超光速の軌跡 ~タキオンとモルモットの3年間~   作:Valid Bear

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前回・・・焔ミサイル


14話 モルモットと大人の事情

 タキオンのメイクデビューが無事に終わってから3日。

 週の前半は丸々休みにしたのだが、タキオンは元気いっぱいで……、ひたすら実験と観察に勤しんでいた。

 レース後の脚の変化を観察すれば何らかのヒントを得られるかもしれないとの事だったが、残念ながら何も得られなかったらしい。

 だが特に怪我の予兆は無く、それどころか今年度に入ってから強くなっているとの事で。

 身体ってそう簡単に頑丈になる物だろうかとも思ったが、冷静に考えたら不摂生を繰り返していたせいで栄養不足になっていたんじゃなかろうか……?

 それがちゃんと食事を摂るようになった事で戻ってるとか。

 それから、

 

「まだまだ限界の向こう側どころかその前段階でも壊れかねないからねぇ……。夢か勝利を選べと言われたらトレーナーくんには申し訳ないが私は夢を取るよ」

 

 とも言っていたのだが……。

 それってつまり『限界に手が届くレベルまで辿り着くのは決定事項』って事よね?

 そして『そこまで育てて見せろ』って事よね!?

 東条先輩といいタキオンといい、しれっとプレッシャー掛けてくるんじゃないのよ……。

 

 

 

 

 

 まぁいずれにせよ出来る限りの事をするだけなのだが。

 そんな訳で今後のトレーニング計画を立てているのだった。

 幸いこれからの時期は多くのウマ娘とトレーナーが夏合宿へ向かい、トレーニング施設が使い放題になる。

 そう。

 タキオンを鍛える良い機会である。

 

 ……正直に言うと先輩方が合宿に使っている所は、学園ほどではないにせよ設備は充実しているし、海や山が近い事から心身のリラックスも出来るしで非常に羨ましい限りだ。

 だが金がかかる。

 ウマ娘達は最低限の衣食住を学園から与えられている。

 最低限とは言えど()()()()()()()()()()()()()()()である。

 ジャージや制服は定期的に支給されるし、食事はカフェテリアに行けば食べ放題だ。

 寮も門限こそあれど自由度が大変高い。

 だが、合宿となると話は別である。

 ジャージや制服はまだしも、他2つまで面倒を見ていては学園が潰れかねない。

 常識の範囲内であれば補助が出るが、それらは合宿後に精算される。

 担当を持つトレーナーにはその評価に応じた育成費が出るし、レース自体にも賞金が出るが、いずれもメイクデビューを1回勝っただけではたかが知れている。

 トレセン学園のトレーナーの給料は高いとはいえ、気軽に合宿が出来るほどの物では無い。

 場所が場所なだけに、かなりの額になるだろう。

 

「うーん、貯金を切り崩せば或いは……」

「怒りますよ?トレーナーさん?」

「っ!?」

 

 気付いたらたづなさんが真横に立っていた。

 どうやら私宛の封筒を届けに来てくれたらしい。

 理事長秘書であるたづなさんが直接届けてくれるとなると相当重要な書類が入っているのだろう。

 

「あはは……、ありがとうございます。こちらは?」

「一学期時点での評価になります」

 

 封筒を受け取り、中身を確認する。

 レース結果やトレーニング手腕。

 ウマ娘に対する態度や担当ウマ娘からの評価等々。

 様々な観点から出された総合評価にはCと書かれていた。

 

「ずいぶんと高評価なんですね。まだメイクデビューを勝っただけなのですが……」

「あのタキオンさんを支えているだけでも見事なものですよ。タキオンさんからの評価も高かったですし」

 

 そこでたづなさんは言葉を切ると笑顔を浮かべた。

 

「……誤魔化してもダメですよ?私費の流用は厳禁です。理事長の悪い所を見習わないでください」

「ハイ。モチロンデス」

 

 たづなさん怖い。

 笑顔なのに目が笑っていない。

 頷かざるを得なかった。

 仕方ない。

 来年は合宿に行けるように頑張ろう。

 

 

 

 

 

 ……そう決意したのが今朝の事。

 そして今、その決意に修正を余儀なくされていた。

 

「こっちとしては断る理由は無いんだけど、本当に良いの?」

「いや、良いからお願いしてるんだけどな……。ね?良いでしょ?」

 

 珍しく家に帰って来ていた焔から、チームアルタイルの合宿に合流しないかと誘われたのだ。

 お金が無いから合宿はいかない事を伝えると「必要経費はこっちが出すから」等と言い出す始末。

 

「そんな事出来るの?」

「出来るよ?併走相手を頼んだりとか、そういった名目で。……それにさ」

「うん?」

「私のチームこれでも結構G1勝ってるんだよ?1勝トレーナーから心配されるような部費じゃないから平気平気」

 

 曰く、6人も7人も変わらないとかなんとか。

 部屋は大部屋だから布団代だけで済むし、食事もグループ単位での精算だから同様だそうで。

 ……さすがは先輩と言うか何と言うか。

 

「それなら参加させてもらおうかな。お礼に今度旅行でも連れてくよ」

「やった!」

 

 素直に後輩トレーナーとして甘える事にした。

 

「それで、いつから行くの?」

「今週末だよ?」

「え」

 

 今日は水曜日である。

 大慌てでタキオンに連絡し、荷物の用意を始めるのだった。

 ……来年はちゃんと部費で合宿に行けるように頑張ろうと心に誓うのだった。

ウマ娘未登場馬の名前ってどうしたらいい?

  • まぁ、私はそのままで良いと思うけどねぇ…
  • たわけ。名前くらい自分で考えたらどうだ
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