超光速の軌跡 ~タキオンとモルモットの3年間~ 作:Valid Bear
本編に戻ります。
ある日。
「ねぇお姉ちゃん。ちょっと太った?」
昼食を食べていたら焔が喧嘩を売ってきた。
いきなり何を言ってくるかなこの妹は。
「……?」
「あ、いやその、えっと……」
決して図星を突かれて怒ったとかではない。
ただ、笑顔の起源は相手を威嚇する行為なのだとか。
面白いほどにたじろいでいた。
そんなになるなら最初から言わなければ良いのに……。
面白いから少しの間眺めていると、タキオンがやってきた。
「……君はいったい何をしているんだい?」
「あ、タキオン。少し焔トレーナーをからかってた」
実際のところ、体重は増えているが、体脂肪率はむしろ減っているぐらいなのだ。
筋肉が少し太くなってしまったというのが正解だろう。
まだピークには程遠いが、……いやピークに持っていく必要もないのだが。
「で、2人とも何か話があったんじゃないの?」
「……そうだった。来週模擬レースあるんだけど、タキオンちゃんって走るの平気?」
「平気?って何で?」
「だって学園で練習してた時はあんまり走らないで済むようにトレーニングしてたっぽいし、脚弱いのかなーって」
……よく見てらっしゃる。
「まぁ何か変な事しなければ大丈夫だと思うけど……。どうする?タキオン」
「うん。私も同じ見解だし、トレーナーくんがそう言うなら間違いないだろう。参加させてもらおうじゃないか」
「距離はどうするの?一応芝ダートそれぞれで全距離、ジュニア級以下、クラシック級以下、無制限って分けてやるんだけど」
「結構細かく分けるんだ」
どうしたものか。
タキオンが走れるのは芝の中距離と長距離だけだ。
当然走るだけならマイルと短距離も行けるが、今のところ出すつもりは無いし。
中距離か、長距離か。
まぁタキオンが走るのは暫くは中距離だから中距離で良いかな。
「芝の中距離で良い?」
「少し待ちたまえ。焔トレーナー、
そう言ってタキオンが目を向けた先に居たのは、堀川サブトレーナーと共にいるスーパークリークとセイウンスカイだった。
「ん?そりゃもちろん、……あ、そう言う事か。うん、
「それなら長距離でも走らせて貰おうか。トレーナーくんもそれで構わないだろう?」
「長距離でもって両方かい」
……まぁ良いか。
2本ならまだ許容範囲だ。
「うん、それじゃ中距離と長距離でお願い」
「どちらも無制限クラスで頼むよ」
「……中距離も無制限なんだ」
「当然だろう?」
「わかった。それじゃ無制限クラスの中距離と長距離に登録しとくねー」
そう言うと焔は彼女達の方へ行くと、堀川サブトレーナーに二言三言話しかけ、2人揃って食堂を後にした。
代わってタキオンが席に着く。
「いやぁ……、ありがたい話だ。まさか菊花賞で世界レコードを叩き出したウマ娘達と長距離レースを走れるとはねぇ」
「無理はしないでよ?」
「勿論だとも。そもそも本気で挑んでもまだ勝負にならないだろう?あくまで彼女達の走りを観察するのが目的だ」
「あぁ、なるほど。2人とも長距離得意だもんね」
「……まったく、君の目は節穴かい?」
「え?」
中々ひどいセリフに振り返った時には、既にタキオンは席を立っていた。
……何か見逃してたかな?
その後しばらく考え続けたのだが、何も思い浮かばずにモヤモヤするのだった。
何を指してその言葉を発したのか。
相手の考えを読む事は大切ですね。