超光速の軌跡 ~タキオンとモルモットの3年間~   作:Valid Bear

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前回・・・白いヤベーヤツ登場


27話 モルモットとG1に向けての準備

 タキオンは百日草特別も圧勝し、次の目標はいよいよホープフルステークスである。

 現時点で3勝を挙げているウマ娘はそれほど多くなく、このまま行けば出走は問題ないだろう。

 そもそも今から更に出走する事はどう考えても無茶であるため、結局のところ出走できるよう祈るしかないのだが。

 

 さて、ホープフルステークスでは今まで走ってきたレースとは異なる物がある。

 もちろん出走するウマ娘のレベルや賞金額なども桁違いだが、パッと見て分かる違いが1つ。

 その違いとは──

 

「ねぇタキオン。勝負服のデザインどうする?」

 

 そう、勝負服である。

 

 今までのレースは全員体操服で走ってきたが、G1は基本的に自分で用意した勝負服で走る事となる。

 注文の際には学園から補助金が出るが、掛かった金額を後から清算する形態を取っている。

 その為、ウマ娘によっては勝負服無しで走る事もあり、その場合は学園から貸し出されるライブ衣装を着て走る事になる。

 だがほとんどの場合は各々こだわりの勝負服を作って着用しており、ライブ衣装で走る子も仕立てが間に合わなかったからという理由が多いらしい。

 

 ……中には「はしゃいで着ていたら破いてしまった」という子もいたらしいが。

 

 何はともあれ、家のイメージカラーや自分の夢、或いは決意などを元に作られる勝負服は、着ると着ないとでは走りがまるで違うと言われるほどにモチベーションに繋がるものだ。

 そのためどのようなデザインにするかをタキオンに訊ねたのだが……。

 

「すぐ実験が出来るように白衣で頼むよ。色は赤、黄色、水色が入っていればあとは任せる」

「はいよー。……え?ちょっと待って。走るのに白衣着て走る気?」

 

 予想外の答えが返ってきた。

 白衣なんて着ていたら空気抵抗がとんでもない事になりそうなのだが。

 まず間違いなく邪魔だろう。

 

「あぁ。他のウマ娘達の勝負服を見ていると、丸洗いできないようなデザインの物が非常に多い。それでは洗っている間実験が出来ないだろう?」

「なにも勝負服で実験しなくても良いんじゃ……」

「今までは体操服の上から白衣を着るだけでよかったが、勝負服ではそうは行かないだろう?G1を走った後なんて間違いなく新しい発見があるだろうし、着替えるのは面倒だ」

「さっきと言ってる事矛盾してるよ」

「……別に良いじゃないか白衣で走ったって!あの包まれている感じが落ち着くんだから仕方ないだろう!?」

「あーもう分かったって!だから叫ばないで耳キンキンするから!!」

 

 説得失敗

 

 ……まぁシンボリルドルフやモンジューの勝負服もマント付きだし、ウマ娘の勝負服って空気抵抗とかあまり関係ないのだろうか?

 そんな事は無いと思うのだが、彼女たちの強さを考えると自信がなくなってくる。

 まぁタキオンが白衣が良いって言っている以上、他の選択肢は無いのだが。

 どうか走りに悪影響が無いようなデザインになりますように……。

 

 

 

 

 

「……うん。これは凄いわ」

 

 届いたデザイン案は見事な物だった。

 タキオンの要望である白衣に3色のイメージカラー。

 そしてたづなさん経由で伝わったと思われる保護タイツも違和感なく落とし込まれている。

 

 ……が。

 

「何で袖までこんな長いのよ……」

 

 空気抵抗と言う面ではむしろ悪化していた。

 それこそ俗に言う萌え袖になるような長さだ。

 

 確かに可愛いだろう。

 可愛いし白衣特有のかっこよさもあり、さぞターフに映えるだろう。

 

 違うそうじゃない。

 

「おはようトレーナーくん。昨日の弁当箱を返しに……、おや?それは勝負服のデザイン案かい?」

 

 頭を抱えていたところ、いつの間にかタキオンが来る時間になっていたらしい。

 後ろからタキオンが覗き込んでいた。

 

「ふぅン?良いデザインじゃないか」

「え?空気抵抗凄そうだけど」

「……なるほど、それで頭を抱えていたのか。安心したまえ。勝負服の空気抵抗など些細なものだ」

 

 嘘 で し ょ 。

 

「元々レースではドレスと鎧を着て走っていた、という所までは理解しているかい?」

「うん、まぁ。元々は軍での技能試験の一環だったんでしょ?」

 

 その辺りは焔から最初の頃に叩き込まれたから覚えている。

 勝負服の空気抵抗とどう繋がるかは分からないが。

 

「あぁ。だが時代が進むにつれ軍隊からウマ娘の仕事は減り、大衆に公開され娯楽となっていたレースや模擬戦は民間で開催され……、まず鎧が無くなった。鎧が無くなった事でレースは格段に速くなり、皆その速さに魅了された。それで速さを追い求めるうちにドレスの軽量化が進み、今の勝負服に至るという訳だ。濡れたタオルと乾いた手ぬぐいでは大きさが同じでもどちらの方が抵抗が少ないかは分かるだろう?おーい、トレーナーくぅん?」

 

 ……?

 

「……えーと、ごめん。長くて良く分からなかった。一言でお願い」

「ものすごく軽いから平気」

「本当に一言で済むんだ」

 

 さっきまで1分近く話していたのは何だったのか。

 

「とにかくこのデザインは気に入った。これで発注しておいてくれたまえ」

「はいはい」

 

 ……まぁ、あまりに酷いようなら自腹で2着目を作る事も考えよう。




勝負服やレースの歴史は独自の設定です。
n番煎じかも。

あんな空気抵抗凄そうな白衣を着たタキオンが速かったり、長いブーツを履いたゴルシが最強格だったり、もう訳が分からないのです。
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