超光速の軌跡 ~タキオンとモルモットの3年間~   作:Valid Bear

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前回・・・抜錨


36話 本気

「……へ?」

 

 残り1200メートル。

 突如として後ろから聞こえてきた轟音は、ゴールドシップの本気を示す足音である。

 まさか彼女が本気を出すと思っていなかったトウカイテイオーは、意外さのあまり振り向き──

 

「ピェ!!??」

 

 いつも笑顔か変顔のゴールドシップらしからぬ、真剣そのものである表情に、思わずペースを上げてしまう。

 

(なに!?何なのさ!?)

 

 ペースを上げた時の感覚で、それが間違いではなかった事を察したのだが、正直それどころではなかった。

 

 ゴールドシップは中身はともかく、顔はシャープな美人である。

 そんなゴールドシップが本気を出すあまり真顔になり、轟音と共に迫って来たら。

 

 テイオー的にはちょっぴり怖かったのである。

 

 

 

36話 本気


 

 ゴールドシップが選択した作戦は極めて単純。

 レース半ばからのロングスパートである。

 広いストライドを保ったまま、更に脚の回転を加速させていく。

 まさに桁違いのスタミナにモノを言わせた力業であり、並のウマ娘であれば到底耐えられない所だが……、ゴールドシップにはそれを可能にする頑丈な身体があった。

 鉄串にも耐える強度は伊達ではない。

 これもまた、テイオーとは異なる面での「天与の才」と言えるだろう。

 その気分に左右されるような走りから()()艦などという不本意なあだ名で呼ばれる事もあるが、今日は気分が乗っている。

 黄金の不沈艦、その本領発揮と行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 最終直線。

 真っ先に突入してきたのはタキオンだった。

 

 少し開いてクリスが続き、その後ろにトウカイテイオー。

 ゴールドシップはその更に外、テイオーが抜けるスペースを残しつつタキオンを捕らえにかかる。

 それに応えるようにテイオーがクリスに迫り、一気に加速。

 並ぶ間もなく交わし、そのままスパートに入る。

 

 クリスはさすがにスピードが足りずに後退。

 と言うかデビュー前のウマ娘がここまで食らいついている時点でおかしな話なのだが、さすがに限界だったらしい。

 それでも無理と諦めない勝負根性は見事なものだ。

 

 デビュー前という意味ではゴールドシップも同じ筈なのだが……。

 そちらは何故か普通に競り合っていた。

 訳がわからない。

 

 タキオンは逃げながらも脚を溜めようとしていたが、やはり見よう見まねの付け焼き刃では通用しなかったらしい。

 スパートにいつも程の伸びは見られなかった。

 ……まぁ、あそこで伸びられてもトレーナーとしてはちょっと困るのだが。

 そんなタキオンを交わし、ゴールドシップとテイオーが先頭に躍り出る。

 だが、ペースの違いに気付いたタイミングの差がここで顕れた。

 

 

 

 

 

「ぜぇ……、ぜぇ……、モゴ……」

「ぐぬぬ……。まさかゴルシに抜かれるなんてー!!」

 

 ゴール後、息も絶え絶えの状態でブルーシートに倒れ込み、伊達巻をつまみ食いしているゴルシちゃんと、地団駄を踏んでいるテイオー。

 テイオーの様子から分かるように模擬レースの勝者はゴルシちゃんであった。

 それも、息も脚も残したままクビ差届かなかったとなれば悔しさもひとしおだろう。

 

「ふぅ……。ま、ゴルシちゃんにかかればざっとこんなもんよ……」

「あーもー!!もう一回!!もう一回走る!!」

「それは無茶だからやめて。それと後ろ後ろ」

「へ?……ピエ!?」

「テイオー……。お前ゴルシに負けんなよ……。アイツ一応デビュー前だぞ……?」

「あの、うちのタキオンも負けてるんですが」

 

 二人ともGⅠウマ娘だし、ゴルシちゃんがおかしいだけな気がする。

 

 まぁ先輩も来た事だし、この2人は任せて平気だろう。

 と言うか……、そもそも2人は先輩の担当ウマ娘な訳で。

 それにあと残っているのはクールダウンぐらいだし。

 タキオンはいつも自分でちゃんとやっているから平気だろうが、トレーナーの居ないクリスは一応見てあげた方が良いだろう。

 

 

 

 

 

 その後は各々クールダウンとストレッチを済ませて練習は終了。

 各自解散となった。

 そして先輩はクリスちゃんに声を掛けて断られたらしい。

 ……スピカ良いチームなんだけどな、もったいない。

 まぁ会長の家にホームステイしているらしいし、おそらくお華さんに預けられる事が決まっていたのだろう。

 現時点であれだけ走れるのに、それがリギルで磨かれたら果たしてどこまで辿り着くのか。

 今から楽しみである。

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