超光速の軌跡 ~タキオンとモルモットの3年間~ 作:Valid Bear
20分後。
「おぉう。もうそんなに減ったかぁ」
重箱に詰め込んできたおせちは、早くも1段に収まる程度にまで減っていた。
残ったら夕食にしようと思っていたのだが、夕食は別に作る事になりそうである。
34話 年明け早々
「……すまない。あまりにも美味しくて箸が止まらなかった」
「いや、別に良いんだけど……、後で食べた分は走りなよ?おせちって意外と高カロリーだからね。油断すると太るよ?正月太り待った無しよ?」
「了解した」
「……ボクも走ろうかな」
「テイオーは沖野先輩に聞いてからにしてね。オーバーワークになったら私まで怒られるから」
トゥインクルシリーズ在籍中に4度も骨折した子にオーバーワークなど論外で……、いやまぁどんなウマ娘でもオーバーワークは論外なのだが。
沖野先輩に訊ねるようテイオーに言うと、テイオーは一瞬でウマホを操作し、送信。
「『模擬レースは2400以内を2本以内、全力疾走は3Fまで、距離は全部合わせて8キロ以内。この範囲内で好きなようにしてくれ。後でやったメニューを送ってくれればこっちで調整する』だって!」
それに対する返事も一瞬であった。
「って合流するんかい」
まぁ……、テイオーの走りを見れるのはタキオンにとってプラスでしかないし、大歓迎ではあるのだが──
「自分も交ざりたいのだが……、構わないか?」
「誰もかも1年目の新人を買い被り過ぎなのよ……。まぁ構わないけども」
流れで2人ほど多く練習を見る事になったが、手探りでも交互に見るなら意外となんとかなるもので。
今2人はタキオンの走りを見ながら休憩中である。
「へぇー。留学生なんだ」
「あぁ。今はまだキーンランド所属だが、4月までは日本の生活に……、何と言ったかな。経験を積む?」
「慣れる、かな?」
「それだ。慣れる為に会長さんの家にホームステ──」
「カイチョーの家に!?」
謎のウマ娘改めクリスは、4月からうちの学園に通う留学生らしい。
やはりと言うべきか、学園への出入りは許可されており、暇な時に見学していたのだとか。
そして、タキオンが走っているのを見かけ、木陰からひっそり見ていたところを沖野先輩に見られた、と。
本当の不審者じゃなくて何よりである。
そんな事を話していると、タキオンがメニューをこなし、戻ってきた。
「ほら休憩終了。2人はあと2周軽く流せば食べた分は消費できるから頑張れ」
休み明けという事で軽めのメニューにしたのだが、タキオンは息を切らせるどころか汗1つかいていない。
……もう少し重いメニューでも良かったかも知れないが、今更である。
予定通りのトレーニングを伝え、2人の方へ振り返る。
「んじゃタキオンは休んで息整え……、整ってるけど休んだあと二千四1本ね」
「ちょっと待ったー!!」
だが、テイオーから待ったが掛かった。
「なしたの?」
「ここ1周って大体2000Mだよね?」
「ん?まぁそうね」
「それ2周流すだけならタキオンと一緒に走りたい!!」
「へ?」
「さぁやってまいりました、本日のメインレース、トレセン特別!トレセン学園Dコース、芝2400Mでの開催だー!!実況解説はゴルシちゃんでお送りするぞー!」
「ちょっと待て」
いつの間にか、テントやら机やらスピーカーやらが用意されていた。
毎度ゴルシちゃんの早業には驚かされる。
「色々ツッコミたいんだけど、まず何でゴルシちゃん居るの」
「何言ってんだ?レースあるところにゴルシちゃんありなんだZE☆」
「初めて聞いたんだけど」
なにその謎格言。
「とにかく参加メンバーの紹介に移るぞー。1番は有馬記念でまさかの9バ身差の圧勝!クリスちゃん!!」
「デビューすらしてないんだけどその記録どこから来た!?」
「まーまー細かい事は気にすんなって!!」
これは細かい事なのだろうか。
「2番は4戦4勝!ホープフルステークスの圧勝劇から付けられた2つ名は超光速のプリンセス!!アグネスタキオン!!」
「何その2つ名みたいなの」
「固有2つ名なんだZE☆」
なるほどわからん。
「3番はキセキの帝王!!トウカイテイオーだ!!」
「よく一年越しの復帰戦で有馬記念勝てたよね……。確かに奇跡と言っても過言じゃ無いか」
「外枠の4番にはクラシック2冠馬にして宝塚記念連覇、有馬、天皇賞春制覇を果たした名 馬 !ゴルシちゃんの登場だー!!以上4人が出走する超豪華レース、見逃す手は無いぞ!!」
「だからデビューすらしてないでしょうが!って言うか走るの!?実況解説は!?」
「……まぁうちのメンバーしか観客居ないし良いんじゃね?」
「えぇ……?ってうちのメンバーしか?」
よく周りを見渡すと、4コーナーの外の丘でゆったりと寛ぐスピカの面々が。
「うわぁ……」
なんか大事になってるし……。