超光速の軌跡 ~タキオンとモルモットの3年間~ 作:Valid Bear
模擬レース当日。
昨日の夕方から夜にかけて土砂降りだった時はどうなる事かと思ったが見事に晴れ、いよいよ待ちに待った模擬レースである。
まぁ……、バ場はぐっちゃぐちゃだが。
会場は近くの練習場を貸し切りにして行うらしい。
トレセン学園が管理している訳では無いのだが、秋川家……、と言うか理事長が出資して作られたらしい。
ちゃんと起伏も用意されている他、各所にゴール板や決勝写真撮影カメラまで用意されていた。
それどころか芝、ダートに留まらず、ウッドチップコースや障害用のコースまである至れり尽くせりっぷりであった。
芝コースに至っては外に傾斜の異なるコースがもう一本用意されているほどである。
様々なコースパターンを用意する為に試行錯誤したが、土地の確保が難航した結果、これほどのぎゅうぎゅう詰めになったらしい。
今日はそこでチームアルタイルと合同の模擬レースが行われる。
……と、思っていたのだが。
「何この人の数」
予想を遥かに上回る人の数だった。
コースの周りは坂になっており、簡易的な観客席として使う事が出来る。
そこが人やウマ娘で埋め尽くされていた。
それどころかコースの内側も開放されており、屋台や巨大なトランポリンなどが設置されている。
そこへちょうど焔トレーナーが通りかかった。
「ちょっとこれ何事?」
「あふぇ?いっふぇふぁふぁっふぁへ?」
「飲み込んでから話しなさい」
「言ってなかったっけ。模擬レースはここに来てるウマ娘の殆どが参加するから毎年お祭り騒ぎだよ?」
「聞いてない。って待って。ここに来てる殆どのウマ娘がって言った?スピカとかリギルも?」
「うん」
とんでもない豪華メンバーである。
それにトゥインクルシリーズやドリームトロフィーリーグ問わず走るため、夢の対決も実現するらしい。
「そりゃお祭り騒ぎにもなるわ」
ジュニア級とクラシック級のレースは午前中に行われ、午後はいよいよ無制限クラスの開幕である。
まず行われたのはダートの1000メートルだった。
このレースでは、メイクデビューでタキオンとぶつかったノルンジェネシスの姉と、そのチームメイトが参戦。
最後バ群を抜けるのに手間取ったものの、それでも諦めずに見事掲示板入りを果たしていた。
続いてダートの1800メートル。
こちらには同じくカサマツから来た芦毛のウマ娘と、オグリキャップが参戦。
オグリキャップがダートに出ると聞いた時は意外だったが、その相手が地方で唯一負けた相手だと聞き……、その走りを見て納得した。
オグリキャップは本気も本気、残り200メートルから伸びる末脚も使ったというのに、それを見ても一切動じずに食らい付いていた。
最終的には1バ身ほど引き離されていたが……、とはいえ3着以下とは2バ身ほどの余裕があったし、見事な走りである。
地方のレベルが高いのか、それともカサマツのあの世代が特殊なのか。
ダートの中長距離は残念ながらウマ娘が集まらず、3レース目はいよいよ芝のレースに入る。
まずは電撃の6ハロン戦。
これはいつだったかにタキオンを追いかけていた学級委員長さんことサクラバクシンオーと、黄金世代のキングヘイローとの一騎討ちだった。
逃げるサクラバクシンオーと迫るキングヘイロー。
高松宮記念覇者同士のマッチレースは、10分間にも及ぶ写真判定の末、サクラバクシンオーに軍配が上がったのだった。
次の1600メートルも負けず劣らずの大激戦だった。
チームスピカからはサイレンススズカとウオッカ、ダイワスカーレットが。
チームリギルからはマルゼンスキーとフジキセキ、グラスワンダーが参戦。
アルタイルのドライデッカーも頑張っていたが、仕掛けが遅れたのも響き8着。
マルゼンスキーが勝利を納めていた。
と言うか全員の持つG1の合計が二桁って……。
まぁその後の中距離レースは更に凄い事になっていたのだが。
シンボリルドルフにナリタブライアン。
三冠ウマ娘が2人も出てきたのだ。
彼女らが出てくれば、当然のようにトウカイテイオーとマヤノトップガン、ヒシアマゾンにフジキセキも出てくる。
テイオーに釣られてメジロマックイーンも。
この時点でお腹いっぱいだと言うのに、そこに黄金世代5人に世紀末覇王である。
何なのこのドリームレースは。
そりゃ観客も集まるわ。
と言うか例え1対1でも今のタキオンで勝てるビジョンが思い浮かばない。
それが13人である。
そしてトドメはシンボリルドルフの動きだ。
タキオンを後ろからマークするような動きを見せたのである。
しかも顔が本気だった。
まだメイクデビューを勝利しただけの新人だと言うのに、七冠ウマ娘から本気のマークを受けてしまってはどうしようもない。
ペースを上げてしまったせいで最後のスパートが伸びず、ヘロヘロの状態でゴールしていた。
ハナから勝負にならない事は分かっていたが、マイルレースを走ったばかりで疲れている筈のグラスワンダーとフジキセキの2人にすら届かなかった。
まぁそれも当然である。
相手は既にピークを迎え、それを維持している超一流のウマ娘。
対してタキオンのピークはまだまだ先なのだから。
──ドサッ
「え?」
「あ、お気になさらず。いつもの事なので」
何か倒れる音がして振り向くと、そこではアグネスデジタルが鼻血を出してぶっ倒れ、アグネスフライトによって引き摺られていく所だった。