超光速の軌跡 ~タキオンとモルモットの3年間~   作:Valid Bear

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前回のあらすじ・・・しょんぼりルドルフ


23話 モルモットと進路

 秋のファン感謝祭も終わり、トゥインクルシリーズはいよいよ秋のG1シーズン突入である。

 スプリンターズステークスに始まり、クラシック最終戦や世界中から優駿が集うジャパンカップ、そして(ファンに)選ばれし者のみが出走を許される有馬記念等々、多くのG1が立て続けに行われる。

 

 …まぁタキオンはジュニア級だからほとんどのレースに出られないのだが。

 出られるのは12月の3本のみである。

 それまでは…、強いて挙げるなら将来当たるかもしれない相手を観察するぐらいだろうか?

 いずれにせよ多くのG1に挑むのは来年以降の話である。

 

 …来年と言えば。

 

「ねぇタキオン。来年の話なんだけど…、どの路線進むの?」

「…?何を言っているんだい?そんなものクラシック路線に決まっているじゃないか」

「あ、決まってるのね?」

「ティアラ路線も結構だがマイルは苦手だし、当然同じ理由でマイル路線も駄目だ。短距離やダートは言うまでもないだろう。それにクラシック路線を走ったウマ娘の方が、より私の理想に近い節がある」

「…まぁそれは確かにそうね」

 

 今なお最強の座に君臨しているシンボリルドルフや、ナリタブライアン。

 いつもあと1歩が届かないが、その実力ならいずれG1の冠にも手が届くと噂されるキンイロリョテイなど。

 もちろんエアグルーヴやオグリキャップなどの例外は居るが、ドリームトロフィーリーグでも活躍する中~長距離ウマ娘の多くがクラシック組だった。

 

「それじゃ弥生賞、皐月賞、ダービーって感じかな。秋は…、菊花賞よりも秋天の方が向いてると思うんだけど」

「ほぅ?かなり強気だねぇ」

 

 確かにクラシック級とのみ当たる菊花賞ではなく、シニア級とも当たる秋天を選ぶというのは、かなり強気の選択と言えるだろう。

 だが…、もしこのまま行ったとしても、ピッチ走法で3000Mを走り切れる程のスタミナが付く可能性は低いだろう。

 

「たぶん菊花賞頃にはもうストライドで走っても加速は問題ないと思うけどね。まだ脚の負担がどうなるか分からないから」

「…まだ?」

「覚えてる?合宿の時にした話」

 

 怪我をした時にタキオンと似たような事を言っていた奴が居た、という話である。

 

「そうだった。早く会わせたまえ」

「今捜してもらってるからちょっと待ちなさい」

 

 当時のコーチに訊ねた所、どうもこの7年の間に異動を繰り返していたらしく、ようやく3年前まで足取りを掴めたらしい。

 

「で、その時なんで会ったかって言うと、彼女が脚部保護機能付きのタイツを開発してたからなんだけど。ウマ娘レベルの物を開発して貰えないか頼んでみようかなって」

「なるほど、外からの補助で衝撃を分散させるのか。しかしそれはレギュレーションに引っかからないのかい?」

「やってる事はテーピングと変わらないから平気みたい。たづなさんに聞いたから間違いないと思うけど」

 

 その時遠回しに『完成品が出来たら2組欲しい』と言われたが。

 ウマ娘を装備品の面からサポートする例として保管するらしい。

 

 それはさておき。

 

「そもそもさ」

「うん?」

「レギュレーションに引っ掛かっても個人的に走るときに使う分には問題ないでしょ?走りが変わる性質の物じゃないしね」

 

 タキオンが目指しているのはレースでの勝利ではなく、ウマ娘の限界に挑み、それを超える事だった筈だ。

 真っ先にレギュレーションが出て来たという事は、タキオンの中にも『勝ちたい』という本能が眠っているという事だろうか。

 タキオンは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしたかと思えば肩を震わせ。

 

「くくくっ…、あっはっはっはっは!!」

 

 そして笑われた。

 それはもう大爆笑であった。

 

 

 

 

 

 ようやくタキオンの笑いが収まったのは30秒後の事だった。

 

「ふぅ…、いやぁ笑った笑った。こんなに笑ったのはいつ以来だろうねぇ」

「笑わせようとしたわけじゃないんだけど…」

 

 普通の事を言ったつもりが大爆笑されると少し複雑である。

 まぁ笑うのは体に良いって言うし別に良いか。

 

「確かに限界に挑むのはレースでなくとも構わないがね。レースで結果を出さなければトレーナーくんが困るだろうに。と言うかクビになるだろうに」

 

 どうやら今度は私が言葉を失う番だったようだ。

 最初こそ昼食を奪われたりしていたが最近は盗ってこないし、これでも迷惑をかけないように気を付けてくれていたらしい。

 …出来れば私にトレーニングを課すのをやめてくれると一番ありがたいのだが。

 こちらが課す側である事を考えると拒否できないのが辛い所である。

 

「無理をして脚が壊れたとしても、他のウマ娘を限界以上のレベルに引き上げてやれば限界を超えた速さは見られるし、それで良いと思っていた」

「ちょい」

「だが、トレーナーくんが言った『限界の先の景色』というのは自分の脚でなければ見られない物だろう?それにトレーナーくんは私の」

 

 タキオンはそこまで言うと言葉を切った。

 と言うかフリーズしていた。

 

「どしたの」

 

 なんでタキオンはちょくちょく固まるかな。

 しかも何か私の事を言おうとしていたみたいだし、すごく気になるんだが…。

 

「そこまで鍛えられた成人女性なんてそうそう居るものじゃないからねぇ…。貴重なモルモットを手放すと思うのかい?」

「台無しだよ」




嘘でしょ…?
公式でクリスエス来ちゃったんだけど…。
留学生設定は合ってたけど、某アンジー・シリウス的ポンコツにしちゃったからホープフル以降全部書き直しやぁ(´;ω;`)

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