超光速の軌跡 ~タキオンとモルモットの3年間~   作:Valid Bear

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前回・・・この話における01世代の確認


29話 魔境への入口 ~ホープフルステークス・前編~

「今年もこの日がやってきました。本日のメインレースはG1、ホープフルステークス!毎年12月28日に開催されるこのレースは、ナリタタイシンやアドマイヤベガ等、数多くのクラシックウマ娘を輩出しており、翌年のクラシック戦線を占う1戦として注目されています!解説の菅原さん、今日もよろしくお願いします」

「よろしくお願いします。特に今年は粒揃いですからね。どんなレースが見られるのか、今から楽しみです」

「チームスピカからは芝2000メートルのレコードを手にクロフネが、オペラオー包囲網が記憶に新しいチームリギルからはジャングルポケットがそれぞれ参戦、人気を分け合っています。また、この2名から少し人気を落とした3番人気には、今年のダービーウマ娘の妹、アグネスタキオンが推されています。彼女はここまで負け無しで勝ち進んで来ましたね」

「えぇ。ですが重賞は初出走、それもいきなりのG1ですからね。相手も格段に強くなっていますよ」

「リギルのジャングルポケットもいまだ無敗!特に札幌ジュニアステークスでは阪神JFの覇者でありチームメイトのテイエムオーシャンを降しており──」

 

 

 

 

 

 12月28日。

 毎年冬を感じさせない程の熱気に包まれる有マ記念も先日終わり、今日はいよいよタキオンのG1デビューである。

 

 タキオンも出来たての勝負服に身を包み、やる気満タン──

 

「なぁトレーナーくん。本当にこれを着て走るのかい……?冷静に考えたら凄く走り難そうなんだが……」

「だから言ったのに」

 

 ──ではあったものの、勝負服が気に入ったかと言うとそれほどでもないようだった。

 いったい何のために先週トレーニングを短縮してまで試着の時間を取ったのか。

 これではただ届いた服を着ただけである。 

 

 

 

 

 

「んー、やっぱトモの辺りが窮屈かぁ……。白衣としては自然な長さかもしれないけど、走るには流石に長過ぎたね」

 

 そんなわけで急遽着こなし模索中である。

 普通は作戦を再確認したり、心を静めたりする時間だろうに。

 こんな事をしていると知ったら観客達もさぞ驚くだろう。

 

「今から裾上げする時間は無いしなぁ……」

「裾もだが、この袖はどうするんだい?」

「……腕捲り?」

「……流石の私にもそれがダサい事ぐらいは分かるんだがねぇ?」

 

「試しに腕ぶんまわしてみて」

「こうかい?」

「……それぐらいなら走りには影響しないでしょ。脚に纏わりつく裾と違って」

 

 時間が許すなら白衣を脱いで走ると言う手も取れたのだが、それはもう不可能だ。

 ウマ娘のレースでは公平性を期す為に、装備品の全備重量が定められている。

 そしてその調整用の重りは、白衣を含めた最低値で受け取ってきているのだ。

 当然軽い方が速く走れるため、白衣を脱いで走る訳にはいかないのである。

 

「まって?ここのファスナー開くんじゃない?」

「ふぅン。確かに少しマシにはなったが、走る事を考えるとまだ窮屈だねぇ。と言うか前の部分が脚に絡まりそうだ」

「だよね。……とりあえずパドック行ってから出走までに何とかしよう。もう時間無いし」

 

 

 

 

 

「どうした?結構ギリギリだったじゃないか」

 

 集合時間の5分前に到着すると、沖野先輩が声をかけてきた。

 今回スピカからはクロフネが参戦している。

 フルミネルージュの方は阪神JFでテイエムオーシャンの2着となっており、疲労を考えて今回は出走しないらしい。

 

「今日はお手柔らかに頼みますよ、沖野先輩。勝負服が脚に絡まりそうなのを何とか出来ないか、色々と試してました」

「そりゃこっちの台詞だっての。で、勝負服は……、なるほど。白衣がベースなのか。仕上がりの程は……、ん?これが噂の足の専門家が監修したタイツか?」

「そこまでです先輩。変質者にしか見えません。ちなみにそれはまだ一般に出回っているテーピングタイツです」

 

 成人男性が年頃のウマ娘をまじまじと眺めているのは、もう絵柄が完全にアウトである。

 

「勝負服が脚に絡まりそうだって言ってたよな?」

「え?はい、そうですけど……」

「走りながら実験する訳じゃないんだし、前開けて走りゃ良いんじゃないのか?」

「「確かに」」

 

 

 

 

 

 パドックでのお披露目が終わり、タキオンは控室に、私はコース脇に移動するのだが、その前に。

 

「どう?緊張して……はいなさそうだけど、何か違和感とかあったりしない?」

 

 最終確認は大切である。

 勝負服に着替える前に見た感じは問題なさそうだったが、念の為だ。

 

「いやいや……、私が今更レース程度で緊張する筈が無いだろう?G1だろうとやる事は他のレースと変わりないし、調子も万全だ」

 

 まぁ……、どうやらタキオンには必要なかったようだが。

 なんなら言おうとしてた事も先に言われたし。

 

「なら良し。無理無茶無謀をしない程度に好きに走っておいで」

「あぁ」

 

 この様子ならタキオンに任せても大丈夫だろう。

 メイクデビューの時よりも場数を踏んでいるし、既にタキオンは何かあっても十分対応が出来るだけの力を身に付けている。

 今までも指示は出さなかったし、むしろその方がいつも通り走れるだろう。

 

「それじゃ私はコースの方に行ってるね。頑張れタキオン」

「勿論だ」

 

 ……間に合うかなこれ?

 

 

 

 

 

 人波を掻き分ける事20分。

 お馴染みのメンバーが揃っている所に辿り着いた頃には、既に本バ場入場が始まっていた。

 ……ジュニア級とは言えそこはG1、速そうな子がゴロゴロいる。

 だがやはりその中でも、ジャングルポケットとクロフネの2人、……いや、タキオンを含めた3人は別格だ。

 ライブの席と限定グッズをかけた勝ちウマ娘投票の結果は、クロフネが1番人気。

 僅差でジャングルポケットとタキオンが続いていた。

 これは恐らくだが、トレーナーの差も響いてるんだろうなぁ……。

 ファンファーレが鳴り響き、ウマ娘達が続々とゲートに入っていく。

 

「中山レース場のG1、ホープフルステークス。……今、スタートしました!」




ライブを見れる列は抽選で、的中すればその着順に応じて抽選時に倍率がかかるようなイメージ。
限定グッズに関しては、席によって交換可能な範囲の異なる引換券が貰えます(最前列はA~Kの中から選べるみたいな感じで)
適当極まりないけど「ギャンブルじゃないならアプリにある○番人気て何ぞ?」って思ったのでちょっと考えました。

あの「○番人気」は実際にはどんな設定になっているのか、知っている方がいたら教えてくださいませ。
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