かっているリスクは負わない方がいいわ。それに裏通りのような細い道は、倒壊した建物のせいで封鎖されている可能性もある、避けたほうが無難ね」

「瓦礫を超えるときは、どうしても隙だらけになってしまいますからね」

 

 オルガマリーの言葉にマシュが同意する。大盾を持ち機動力に優れる訳でないマシュは、瓦礫を超えるのも一苦労で、その時に攻撃を受ければ立香たちを庇えない、そう判断したようだ。

 

「了解です。俺も、大通りの方が速さを活かしやすい。異論はありませんよ」

「自分も、体力的に障害物を避けられる大通りがありがたいです」

 

 クーガーが答え、立香もそれに追随した。

 そうして全員の答えを確かめたオルガマリーが頷く。

 

「なら、全員の意見は一致したわね。では次に、作戦を遂行する上での留意点を確かめましょう。この作戦を実行する上で唯一のボトルネックは、ここよ」

 

 オルガマリーの指先が、地図上に赤でバツをつけたポイントをトンと叩く。そこは冬木の街を流れる川の中央にかかる冬木大橋だった。

 

「この、冬木大橋を越える行程、ここが一番攻撃の危険性が高いわ」

「はい、遮蔽物のない橋の上は索敵を受けやすく、非常に危険です。それに、遠距離から狙撃されたり橋自体を落とされたりしてしまう危険性も否定できません」

 

 オルガマリーの言葉に、マシュも肯定の意思を示す。

 建物の残骸があり、隠れる場所が豊富な市街地と比べ、橋の上では姿が丸見えだ。必然、魔力探知ではなく視認でこちらの位置がバレる可能性は高い。そうなると逃げ場のない橋の上だ、攻撃する方法はいくらでもあるというわけである。

 

「一応、こちらでモニターした感じ、こちら側の橋の周辺に魔力反応はなさそうだ。でも、対岸ではさっきから大き目の魔力反応が出たり消えたりしてる」

「対岸には明らかに他の勢力がいるってことですね。こちらに敵対する勢力なら、間違いなく襲撃してきますね」

 

 ロマニからの通信を受けて、立香が気を引き締める。

 襲撃を受けたときに、最も危険なのは普通の人間である立香とオルガマリーだ。しかし、オルガマリーと違い、彼は魔術師としての才能は下から数えた方が早い。最低限の自衛すらままならない彼にとって襲撃の有る無しは死活問題だ。

 

「でも、策があるのよね?」

 

 そう言ってオルガマリーが視線を向けたのはソファに座るクーガーだ。釣られて、マシュと立香もクーガーの顔を見る。

 クーガーは3人の視線を受けながら、悠然とした態度のまま人差し指でサングラスを押し上げるとニヤリと笑った。

 

「まっかせてください、オリガさん!」

「オ・ル・ガ! で、その策ってのはなんなのよ」

「これは説明するよりも実際に見てもらったほうが早い。外に行きましょう」

「あ、待ちなさいよ!」

 

 クーガーは右脚を高く掲げ、それを下ろす反動でソファから立ち上がると、そのまま部屋から出ていく。急いで後を追いかけて立香たちが外に向かうと、クーガーは1台の車の前で立っていた。

 

「フォーシーターはあまり好みじゃあないんだが……、4人だから仕方ないか」

「なに? まさか車に乗って走って行くつもりなの?」

「確かに、大通りなら瓦礫を避けて充分に車で走り抜けることは可能だと推測します」

 

 

 

「でも、その車壊れてますよクーガーさん」

「ですね、この《特異点》で見た車も含めた機械類はほとんど壊れていました。戦いの余波でしょうか」

 

 立香の指摘に、マシュも同意する。

 激しい戦闘が行われたであろう冬木の街では、繊細な機械の類は、戦いの巻き添えか或いはその後の火災のせいで、ことごとくだめになっていた。目の前の車も、その多分に漏れず、ガラスは全て吹き飛び、タイヤとサスペンションも駄目になったのか、車体が地面にへたり込んでいた。

 

「壊れているかいないかは、俺にとってはさしたる問題じゃない。大切なのは車という形があるかどうかなのさ。さ、ドアを開けて席に座って。素敵なドライブと洒落込みましょう」

 

 クーガーは運転席のドアを開けると車に乗り込む。開いた窓から腕を出し、指で「乗りなさい」と合図を出すと、オルガマリーは「はぁ」と溜め息をついてから車へと近付いた。

 

「……わかったわよ。マシュ、助手席はお願いね。藤丸は私と一緒に後部座席よ、クーガーの後ろに座りなさい」

「はい! ドライブは初体験です、なんだかワクワクします!」

 

 《カルデア》育ちのマシュは、車に乗るのは初体験だ。オルガマリーに促されるままに、彼女は笑顔で助手席に乗るとシートベルトを締めた。

 しかし、立香はというと席には座らず、ドアに手をかけたまま車を見つめ何か考えている。

 

「何かしら? 早く乗りなさいな、藤丸」

 

 オルガマリーが再び乗車を促すも、立香は車には乗らず、しばらくして今度はオルガマリーの方を向いた。

 

「……所長、もしかして事故が起きたとき、一番安全な席に座ろうとしてません?」

「……ジャンケン」

「……はい」

 

 策略を見抜いた立香だったが、悪人オルガマリーの前に為すすべはなかった。肩を落としてクーガーの後ろの席に座ると、それを見届けたオルガマリーが満足そうにマシュの後ろの席に座った。

 4人を載せた車は、その重量に負けて、もう車体の底を地面にベタ付けの車高短(シャコタン)状態になってしまっている。

 

「さぁ、乗ったわよ。ここからどうするのか見せてちょうだい」

「わかりました。オリガさん、前に《アルター能力》の話をしたの憶えてますか」

 

 オルガマリーに返事をしながら、クーガーはバックミラーやシートの位置を動かす。

 

「ええ、物質を原子レベルで分解して、エネルギー化したそれを望む形に作り変える能力、よね」

「流石、オリガさん。俺のことをよく知ってらっしゃる!」

「変な言い方しないでよ! あと、私はオルガマリーよ!」

 

 オルガマリーが切れ味鋭いツッコミを入れるが、それを無視してクーガーはハンドルを握りながら話続ける。

 

「俺の望む形は《速さ》です。俺は、この世のありとあらゆるものを速く走らせることができるんですよ!」

「……それってまさか、《アルター能力》でこの車を走らせるってこと!?」

 

 驚愕の表情を浮かべるオルガマリーに、クーガーは満面の笑みで頷いてみせる。

 

「イエス! マスターハジマル、俺に魔力を回してくれ!」

「藤丸です! 了解、クーガーさん!」

 

 ツッコミつつも、立香が魔術回路に火を入れてクーガーに魔力を注ぐ。

 

「よーし、行くぜ! 《ラディカル・グッドスピード》ォ!」

 

 完全に魔力の回路(パス)が繋がったのを確かめたクーガーが《アルター能力》の名を叫ぶ。その瞬間、立香たちの乗った車体が虹色の光に包まれ、立香達はシートに座った状態で宙に投げ出される。

 

「わわわ!」

「ちょっと、大丈夫なのこれ!?」

「うわっと!」

 

 しかしそれも一瞬のこと。次の瞬間には立香たちを包むように流線型の新しいボディが生まれ、その後に立香たちの座るシートとベルトが、スポーツカータイプの4点式のモデルに変化する。気が付くと4人は先程乗ったくたびれたセダンタイプの車ではなく、近未来的な外見をしたスポーツカーの中に座っていた。

 

「す、すごいです!」

「わぁ! モーターショーで見るデモカーみたいだ!」

 

 マシュと立香が車の変化に歓声を上げる中、オルガマリーだけが自分を拘束するシートベルトを念入りに確かめて不安そうな表情を浮かべる。

 

「あの、クーガー? この車って一体どれ位の速さでーー」

「はっはぁーー! 行くぜぇーー!」

「ーーはしるぅわああぁぁぁぁ!?」

 

 オルガマリーの言葉は最後まで続かなかった。

 クーガーがアクセルをベタ踏みにした瞬間に、彼女の体は猛烈なGを受けてシートに縫い付けられたからだ。

 

「わぁ!」

「わー!?」

「あわわわ!?」

 

 走り出した車内から上がった声は3つ。

 1つはこの走りを楽しむ余裕のあるマシュの歓声。

 残る2つは、ようやくヤバいことになったと気付いた立香と、案の定ヤバいことになったと思ったオルガマリーの悲鳴だった。

 三者三様の声をBGM代わりに、クーガーはご機嫌にハンドルを握る。アクセルはシフトチェンジの瞬間以外常にベタ踏みのまま、ほとんどスピードをロスすることなく、時速数百kmの速さで冬木のビル群を置き去りにして大橋へと駆ける。

 

「オリガさん俺はこう思うんです旅は道連れだと旅はいいものですその土地にある文化や風物や食べ物を楽しみ束の間の非日常を味わえるしかし目的地までの時間はいささかめんどうですでもご安心ください俺ならその行程を破壊的なまでに短縮できるその短い道中で窓の外を流れる様々な景色を楽しんだり峠道のコーナーでは遠心力に身を任せ隣り合った二人の距離が不意に縮まる嬉しいハプニングがあったりして体だけでなく二人の仲までも加速していく素晴らしい体験を味わえるぅ!」

 

 車が加速するのに合わせてクーガーの舌の回転までもが加速して、車内では訪問販売のセールストークもかくやという速さでクーガーの口上が垂れ流されてゆく。

 

「はい、旅って素敵ですね!」

「うひゃぁぁぁぁ!!」

「あばばばばば……」

 

 しかし、車内でまともにそれを聞いているのはマシュだけで、二人の距離が縮まるイベントを今まさに味わっている立香とオルガマリーにはもはやそれを知覚処理するだけの余裕が残っていなかった。

 

「あっ、いよいよ大橋ですよ!」

 

 そうこうしている内に、立香たちはいよいよボトルネックの大橋へと差し掛かる。途中何度かスケルトンや亡者のようなアンデッドが車の前に立ちはだかっていたが、クーガーはその全てを轢き潰し、霧のごとく飛び散らせて撃破していた。

 入口には、誰が張ったのかバリケードが築かれていたが、紙切れのようにそれを引き千切り、クーガーは一切スピードを緩めることなく、むしろ更に加速を続けながら大橋(ストレート)へと侵入していく。

 

「はっはぁーー! 誰も俺の速さに追いつけない、止められない!」

 

 クーガーの宣言通り、大橋に侵入した彼らを遮るものは何一つなかった。

 妨害らしい妨害を受けずただ真っ直ぐに突き進むマシン。

 それを止めたのは車外を流れる景色を見つめていたマシュの一声だった。

 

「……! 皆さん、対岸の大橋の袂で誰か戦っています!」

「何っ!?」

「うーわー!?」

「クーガー! よそ見しないでー!?」

 

 自分の身の安全を守るので精一杯の二人に変わり、クーガーがマシュの見つめる方を確認する。視線の先には大橋の脇に造られた公園。そこでは確かに3つの影が激しく交錯し戦い合っているように見える。

 

「どうやら、2体はシャドウサーヴァントのようです! シャドウサーヴァントが連携して、そうでない誰かを追い詰めています!」

「なるほど、じゃあその追い詰められている方が《英霊の座》が招いたサーヴァントってことか!」

「可能性は高いです! ああ、でも、早く助けに入らないとやられてしまいそうです!」

 

 悲鳴にも似たマシュの声が示す通り、シャドウサーヴァントの連携を受ける人影は防戦一方で、どんどん川の方へと追いやられていく。このまま川にでも落とされれば生存は絶望的だ。

 しかし、クーガーの車の速さを以てしても、橋を降りて公園まで回り込んでいては救援は間に合わない。クーガーもそのことをしっかりと認識していた。

 そして、その解決策もクーガーは既に頭の中に思い描いていた。

 

「どうやら一刻を争うみたいだな。しかたない、《ショートカットするぞ》!」

「はい!」

「えっ?」

「ふぇっ?」

 

 クーガーの「ショートカット」の言葉でようやく正気に戻った立香たちが、次の言葉を発する前にーー

 

「いくぜぇ!」

「わー!」

「あーーっ!?」

「み゛ゃ゛〜~!?」

 

 ーークーガーの操る車は、橋の欄干の切れ目から、対岸の公園に向かってその車体を宙に踊らせていた。

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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