FGO+スクライド Fate Grateful Olderman  −ある偉大な兄貴の物語−   作:なんJお嬢様部

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兄貴たちは惹かれ合う

 街の中心部を川の流れる冬木の街ではよく目にする河川公園。ここ、大橋の袂に位置する公園もその内の一つだ。

 普段、市民の憩いの場になっているだろうその場所は、今英霊たちの闘技場(コロッセオ)と化していた。

 

「ーーANSUR(アンスール)!」

 

 今、一人の英霊がルーンの一つを叫び杖を掲げる。北欧の主神(オーディン)の名を指すそのルーンは、雷光を纏う火球となって顕現する。

 

「撃て!」

 

 言葉と共に杖が振られると、火球は迫る2つの影法師に向けて矢もかくやという速さで飛翔する。

 しかしーー

 

「ククッ……」

「キエッ!」

 

 ーー迫る2つの影法師、痩せぎすで白面の男は僅かに身を反らすだけでそれを躱し、数多の武器を背負う僧兵は薙刀を振るうことで火球を切り飛ばした。

 

「ちっ、単発のルーンじゃあ仕留められねぇか!」

「聖杯ニ、贄ヲ、捧ゲヨ!」

 

 白面の影法師が叫びを上げて杖の英霊へと斬りかかる。杖の英霊は間一髪でそれを躱すも、纏うローブのフードが切り裂かれ、その顔が(あら)わになる。

 青年、と言って差し支えない外見の男だ。襟足だけ伸ばした青い髪の毛を逆立てて、襟足は(うなじ)のところで短く1つに結んである。その電紅玉(ルベライト)にも似た色の瞳には、意思の強さと燃える闘争心が焼き付いていた。

 

「ヌゥン!」

 

 白面の影法師の攻撃を躱した男に、今度は僧兵の影法師が迫る。薙刀を払わず、抜き差しする素早い刺突の連続で、男の態勢を更に崩しにかかる。

 

「ちょっと前まで敵同士だったのに、嫌らしい連携をしてくるじゃねぇか!」

 

 杖の英霊は、下手に動いて態勢を崩さぬように、差し込まれる薙刀の軌道を杖を添えて逸らす。3度ほど攻撃を逸らしてから、僧兵が薙刀を手元に引き戻すのに合わせ、英霊は大きく後ろに跳んで距離をとる。盤面は再び英霊が火球を放つ前の形に戻った。

 

「ちっ、同じ長物(ながもの)でも、やっぱり杖は性分じゃねぇな!」

 

 杖の英霊は、舌打ちをして杖を構え、慎重に2体の影法師との距離を測り直す。とにかく、機動力により優れる白面の影法師からは大きくマージンを取らなければ、今の英霊のクラスでは一瞬で刈り取られるのは自明の理だった。

 

「カカッ! 今ノ突キヲ躱スカ! 僥倖、僥倖ッ!」

「ククッ、贄ニモ格ガアル。コノ者デアレバ、聖杯ガ満チル時モ近イ!」

 

 対する影法師の2騎は、杖の英霊が距離を取るに任せて哄笑を放つ。いくら英霊が好きに動こうとも、もはや自分たちの優位は揺るがない。そういう確信が滲み出た余裕の態度。

 

 ……実際にそうだから(たち)(わり)ぃ。ったく、どこの誰だか知らねぇが、悪趣味なことしてくれるぜ。

 

 影法師たちの態度を見て、杖の英霊は内心で悪態をつく。

 彼らは少し前まで、この冬木の街で行われた《聖杯戦争》を争うため呼び出された7騎の英霊たちの2騎だった。しかし、何者かの介入によって《聖杯戦争》のパワーバランスは崩壊、凶悪なまでに力を得た剣士(セイバー)のクラスの英霊により、今やまともな英霊は半数以下になっていた。

 

 このままセイバーの英霊が勝ち残れば、間違いなく()()()()()()()()()()()()。だが、今冬木(ここ)にいるまともな英霊が力を合わせて、ぎりぎりセイバー(やつ)に届くかどうか。だがそれ以前にーー

 

「シャァッ!」

「くっ!」

 

 杖の英霊の思考は、白面の影法師が放つ短刀によって中断させられる。後ろへのステップと杖によって3本投げられた短刀を全て打ち払う。追撃はこない。

 

 ーーこの暗殺者(アサシン)をどうにかしないと、残った英霊(やつら)と合流すらできねぇ。クラス同士の相性は悪くないんだが、こうまで接近されると、最早クラスによるアドバンテージはねぇな。

 

 今、杖の英霊に短刀を放った英霊は、かつては《聖杯戦争》に喚び出されたアサシンの英霊だった。対する杖の英霊のクラスは魔術師(キャスター)。陣地を張り、魔術によって不意打ちを察知できるキャスターは、一般的にアサシンに対して相性有利で、感知されても対策を取る前に陣地ごと一瞬で轢き潰すことのできる騎兵(ライダー)には不利とされている。

 しかし、それはキャスターが十全な体制でアサシンを待ち受けられればの話。ここまで接近を許し、もはや白兵戦の様相を呈した今の状態では、近接戦闘に長けたアサシンが幾分か有利に立ち回れる。

 加えて、逃げようにもその機動力のせいで引き離すこともできない。槍兵(ランサー)である僧兵はそこまでの機動力がないので、ルーンを使えば撒くことも可能だろうが、このアサシンだけはここでケリをつけなければならなかった。

 

 一対一(サシ)ならどうとでもなるんだが、組んでこられるとどうにもならねぇ。コイツらと刺し違えるぐらいならできそうだが、そうするとあのセイバーを止められねぇ。くそっ、手詰まりか……!

 

「サテ、ソロソロ時間モ惜シイ。決着トイコウカ。合ワセヨ、ランサー」

「委細承知。ユクゾ、アサシン。聖杯ニ贄ヲ、奇跡ヲ我モノニ!」

「もう終わってるてのに、過去をなぞるしかできないってのは憐れだなぁ!」

 

 いよいよ決戦の構えを見せるアサシンとランサーの影法師に吼えて、キャスターは杖を構える。構えた杖は2騎の猛攻を凌いだせいで大分削れ傷んでいた。もう、この戦いの間保つかも怪しい。

 だがしかし、例え勝ち目がなかろうと、気迫だけは決して負けない。斃れるときは敵の喉笛に食らいつき、地獄巡りの道連れだ。それこそが《クランの猛犬》の異名を持つ、キャスターにとっての矜持だった。

 

「さぁ、来い! この俺の首、楽に取れると思うなよ!」

「イザ!」

「参ル!」

 

 3騎の間に流れる緊張が極限にまで高まり、今まさにはじけようとしたその瞬間。

 

「ひゃっほーーぅ!」

「なっ!?」

 

 その場に相応しくない歓声とともに、キャスターの顔に影がさす。思わず空を見上げたキャスターの目に焼き付いたのは、宙を舞うマシンの底、剥き出しのメカニズムの部分だった。

 

「ガァァァ!?」

「ラ、ランサー!?」

「ははっ、マジかよ……!」

 

 マシンはそのままキャスターの頭上を飛び越えると、その勢いのまま、あろうことか目の前のランサーを跳ね飛ばした。マシンはそのままランサーを大橋の橋桁まで吹き飛ばすと、止めとばかりにそのまま橋桁にめり込むランサーへと突っ込み、車体から四つの座席を射出した後、大破炎上した。

 

「グァァァァ!!」

 

 車体に挟まれ脱出することも叶わず、橋桁にめり込んだまま炎に炙られるランサーが苦悶の声を上げる。

 

「ムウッ、何ガ起キタ!? 何者ダ、貴様!」

 

 ランサーの悲鳴と突然の乱入者に狼狽えるアサシンの影法師。

 その叫び声に応えるように、燃え盛り黒煙をあげるマシンを背景(バック)にして、ハンドルを片手に持った一人の男が悠然と前に進み出た。

 

「聞かれちゃあ答えない訳にはいかないなぁ! 俺の名前はストレイト・クーガー! クラスはライダー、人呼んで《世界を縮める男》だ!」

「ガァァァ!!」

 

 クーガーが名乗りを上げた瞬間、彼の背後で炎上するマシンがついに爆発。雄叫びとともにランサーは爆炎に包まれ消えていった。

 

 ……なんだよ、活きのいいのがいるじゃねえか。

 

 なんの前触れもなく目の前に現れた、嵐のような一人の男。

 手繰り寄せた勝利の予感に、キャスターは思わず口元に笑みを浮かべるのだった。

 

 

邪竜百年戦争オルレアン以降の特異点に、本来のストーリーで登場するサーヴァント以外がいてもいいか?

  • どんとこい、超常現象。(いてもいいよ!)
  • ヴェルターズオリジナル派(原作重視!)
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