超光速の軌跡 ~タキオンとモルモットの3年間~   作:Valid Bear

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今回・・・今年の話


24話 モルモットと2戦目

「うーん……、どうしようかな」

 

 放課後。

 私はトレーナールームでタキオンを出すレースを選んでいた。

 昼の時点で、来年はクラシック路線に挑むという事が決まっている。

 だが、その前哨戦である弥生賞や若駒ステークス、スプリングステークスに出るにしてもある程度実績が無いと舞台に上がる事すら叶わなくなる。

 舞台に確実に上がる為にも、ジュニア級の時点であと1勝、あるいは2勝ぐらいは上げておきたい所なのだ。

 

 なのだ、が。

 

「……中距離全然無いんだけど」

 

 まぁ、ある事はある。

 しかしウマ娘の数に対するレースの本数が圧倒的に少ない。

 これでは数少ないレースにウマ娘が集中してしまい、どのレースに出ても来年クラシック路線に進むウマ娘とぶつかる羽目になるのではなかろうか。

 

「まぁ良いか。結局ぶつかるのは変わらないんだし。それじゃ……、芙蓉ステークスかな」

 

 他にも中距離レースはあるが、1つ選ぶならこのレースだろう。

 出られる中距離レースの中では最も早い時期に行われるレースである事。

 そして何より、レースが行われるのが中山レース場の芝2000メートルである事が大きい。

 

 そう。

 当面の目標であるクラシックレース、その緒戦とも言える皐月賞、及び弥生賞と同じ条件なのだ。

 

 まぁ出走メンバーやバ場によってレースの展開は変わって来るが、コースの起伏やコーナーの感覚を覚え、不足を見極めるにはもってこいだろう。

 あとは百日草特別が東京レース場の芝2000メートルと天皇賞と同じコースである上、芙蓉ステークスから時間も開く事だし丁度いいだろう。

 問題はタキオンを説得できるかどうか……。

 

 と、そのタイミングでトレーナールームの扉が開かれた。

 この部屋へとノック無しに入ってくるのは一人しかいない。

 入ってきたのはやはりタキオンだった。

 

「やぁ、トレーナー君。新作が出来たんだ。飲んでみたまえ」

 

 そしてその手には、明らかにヤバそうな赤紫色に発光している液体が。

 ……さて、今日はどこが何色に光るのやら。

 

 

 

 

 

 そして芙蓉ステークス当日。

 私は中山レース場にいた。

 不安だった説得だが、割とあっさり了承を得られたのは予想外だった。

 曰く「トレーナーくんなら変なローテーションは組まないだろう?」だ、そうだ。

 

 ……こっちまだ1年目の新人なんですが。

 

 変なローテーションを組もうものなら、飲む薬品の数が増えそうである。

 

 

 

 

 

 当日の人気投票で、タキオンは一番人気に押されていた。

 メイクデビューは二番人気だったため、初の一番人気である。

 相手もメイクデビューを勝った子達であるため、それだけあのレースが評価されたのだろう。

 タキオンはその期待に応えるだけの力を身に付けている。

 あとはそれを発揮できるかどうか。

 

 そしてレースが始まった。

 逃げウマ娘不在だったため、スローペースで展開するかに思われたのだが……。

 スタート直後、タキオンの前に出たウマ娘がどんどん加速。

 そのまま逃げの体勢に入ったのだ。

 

 そして終盤。

 第4コーナーへ差し掛かった所でタキオンが仕掛けた。

 前を行くウマ娘を抜き去り、一気に先頭へ躍り出る。

 

「レースは第4コーナーから直線へ!中山の直線は短いぞ!ここから前を捉える子は出てくるのか!」

 

 後続がようやく加速し始めるも、そのタイミングではタキオンどころか、逃げ続けた子にも届かないだろう。

 その子もあれだけ逃げたうえでタキオンに抜かされたのに、全然垂れる様子がない。

 素晴らしい根性である。

 

「アグネスタキオン、坂をものともせず駆け上がる!1バ身半ほど離れて2番手はレイスイーター!まだ粘る!タカオマグナムは届かないか!?先頭は変わらずアグネスタキオン!今1着でゴール!2着は3バ身差でレイスイーター!タカオマグナムは追い上げるも3着!!」

 

 そして、タキオンはそのまま2勝目を挙げるのだった。




「中山の直線は短いぞ!」を言わせたいだけ&次回への繋ぎ回です。
次のレース描写は本気出すから・・・。
許して・・・。

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